日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

原子力発電所「Yankee Rowe」の静かな終焉とくらべて

2011-03-30 14:12:03 | 海外旅行・海外生活
1971年、米国ニューヨーク州の州都Albanyに仕事の関係で一夏滞在した。イエール大学に留学してから5年ぶりのニュー・イングランドである。単身の身軽さをこれ幸いと、週末になると一泊しながらよくドライブに出かけた。お気に入りのルートの一つがMohawk Trailと名付けられた2号線であった。Albanyから東行してマサチューセッツ州に入ると落ち着いた大学町でもあるWilliamstownが出迎えてくれるが、ここを起点としてやがてDeerfield Riverとつかず離れずの2号線をおよそ100キロほど走るとGreenfieldに着く。これがMohawk Trailであるが、Greenfieldの手前で道を少し南に逸れるとShelburne Fallsという小さな町があって、Deerfield Riverに架かっている「Bridge of Flowers」が名所になっている。


この橋のたもとに土産物店というか雑貨屋をかねたギャラリーがあって、中に入ると一見油絵のように見える人物画が目についた。よく見ると普通の紙に画かれているようである。店番の女主人に尋ねるとその絵は彼女が独特の「ろう画法」で画いたものだという。面白いので一枚買い求めたところ、台紙の裏に次のような説明書が貼り付けられていた。


1980年代の中頃このギャラリーを訪れたときは女主人の姿はなく、店番の男性に尋ねたらそれは母で何年か前に亡くなったとのことであった。「Bridge of Flowers」を最後に訪れたのは2000年9月で、その時は店が影も形も無くなっており、30年の変遷を思い知らされた。

つい昔話に身を入れてしまったが、これからが本題である。このMohawk Trailのほぼ中頃からZoar Rdに入り北上したところにRoweという町がある。Google EarthでRowe,Massachusetts,United Stateと検索すると連れて行ってくれる。ここが通称「Yankee Rowe」で知られた米国では3番目、ニューイングランドでは最初の商業発電のための原子力発電所が建設されたところなのである。1958年に建設を始めて1960年に完成し、1961年に運転を開始した。こんなところに原子力発電所があるなんてもっけの幸いとばかり、この時、「Yankee Rowe」の見学に出かけたのである。山中のそして湖の畔に作られた未来都市のような建造物に、これが原子力発電所かと感動した覚えがある。放射能が洩れてくるとかいうような恐れは何一つ感じることなく、見学者コースをたどった。

「Yankee Rowe」は本来6年間稼働の予定であったが、185MWのこの小型の原子炉は結局30年以上にわたって運転を続け、経済的な理由から1992年に運転を永久に停止することになった。1993年に発電所の解体が始まり、14年かかって2007年にその作業が終了した。その作業の様子は「Yankee Rowe」に簡潔にまとめられている。使用済み核燃料を保存・運搬用のキャニスターに収め、さらにそれを格納する大がかりな「使用済み核燃料保存設備」が新に建造されたものの、それ以外の一切の施設がすべて撤去されて建設用地が元の状態に戻された様子を写真で写真で知ることが出来る。これでかっては1600エーカーあった敷地が「使用済み核燃料保存設備」に必要な2エーカーだけになってしまった。撤去に要した費用は6億800万ドル。しかしそれで終わりではなく「使用済み核燃料保存設備」の維持に毎年800万ドルかかっているとのことである。

福島第一原発の原子炉も操業30年でお役目を終えて静かな終焉を迎える道もあったのでは無かろうか。そう思うと今回の悲運が痛ましい。




東京電力の「ヒューマン・エラー」を外から眺めると

2011-03-29 14:49:14 | Weblog
蓋を開ければ東電の「測定ミス」で終わった「放射能1千万倍」騒ぎであったが、一つポジティブな面を指摘すると、今や日常業務となっているはずの放射能の測定と計算にいとも容易に「ヒューマン・エラー」が入り込むという現実を、全世界、とくに日本国民に広く知らしめたことである。

2号機 高濃度の放射性物質としてNHKニュースは当初次のように報じた。

福島第一原発では24日、3号機のタービンがある建物の地下で作業員3人が被ばくし、現場の水から運転中の原子炉の中の水と比べ、およそ1万倍の濃度の放射性物質が検出されました。その後、1号機の水たまりからもほぼ同じ濃度の放射性物質が見つかっています。このため、東京電力は、震災の発生当時、同じく運転中だった2号機の建物に出来た水たまりも調査したところ、1cc当たり29億ベクレルと、1号機、3号機のおよそ1000倍、運転中の原子炉の水のおよそ1000万倍という高い濃度の放射性物質が検出されたということです。この中には1cc当たりの濃度で、いずれも放射性の▽ヨウ素134が29億ベクレル、▽ヨウ素131が1300万ベクレル、▽セシウム134とセシウム137共に230万ベクレルなど、原子炉内で核分裂した際に発生する放射性物質が含まれていました。
(3月27日 12時11分)

ふつうの常識があればこの強調部分でこれまで報じられたことの無かった(と私は思うが)ヨウ素134が急に出てきたことにまず不審を抱くのでは無かろうか。さらに(たまり水)1cc当たり29億ベクレルという放射能すべてがそのヨウ素134に由来するようなものだから、特徴がはっきりしている。まずはヨウ素134の半減期を調べてみなくてはと思ったものの、いずれは追加発表で様子が分かるだろうとそれを待つ姿勢になった。後出しじゃんけんじゃないが私は最初から疑っていたのである。

同日遅くに東電から訂正発表があったが、この言い訳がよかった。

 東電の広報担当者は、「測定結果が不確実な可能性があっても、公表しなければ、後から『隠していた』と批判を浴びる」と悩む。経済産業省原子力安全・保安院も、同じ理由で公表を優先したとしている。
(asahi.com 2011年3月27日22時14分)

まあその通りであろうが、発表に至る過程で「なぜ急にヨウ素134が出てきたんや」と誰一人疑問を持たなかったのだろうか。今やそんなことはどうでもよい。東電のお粗末な台所事情がまたもや浮かび上がったこと、いとも容易に「ヒューマン・エラー」が起きることを国民にさらけ出したのがよかった。万全なんてありえないことが常識にならないといけない。米国人も東電発表は眉につばをつけて受け取るようで、The New York Timesは福島第一原発敷地内で行った土壌の調査でプルトニウムが検出されたことについて、次のように報じている。ここでも「測定ミス」が指摘されているのである。

