日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

返済猶予制度の報道 読売 vs 朝日

2009-09-30 10:53:30 | 社会・政治
まずはasahi,comの記事。

返済猶予「銀行に義務化せず」 大塚金融副大臣

 政府は29日、金融機関の「貸し渋り・貸しはがし」防止対策を検討する会議を開いた。まとめ役の大塚耕平・金融副大臣は、中小企業が借金の返済期限の延長といった条件変更をしやすくする仕組みをつくる意向を表明。ただし、銀行に返済猶予を一律に義務付けることは否定した。10月9日までに内容を固め、臨時国会に法案を出す方針。(中略)
 大塚副大臣はこの日の会見で「モラトリアムは選択肢の一つ」と述べつつ、「一律(に実施する)という言葉が独り歩きした」と指摘した。返済猶予を促す期間や、金利分の扱いについてなど、細部の検討はこれからだ。
(asahi.com 2009年9月30日5時40分)

この記事で最初に引っかかるのが『政府は29日、金融機関の「貸し渋り・貸しはがし」防止対策を検討する会議を開いた』の箇所である。どういう性格の会議なのかが分からない。まとめ役が大塚金融副大臣と言うから、金融庁内に設置されたなんとか会議かとも思うが、それならなぜ亀井金融大臣は『「副大臣が義務づけしないなんて言うはずがない。そんな権限がない」と発言。「検討は今日始まったところ。私が大臣で、私が決めることだ」と語った。』のように発言したのだろう。この辺りの事情が、記事からはさっぱり伝わってこない。亀井大臣の発言は朝刊に上の記事と並んで次のように出ている。


次は読売の記事である。

返済猶予制度、10月9日までに原案

 金融庁は29日、中小企業や個人を対象にした銀行借り入れの返済猶予制度を検討する作業チームの初会合を開いた。

 制度の原案を10月9日までにまとめ、臨時国会への関連法案提出を目指す。

 ただ、金融機関に対し返済猶予を義務付けるかどうかについて、亀井金融相とチームの責任者である大塚耕平・内閣府副大臣の発言が食い違い、検討作業はスタートから迷走ぶりを印象づけることになった。

 大塚副大臣は29日昼に開かれた初会合の冒頭、「現実的な案をしっかり検討したい」とあいさつ。会合終了後の記者会見では「義務付けは適切でない」、「強制力という言葉ではなく、より実効性が高い法律や制度を考えていかなければならない」などと述べ、法案に返済猶予義務付けを盛り込むことに否定的な主張を繰り返した。

 これに対し、亀井金融相は同日夕、記者団に対し、「副大臣がそんなこと言うはずがない。彼には権限はない」と、大塚副大臣の発言を全面否定した。

 さらに、「実効性を担保するのにどういうやり方があるのかを含め、今から検討していく」と述べ、制度の具体的な内容は決まっていないと強調した。
(2009年9月29日20時08分 読売新聞)

この読売の記事では「会議」の性格も含めて、問題点の在処がよく分かる。以前に引用した毎日新聞の記事には『亀井静香金融・郵政担当相は24日、金融庁で初の政務三役会議を開き、大塚耕平副金融相らに中小企業向け融資や住宅ローンを返済猶予(モラトリアム)する制度を法案化する作業を指示した。』とあるので、「会議」がその作業チームのことであることが容易に分かる。

しかしこの毎日の記事が正しいのであれば、大塚金融副大臣は「返済猶予(モラトリアム)」を法案化するように、という亀井大臣の指示に背いた行動をとっていることになる。この齟齬に疑問を持って、副大臣に「なぜ?」を問いかける取材記者が一人ぐらいはあってもよいように思うが、読売もそこまでは突っ込んでいない。そこでげすの勘ぐり、亀井大臣と大塚副大臣が実は緊密な連係プレーはやっているのであって、大臣は言いたい放題をぶち上げる、副大臣はそれを抑えるような格好をしながら、実は落としどころを大臣に限りなくすり寄せようとしているのだろうか。

政権がドラマチックに変わってしまったのに、その動きを取材する記者が自民党時代の旧態依然たる感覚で生き延びられるはずがない。素人の勝手な憶測はお呼びではないよとばかりに、国民目線で疑問を抱き、それを解き明かしていく積極的な報道姿勢を培って欲しいものである。

鳩山首相が民主党代表であった頃の元本返済猶予発言とは

2009-09-29 21:32:38 | 社会・政治
「返済猶予制度の行方 やっぱり変な亀井静香金融・郵政担当相」を先ほど投稿してからネットを調べたところ、池田信夫blogの鳩山由紀夫氏のモラトリアム宣言が見つかった。2009年7月28日に鳩山由紀夫民主党代表が鹿児島に赴き、川内博史前衆議院議員のための応援演説をしたが、それを録画したYouTubeがここに張り付けられており、池田信夫さんは『総選挙で鳩山由紀夫氏は「返済猶予法案は川内博史氏のアイディアだが、私も応援する」と明言した』と紹介している。もしこの通りだとすると、たとえ文書に明文化されていなくても亀井静香金融・郵政担当相が強気になるのも分かるような気がするが、果たしてそうなのか、私なりにこの演説を聴いてみた。こちらは10分40秒版である。




6分25秒から35秒にかけて、『中小企業の方々の元本返済をしばらく猶予していただけるような○○○法案を私たち 検討していきたいと考えているんです』と鳩山代表は言っている。その前に6分2秒から12秒にかけては『元本の返済はなかなか難しいんです。でも利子の部分だけ返済することならようやくできるんです』の続きである。

