昨日(11月11日)の参院外交防衛委員会で行われた田母神俊雄・前航空幕僚長の参考人質疑の詳報は以下の通り、と産経ニュースはその内容を伝えている。一読して質問内容の程度の低さは、一部の例外を除いて、相変わらずのものと思ったが、それよりも私は北沢俊美・参院外交防衛委員長の冒頭発言に何度か首をかしげてしまった。
《北沢俊美・参院外交防衛委員長「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。本日は参考人として前防衛省航空幕僚長、田母神俊雄君にご出席をいただいております」(中略)
「本日、参考人に出席を求めた趣旨は、国民の代表機関たる国会の場において政府に対し、この問題をただす一環として招致したものであり、決して本委員会は、参考人の個人的見解を表明する場ではありません。参考人におかれてはこの点を十分に理解し、質疑に対し、簡潔にご答弁をいただきますようようお願いをいたします」》
なぜ『テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし質疑』に、田母神前航空幕僚長が呼び出されないといけないのか、私にはそれがすんなりとは分からない。補給支援活動に航空自衛隊が特別に出動するわけでもなし、そのような職務がらみで田母神前航空幕僚長が発言したわけでもなんでもないからである。『警察による別件逮捕』のようなものが『良識の府参議院』でもまかり通るとはこれいかに、である。。
制服組自衛官、それも上層幹部がどのような考えを持っているのか、常日頃知りたいとは思っているが、なかなか耳にするチャンスはない。自衛官が外に向かって発言すると今回のようになにかの跳ね返りがあるから自衛官が自制するのだろうか。となれば田母神前航空幕僚長の参考人招致はその考えを聞かせて貰うのにまたとないチャンスだと思うのに、外交防衛委員長が「決して本委員会は、参考人の個人的見解を表明する場ではありません」と口止めにかかっているのである。これは国民の知る権利への真っ向からの挑戦ではないか。民主党・犬塚直史議員が浜田防衛大臣とのやりとりのなかで《「今の説明は問題がある。国民の目の前で、自説を述べてもらう。有権者の信託を受けているわれわれの前で述べてもらう。徹底的に審議していることについて、時間がかかるからまずいとか、逃げているような印象を持つ」》(強調は引用者、以下同じ)には同感である。
委員長の冒頭発言は続く。
《「昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われ、また、国家が存亡の淵に立たされたことは、忘れてならない過去の過ちであります。国家が存亡の淵に立った最初の一歩は、政府の方針に従わない、軍人の出現と、その軍人を統制できなかった政府議会の弱体化でありました。こうした歴史を振り返りつつ、現在の成熟した民主主義社会の下において、国民の負託を受けた国会がその使命を自覚し、もって後世の歴史の検証に耐えうる質疑をお願いする次第であります。それでは質疑のある方は順次、ご発言をお願いします」》
「昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われ、また、国家が存亡の淵に立たされた」とはまた珍奇な歴史観である。明治憲法に軍人に対する文民統制がうたわれているとは私は寡聞にして知らないが、北沢委員長は天皇の大権である統帥権に文民がどのように介入し得たとの認識でこのような発言をしたのだろうか。この統帥権の独立への反省が新憲法下での文民統制を生んでいる歴史的事実を委員長はまったく認識していないようである。さらに文民統制が機能しているはずの米国ブッシュ大統領が始めたイラク戦争でどれだけの犠牲者がでているのか、よもや北沢委員長がご存じでないとは云わせない。参考人には口枷をはめるやら、浅薄な歴史観を冒頭発言するやら、その発言に自ら酔うてか、委員長の『後世の歴史の検証に耐えうる質疑をお願いする』発言に至っては「ちゃんちゃらおかしい」と切って捨てざるを得ない。
と、まず委員長発言で引っかかってしまったが、田母神前航空幕僚長の懸賞論文を私は評価はしないものの、彼の発言がきわめて率直、直裁的であることには好感をもった。要は「国を守ることについて意見が割れるような憲法は直したほうがいい」であり、社民党・山内徳信議員の「あなたは、集団的自衛権も行使し、あるいは武器も堂々と使用したいというのが本音ですね」との質問に対して「ええ、私はそうするべきだと思います」と答えていることである。私は日本が文字どおり如何なる武力をも放棄するのでなければ、改憲で自衛隊の制式軍隊化すべきであると考えているので、田母神前航空幕僚長の発言を素直に聴けたのである。日本国憲法第九条第二項の《前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。》といいながら、軍隊でない自衛隊を保有する日本政府の欺瞞性こそ自衛隊をめぐる『諸悪の根源』であると私も信じるからだ。
今回も文民統制のあり方が問われることになったが、それが自衛官の言論統制に繋がることには私は基本的に反対である。職務上の立場では公に意見を述べない方がよさそうだという自衛官の政治的判断を期待することでいいようにも思う。本当に文民統制が機能しているかどうかは、自衛隊にクーデターを起こさせないためにどのような手立てが講じられているかを検証すれば済むことであるが、この委員会での質疑応答に目を通す限りそこまで考えている政治家がいないことの方が怖ろしくなった。