All the reported readings are within the safe range of plutonium levels in sediment and soil given by the United States Agency for Toxic Substances and Disease Registry. But Tokyo Electric said the highest reading was more than three times the level found in Japan compared with the average over the last 20 years. American nuclear experts expressed confusion on Monday about the company’s latest report that one form of plutonium was found at elevated levels at the Fukushima plant while other forms were not, and suggested it could be a measurement error.
(March 28, 2011)

まるで大人が子どもを諭しているようである。われわれは何も手を出すことが出来ないのだから、発表数値そのものに振り回されて一喜一憂することなく、福島第一原発事故が世界にまき散らす放射性物質の量が、せめてチェルノブイリ原発事故の規模を上回ることにならないようひたすら念じようではないか。

追加(29日 18:10)

東京電力が平成22年11月19日付けで「原子力発電所の安全と品質確保のためのヒューマンエラー防止に向けて」というPDF文書を公開している。福島第一所長は社員に対して『現場は「怖い」、「何が起こるか分からないところ」、「危険なところ」という認識の再徹底』などときわめて的確な指示を与えているし、また福島第二所長も『初めてや久しぶりの仕事、また慣れない仕事については、正しいとおもっていても間違っていることは多い。「どこのグループにおいてもヒューマンエラーは起こるものだ」と思い、・・・』と指示を与えている。

このこと自体はよいのであるが、昨年の暮れにこのような文書を出したということは、よほど作業員の能力の低下が問題になっていたからであろうか。

福島原発事故 やっぱり圧力容器の下の方に穴が開いている

2011-03-28 20:33:04 | Weblog
原発事故発生の翌12日、原子力安全・保安院が記者会見で行った状況説明が私にはさっぱり飲み込めない。まずは事故が一体どのような段階にあってどのような手段を取っているのか、具体的な説明が欲しいと思った。そこで私は「原子力発電所の原子炉が、原子爆弾のように爆発を起こすということはありえない」 しかし・・・で述べたように、R.T.ゲイル・T.ハウザー著、吉本晋一訳「チェルノブイリ―アメリカ人医師の体験―」(岩波新書)からメルトダウンにいたる経過の部分を引用し、とくに次の部分を強調した。ここに再掲する。

 一般に、原子炉の炉心は水漬けになっている。しかし、新たな冷却水の供給が途絶えると、圧力容器にすでに入っている水は加熱し、沸騰し、蒸発してしまう。この現象が起きると、原子炉内の温度が上昇を初め、粒状の燃料を収容している燃料棒の被覆菅が溶融する。やがて、ウラン燃料も溶融を始め、炉心を溶融した放射性金属の塊に変えてしまう。 そうした経過をたどったあと、最終的には炉心は圧力容器の底部に「たまり」となって崩れ落ちる。やがて温度は華氏5000度(摂氏2760度)にも達し、炉心は容器を突き抜け、原子炉を封じ込めている外部構造物の底部へと溶融してゆく。これら構造物は放射能の漏洩と爆発に耐えられるように設計されているが、メルトダウンに対しては抗する手段は与えられていない。

そして翌13日の福島原発の「電源」と「水」への対応が超スローモーなのは何故なのかでは次のように述べて容器かパイプ類にヒビがはいった可能性を指摘した。

東京電力福島第一原発1号機の炉心は、水位低下が止まらずとのことであるが、炉心の水位低下が燃料棒を水面から露出させることになり、これが危険だから水を供給して水面を上昇させようとしているはずなのに、なぜ水位低下がとまらないのかが分からない。地震で容器かパイプ類にヒビがはいり、そこから漏れ出したのだろうか。私が取材者ならそれを問いただすだろうにと思った。

この日より15日目になる今日(28日)のasahi.comの記事(抜粋)である。

東電、核燃料の圧力容器損傷に言及「健全性は維持」

 しかし1~3号機いずれでも、圧力容器の水位計の数値は思うように上がっていない。東電は28日未明の会見で、注水しても圧力容器が満杯にならない原因を、「(圧力容器の)下の方に穴が開いているイメージだ」と認めた。穴が開いた理由は「わからない」という。

 圧力容器は燃料ペレット、燃料被覆管、格納容器、原子炉建屋と合わせた5重の放射能閉じ込め機能の中で、最も重要な位置づけだ。福島第一原発の圧力容器は厚さ16センチの鋼鉄でできており、底部には、計測装置などを外部から差し込む貫通部などがある。その周辺から漏れている可能性が考えられる。

 東電は、水面から露出した核燃料が過熱して損傷した可能性を認めている。専門家によると、核燃料を束ねた燃料棒が損傷して崩れ、圧力容器下部に落下してかたまりになると、表面積が小さくなって効率よく水で冷やせなくなる。極めて高温になった燃料が圧力容器の壁を溶かして穴を開けた可能性もある。
(2011年3月28日15時0分)

素人が一般常識で予測した「容器破損」の可能性に東電がいつ気づいたのかは分からないが、今頃になってその事実を発表するこの超スローモー振りはやはりただ事ではない。危機管理の鉄則はその状況下で最悪の事態を想定し対策を講じるべきではないのか。それが出来ていなかったからこそ今に至るまでに圧力容器内の燃料棒に由来する放射性物質が大量に外部に漏出し、先ほどの午後6時前のニュースで《福島第一原発2号機タービン建屋の外にある地下溝に水がたまり、表面から毎時1千ミリシーベルト以上の放射線を計測》と報じられるまでになってしまった。

私が福島第一原発に即刻米軍専門部隊の投入を!と声を上げてもう10日になるが今からでも遅くない、一刻も早く米軍投入に踏ん切るべきであろう。米軍も怖じ気付く事態になっていないことを祈るのみである。

原子炉を作った人と動かす人

2011-03-27 20:03:53 | Weblog
以前に東京電力をあまりにも知らなさすぎた 関西電力は?なんて記事を書いた。ところがこの記事を読み返しているうちに、私は東京電力の実像をまだ理解出来ていないことに気がついた。それは私が次のように書いていることからも分かる。

