日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

年金データ消失に匹敵する柏崎刈羽原子力発電所の失態

2007-07-31 14:10:23 | Weblog
東京電力のホームページから新潟県中越沖地震に関するプレスリリースを見ることが出来る。ここに昨日発表された「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析に係る報告(第一報)について」がある。

地震直後に経済産業省原子力安全・保安院が「柏崎刈羽原子力発電所における平成19 年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び耐震安全性への影響評価について(平成19 年7月16 日付平成19・07・16 原院第1号)」の調査を求めたのに対して、本震の際に取得された全ての記録の収集、整理が完了したのでその第一報として報告するというのである。その概要が公表されているが、それを見て私わが目を疑った。その部分を引用する。

《1.柏崎刈羽原子力発電所における地震観測の状況
柏崎刈羽原子力発電所では、従来より1号機、5号機および6号機の原子炉建屋、タービン建屋、ならびに敷地地盤(サービスホールを含む)の計67 箇所に地震計を設置し観測を行っている。また、上記以外にも平成19 年4月に1号機~7号機の原子炉建屋、タービン建屋、ならびに発電所敷地内地震観測小屋の計30 箇所に地震計を追加設置し、観測可能となっている。以下、前者を「既設地震計」、後者を「新設地震計」という。柏崎刈羽原子力発電所における地震観測点の配置を図1に示す。》

《なお、既設地震計67 台のうち63 台分について、余震記録により本震記録が上書きされ、本震記録の地震動の波形が消失していること(7月19 日お知らせ済)(中略)しかしながら、既設地震計の最大加速度値は消失していないこと、新設地震計による各号機の原子炉建屋基礎版および3号機タービン建屋基礎版上の本震記録が取得されていること等から、十分な検討ができるものと考えている。》(強調は私)

最後の言い訳はともかく、この強調部分には「マジかよ!」とわが目を疑ったのである。

私は7月20日のエントリー「原子力発電所耐震安全性『大実験』を生かすために」で、《思いがけぬ『大実験』で集積した貴重なデータを積極的に生かす手段を講じるべきである。その調査研究に国の主導による科学者・技術者の組織化が望まれるところである。そしてその成果は既存の他の原子力発電所の安全性の再検討にも直ちに生かされるべきで、関係者の獅子奮迅の働きを期待したい。》と述べた。

ところがなんとなんと既設地震計が集めたはずの貴重なデータの94%が失われたというのである。まさに壊滅状態ではないか。開いた口が塞がらないとはこのことである。『実験』で得たデータは全て記録・保存するのが鉄則、今や技術的(メモリー容量など)には何の困難もない。今朝のFujiSankei Business i. 2007/7/31が「KDDI、100年分メール保存 グーグルの技術活用 」 と報じていた。そのようなご時世なのである。何故二度と得られぬかもしれない貴重なデータを失うような羽目にいたったのか。これは年金記録の紛失に匹敵する大失態である。地震計が『時代物』だったのだろうか。徹底的に調査してその状況と責任の所在を明らかにすべきである。あまりにもずさんな管理体制であると云わざるをえない。

ところで朝日朝刊(7月31日)は第一面に「原発で最大揺れ2058ガル」の見出しで《3号機では2058ガル(ガルは加速度の単位)の揺れが観測されていた》と報じている。私にはこのデータの出所が分からない。3号機に関して概要の図2-3に「3号機原子炉建屋基礎版上の加速時刻歴波形(東西方向)」と図3-3に「3号機原子炉建屋基礎版上の加速度応答スペクトル(東西方向)」のデータが示されている。しかしそのいずれからも2058ガルを読み取ることが出来ない。この数字、どこから出て来たのだろうか。

COEプログラム 世界水準の研究教育拠点作りの真の狙いは?