まだ総選挙の告示前、7月28日のことであるから、厳密に言うと総選挙での演説にはならない。しかも元本返済猶予のための法案を検討したい、と言っているだけで、たとえば亀井氏が言っているような3年間の返済猶予ほどの具体性は何も無い。そして総選挙の告示に伴い出された民主党のマニフェストに記されたことは、直前のエントリーで取り上げたように

○貸し渋り・貸しはがし対策を講じるとともに、使い勝手の良い「特別信用保証」を復活させる。
○金融機関に対して地域への寄与度や中小企業に対する融資状況などの公開を義務付ける「地域金融円滑化法」を制定する。(民主党)

とあるだけで、返済猶予制度を正面に打ち出していない。すなわち7月28日の鳩山演説よりはかなり後退しているが、それはマニフェスト最終版を出すに至までの党内での論議を踏まえての結果であろう。したがって総選挙が始まり今に至るまで、鳩山首相が返済猶予制度を容認しているとは考えられないが、またその間の秘密ビデオでも飛び出してくるのだろうか。

追記(9月30日)

民主党代表時に元本返済猶予の法案のあり方を発言、その思いは今も持っている=鳩山首相

 [東京 29日 ロイター] 鳩山由紀夫首相は29日、中小企業の借入金返済猶予の問題について、首相就任前の民主党代表時に元本返済猶予の形での法案のあり方を発言したことを問われ、「その思いは今も持っている」と述べた。(中略)

 その上で、政権が発足し亀井静香郵政・金融担当相に仕組みを考えてもらっており、「あまりにも無茶な形にならない最終的な仕組みを作り上げていこうと考えている」と述べた。
(ロイター 2009年 09月 29日 18:48 JST)

返済猶予制度の行方 やっぱり変な亀井静香金融・郵政担当相

2009-09-29 17:03:53 | 社会・政治
国民新党のマニフェストでは、追い詰められた中小企業を守るためとして、

困窮する中小零細企業の経営資金の返済については、最長3年間の支払猶予制度を新設します。(国民新党)

とうたっている。これに対して民主党は同じくマニフェストで、中小企業の法人税率を現在の18%から11%に下げることを明記し、それに必要な所要額を2500億円程度と見積もっている。そして

○貸し渋り・貸しはがし対策を講じるとともに、使い勝手の良い「特別信用保証」を復活させる。
○金融機関に対して地域への寄与度や中小企業に対する融資状況などの公開を義務付ける「地域金融円滑化法」を制定する。(民主党)

と記している。このような公約部分が、新政権発足後の民主・社民・国民新三党連立合意では次のようにまとめられている。

▽中小企業に対する支援を強化し、大企業による下請けいじめなど不公正な取引を禁止するための法整備、政府系金融機関による貸付制度や信用保証制度の拡充を図る。
▽中小企業に対する「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」を成立させ、貸し付け債務の返済期限の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする。個人の住宅ローンに関しても、返済期限の延長、貸し付け条件の変更を可能とする。(三党合意書)

この三党合意に国民新党の『困窮する中小零細企業の経営資金の返済については、最長3年間の支払猶予制度を新設します』は姿を見せず、その代わりに民主党の公約とも言える「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」を成立させ、それに『貸し付け債務の返済期限の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする』の部分を付け加えていることで、国民新党への配慮を示すかのようである。国民の目にハッキリ見えるのはこれだけだから、亀井大臣が「モラトリアムも3党合意事項」(毎日新聞 2009年9月19日 東京朝刊)と言うのはただの強弁に映る。ついでに、上の強調部分にある『貸し付け債務の返済期限の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする』は、「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」が成立してから為される貸し付けについて適用されると受け取るのが国民目線と言うものだ。この部分が元警察官僚の亀井氏のいわゆる官僚作文で、その意味するところは国民新党の主張するモラトリウムそのものだとは言わせない。モラトリウムの発動で金融機関などの蒙る損害を補填するのかしないのか、もしするなら国民がいくら負担しなければならないのか、それをまず明確にすべきでもあるのに、今の段階では浪花節で留まっている。

毎日新聞によると

 亀井静香金融・郵政担当相は24日、金融庁で初の政務三役会議を開き、大塚耕平副金融相らに中小企業向け融資や住宅ローンを返済猶予(モラトリアム)する制度を法案化する作業を指示した。10月にも召集される臨時国会への提出を目指す。返済猶予制度には、金融界から反発が上がり、閣内からも慎重論が出ているが、亀井担当相は強気の構えを崩していない。
(毎日新聞 2009年9月25日 東京朝刊)

さらに

 モラトリアムは、中小企業や住宅ローン利用者を対象に、元本返済を3年程度猶予することが想定されている。過去に例のない政策で、銀行経営にも影響があることから、平野氏や藤井裕久財務相は慎重な対応を求めている。鳩山首相も米ピッツバーグで24日夜(日本時間25日午前)記者団と懇談し、「3党でよく議論し、金融に関する閣僚委員会でも検討して、結論をできるだけ早く出すように努力することが大事だ」と述べた。

 これに対し亀井氏は「総理は私に任せると言っている」として、担当大臣として自らの主導で法案をまとめたい考えだ。中小企業の資金繰りが厳しくなる年末までに成立させるため、10月下旬にも召集される臨時国会への法案提出を明言している。
(asahi.com 2009年9月27日9時57分)