東京電力にはすべてを知る生え抜き、たたき上げの技術者集団があって、その束ね役のトップ技術者が原発を動かす要の位置にいるのだろう、と私は勝手に想像していた。それがたとえば福島原発ならその所長であろうし、また本社では技術担当重役であろうと。原発とともに育った経験豊かな技術者が緊急時に指揮を掌握してこそ始めて迅速な対応が可能になる。だからこそ日ごろからその態勢で非常事態の訓練をしていたのであろうと思っていた。ところがいろいろと洩れ伝わる情報では東京電力のトップに技術系が不在とか。それに現場で実際に作業しているのはメーカーである東芝とか日立の技術者であるとか。では束ねているのは誰なのだろうか。

この強調部分であるが、まさに私は実像とは異なることを勝手に想像していたようなのである。では何が実像なのかであるが、その前にそもそも東京電力は何をする会社かを明らかにしないといけない。それは簡単、東京電力は電気をつくって顧客に販売する会社なのである。そう考えると私の頭も少々整理されてくる。

話が変わるが、現役時代に私が最もお世話になった測定装置といえば、化学物質に特有に吸光スペクトルを記録するいろんな種類の分光装置であった。その一つがCary 14 UV/Vis/NIR Spectrophotometerで米国からの輸入品であった。最初にお目にかかったのは創設時の阪大蛋白研にある佐藤了先生の研究室で、測定試料を持っては当時中之島にあった阪大理学部から蛋白研まで日参したものである。その後私たちの研究室でもCary 15型分光器を購入することになり、摂氏20度に保った恒温恒湿の測定室におさまり、私がそのお守り役を買って出た。日常のメンテナンスなどはなんとかこなせたが、手に負えないトラブルは巡回してくるメーカーの技術者に頼らざるを得なかった。その技術者の仕事ぶりの凄いこと、いったん仕事を始めたら食事も摂らずに一心不乱に装置に取り組む。日本人を遙かに上回る勤勉さに度肝を抜かれた覚えがある。私も四六時中付き合って習得するものを逃さないように心がけたが、へとへとになってしまった。出張修理費がかなり高額だったと思うが、十分それに値する仕事ぶりでトラブルは見事に解決された。

なぜこのような話を持ち出したかというと、東京電力にとって原子炉や発電機はメーカーの製品で、私にとっての分光器のようなものではないのか、と思い始めたからである。単純ではあるがこのように類推すると、東京電力は原子炉や発電機を買ってそれを動かすだけが仕事という考えが成り立つ。原子炉に発電機、さらには発電設備すべてが東京電力にすればメーカーからの購入品である。正常に動くのが当たり前で、なにかトラブルが起きるとそれを修理出来るのもメーカーである。

ではこの原子炉の性能・仕様について、主導権を握るのは作る側か使う側の何れなのだろう。使う側としては出力がこれくらいで、この程度の地震には耐えるようにとしか言いようがないのではなかろうか。それとも東京電力側に性能・仕様について、メーカー側とも対等に渡り合って一緒に設計から出来る専門家・技術者集団が存在するのだろうか。私はそういう状況を想像したが、実際は注文はつけながらも、メーカーの売り込むものを買うだけになっていたのでは、と思うようになった。それは最近のThe New York Timesが、ロシアの国営原子力会社Rostomがチェルノブイリを経験したからこそ作ることの出来る安全な原子力発電所を謳い文句に、中国、印度をはじめ発展途上国にセールス攻勢をかけていると報じていたからである。そのRostomは福島原発事故の発生後、原子力協力協定を結んでいる米国と共同で地震の衝撃に対する原子炉の強度テストを数ヶ月中に終了することをはやばやと発表している。主導権を握っているのはあくまでもメーカーである。だから原子炉にトラブルが発生したときは製造責任のあるメーカーが対応するの当然で、福島原発事故現場でメーカーである東芝の技術者達が作業しているのであろう。

では原発の操業に関して東京電力の担う責任は何かと言えば、管理責任であろう。しかしその管理責任がどこまで及ぶかが問題である。火事が起これば消防署に急報はするだろう。では今回のように放射能洩れが発生すればどうするのだろう。元来なら放射能対策を施した消防隊に通報すればそれでよいのだろうか。この辺りになると次第に分かりにくくなる。私は福島原発に放射能防御の作業車両がなかったのかなんて、東京電力を決めつけるような言い方をしたが、東京電力側にしてみるとメーカーが地震にも耐えられると言ったから買ったまでで、地震で原発が壊れたら修理するのはメーカーの仕事、という認識だったのだろうか。そう言えば3月26日付けのThe New York Timesに次のような記事(抜粋)があった。

Nuclear Rules in Japan Relied on Old Science
By NORIMITSU ONISHI and JAMES GLANZ

After an advisory group issued nonbinding recommendations in 2002, Tokyo Electric Power Company, the plant owner and Japan’s biggest utility, raised its maximum projected tsunami at Fukushima Daiichi to between 17.7 and 18.7 feet ― considerably higher than the 13-foot-high bluff. Yet the company appeared to respond only by raising the level of an electric pump near the coast by 8 inches, presumably to protect it from high water, regulators said.

“We can only work on precedent, and there was no precedent,” said Tsuneo Futami, a former Tokyo Electric nuclear engineer who was the director of Fukushima Daiichi in the late 1990s. “When I headed the plant, the thought of a tsunami never crossed my mind.”

私には信じがたい話であるが、海に面した福島第一原発の所長ですらこの程度の認識だったのである。しかし考えてみれば津波も地震と同じく、一原発所長が考えていたからとてどうなることではない。それ以前の問題であろう。そうなると福島第一原発を作ることを決めた時点での話に遡ることになる。かれこれ半世紀前のことになるから、今とは事情が大きく異なるかも知れないが、東京電力が福島に原発を作りたいと思っても原子力が絡むだけに必ずや政府の認可が必要であっただろう。それ以上に地元の協力無くして実現は不可能であっただろう。その折衝過程で当然地震、津波に対する備えが問題になったことだろう。そうすると地震学者、津波学者がどこかで顔を出したことであろう。どのような意見でそれがどのように生かされたのだろう。(すでに行われているのかも知れないが)ぜひ検証が必要である。いずれにせよこの時点で、究極的な責任が政府、経産省にあるような気がし始めた。もしかして東京電力は「哀れな」存在で、そもそもが「スケープゴート」的存在だったのかも知れない。


福島原発事故 実情を知れば知るほど気が重い

2011-03-26 21:36:21 | Weblog
福島第一原発3号機のタービン建屋内で被曝した作業員3人は早ければ週明けにも退院の予定とのことなので、まずは大事に至らなくてよかったと思う。しかし伝わってくる作業現場の状況があまりにもちゃらんぽらんで言う言葉を失った思いである。たとえば今日の朝日朝刊からの引用である。