2007-07-29 17:56:35 | 学問・教育・研究
私のこのブログにGoogleで「世界水準」を検索して訪れた方がいる。検索結果が264万件ある中(7月26日)、なんと以前のエントリー「日々是好日 世界水準の研究教育拠点そして経費関係調書非公表の怪」が第六位に顔を出している。そして 「世界水準の研究教育拠点」の検索では869件のうちの第一位なのである。私の重い腰を早く上げるようにと催促のようにも感じた。



このエントリーで今年中に公表される予定の「21世紀COEプログラム事後評価報告書」(仮称)に、次のような問題点のあることを指摘した。その部分を再録する。

《このプログラムの経費がどのように使われたかを見ると、プログラムが遂行されたその実体を検証出来るが、「21世紀COEプログラム平成14年度採択拠点 事後評価用調書作成・記入要領」の「経費関係調書(事後評価用)(様式5)」に、「支出実績(経費区分別)(平成14~18年度)」として《「経費区分」及び「COE 補助金」欄には、年度毎にそれぞれの経費の支出内容について「研究拠点形成費等補助金(研究拠点形成費)取扱要領」の補助対象経費の区分(設備備品費、旅費、人件費、事業推進費、その他)により、実績額を記入してください。・経費の効果的な使用を明確に示す必要があるため、出来る限り詳細に記入してください。(後略)》とあるのに、《この様式に記入される内容は非公表ですので、HP及び公表用冊子には掲載されません。》と、非公表を約束しているのである。「HP及び公表用冊子」には掲載されないとして、ではどのようにしてその情報を入手できるのだろうか。》

補助金支出実績を非公表とする真意がどこにあるのか、「21世紀COEプログラム平成14年度採択拠点 事後評価用調書作成・記入要領」を見る限り何も伝わってこない。極めて不可解である。その思いが余計強くなったのは、やはり7月26日の朝日朝刊、第一面トップの《大阪府議会 政調費ずべてに領収書 公開、自由に閲覧》なる記事を見たからである。《全国各地で不適切は使途が問題化している政務調査費について、大阪府議会が今年度支給分から、領収書を全面公開することになった。情報公開請求をしなくても、自由に閲覧できる。支出が適性かをチェックするため、外部の有識者らによる検査機関も新設する。》といった内容である。

私はこのエントリーで《公開されている資料に基づいて、私なりに人件費に使われている経費を試算してみた。そこで浮かび上がったCOEプログラムの特徴を次回に述べて持論を展開する。》と述べている。ところがその約束を果たしていない。気が進まなかったのである。

何故気が進まなかったのか。ネット上で入手可能な「21世紀COEプログラム」関連資料を調べるにつれて、この世紀の大プロジェクトが成り上がりお大尽の大盤振る舞いのように見えてきたからである。一国の叡智を振り絞った作り上げた筈のこの壮大なCOEプログラムを『お大尽の大盤振る舞い』と私ごとき隠居が決めつけて良いものやら、空恐ろしい気分に襲われたのである。だからこそ、そのお金の使い道は公表しません、と云っているのではと邪推すらする始末であった。

何故このような『大盤振る舞い』プランが罷り通ったのか私には疑問であったが、最近のある出来事でこの疑問が氷解したのである。そこでようやく腰を上げる気になった。これからが本論である。

まず手始めに東京大学21世紀COEプログラム「生体シグナル」のホームページを眺めてみよう。どのようなプロジェクトか、その内容の要約は他のプロジェクトと同様2ページからなっている。平成14年からスタートした生命科学領域の一プロジェクトで、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻(5)、同分子細胞生物学専攻(3)と分子細胞生物学研究所(2)から合計10研究室が参画している(括弧内は専攻別研究室数)。このホームページを取り上げたのはネット上で最初に目についたからで他意はない。

世界水準の研究教育拠点というと仰々しく聞こえるが、実態は既存の研究室の寄り合い所帯である。生命科学には28拠点が設けられたが全てが大同小異であろう。

「生体シグナル」の要約「拠点形成の目的・必然性」はこのように書かれている。「生物は分子・電気シグナルの発信・受信を介して成熟し生存を維持している。生体シグナル伝達機構の基本原理を解明するためには、最先端の研究を推進している分野が研究協力体制を構築し、従来の枠を超えた新たな領域横断的研究を多面的かつ速やかに展開し、これによって境界領域に残されている数々の重要課題の解決を図ることが必要である。この考えに基づき本拠点を形成した。生体シグナル伝達機構の解明は人類の知的資産に貢献すると共に、医療、情報技術の基盤を提供する。また、先端的研究を通じて未来の科学を担うライフサイエンス研究者を育成することも本拠点の重要課題である。」(強調は私)

典型的な研究者作文で、かっては私も憂き身をやつしたものある。書き方の決まりのようなものがあって、上にどのような季語を入れても「根岸の里のわび住まい」と結んで俳句を仕上げる、その心得と共通するものがある。