と亀井氏が言っているようだ。また今日の閣議の後でテレビで次のような発言をしている。


テレビに出演した亀井氏は「総理は私に任せると言っている」式の発言をこれまでもよくして自分の主張を正当化しようとするが、言った言わぬの話は当事者限りにしておくべきで、そう言う客観性を欠く独りよがりの発言に国民はそっぽ向くだけである。私が上に述べたように、三党合意ではこうであるが、かくかくしかじかの話し合いで、この部分の真意はこうであることを確認し、これを実行に移すことにした、とその経緯を国民が納得できるように説明すべきなのである。亀井氏の発言が現時点で独りよがりであることは、鳩山首相の次の発言でも明らかである。

鳩山首相「モラトリアムは3党合意ではない」

 鳩山首相は28日、記者団に対し、銀行からの借金の返済を猶予する措置(モラトリアム)について、「モラトリアムということまで(連立3党で)合意しているわけではない」と述べた。亀井金融相は、モラトリアムが3党の合意に含まれていると繰り返していたが、首相として慎重な検討を求めた形だ。

 鳩山首相は中小企業対策の必要性は認めつつも「しっかりとした議論をしていい答えを見いだす」と話すにとどめた。
(asahi.com 2009年9月29日1時1分)

中小企業を積極的に支援するのは大いに結構、しかし亀井大臣の突出ぶりは異常である。「政府与党首脳会議」なるものが政府側の意向で急遽設置されることになったそうであるが、亀井氏以上に強面する小沢氏に抑え役を期待してかなとついげすの勘ぐりが働いてしまった。鳩山首相の指導力をこのような場面においてこそまず期待したいものである。


徳岡孝夫著「完本 紳士と淑女 1980-2009」の後半が面白い

2009-09-28 11:38:43 | 読書

本屋で手に取ると私の好きなゴシップ集のようにも見えたので買ってしまった。巻末にこの本の成り立ちを次のように説明している。

「諸君!」一九八〇年(昭和55年)一月号から二〇〇九年(平成21年)六月号まで三十年にわたって掲載された「紳士と淑女」から選びました。

ついでに言うと、「諸君!」はこの六月号で休刊になり、毎月匿名で巻頭コラムを書き続けた著者はこの本で実名を明かしている。この雑誌は本屋で手にしたことぐらいはあると思うが、これらの文章には始めてお目にかかることになる。

さっそく人物月旦が数々出てくるが、どうもひねくったような文章が読みづらい。お初にお目にかかった著者の頭の回転に、私の頭がついていけないのである。どれぐらいの歳の人だろうと気になって著者紹介を見ると、1930年大阪府生まれ、とある。敗戦時は旧制中学校生であるから、私以上に屈折した心情の持ち主であっても不思議ではない。ということで我慢をしつつ読んでいるうちに、著者の独りよがり的なところが次第に影をひそめ、半分ぐらいのところから共感するところが増え始めた。思いつくままそのいくつかを引用させていただく。

 なるほど人命は尊い。生命の安全は守られなければならない。だが人間すべてが身の安全を第一に考えていたなら、この世の大切はことは何ひとつ成らないのである。いや、生命を捧げて、それが地上に何らかの大事を成しとげてくれるなら、誰でも死ぬ。もっと貴いのは、一命を捧げて、それが何の役に立つ保証もないのに、犬死に覚悟で死ぬことである。烈日の下、カンボジア・コンポントムの砂の上に乾いた血を残した中田厚仁の生涯は、われわれを長い沈黙へと誘う。(1993年6月号)

 いまから二十年後の米国民は、リチャード・ニクソンを「悪いことをして辞めた大統領」としてしか記憶していないだろう。逆に世界の人々は、彼を第二次大戦後最高の米大統領として評価しているはずである。ニクソンを追い落としたのはヒステリックな感情だが、広い視野に立てば彼の功績は誰も疑うことができない。(1994年7月号)

本当かなと思ったが、それに続く著者の説明で納得した。それを知りたい方はぜひこの本で。

「アルツハイマーが進行するにつれて家族は大きな負担を受ける。私はナンシーにこうした苦痛を与えることがないよう望んでおり、(死の)時が訪れたとき、あなた方の支援により彼女が信仰と勇気を持って対処できることを確信している。
 大統領としてあなた方に奉仕させてもらう栄誉を与えてくれたことに感謝する。神に召されるとき、米国への愛と将来の楽観を抱いて私はこの世を去るだろう。私は人生の終わりに向けた旅に出かける。
 この手紙をレーガンは口述もタイプもせず自筆で書いた。(1995年1月号)

感動を新にする一文である。

 妻瑤子との結婚に至った経緯を解説して、三島由紀夫は書いている。
「どこかに、『結婚適齢期で、文学なんかにはちっとも興味をもたず、家事が好きで、両親を大切に思ってくれる素直なやさしい女らしい人、ハイヒールをはいても僕より背が低く、僕の好みの丸顔でかわいらしいお嬢さん。僕の仕事に決して立ち入ることなしに、家庭をキチンとして、そのことで間接に僕を支えてくれる人』そんな女性はゐないものか。さういふお嬢さんを見つけようとするならば、見合いを経るよりほかにつながりやうがない。知り得べからざるお互ひを知り得る条件をもつものとして、僕は見合い結婚をすべきだと結論した」(「私の見合結婚」)(1995年10月号)

「文学」を「科学」に置き換えたら私の願望そのものであった。でも見合は必要なかった。

 インドで行われた国際児童図書評議会世界大会の基調講演。NHK教育テレビに流れた美智子皇后のお話には驚嘆した。(中略)
 なかでも弟橘媛の話が出てきたのには、びっくりした。(中略)
 何にびっくりしたかというと、この古歌に皇后のの覚悟を見たからである。彼女は夫に万一のことがあった場合、身を捧げる覚悟をなさっている。その心構えを、弟橘媛の歌に託して言われたのであろう。あの方は尋常の人ではない。(1999年1月号)