人手不足 放射線管理甘く 警報後も作業継続

「東電の原発では以前から安全管理がずさんだった」。東電の作業実態に詳しい原子力技術者はこう明かす。
 この技術者は、「かなり前の話」とことわりつつ、「下請け企業の作業員は放射線計のアラームが鳴っても止め、そのまま作業を続けることはこれまでにもよくあった」と指摘した。「下請けにはノルマがあり、時間通りに終えないと、契約額の減額などのペナルティが科せられることなどが背景にある」という。

おそらくそうなのであろう。切ない、としか言いようがない。

 一方、復旧作業に従事する作業員と連絡を取り合っている元東電社員の証言は、さらに深刻な事態をうかがわせる。「放射線の安全管理はひどいとしか言いようがない状態のようだ」

これも真実なのだろう。今、起こっていることを見れば納得出来る。さらには

 東京電力福島第一原子力発電所3号機のタービン建屋内で起きた作業員3人の被曝(ひばく)事故をめぐり、東電側が1号機の同建屋でも同様の放射線量を6日前に把握しながら、注意喚起していなかったことが判明。東電側は26日、後手にまわった対応への釈明に追われた。専門家らは、ずさんな安全管理を批判している。
(asahi.com 2011年3月26日17時0分)

3号機タービン建屋内に深さ15センチほどの水たまりが出来ていて、その水にはコバルト60やヨウ素131のほか、セシウム137が含まれており、1立方センチメートルあたり390万ベクレルの放射能量が検出された。それと同じ程度の放射能量を1号機タービン建屋内ですでに6日前に把握していたのに、その情報が3号機側に伝わっていなかったと言うのである。信じられな~い、である。この390万ベクレルとは、昨日述べたように私の体内に入った5400万ベクレルの十分の一に迫ろうとしている。さらに追い打ちをかけたのが次のデータである。

東日本大震災:福島第1原発事故 海水から1250倍ヨウ素 タービン建屋から漏出か

 経済産業省原子力安全・保安院は26日、東京電力福島第1原発の放水口から南へ330メートル離れた場所で25日午前8時半に採取した海水から、放射性物質のヨウ素131が法律で定められている値の1250・8倍の放射能濃度で検出されたと発表した。東電は「放射性物質を含んだ水が海水に漏れ出している可能性が高い。(1~3号機のタービン建屋地下で見つかった)水たまりから出ている可能性も否定できない」とし、海水の調査を1日1回から2回に増やす。
(毎日新聞 2011年3月26日 東京夕刊)

放水口から300メートル離れた場所の値である。では、放水口では?もうこれは燃料プールにある使用済み燃料ではなくて、明らかに原子炉圧力容器内の燃料棒が破損して放射性物質が外部に漏出したからであろう。さらには少なくとも1号機、2号機、3号機の原子炉建屋には放射線濃度が高くて作業員が入ることができないとのことである。したがってどのように「燃料棒の冷却」を行うことになるのかその手だてが見えてこない。

1979年3月に発生した米国スリーマイル島原発第二原子炉の原発事故も、冷却水の供給が止まり、冷却水が沸騰し始めて炉心上部が部分的に露出し、原子炉のウラン燃料棒が過熱により膨張して破裂した。その結果放射性物質のあるものは原子炉圧力容器内に排出され、放射能で汚染された大量の水が貯水タンクの収容されている別の建物にポンプで送られていったが、水そのものが外部には洩れなかった。そして給水回復措置がとられて事故は終息した。これにくらべると、福島第一原発では放射能に汚染された水がすでに外部にかなり大量に流れ出しており、また「燃料棒の冷却」が制御下に置かれてはいないので、過熱で燃料棒が破裂する危険性がいぜんとして続いている。いや、その一部はすでに破壊されているのかも知れない。福島第一原発事故が放出された放射能の推定量によって、国際評価尺度では米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回るレベル6相当とされたことが素直に理解出来そうである。それほど大きな事故も元を正せば初動の遅れが原因で、その規模がますます広がりつつある。それなのに、われわれに出来ることがただ眺めるだけとは。世界にまき散らす放射性物質の量が、チェルノブイリ原発事故の規模を上回ることにならないことを祈るしか仕方が無い。



私がヨウ素131の「内部被曝者」だった話

2011-03-25 14:07:09 | 昔話
誤解を生まないように最初にお断りしておくが、これは私は40年ほど前にバセドー病に罹り、放射線性ヨウ素内用療法(アイソトープ療法)を受けたときの話なのである。

その頃はいろんな体調不良に悩まされていた。一番困ったのは研究室で試験管に液体試料をピペットで入れようとすると手がブルブル震えて、ピペットの先端が試験管の口になかなか入らないことであった。また声が出なくなって、研究室仲間とは力を振るってかすれ声を出し、なんとか用を足した。しかし市中に出て店などで店員に一生懸命話しかけようとすると、時には変な目つき・態度が戻ってくることがあった。明らかに差別的な扱いを受けていたのである。風呂でも浴槽に入るのが一苦労であった。足が自分の意思で思うように上がらない。両手で足を持ち上げなんとか浴槽内に入れる始末だった。そうこうしているうちにある朝目が覚めたところ、身体が縛られたように身動きが一切出来なくなった。仕方なく大学は休み半日ほどそのまま堪え忍んでいるとようやく縛りが解けてきた。数日経つとまた繰り返すものだから、ついに妻が嫌がる私を近くの総合病院まで引き連れていった。甲状腺が肥大しているとのことで、甲状腺疾患の専門病院である隈病院を紹介され、そこでバセドー病と診断されて治療を受けることになったのである。

バセドー病とは一口に言うと肥大した甲状腺から過剰に分泌された甲状腺のホルモンの引き起こす疾病である。肥大した甲状腺が声帯を圧迫するものだから私の場合は声が出にくくなり、また細胞内へのカリウム・イオンの取り込みが亢進するものだから低カリウム性周期性四肢麻痺が現れたのである。したがって治療は血液中の甲状腺ホルモン濃度を下げればよいので、甲状腺ホルモンの産生を抑える薬剤を服用したり、また甲状腺組織そのものを放射線で破壊して甲状腺を縮小させ、ホルモン産生を抑えればよいのである。後者が放射性ヨウ素131を用いたアイソトープ療法なのである。私の場合はまず抗甲状腺剤を毎日服用して経過を観察の上、さらにアイソトープ療法を受けたのである。といっても放射性ヨウ素131のカプセルを飲むだけの実に簡単なものであった。

