日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

返済猶予制度の報道 読売 vs 朝日

2009-09-30 10:53:30 | 社会・政治
まずはasahi,comの記事。

返済猶予「銀行に義務化せず」 大塚金融副大臣

 政府は29日、金融機関の「貸し渋り・貸しはがし」防止対策を検討する会議を開いた。まとめ役の大塚耕平・金融副大臣は、中小企業が借金の返済期限の延長といった条件変更をしやすくする仕組みをつくる意向を表明。ただし、銀行に返済猶予を一律に義務付けることは否定した。10月9日までに内容を固め、臨時国会に法案を出す方針。(中略)
 大塚副大臣はこの日の会見で「モラトリアムは選択肢の一つ」と述べつつ、「一律(に実施する)という言葉が独り歩きした」と指摘した。返済猶予を促す期間や、金利分の扱いについてなど、細部の検討はこれからだ。
(asahi.com 2009年9月30日5時40分)

この記事で最初に引っかかるのが『政府は29日、金融機関の「貸し渋り・貸しはがし」防止対策を検討する会議を開いた』の箇所である。どういう性格の会議なのかが分からない。まとめ役が大塚金融副大臣と言うから、金融庁内に設置されたなんとか会議かとも思うが、それならなぜ亀井金融大臣は『「副大臣が義務づけしないなんて言うはずがない。そんな権限がない」と発言。「検討は今日始まったところ。私が大臣で、私が決めることだ」と語った。』のように発言したのだろう。この辺りの事情が、記事からはさっぱり伝わってこない。亀井大臣の発言は朝刊に上の記事と並んで次のように出ている。


次は読売の記事である。

返済猶予制度、10月9日までに原案

 金融庁は29日、中小企業や個人を対象にした銀行借り入れの返済猶予制度を検討する作業チームの初会合を開いた。

 制度の原案を10月9日までにまとめ、臨時国会への関連法案提出を目指す。

 ただ、金融機関に対し返済猶予を義務付けるかどうかについて、亀井金融相とチームの責任者である大塚耕平・内閣府副大臣の発言が食い違い、検討作業はスタートから迷走ぶりを印象づけることになった。

 大塚副大臣は29日昼に開かれた初会合の冒頭、「現実的な案をしっかり検討したい」とあいさつ。会合終了後の記者会見では「義務付けは適切でない」、「強制力という言葉ではなく、より実効性が高い法律や制度を考えていかなければならない」などと述べ、法案に返済猶予義務付けを盛り込むことに否定的な主張を繰り返した。

 これに対し、亀井金融相は同日夕、記者団に対し、「副大臣がそんなこと言うはずがない。彼には権限はない」と、大塚副大臣の発言を全面否定した。

 さらに、「実効性を担保するのにどういうやり方があるのかを含め、今から検討していく」と述べ、制度の具体的な内容は決まっていないと強調した。
(2009年9月29日20時08分 読売新聞)

この読売の記事では「会議」の性格も含めて、問題点の在処がよく分かる。以前に引用した毎日新聞の記事には『亀井静香金融・郵政担当相は24日、金融庁で初の政務三役会議を開き、大塚耕平副金融相らに中小企業向け融資や住宅ローンを返済猶予(モラトリアム)する制度を法案化する作業を指示した。』とあるので、「会議」がその作業チームのことであることが容易に分かる。

しかしこの毎日の記事が正しいのであれば、大塚金融副大臣は「返済猶予(モラトリアム)」を法案化するように、という亀井大臣の指示に背いた行動をとっていることになる。この齟齬に疑問を持って、副大臣に「なぜ?」を問いかける取材記者が一人ぐらいはあってもよいように思うが、読売もそこまでは突っ込んでいない。そこでげすの勘ぐり、亀井大臣と大塚副大臣が実は緊密な連係プレーはやっているのであって、大臣は言いたい放題をぶち上げる、副大臣はそれを抑えるような格好をしながら、実は落としどころを大臣に限りなくすり寄せようとしているのだろうか。

政権がドラマチックに変わってしまったのに、その動きを取材する記者が自民党時代の旧態依然たる感覚で生き延びられるはずがない。素人の勝手な憶測はお呼びではないよとばかりに、国民目線で疑問を抱き、それを解き明かしていく積極的な報道姿勢を培って欲しいものである。