この著者、私と同じ感性を持っている。どのような古歌なのかはこの本でご覧あれ。

記者クラブのことにも触れている。

 新聞社、通信社はレッキとした私企業である。なのに各官庁、各自治体、国会、各裁判所、各警察のトップが執務する中枢フロアの一等地にクラブ室を持ち、大変な権力を握っている。
 いわゆる「新解釈」により、記者クラブは取材の拠点で、記者会見は記者クラブが主催するものと定義された。だが「官」「公」のビル内の特等席に大スペースを確保し、私物を置いてる記者もいるのに、彼らは家賃はおろか光熱費、電話代、女の子の給料などビタ一文払わない。
 税金の窃盗に等しい行為だが、それでも足りず、彼らはクラブ室に治外法権を要求する。(1999年11月号)

これはほぼ10年前の記事なので今やこのような「窃盗行為」はなくなったことだろうが、記者クラブの排他性は鳩山内閣の発足時からさっそく問題になっている。日経ビジネスの記事はこのように伝える。

 政権交代という積年の夢を果たし、官邸に「入城」し、首相として会見を行った鳩山代表は、会見場のエンジ色のカーテンを背に、こう第一声を発した。 (中略)

 国民の期待を背負った鳩山首相、民主党政権は今後、「脱官僚」を旗印に、霞が関にメスを入れ、大なたを振るう。

 しかし、早くもこの記念すべき就任会見自体が「官僚支配の象徴」であり、「公約違反だ」と指摘する声が上がっている。

 声の主は上杉隆氏。鳩山首相の弟、鳩山邦夫氏の公設秘書を務めた後、米紙「ニューヨーク・タイムズ」東京支局の記者となり、現在は「週刊文春」など雑誌メディアを中心に、フリージャーナリストとして筆を走らせる。

 首班指名が滞りなく終わり、閣僚の呼び込みが始まった頃、上杉氏は永田町でこう息巻いた。

 「鳩山代表、小沢一郎代表代行自ら、『民主党が政権を取ったら、会見はオープンにする』と、3度も約束した。にもかかわらず、最初の会見から果たされていない。事実上の公約を破り、国民の知る権利を侵害する行為で、極めて残念です」

皇太子、皇太子妃に関して。

 皇太子は、かなり言いにくいことを、珍しくハッキリ仰った。皇族にはないことである。「それまでの(雅子妃の)キャリアや人格を否定するような動きが、あったことも事実です」
 いずれ相応の覚悟あっていわれたのだろう。ただし、真実は語られなければならぬと信じるのは哲学者くらいのもので、この世のたいていの事柄は、言わずに済ます方がいい。それに気付くのは人間も中年になってから。敢えて発言されたのは、皇太子がまだその心意に達しておられないか、雅子妃の御容態が伝えられている以上に重いか、またはその双方なのだろう。(2004年8月号)

確かにほのめかしで終わったこのご発言は後味の悪いもので、私なんぞは将来の天皇としての資質を疑ったくらいである。「諸君!」にはそこまでは書けなかったのだろう。ついでに皇太子妃について。

 もう一つ。御成婚に至る経緯をよく知らずに言うが、皇太子に嫁ぐ決心をされたからには、男子を産むことが最優先の「重要な役目」だとご存じのはずである。むろん子は天恵の生命だから、励んで得られるものではない。

どのようなご決心をなさったのか、下々のものにはさっぱり分からない。

 チャールズ皇太子の二男で英国の王位継承権第三位のヘンリー王子(22歳)が、所属する陸軍部隊とともにイラク南部バスラに入る。もう入ったかもしれない。ダイアナ妃の忘れ形見である。
 イラクは、御存知のように無制限殺戮の戦場で、とくに自爆テロは始末におえない。そんなところへなぜ貴公子が行くのか?(中略)
 ヘンリー王子は英国王室の伝統を守って戦地に行く。英オックスフォード大学に学んだ日本の皇太子は何を守るか?雅子さまを守る。(2007年5月号)

いやはや。

 徴税吏は、その気になりさえすれば、日本の伝統芸能を滅ぼせる。怪力無双の関取をねじ伏せるのも朝めし前だろう。彼らは先に林家正蔵(44歳)を血祭りに上げ、続いて中村勘三郎(52歳)を上げた。ともに襲名に関わる不明朗な経理を衝いた。やられた側は人気商売だから、平つくばってお上に詫びた。「脱税」分の税金を、そそくさと納付した。
 しかし落語や歌舞伎は、近代税制よりはるか前から存在する日本の芸である、芸人にとって襲名は一世一代の決意であり、踏ん切りである。(中略)襲名を税制によって取り締まるのは、事後立法によって裁く暗黒裁判に等しい。(2007年7月号)

以前、朝青龍問題 日本相撲協会は『皇民化教育』を廃すべしで私は次のようなことを述べている。

大相撲が日本人力士だけでやっていけるのか。日本相撲協会が乾坤一擲の勝負にでる気構えがあるのなら、その再生の秘策を伝授するに私はやぶさかではない。

この秘策とは、土俵に飛び交うタニマチの大枚をすべて課税対象外とするという簡単なことなのである。それを相撲協会が国に掛けあえばよい。土俵に金が埋まっていることが知れ渡ると、それを目掛ける日本人力士が増えることだけは間違いなしである。