ここで強調部分に注目していただこう。このグループが持つ「世界水準の研究教育拠点」のイメージが、最先端の研究を推進している分野研究協力態勢を構築であることが明瞭である。われこそは世界水準の研究を行っていると自負する研究室が、お互いに仲良く協力しましょう、と云っているだけのことである。

私の見るところ、研究室を総動員したことを隠さない拠点もある。旧帝大のような大世帯ならともかくこぢんまりした大学では、生物系に属する研究室のあるものは入れあるものは入れないなど日頃のしがらみから出来ないのか、それとも全てを網羅しないと拠点としての陣容を整えられないのか、それはともかく全研究室のそろい踏みになっている。必然的に研究室のレベルは玉石混合であるから、抜きんでた業績を挙げている研究室が文字通り拠点リーダーとなっている図式がはっきりと見えてくる。いずれにせよ東大の場合と同じように、既に存在している研究室集合体が、その掲げている旗印を何々研究科何々専攻から「世界水準の研究教育拠点」書き換えるだけのことである。COEプログラムの『虚構』性の一つの現れと云えよう。

「21世紀COEプログラム」の「生命科学」領域には以下のように補助金が支出されている。

平成14年度 47.56(億円)
   15年度 39.19
   16年度 37.07
   17年度 40.74
   18年度 37.26

5年間で約201億8千万円、年平均40億円強が28拠点に配分されたことになる。

一方支出の側である。公表されていないので、ヒントのある人件費について先ず試算してみた。ヒントとは「21世紀COEプログラム」の現況等に関する検証と今後の展望について-検証結果報告書-(以降報告書と略称)の32ページに公開されている「大学院生等の雇用状況」という表である。「生命科学」領域のところだけを以下に示す。



平成14年から平成17年12月までのデータのようである。例えばRAでは申請時に379人が平成17年12月現在は1715人で、そのうちCOE経費による雇用者が1132人となっている。

年間人件費を計算するにはこのRAの場合でも年度ごとの雇用者数が必要であるが、この表ではそれがはっきりしない。しかし平成17年12月現在で1132人がCOE経費で雇用されているのであるから、この人数を年間雇用者数と見なすことにする。そうするとポスドクが181人、ポスドクを除く研究者が76人、支援者その他が145人、COE経費で雇用されていることになる。TAは含まれていない。ポスドクを除く研究者の対象者がはっきりしないが、博士後期課程の在学する若手研究者として一際優れた院生と見なすことにする。

雇用者の年間経費であるが、研究拠点形成費補助金(研究拠点形成費)取扱要領をはじめCOE研究員募集要項などに当たり、単価を推定した。その過程は省くが用いた数字でその妥当性は判断していただけると思う。

 雇用          人数    単価(万円)   計(億円)
 RA          1132     60      6.792
 ポスドク        181    500      9.05
 その他の研究者    76    300      2.28
 研究補助       145    150      2.175  

この合計が20億2970万円になる。

一昔前は大学院学生が国内の学会に出席するにしても、その旅費が公には認められていなかったから、その旅費を捻出するのが一苦労であった。ところがCOE経費では国内はもちろん国外への出張旅費も認められている。当然のことでそれ自体は極めて結構なことであるが私には隔世の感がある。そこで大学院生の出張旅費を試算する。控えめに見積もるとして一人年に一回、国内のみとして単価を3万円とする。検証結果報告書(30ページ)に事業推進担当者が所属する全ての専攻等における大学院生の在籍状況に博士課程在籍者数4985人と記されているので、院生旅費は計1億4955万円となる。

有難いことには教員の海外出張旅費も認められている。これも当然の処置である。私の場合は個人的にはなんらかの形で招聘されることが多かったが、それでもあれやこれやのやり繰りが大変だった。ところがCOEに採択されるとそのような苦労がなくなるのだからめでたしめでたしである。そこで国外・国内の旅費を合わせて一人当たり150万円としよう。「生命科学」28拠点の1拠点当たり教授、準教授、助教を少なめに見積もって20人とすると、計5億6千万円になる。以上の経費総計が27億3925万円となる。

取り扱い要綱には《本補助金は、物品購入を目的とするものではないため、設備備品費は、原則として、各年度に申請する補助金額の90%を超えないようにしてください。90%を超えるような申請が必要な場合には、「経費使途理由書」(提出要領「別紙様式五」参照を交付申請時に提出してください。》と、物品購入を目的とするものではない、と明記されているが、人件費、旅費だけで年間経費約40億円のほぼ70%を占めているのに私は正直なところ驚いた。恵まれすぎのように感じたからである。