その数日後、ふと思い立って隣の研究室に出かけた。アイソトープを使った実験をしているのでガイガー-ミュラー・カウンターが備えられていたからである。試しに頸部に当てて貰ったところバリバリバリと実に凄まじい音が出た。たしかメーターが振り切れたのではないかと思う。念のために身体全体を探ってみたが、放射能はものの見事に頸部に局在していた。私は放射線怪人の呼び名を欲しいままにしたが、一面では放射線を浴び続けたキュリー夫人を思っていささか昂揚した気分を味わっていたようである。とにかく私の専門分野の「Biochemical and Biophysical Treatments」を受けているなんて、嬉しそうに吹聴していたのだから。

今から考えると気になることがあった。カプセルを服用後も私はどこかに隔離されることもなく、自由に歩き回り人とも普通に接した。その頃研究室で放射性物質を扱う場合はそれなりに厳しい取り扱い規定があって、仲間内ではだから米国に負けてしまうなんて話が流れていたくらいである。米国の研究室では放射性物質を含んだ溶液を間違って実験台上にこぼしてしまっても、ティッシュペーパーでサッと拭いてゴミ箱にポイッと捨てたらそれで終わりだから、と言う類の話である。今の様子が気になったので隈病院のホームページを見ると、次の説明のようにそれなりの対策が採られているので納得した。

●バセドウ病の放射線性ヨード内用療法(アイソトープ療法)

バセドウ病の治療には、抗甲状腺剤を内服する内科的療法、手術する外科的療法、そして放射性ヨードを内服するアイソトープ療法の3つがあります。日本では放射線という言葉のせいかアイソトープ療法をためらう方が多いのが現状ですが、欧米ではバセドウ病の治療にアイソトープ療法が最も多く選ばれています。アイソトープ療法はとても安全でよい療法です。
1回内服するだけで甲状腺は少しずつ小さくなり、6か月後には約50%の方でおくすりの内服が不要になります。残りの半数の方は甲状腺機能低下症になりますが、甲状腺ホルモン剤を内服すれば生活に支障はありません。手術などに比べ身体的な負担が軽く、再発が少ないのが特徴です。甲状腺に取り込まれた放射性ヨードはどんどん減っていき体外に排出されます。主に外来で治療ができ、投与量が大量になる場合のみアイソトープ療法専用病室へ数日間入院が必要になります

ところで私はいったいどれぐらいの放射性ヨウ素131を投与されたのだろう。「Harrison’s Principles of Internal Medicine」で調べてみると次のようなことが分かった。

 The usual therapeutic use of 131I [approximately 5.9 MBq(160 uCi)per gram of estimated gland weight] leads to a high frequency of hypothyroidism. (中略) Others have administered smaller doses [approximately 3.0 MBq/g (80 uCi/g)].

私の場合は全体の経過からして少ない方の線量だったとする。甲状腺の重さを肥大を考慮して18 gだとすると総放射能量は3.0 x 18=54.0 (MBq)、すなわち54,000,000 ベクレルである。23日に東京都水道局が乳児の飲用に適さない濃度の放射性ヨウ素が検出されたと発表したが、その検出濃度は1キロ当たり210ベクレルであった。54,000,000 ベクレルに達するにはほぼ257トンの水を飲まないといけないことになる。放射能量を細胞破壊能が疑わしい百分の一に下げても2.5トンの水を飲まないといけない。だから少なくとも放射性ヨウ素については状況がさらに悪化しない限り、飲み水の心配は要らないと言ってもよかろう。さらに次のような事実に注意を払う必要がある。The New York Timesの「Radiation in Tokyo's Water Has Dropped, Japan Says」というDavid Jolly記者の24日の記事の一部である。

Japan’s limits on iodine 131 are far lower than those of the International Atomic Energy Agency, measured in a unit called a becquerel. Japan says older children and adults should get no more than 300 becquerels per liter while the I.A.E.A. recommends a limit of 3,000 becquerels. Greg Webb, an I.A.E.A. spokesman in Vienna, said he could not immediately provide his agency’s recommendation for infants. The level that raised the alarm for infants on Wednesday was 120 becquerels; that had fallen to 79 on Thursday, according to the Tokyo city authorities.

放射性ヨウ素に対する許容基準が子どもと成人に対して国際原子力機関の基準がリッター当たり3,000ベクレルであるが、日本ではその十分の一の300ベクレルに設定されているとの指摘が目にく。乳幼児についての国際基準については触れられていないが、それなりの理由があるにせよ、少なくとも成人に関して、そして恐らく乳幼児に対しても、日本がきわめて厳しい基準を設置していることが今回の「騒動」を引き起こしたとも考えられる。日ごろ、厳しい基準を設けているのを誇るのはよいとしても、今回のような緊急事態になると作業員の被曝線量を100シーベルトから一挙に250シーベルトに上げたりするのだから、基準もいいかげんなものである。見かけの厳しい設定なんて混乱を招くだけではないか。ほとんどの車が80キロ以上で走っているようなよく整備された道路の速度制限を60キロにして満足している感覚とよく似ている。

私のバセドー病は一回のアイソトープ療法と、2年あまりの抗甲状腺剤の内服でなんとか制御下に置くことが出来たようである。この40年ほど不調を覚えたことはなかった。アイソトープ療法の有効性が実証されたわけであるが、一方、たとえ治療目的であれ組織細胞を破壊してしまったことは事実である。ちなみに54,000,000ベクレルをシーベルトに経口摂取の実効線量係数0.000,000,022を掛けあわせて単純に換算すると1.19シーベルト、すなわち1,190ミリシーベルトになる。詳細が分からないので推測であるが、福島第一原発の復旧作業現場で今よりも放射能が増加するような事態が発生すれば、この程度の被曝が起きうる可能性が現実のものになる。作業員の方々はあらかじめヨウ素剤を服用して甲状腺を安定なヨウ素で飽和して防御するなど、万全の策を取っていただくことを切にお願したい。


東京電力をあまりにも知らなさすぎた 関西電力は?