と言うように、この本は著者と話を交わしながら読み進めるところがなんともよい。おあとはこの本をご自分でお読みになるのがよろしいようで。


姿が見えない菅直人副総理・国家戦略大臣 姿を見せすぎ亀井静香金融・郵政担当大臣

2009-09-25 13:15:41 | 放言
鳩山内閣の各大臣は大童のようである。前原国土交通相は八ッ場ダムを視察に訪れたかと思うと、経営再建中の日本航空西松社長と会見、日航がまとめている再建計画が不十分だとして拒絶し、再建の政府案をまとめる意気込みである。福島瑞穂消費者・少子化担当相は消費者庁が入居しているビルの年間賃料8億円が高すぎるので移転するのかどうか今月中に決めるとのことであるが、一方、2009年度補正予算の見直しに関して、削減しない分野を先に決めることで自己主張を貫こうとしている。

それよりも強引なのが亀井静香金融・郵政担当大臣である。中小企業向け融資や住宅ローンを返済猶予(モラトリアム)する制度を法案化し、10月にも召集される臨時国会への提出を目指しているようであるが、毎日新聞は次のように問題点を指摘する。

 亀井担当相は、返済を3年程度猶予する制度の検討を表明している。会議後、「中小企業やサラリーマンが返済に困っている状況を政治が責任をもって解決していく」と、立法に意欲をみせた。連立3党は政策合意に「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」を盛り込んでいるが、返済猶予制度は対象外だ。平野博文官房長官は24日の会見で、「慎重に進めるべき問題で、与党3党で十分に調整して、対応を決めていくべきだ」とくぎを刺した。(中略)

 返済猶予制度は、日本では1923年の関東大震災で被災地に限定して被災企業の手形支払いを猶予したケースと、27年の金融恐慌で全国的に3週間行ったのが有名。戦後は、95年の阪神大震災など大規模災害時に、被災地企業の手形不渡りの猶予を特例として実施したことがある。
(毎日新聞 2009年9月25日 東京朝刊)

返済猶予制度が連立3党による政策合意の対象外というのが事実なら、これは明らかに亀井大臣の独走であろう。返済猶予制度が何らかの形で実行に移されたのは、1923年の関東大震災、27年の金融恐慌に95年の阪神大震災の時に限られており、われわれの目から見ても妥当に思える。しかし今の今がこのようは大変事に相当する事態なのだろうか。私にはそのようには思えないし、まして一大臣の思いつきで実施されることではなかろう。

民主主義を破壊しかねない民主党・社民党・国民新党ですでに述べたことであるが、民主党の308議席に対して3議席の国民新党の代表である亀井静香氏が閣僚であること自体、そしてその言動は民主主義に対する挑戦であると思っている。その亀井氏が3党合意として明記されていない返済猶予制度の導入をぶち上げるのは、早くも次の選挙を視野に入れての人気取りであるとしか私には思えない。

それにしても菅直人副総理・国家戦略大臣の姿が少しも見えてこない。「国家戦略局」は鳩山内閣の大きな目玉と言われているが、何をするところなのか、何をしようとしているのか、国民の目にはなかなか見えてこない。たとえば首相直属の国家戦略局が予算の大枠や重要施策を決定し、財務省は査定などの実務を担うなどと説明されたが、藤井財務相自身が 「予算の編成権はあくまで財務省にある。その大原則は何ら変わらない」と言っている始末である。亀井大臣の進める返済猶予制度は国家の重要施策ではないとでも言うのだろうか。そんなことはあるまい。「国家戦略局」が無言の行を貫いている間に、各大臣が無闇に張り切って思い思いの方向に走り出すようなことがあってはならない。とにかく今のままでは「国家戦略局」の影は薄すぎる。

各大臣に言いたい放題言わせて、これではどうにもならん、と思った大臣を早めにズバリと首切り。それを今「国家戦略局」が狙っているとしたらますます政治は面白くなるのだが、さて、どうなることだろう。



鳩山首相の英語に感心 そしてブログ英語版の珍品英語

2009-09-24 18:55:40 | 学問・教育・研究
鳩山首相が国連気候変動サミットで、90年比で25%の温室効果ガス削減を20年までに達成すると宣言したことが国際的に評価されているらしい。何事であれある目的に向けて世界を相手にイニシアチブをとることは日本の存在感を示すのに結構なことである。演説の模様が一部テレビで流れたが、鳩山首相の英語を耳にした途端、アメリカで暮らしたことのある人の英語だなと感じた。発音はネイティブとはいかなくても、相手にちゃんと通じることを自分でも心得てペーパーを読み上げている。気負いがなく自然体なのである。英語の通じる世界各国の首脳とも、公の交渉ごとならともかく、個人的に十分話し合える方だなと思った。信頼関係の構築に大きな武器となることだろう。

私も中学校から英語を習い始めたが、高校、大学を通じてただ学校英語を学ぶだけだった。高校ではクラスでほんの数人ぐらい今で言う塾のような所で受験英語を勉強していたが、私にはそんな経済的な余裕もなく、せいぜい進駐軍の設けたアメリカ文化センターに出かけて、ネイティブの英語を耳にするぐらいであった。そして英語で書かれた歴史とか科学の本を借りだしてはよく目を通していたので、英語そのものに対する抵抗はなかった。アメリカに留学することになっても英語の勉強をとくにすることはなかった。習うより慣れよ、を実践しようと思っていたからである。