《北沢俊美・参院外交防衛委員長「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。本日は参考人として前防衛省航空幕僚長、田母神俊雄君にご出席をいただいております」(中略)
「本日、参考人に出席を求めた趣旨は、国民の代表機関たる国会の場において政府に対し、この問題をただす一環として招致したものであり、決して本委員会は、参考人の個人的見解を表明する場ではありません。参考人におかれてはこの点を十分に理解し、質疑に対し、簡潔にご答弁をいただきますようようお願いをいたします」》
なぜ『テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし質疑』に、田母神前航空幕僚長が呼び出されないといけないのか、私にはそれがすんなりとは分からない。補給支援活動に航空自衛隊が特別に出動するわけでもなし、そのような職務がらみで田母神前航空幕僚長が発言したわけでもなんでもないからである。『警察による別件逮捕』のようなものが『良識の府参議院』でもまかり通るとはこれいかに、である。。
制服組自衛官、それも上層幹部がどのような考えを持っているのか、常日頃知りたいとは思っているが、なかなか耳にするチャンスはない。自衛官が外に向かって発言すると今回のようになにかの跳ね返りがあるから自衛官が自制するのだろうか。となれば田母神前航空幕僚長の参考人招致はその考えを聞かせて貰うのにまたとないチャンスだと思うのに、外交防衛委員長が「決して本委員会は、参考人の個人的見解を表明する場ではありません」と口止めにかかっているのである。これは国民の知る権利への真っ向からの挑戦ではないか。民主党・犬塚直史議員が浜田防衛大臣とのやりとりのなかで《「今の説明は問題がある。国民の目の前で、自説を述べてもらう。有権者の信託を受けているわれわれの前で述べてもらう。徹底的に審議していることについて、時間がかかるからまずいとか、逃げているような印象を持つ」》(強調は引用者、以下同じ)には同感である。
委員長の冒頭発言は続く。
《「昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われ、また、国家が存亡の淵に立たされたことは、忘れてならない過去の過ちであります。国家が存亡の淵に立った最初の一歩は、政府の方針に従わない、軍人の出現と、その軍人を統制できなかった政府議会の弱体化でありました。こうした歴史を振り返りつつ、現在の成熟した民主主義社会の下において、国民の負託を受けた国会がその使命を自覚し、もって後世の歴史の検証に耐えうる質疑をお願いする次第であります。それでは質疑のある方は順次、ご発言をお願いします」》
「昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われ、また、国家が存亡の淵に立たされた」とはまた珍奇な歴史観である。明治憲法に軍人に対する文民統制がうたわれているとは私は寡聞にして知らないが、北沢委員長は天皇の大権である統帥権に文民がどのように介入し得たとの認識でこのような発言をしたのだろうか。この統帥権の独立への反省が新憲法下での文民統制を生んでいる歴史的事実を委員長はまったく認識していないようである。さらに文民統制が機能しているはずの米国ブッシュ大統領が始めたイラク戦争でどれだけの犠牲者がでているのか、よもや北沢委員長がご存じでないとは云わせない。参考人には口枷をはめるやら、浅薄な歴史観を冒頭発言するやら、その発言に自ら酔うてか、委員長の『後世の歴史の検証に耐えうる質疑をお願いする』発言に至っては「ちゃんちゃらおかしい」と切って捨てざるを得ない。
と、まず委員長発言で引っかかってしまったが、田母神前航空幕僚長の懸賞論文を私は評価はしないものの、彼の発言がきわめて率直、直裁的であることには好感をもった。要は「国を守ることについて意見が割れるような憲法は直したほうがいい」であり、社民党・山内徳信議員の「あなたは、集団的自衛権も行使し、あるいは武器も堂々と使用したいというのが本音ですね」との質問に対して「ええ、私はそうするべきだと思います」と答えていることである。私は日本が文字どおり如何なる武力をも放棄するのでなければ、改憲で自衛隊の制式軍隊化すべきであると考えているので、田母神前航空幕僚長の発言を素直に聴けたのである。日本国憲法第九条第二項の《前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。》といいながら、軍隊でない自衛隊を保有する日本政府の欺瞞性こそ自衛隊をめぐる『諸悪の根源』であると私も信じるからだ。
今回も文民統制のあり方が問われることになったが、それが自衛官の言論統制に繋がることには私は基本的に反対である。職務上の立場では公に意見を述べない方がよさそうだという自衛官の政治的判断を期待することでいいようにも思う。本当に文民統制が機能しているかどうかは、自衛隊にクーデターを起こさせないためにどのような手立てが講じられているかを検証すれば済むことであるが、この委員会での質疑応答に目を通す限りそこまで考えている政治家がいないことの方が怖ろしくなった。