2011-03-23 20:07:40 | Weblog
福島原発事故で東京電力の初動があまりにも遅いので、福島原発の「電源」と「水」への対応が超スローモーなのは何故なのかと疑問を呈したが、作業現場では次ぎのような対応を期待していた。ささやかな経験にもとづく私なりの「常識」だったからである。

「想定内」であれば日ごろ訓練に用いられたマニャルに従い定められた対応をすれば十分であろう。しかし「想定外」の事態ではそれが効かないからこそ、現場にいる原子炉を熟知して経験豊かで判断を的確に下すことの出来るリーダーの臨機応変の采配と、現場の作業員のチームプレイが底力を発揮する。これ以外の対処はないと言ってよかろう。東京電力の関係者は現場の働きを阻害する一切の動きを全力を挙げて排除すべきなのである。
福島原発の現場で作業している人たちを信じて応援しよう

現役時代にある実験装置を作ったことがある。いろいろと創意工夫を加えて出来上がった装置は当時世界唯一のもので、狭い専門分野ではあるが結構注目を浴びた。装置の作動原理は私のアイディアであったが、基本設計にはじまり液体制御や気体制御の機械部分、さらにはレーザー装置との組み合わせに全システムの電子制御装置とソフトウエアなど、必要なものすべてを信頼していたメーカーの技術スタッフと共同で作り上げた。おもに試験研究など科学研究費の支援を受けて始めて可能になったもので、おそらく総額は3000万円を上回ったであろう。既成装置を購入したわけではないので、なにかトラブルがあると自分で解決しなければならなかった。問題点を探り当てるのはすべてを知る私の仕事で、それを解決するには技術者の助けを借りることもあった。だから定年間際まで続けた共同研究でも、装置は私が動かさなければならなかったのである。

規模も内容も比べるべきものではないが、東京電力にはすべてを知る生え抜き、たたき上げの技術者集団があって、その束ね役のトップ技術者が原発を動かす要の位置にいるのだろう、と私は勝手に想像していた。それがたとえば福島原発ならその所長であろうし、また本社では技術担当重役であろうと。原発とともに育った経験豊かな技術者が緊急時に指揮を掌握してこそ始めて迅速な対応が可能になる。だからこそ日ごろからその態勢で非常事態の訓練をしていたのであろうと思っていた。ところがいろいろと洩れ伝わる情報では東京電力のトップに技術系が不在とか。それに現場で実際に作業しているのはメーカーである東芝とか日立の技術者であるとか。では束ねているのは誰なのだろうか。

蓋を開けてみれば私の疑問、福島原発に放射能防御の作業車両がなかったのかも当たっていたようである。それならそれで核戦争の戦場にも出かける装備を持った米軍特殊部隊に福島第一原発に即刻米軍専門部隊の投入を!でも述べたように、場合によれば米軍に指揮権を委譲するぐらいの覚悟で助力を仰ぐべきなのにそれも出来なかった。その一方でやっていたことは、自衛隊の方々にはご苦労であったものの、自衛隊ヘリコプターから海水をジャーと撒いて終わりであった。あれでは山火事でも消えるまい。やることなすことすべて児戯に等しい。東京電力は、そしてわが国は原発事故に山火事かもしくはそれ以下の対応しかできなかったことを、あれで世界にさらけ出してしまった。

東工大出身の菅直人総理を東京電力のトップにすげ替えたら、少しは技術者を重視する布陣が期待されるかも知れないが、今となっては手遅れである。近いところでは関西電力であるが、もし出来ていなかったら技術者重視の運営システムを早急に構築して欲しいものである。



テレビを見て 9日目に救出 広告 原発避難者 リビア  追記あり

2011-03-21 18:34:33 | Weblog
昨夜のNHKニュースが80才の祖母と16才の男の孫の救出を伝えていた。津波で押し流された自宅に閉じ込められ、乾いた毛布で暖を取り、冷蔵庫の食料品・飲料で命をつないでいたとのことである。女性が救護隊員の問いかけに力強い口調で的確に答えている姿に感動した。震災後9日目の救出である。まだまだ救出の手をゆるめるべきではないと思った。

テレビの映像で感動してから言うのもおかしいが、報道陣がその周りを取り囲んで救護隊員の動きの邪魔をしているように見えたのが気になった。さらに今日のお昼には入院中のその孫にカメラを向け、取材者が程度の悪い質問を浴びせかけていたが、アホと違うかと思った。カメラの暴力である。なぜ静かにさせてあげないのだろう。阪神・淡路大震災を経験した私には、大津波による惨禍の遠景だけでも十分である。ひたすら手を合わすのみなのだから。

コマーシャルと言うべきなのかどうか、わけの分からぬ広告がテレビで繰り返し繰り返し流されている。サッカーの元監督とか元女優?が顔をだしては脳卒中とかなんとかガンだとかのナレーションがしつこいほど繰り返される。この時期にこれらの広告の意図が分からないだけに不気味に感じる。この広告主の金、どこから出ているのだろう。なにか洗脳の狙いでもあるのだろうか。

福島原発の周辺から避難もしくは屋内待避をさせられた方々の生活が気になる。いつまで強いられるのか、見通しが立たないからである。集団疎開を真剣に考えるべき時なのではなかろうか。文部科学省がホームページで「福島原発周辺放射線モニタリングデータ」を発表している。しかし私が一番知りたいデータ、すなわち福島第一原発周辺20キロ以内のデータがたとえば3月21日16時00分時点では皆無である。たとえ住民は避難していても、これは基本的データである。せめてデータがあるのか無いのかぐらいは明らかにして欲しい。

そういえば消防車などが大量の海水を原発の内部設備に放水しているが、どこに消えていっているのだろう。蒸気になって空中か、溢れて流れ出して地下に潜るか海に戻るか。地下水、海水の放射線モニタリングデータが発表されていないのはデータが無いのか隠しているのか。肝腎な情報を公表すべきなのに誰も何も言わない。

リビアでカダフィ政権の軍事施設にたいする国連多国籍軍の攻撃が始まった。「飛行禁止空域設定の条件を整えることが目的」として、国連軍の監視飛行を妨げる恐れがあるとしてミサイル発射施設や早期警戒システムの破壊を狙ったとのことである。リビア情勢に疎いせいでもあろうが、かっての植民地宗主国の正体が剥き出しされているようにも感じる。もし北朝鮮で民衆が金政権に対して立ち上がったら同じように支援するぞとのメッセージでもあるのだろうか。その時、かっての宗主国日本は?