アメリカに渡って間もない頃、タクシーに乗っていろいろと話しかける運転手に受け答えしていた。アメリカに来てどれぐらいになると聞くので、一ヶ月と答えると運転手がそれにしては英語がうまいと褒めてくれる。有難うと言って車を降りたが、よく考えると運転手は私がそれまではまったく知らない英語を一ヶ月でマスターしたものと誤解したのだと思い当たった。それまでに20年近くも英語を勉強していたと言えば、どんな言葉が返ってきたことだろう。しかしアメリカで生活したお陰で仕事の話はもちろん、文学、絵画、音楽、政治にグルメ、あれやこれや自分で不自由を感じない程度に誰とでも英語で話できるようになった。だから自分の受けた英語教育で十分だと思っている。要は相手の言うことを理解し、自分の思っていることを表現するだけのことなのである。

ひるがえって学校英語のことであるが、最近は小学校から習わせているのだろうか。語学習得は必要とあれば努力をすれば済むことだから、将来必要があるかどうかも分からない小学生に、一律に英語を教えることはまったく不要であると思っている。日本人としてもっと大切な教えることが山ほどあるはずである。技術の進歩は早いから、そのうちに日本語で話すると、思いのままの外国語に翻訳して喋ってくれる、もちろんその逆も、装置も出来てくることだろう。こういう状況下で外国語教育の進め方に抜本的な検討が加えられるべきであろう。

ところが最近こういうことがあった。私のブログの英語版(IEではよいがFirefoxでは正常に表示されない)が私の知らない間に出来ているのである。ある記事へのアクセスがこの英語サイトから集中したことからこの存在が分かった。しかしこの英語がなんとも読みづらい、と言うより、チンプンカンプン、さっぱり分からない。私はハンドル名でブログを公開しているのでよいが、もし実名で公開している人なら事情を知らない外国人に実人格を疑われかねないほどである。

こういう余興がある。婚礼の披露宴などで相棒に中国人のような服装をさせ、全く出鱈目の中国語をペラペラと喋らせる。それを私が中国からはるばるお祝いに駆けつけてくれたのでそれを通訳します、とことわりながら、花婿の旧悪?を自分勝手な言葉で暴露するのである。ブログの翻訳機はこの逆を行っているようなもので、実用にはほど遠い。外国語教育のあり方はまだまだ議論の対象になりそうである。


八ッ場(やんば)ダム 「アニメの殿堂」

2009-09-23 11:10:40 | 社会・政治
第三者的にみると、今の政治は確かに面白い。「八ッ場(やんば)ダム」や「アニメの殿堂」の帰趨がそうである。八ッ場ダム問題では読売新聞が次のように伝えている。

八ッ場中止方針堅持
地元要望に応えず  国交相回答住民の怒りに火

 「来るなら中止ありきでなく白紙で」――前原国土交通相が建設中止を表明した八ッ場ダム(長野原町)。前原国交相の視察を23日に控え、ダム建設推進を求める住民の思いは、またも届かなかった。

 長野原町などが19日に送った要請書に対し、前原国交相が21日に出した「コメント」と題する文書は、〈1〉建設中止の方針は変わらない〈2〉しかしながら、中止には地元や関係都県、利水者などとの合意形成が不可欠〈3〉じっくりと話し合う姿勢を堅持し、現在実施している生活再建事業は中断しない〈4〉理解を得るまでは、基本計画の廃止に関する法律上の手続きを始めない――の4項目からなる。
(2009年9月22日 読売新聞)

『〈1〉建設中止の方針は変わらない』の建設中止の対象はまだ始まっていない「ダム本体の着工」のことであろうか。というのも一方ではダム湖ををまたぐ高速道路とか、移転住民のための用地造成がすでに進んでいるからである。このように前原国交相のコメントの文言一つ一つについて、その内容を正確に掴む必要があるが、『〈1〉建設中止の方針は変わらない』は民主党のマニフェストを実行しますと大見得を切ったことでは格好がよいし、『〈4〉理解を得るまでは、基本計画の廃止に関する法律上の手続きを始めない』というのも民意尊重を宣言しているのだからこれもまた格好がよい。格好のよいもの同士、どのように折り合いをつけるのだろう。下手をすれば予算をストップさせて建設中止強硬断行と言うことにもなりかねない。〈4〉での前原国交相の采配のふるいように注目してみよう。

文部科学省ではさっそく川端達夫文部科学相と官僚との間のせめぎ合いが始まった。asahi.comはこう伝える。

 川端文科相と同省の副大臣、政務官の5人は同日、前政権のもとで今春成立した補正予算を見直すため、省内でヒアリングを実施。官僚側は同省関係の約1兆3千億円のうち、1761億円が削減可能との報告をまとめ、川端文科相らに示した。しかし、その中には、117億円の建設費がついたメディア芸術総合センターの中止は入っていなかった。

 これに対し、川端文科相は、ヒアリング終了後の記者会見で同センターについて「ハコモノを作るのはやめるのか」と見解をただされ、「はい」と明言。振興策を検討し直すよう指示したことを明らかにした。23日にもヒアリングを実施し、再度議論する考えだ。
(asahi.com 2009年9月23日3時2分)

官僚側が示した見直し額1761億円は、同省の補正予算総額の13%にしか過ぎず、このなかには民主党が「無駄遣いの象徴」と批判してきた国立メディア芸術総合センターの中止は入っていない。これで文部科学官僚の大臣への忠誠度は極めて低いことが明らかになったと言える。一方、川端文科相は40%を超える執行凍結額をまとめ上げてこそ省内、閣内における評価が確立すると言うものだ。どれだけ指導力を発揮するのか、これもまた展開が面白い。