その上、海外からも研究者を招くことも出来るし、また国際会議を開催することも出来る。となるとCOE経費はほとんどソフト面に費やされたのだろうか。設備備品、消耗品の購入に追われていた頃とは様変わりで、人件費、旅費、会議費が潤沢になってきた状況がこれで分かる。その点では世界水準に間違いなく達したといえるのではなかろうか。

このように人件費、旅費、会議費などのソフト面の経費が潤沢になってきたことは大いに結構である。学問には元来そういう金食い虫的な要素があるからだ。しかしその反面危惧もある。COEに予算の編成・執行権があり、RA、ポスドク、その他の研究員の採用等の人事権を握るなど、極めて高い自立性を備えている。いわば国から大幅な権限委譲を受けた地方公共団体のようなものである。この慣れないことに拠点リーダーを巻き込むとに懸念がある。お金の使い方が放漫にならないだろうか。清貧に甘んじていた学者とその卵が、使い切らなければならない大金を与えられ時に陥る落とし穴である。私の杞憂であって欲しいが、それを検証するためにも経費の使途は公開が必須である。

何故このような『権限委譲』により学者に余計な仕事を増やすのだろう。例えばRAとかポスドクなど、現在もある日本学術振興会特別研究員のシステムをそのまま活用して採用人数を増やせばそれで済むことである。科学研究費補助金を弾力的に使えば研究補助者の雇用も可能であるし、大学院生の出張旅費なども捻出できる。国際会議の開催も同じようなもの、今あるシステムを内容を拡充させながらそのまま使えばよいではないか。

ここで検証結果報告書にある注目すべきアンケート調査結果を取り上げる。審査・申請に係わる負担等に関してで、申請する側では《採択拠点リーダーの申請に際しての負担(申請書類の作成、作成期間等)に関しては、「適当である」という回答が4割弱に対し、「負担が重かった」、「非常に負担が重かった」という回答が6割を超えている。》(報告書16ページ)というのだ。

また審査・評価する側でも《審査・評価担当者の審査に際しての負担(分担、役割、審査書類の作成、期間等)に関しても「非常に負担が軽かった」、「負担が軽かった」、「適当である」という回答が4割弱に対し、「負担が重かった」、「非常に負担が重かった」という回答が5割強となっている。分担、役割、審査書類の作成等に関しては、「審査件数が多いため、負担が大き過ぎる/部会長等の負担が加重である/審査の責任の重さもあり、精神的にも非常に負担が大きかった」といった意見が見受けられた。》(報告書16ページ)というのである。

申請する側も、審査・評価する側も半数以上が負担が重いと答えている。この種のアンケートにしては異例とも云える否定的な評価である。当事者であるからなおさらCOEプログラムの虚構性を認識しつつも、そこに財源がある以上研究費獲得に走らざるを得ない研究者の業をなかば諦めつつも感じるジレンマであろうか。

これからは私の描くフィクションである。

世界水準の研究教育拠点作りという一見壮大なプロジェクトも、一皮剥けば既存の研究室の寄り合い所帯で、『研究教育拠点』も作文の上でのみの存在である。しかしCOEに採択されれば潤沢な活動資金が与えられるし、また所属する大学のステータス向上に役立つなどのメリットがある。しかしCOEは継続性が保証されてはいるものではない。「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねない惰弱性がある。だからこそこのような『競争的資金』獲得を向けての競争が熾烈になる。いわば企業が『公共事業』の受注に熱中するようなものであろう。その裏には『天下り』もあれば『談合』もある。そういえばCOEプランはかっての『列島改造論』の文部科学省版、その産物だとすると、見えてくるものもある。文部科学省の高級官僚が利権を持って天下りする、また利権を餌に天下りする。そのためのプラン作りだったのである。占めるポストは大学学長であったり理事であったりする。もうすでにその動きが顕在化しているようである。

フィクションがノンフィクションにならないことを祈るのみであるが、大学人にも覚醒を促したいことが多々ある。またの折に述べることにする。

ブログのやらせ?