追記(3月22日)
海水汚染の状況を東京電力がようやく次のように公表した。

 東日本大震災で被害を受けた福島第一原発から16キロ離れた海水から、安全基準の16.4倍にあたる濃度の放射性物質が検出されたことを、東京電力が22日午後の記者会見で明らかにした。同原発では、放水口付近での放射性物質の濃度が最大で百倍を超えたことがわかっており、海水汚染が広範囲に広がりつつあることがわかった。

 東電によると、21日午後11時45分ごろ、福島第一原発から南に16キロ離れた地点で海水を採取して調べたところ、放射性物質のヨウ素131が原子炉等規制法が定める基準の16.4倍、検出された。

 東電は、「普通ではない汚染が広がっていると受け止めている。大変申し訳ない」としている。
(asahi.com 2011年3月22日16時2分)



原発反対運動が福島原発事故を拡大させた?

2011-03-20 20:11:17 | 社会・政治
今日の朝刊第一面の見出しが『福島原発 通電可能に 燃料冷却に一歩前進』なので、先行きは分からないまでも少しは胸をなで下ろした。緊急課題であった「燃料棒の冷却」が可能になりそうだからである。しかし「燃料棒の冷却」が制御下に置かれるまでにはまだまだ時間がかかることだろう。

「燃料棒の冷却」を続けながら早急に行うべきことは、建屋内に入り損傷の実態を明らかにすることだろう。現在も原発作業員による作業が進められていることだろうが、どうしてかその詳細の伝わってこないのが歯がゆい。使用済み核燃料プールや原子炉格納容器などに亀裂などの損傷があるのかないのかを始めとして現状を把握の上、「燃料棒の冷却」を制御下に置くための作業を最優先すべきでは無かろうか。

建屋内の放射能汚染の程度すら伝わってこない。測定されているのかいないのか、それすら分からない。通常の定期点検なら作業員が防護服・マスク・安全靴などを着用して建屋内に入るのであろうが、事故後の建屋内にも通常の防御服で入っているのだろうか。その作業実態すら「秘密」なのであろうか。放射能汚染されている環境下でも作業出来るような特殊な防護服が備えられているのだろうか。それとも、放射能測定ロボットのようなものが働いているのだろうか。これまでの成り行きをみるとどちらも否定的にならざるをえない。だからこそ私は福島第一原発に即刻米軍専門部隊の投入を!と叫んだのである。これら米軍部隊は「核戦争」の戦場での行動を想定しての装備と訓練が完備していると思われるからである。

ここに「でんきの情報広場」という電気事業連合会のホームページがある。この「原子力発電所の安全確保」には「安全を守る技術的なしくみ」として「多情防護」「自己制御性」「アクシデントマネジメント」が挙げられている。その「アクシデントマネジメント」には次ぎのような文面がある。

アクシデントマネジメントによる安全対策

過去事故の研究を通じて、過去事故に至るプロセスを検討した結果、次の機能を強化することが対策として有効であることがわかりました。

* 原子炉停止機能の強化
* 原子炉および格納容器への注水機能の強化
* 格納容器からの除熱機能の強化
* 電源供給機能の強化

原子力発電所の安全設計では、「原子炉を止める」「原子炉を冷やす」「放射能を閉じ込める」という3つの機能ごとに対策がとられていますが、アクシデントマネジメント対策は、これらの機能を高めることになります。

例えば、アクシデントマネジメントでは、異常が発生し、非常用炉心冷却装置(ECCS)もすべて故障した場合を想定し、本来、消火用に使うポンプで炉心に注水し、燃料を冷却するといった対策を考えます。そのため、いざというときに消火用のポンプも動員できるよう、消火用の設備にそのための設備を備えておきます。

このようにアクシデントマネジメントでは、異常事態に際して、本来はほかの機能のために用意されている設備までフル活用し、異常事態の拡大防止と影響の緩和のための対策を行います。

アクシデントマネジメントは、このような施設や設備の整備のほかに、シビアアクシデントが発生したときに迅速に対応するための詳細なマニュアルの整備、通報連絡体制、教育・研修なども含まれます。

各電力会社は、各発電所のアクシデントマネジメント策を整備し、その内容を取りまとめた報告書を、2002年5月に国に提出しました。原子力安全委員会もレビューを行い、各電力会社の対策は妥当であると評価されています。

ここでアクシデントに対して機能強化すべき対策として挙げられた4項目がもっともなものであったにせよ、その実態がどうであったかを、今、われわれが固唾を飲んで注視しているのである。ここで気になるのが非常用炉心冷却装置(ECCS)もすべて故障した場合を想定し、本来、消火用に使うポンプで炉心に注水し、燃料を冷却するといった対策を考えます。そのため、いざというときに消火用のポンプも動員できるよう、消火用の設備にそのための設備を備えておきます。の強調部分である。これでは作業環境が放射能で汚染されることなんてまったく考えていないように私は感じてしまう。

福島第一原発事故は今回の東北関東大震災による「想定外」の出来事と受け止められているかのようである。もう少し正確には、そのように報じられていると言うべきなのかもしれない。私も福島原発の現場で作業している人たちを信じて応援しようで、《科学者が実験をしていて秘かに興奮を押し隠すのは「想定外」の出来事に出くわしたときである。》と述べている。なぜ想定外を括弧で囲むのかと言えば、実は科学者にとっては想定外と思われることの生じるのも想定済みだからである。人智がすべてを見通すなんてあり得るはずがない。

同じことが技術者についても言える。たとえば原発が強度設計を上回る強度で建設されたとしても、所詮は無数の人間の共同作業で出来上がったものである。あらゆる部品とすべての設備に人手が加わっている。それだけでに人為ミスを完全に排除することは不可能で、ところによっては規定の強度を満たしていないこともありうる。だからこそ上に引用した異常事態への対応がそれなりに考えられたのであろう。したがって、日本の原発が米国のスリーマイル島とソ連のチェルノブイリを上回る惨事を引き起こすこともあり得る、という考えを抱いた技術者が居るのも当然のことで、そういうことを考えもしなかったという技術者がもし居たとすると、この方が異常なのである。その意味では、米国のスリーマイル島とソ連のチェルノブイリを上回る惨事を起こさせないためにも、原発を日本で造るべきでないという原発反対運動が起こるのも自然なことである。