敬老の日にIKEAに

2009-09-21 23:48:03 | Weblog
今日が敬老の日だそうである。成人の日もそうだが、日付が一定していなくて毎年変わる。敬老の日が9月第3月曜日、成人の日が1月第2月曜日といつからか決められたからである。それにくらべて元日(1月1日)、建国記念の日(2月11日)、春分の日(春分)、昭和の日(4月29日)、こどもの日(5月5日)、秋分の日(秋分)文化の日(11月3日)、勤労感謝の日(11月23日)などは名称は変わっても戦前からの祝祭日の日付は昔通りで変わっていない。それなりの謂われ、伝統のあるものはさすがに変えにくいのであろう。休むために作ったような祝日はなにも拘泥することもないので、便宜的な決めたかになったのだろうか。自治会から紅白のお饅頭を二箱も頂いたものだから、それと分かった次第である。ありがたや、ありがたや。ついでに、どうでもよいことであるが、私どもの結婚記念日は旧新嘗祭である。この読み方と日付を尋ねるとクイズになりそうである。

この5連休にIKEAポートアイランドでスウェーディッシュ・ウィークを開催をしているので、なにか面白いことでもあるかと思って出かけた。ところが、IKEAの駐車場に入る手前で右折待ちの車がかなり長い列を作っているので行列待ちかといやな予感がしたけれど、駐車場には素直に入れたのでやれやれ。でも3階の駐車場はほぼ満車で、何回かくるくる回ってようやく車を駐めることができた。

店内も人が多い。開店当時とは比べものにならないが、その7、8割の混みようには驚いた。これまでも週日には何回か来ているが実に閑散としていて、カフェテリアでもテーブルはお好みの所に座ることができる。それが今日は入り口で長蛇の列である。並ぶのを諦めた。買い物客はやはり圧倒的に若い人たちである。それぞれが大小さまざまなカートに商品を満載して、レジはフル回転しているにもかかわらず長い行列を作っている、そう言えば駐車場の車に他府県ナンバーがとても多い。長崎、佐賀、熊本からはじまり、広島、岡山、愛媛、高知、徳島。名古屋、京都、大阪などは珍しくない。明らかに1000円ドライブの効果が出ているようである。

結局のところ、このような様子を眺めただけで何も買わずに帰ってきた。レジの行列に並ぶ気がしなかったこともさることながら、せっかく遠くから買い物を楽しみに大勢の方が押し寄せているのに、地元のいつでも来られる人間が邪魔することもあるまい、と思ったからである。

政治が面白くなった そして最先端研究開発支援プログラムの2700億円は

2009-09-19 13:12:12 | Weblog

09年度補正予算の執行見直しがいよいよ動き出したが、その経緯を報じる朝日朝刊の見出しがなかなか面白い。大まかな見直し基準はトップダウンで決めるものの、数値目標はあえて設けない。となると各閣僚がどの程度の執行凍結額をもってくるかでその働きぶりや、官僚の忠誠度が試されることになる、と言うことらしい。国民の目にも分かりやすい。お手並み拝見と行こう。

最先端研究開発支援プログラムについても、次のような記事が四面に出ていた。


これでまず分かったことは、最先端研究開発支援プログラムの予算執行停止に権限を持つのが菅直人副総理であるということ、川端達夫文部科学相はその基金を使えるようになれば有難いと思う立場にあること、である。09年度補正予算はもともと景気刺激のために組まれたもの。最先端研究開発支援プログラムは景気刺激に即効のあるようなものではないし、その観点からは予算執行の優先順位は決して高くはない。この記事にある菅副総理の所見は妥当であると思う。

ここまで書いてきてGoogleニュースを見ると、早くも次のような記事が出ていた。

最先端研究費:2700億円の支給対象者再検討 副文科相

 2700億円の研究費を30人の研究者に配分する「最先端研究開発支援プログラム」について、鈴木寛・副文部科学相は19日未明の会見で、支給対象者の再検討も含め見直すことを明らかにした。

 このプログラムは09年度補正予算で計約4.3兆円を計上した46基金の一つ。総選挙後の9月に麻生政権が、ノーベル賞受賞者の田中耕一・島津製作所フェローや人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥・京都大教授などの支給対象者30人を公表した。岡田克也・民主党幹事長(当時)は「この時期に決まることに違和感を覚えないわけではない。凍結も当然ある」と話していた。

 鈴木副文科相は「2700億円という額以上に、支給対象者の選考プロセスに問題がある」と指摘。「麻生首相の『とにかく早くやれ』という指示で、十分議論のないまま、荒っぽい方法で選考された。30人という人数を含めて再検討したい」と話した。今後、川端達夫文科相、科学技術担当相を兼務する菅直人副総理・国家戦略担当相を中心に精査するという。【奥野敦史】
(毎日新聞 2009年9月19日 10時42分(最終更新 9月19日 11時30分))

やはり文部科学省もそれなりの権限があるのか、どうもこの辺りが分かりにくい。この記事の強調表示は私がしたが、いったいこの鈴木副文科相が何をしようとしているのか、これだけでは判断がつかない。当面求められているのは予算の執行か停止の決定であるから、『支給対象者の選考プロセスに問題がある』とは具体的に何を指すのか分からないが、要は即執行停止を示唆しているのであろうか。