しかしスリーマイル島もチェルノブイリも原爆のように一瞬で爆発したわけではない。それなりのたどるべき経緯をたどって破滅に至ったのである。いずれも福島第一原発が稼働を始めてから後の事故であるが、このことを知った日本の原発技術者が、施設が大規模に破壊され、放射能が大量に洩れた環境下で「燃料棒の冷却」を行わなければならない事態が起こりうることを当然想定したであろう。また、その作業にどのような装備・機材が必要なのかその整備を考えたに違いない、と思いたい。ところが強い放射能環境下でも作業可能な放水車やポンプ車、さらにはロボット注水・放水車に重装備の防護服などを原発が整備したとすると必ずや人目を引き、安全を喧伝している日ごろの主張との矛盾を突かれて、ますます原発反対運動の拡大することを原発の経営者側が懸念したことも想像するに難くない。したがって強い放射能環境下でも迅速に作業を推し進める対策をなおざりにした、と。その意味では原発反対運動が今回の事故の拡大化をもたらしたと言えなくまない。もちろんこれはあくまでも私の憶測に過ぎないが、そうとでも考えないことには原発側の「無手勝流」振りが理解出来ないのである。

福島第一原発の近くにある福島第二原発では、停電の影響で原子炉の冷却機能が喪失したもののやがて1号機から4号機まですべてが「冷温停止」の状態になり、また女川原発でも1号機から3号機に至るまですべて「冷温停止」の状態とのことである。福島第一原発でも初動の遅れからかなりの放射能を周辺にまき散らすことになり、その恐れはまだまだ続くであろうが、これ以上の惨禍の広がりはなんとしても抑えて欲しい。そしてこの機会にこそ、今回の自衛隊、消防隊、警察、さらには消息が流れてこない米国専門部隊を合わせての装備・機材を大きく上回る世界最強の原発危機鎮圧隊の創設を真剣に考えるべきであろう。日本で稼働中の原発すべてを即刻運転停止に出来ないとすれば、これしか考えられる対策は無い。

先ほどNHKの7時からのニュースで地震発生当時福島第一原発の現場で作業していた方々からの生々しい状況が、そして東京消防庁のハイパーレスキュー隊隊長などから活動状況が伝えられた。ただただご無事を祈るのみである。


The New York Times(NYT)の福島第一原発現状報告

2011-03-19 12:42:54 | Weblog
日本の新聞などで報じられていない情報がNYTに出ている。その真偽を日本政府は速やかに明らかにすべきであろう。疑心暗鬼を払拭するためにも。引用は抜粋部分である。

Japan Races to Restart Reactors’ Cooling System

This article is by Ken Belson, Hiroko Tabuchi and Keith Bradsher.

●Japan’s Nuclear and Industrial Safety Agency said that the crisis now had wider consequences, and raised its assessment of the accident’s severity to a Level 5 on a seven-level scale established by the International Atomic Energy Agency. Hidehiko Nishiyama, a senior official at the agency, said the assessment was retroactive to Tuesday and based on the fact that officials now assumed that more than 3 percent of the nuclear fuel at the plant had experienced meltdown.
(Published: March 18, 2011)

朝日新聞朝刊では1号機から3号機までが18日に「レベル5」に上げられたと報じられたが、その評価が火曜日(15日)に遡るとは報じていない。その間政府は重大性を過小評価し、したがって対策に遅れがあったことになる。さらに(at the planが第一原発全体なのかどうなのかがはっきりしないが)核燃料の3%以上がすでに「メルトダウン」したとの部分を朝日は《炉心に重大な損傷があり》と伝えるのみである。

●In a further sign of spreading alarm on Friday that uranium in the Japanese plant could begin to melt, Japan planned to import about 150 tons of boron from South Korea and France to mix with water to be sprayed onto damaged reactors, French and South Korean officials said Friday. Boron absorbs neutrons during a nuclear reaction and can be used in an effort to stop a meltdown if the zirconium cladding on uranium fuel rods is compromised.

Tokyo Electric Power said this week that there was a possibility of “recriticality,” in which fission would resume if fuel rods melted and the uranium pellets slumped into a jumble on the floor of a storage pool or reactor core. Spraying pure water on the uranium under these conditions can actually accelerate fission, said Robert Albrecht, a longtime nuclear engineer.

“recriticality”とは地震発生時にいったん停止した核分裂反応が再び起こる、ということであろう。燃料棒が溶けたり(燃料棒の内部にある)ウラニウム・ペレットが燃料プールや炉心の底部に落下してゴチャゴチャの状態になり、核分裂反応が再発する可能性があると東京電力が今週発表したというのである。こんな重大なニュースを私は見逃したのだろうか。

●Additionally, a senior Western nuclear industry executive said Friday that there also appeared to be damage to the floor or sides of the spent fuel pool at Reactor No. 4, and that this was making it extremely hard to refill the pool with water. The problem was first reported by The Los Angeles Times.

4号機の使用済み核燃料プールの底か側壁が損傷しておれば、その水漏れの程度によるが、いくら給水してもプールを水で満たすことは出来なくなる。このような具体的な損傷の指摘がこれまであっただろうか。さらに記事はこのように続く。燃料棒プールの洩れを再確認しているのである。

The senior executive, who asked not to be identified because his comments could damage business relationships, said that a leak had not been located but that engineers had concluded that it must exist because water sprayed on the storage pool had been disappearing much more quickly than would be consistent with evaporation.

そしてこのような記事があった。

●At the request of the Japanese military, a Massachusetts company, iRobot, said it put four robots on a plane for Japan on Friday. Colin Angle, the chief executive, said it had sent two small robots that could measure radiation levels close to the reactors and two larger ones that could pull hoses to spray water on the fuel rods.

He said the robots might be able to tug the hoses for 200 to 300 yards. Japanese soldiers could operate the robots from a protected vehicle, he said.

私が福島原発に放射能防御の作業車両がなかったのかで、なぜ福島原発には無かったのかと不思議に思った注水ロボットが米国にはちゃんとあるではないか。

追記(4月12日)
 上の記事は3月19日に認めたもので、「福島第一原発の現状」で検索し、お立ち寄り頂いた方々にとっては旧聞に属することゆえ申し訳なく思う。その現状がなかなか見えてこない状況を福島第一原発の現状 なぜ見えてこないのかにまとめたので、ご覧いただければと思う。