その一方、『30人という人数を含めて再検討したい』とはどういうことなのか。これは予算執行を前提にしていると受け取られるので、即執行停止とは辻褄が合わない。さらに言えば、菅副総理、川端文部大臣の発言以上に鈴木副大臣が立ち入った取り沙汰しているのはどういうことだろう。官僚の口を封じた分、それぞれの政治家がおしゃべりを楽しむようになったのだろうか。2700億円は執行停止にはしないが、支給対象者の人数を含めて選考し直す、と副大臣が言いたいのであれば、それはお門違いというもの、口出ししすぎである。科学立国を目指しての戦略は、やはり識見の高い科学・技術者を含めて打ち立てるべきものであるからだ。




鳩山内閣の始動にあれこれ

2009-09-18 18:34:02 | 社会・政治
鳩山内閣が船出した。堰を切ったように各大臣からいろいろな施策が打ち出される。マニフェストの実施に向けて、ということなのだろう。高揚が伝わってくる。今日の朝日朝刊第一面に『ダム 全国143事業見直し』と前原誠司国交相の施策が報じられていた。八ツ場ダム(群馬県)と川辺川ダム(熊本県)の建設中止もすでに明言されている。大変動の始まりである。私はこれらのダム建設にまつわる事情は何一つとして知らないので、建設中止のぜひに口を挟むことはないが、多くの住民を巻き込み、すでに何千億円かの巨費を注ぎ込んだ事業を中止して、その補償にまた巨額の税金を充てることには釈然としない思いが残る。ムダな公共事業との指摘もあるそうだが、すでに進行中の大規模事業の中止にあたって、生じてくる数々の問題処理をどのようにするのか、その手本となることは間違いないので成り行きを見守っていきたい。

第二面には仙谷由人行政刷新担当相の話が載っていた。

 行政の無駄と不正を暴く行政刷新会議をリードする仙谷由人行政刷新担当相は、職員にこう訓示した。
 「霞が関の皆さんが無能だとか腐っているとか思ったことは一度もない。『日本の霞が関、ここにあり』という誇りを持って仕事をしていただくための環境整備をしなければならない」
 仙谷氏は夕方の会見でも、「私たちがめさず政治は官僚たたきの政治ではない」と言いきった。

この当たり前のことをさらっと言いのける仙谷氏には、期待が持てそうである。

伝えられる赤松広隆農林水産相と井出道雄事務次官のやりとりも面白かった。

民主批判から一転、農水次官「献身的に大臣支えたい」

 赤松広隆農林水産相は17日、民主党の農業政策を批判した井出道雄事務次官の釈明を受け入れ、辞任を求める考えはないことを明らかにした。井出氏は「献身的に徹底的に新大臣を支えたい」と伝えたという。

 赤松氏は石破茂前大臣との引き継ぎを終えた後、幹部との顔合わせを保留。「けじめをつけずに、はい、あなたが次官ですかとはいかない。けじめがつかないのであれば、お辞め頂くことになるかも知れない」と井出氏に謝罪を求めた。井出氏は「時の政権を支えることに理解を頂きたい」と弁明し、赤松氏は「官僚としての誇りをもって責任を果たすなら、過去は過去とする」と応じたという。

 井出氏は6月18日の記者会見で、民主党が目玉政策に掲げる戸別所得補償をめぐって「コメ以外まで対象を広げるのは現実的ではない」などと指摘。民主党の鳩山代表は「英国ならクビだ」と激しく反発した。
(asahi.com 2009年9月18日3時16分)

農林水産省と言えば自民党内閣時代には大臣の首が次から次へとすげ替えられ、われわれ国民も唖然とした曰く付きの役所である。事務次官以下の職員の誰一人でも大臣に敬意を払っただろうか。事務次官の政治的発言が飛び出すのも、政治家があまりにも不甲斐なかったからで、責任は100%政治家にある。次官発言に目くじらを立てるまでもないと思うが、赤松大臣がそれなりに筋を通したところはなかなかよい。赤松氏と言えば日本社会党時代の若き書記長というイメージしかなかったので、もう過去の人かと思っていたが、まずは存在感を示した。二世議員なのが気に入らないが注目してみたい。

ついでに、民主党も事務次官に批判されるようなミミッチイ農業政策なんてほうり捨てて、100%食糧自給を目指す農業振興策を打ち出すべきである。若い人たちが老人介護か、農業生産かと選ぶ道に迷ったときに、農業の方にに向けさせる魅力的な施策が欲しいものである。若者が農業生産から逃げ出し、老人介護に走るような国に未来はない。

そう言えばこれはテレビニュースで見たのであるが、環境省で小沢鋭仁大臣と職員との対面式?の挨拶で、大臣が「私は鳩山首相と一番近い」なんて言うかと思ったら、事務次官が「なんとかなんとかで(大臣を?)お慕い申しております」なんてことを言っていた。ぞーっ。事務次官が男芸者にもなれるとは知らなかった。

16日に私の以前の記事参議院外交防衛委員会委員長の問題にならなかった問題発言へのアクセスが急増していた。どのような経路でアクセスしていただいたのか分からないが、自分が書いたこの記事をあらためて読んで驚いた。まったく未知の人と思っていた北沢俊美防衛大臣のことを書いているのである。すっかり忘れていた。当時、北沢氏は参院外交防衛委員長で、田母神俊雄・前航空幕僚長の参考人質疑の際の委員長発言に引っかかった私がイチャモンをつけているのである。「昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われ、また、国家が存亡の淵に立たされた」と知ったかぶり発言をされた北沢氏が、防衛大臣としてどのように文民統制の範を垂れるのか、国民の目の行き届く舞台で演じていただきたいものである。

鈴木宗男氏が外務委員長、田中真紀子氏が文部科学委員長、辻元清美氏が国土省副大臣とか。過去の亡霊が甦ったなどと揶揄されないよう、職務に精励されんことを。