2007-07-27 12:00:49 | Weblog
朝日朝刊(7月27日)に企業がブログを宣伝の手段として利用しているいくつかの例が紹介されていた。何でもお金に換えたがる人が多いこの世の中、ブログを書いてはお金を儲ける、そいう楽しみ方があってもよいと思うのだが、そのやり方が取り沙汰されているようだ。ブログに感想を書くことで無料招待などの特典を得ていたブロガーに「やらせ」だと抗議が殺到したとのことであるが、どこがいけないのか私にはもう一つピンとこない。

米国では「ステルス(見えない)マーケティング」という手法に消費者団体が批判を強めているとのことである。企業がブロガーに報酬を払って商品をほめてもらっているのに、それを隠しているようなやり方をいうらしい。しかしこれは「フーテンの寅さん」を愛する私にはなじみ深いサクラ商法そのものであって、何も目くじらたてることでもあるまいに、と云いたいのだが、私の方がおかしいのだろうか。

タレントとか政治家に本名でブログを書いていることが多いように思う。もしゴーストライターが記事を書いていたとしたら、これこそ「やらせ」であろう。しかいゴーストライターという言葉があるくらいだからこれも文化の一つ、ことさら「やらせ」とあげつらうことでもあるまい、と私は思ってしまう。

このように自分が世間の反応からずれていることを感じるとき、私の倫理観が揺れ動く。

一弦琴「千代の友」

2007-07-25 19:30:22 | 一弦琴
久しぶりに一弦琴の演奏である。「千代の友」のお浚いを一人で始めて、少し慣れてきたので公開することにした。自分で唄い方に工夫を凝らしたつもりの部分もあるので、お師匠さんにみていただくと、演奏がまた大幅に変わるだろうと思う。

           三絃より 真鍋豊平 編

松といふも 千代の縁
竹といふも 千代の縁
千代よろず 世のなかに 梅一木(ひとき)
かかれど 名は おほせぬ

柏崎刈羽原発に事故特別調査委員会を

2007-07-24 16:57:36 | 社会・政治
日本は総発電量をエネルギー源別でみると、2005年の実績では原子力発電が31%、火力発電が60%(内訳 石油など11%、天然ガス24%、石炭25%)、水力発電が8%で風力など、その他が1%となっている。2015年度には原子力への依存度が43%と見込まれているから、われわれ日本人は否応なしに原子力発電に頼らざるを得なくなっており、安全性の確保が最重要課題になっている。原子力発電所(原発)の安全性とは先ず第一に炉心溶融(メルトダウン)を起こさせないこと、そして発電所外部に放射性物質を漏洩させないことに尽きる。

今回の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発原子炉の自動停止機能も正常に作動し、また東電側の発表では、外部に漏洩した放射性物質は微量で市民生活にかかわるものではないとのことであるから、何はともあれ不幸中の幸いであった。最悪の事態が避けられたことを私は科学と技術の勝利と見た。しかしその後公開された発電所内部の状況は、私の目には満身創痍のように映った。それと同時に科学者・技術者にとって『満身創痍』は耐震安全性を高めるために必要な情報を生み出す、極めて貴重な実験データの宝庫でもあるとも思った。

航空機事故とか鉄道事故の場合は、航空・鉄道事故調査委員会が直ちに活動を開始して、事故の調査と科学的な解析を行うことになっている。事故の再発防止と安全性の向上がその目的なのである。今回の原発事故で、航空・鉄道事故調査委員会に匹敵するような、原子力のみならず地震の専門家も含めた原発事故調査委員会がさっそく活動を開始したのだろうか。見逃したのかどうか、私には見えてこないのである。

アメリカでは1979年3月にペンシルバニア州スリーマイルアイランド原子力発電所で炉心の一部が溶融して、周辺に放射性物質が放出された事故が発生した(TMI事故)。その際にカーター大統領は大統領任命の事故調査委員会を発足させて事故原因の徹底調査を行わせたのである。今回の原発事故でも政府にこれに匹敵する取り組みが必要であると思う。

YOMIURI ONLINEは《新潟県と柏崎市、刈羽村は21日、原子力安全協定に基づき、同原発への立ち入り調査を実施する。(中略)21日は、県、市、村の職員のほか、「新潟県原子力発電所周辺環境監視評価会議」の委員の新潟大学教授ら6人が同原発を訪れ、放射能漏れの現場などを視察し、放射線測定データの確認などを行う予定。》(2007年7月20日23時41分 読売新聞)と報じている。住民向けのアピールとして自治体による独自の調査も悪くはないが、地震と事故の因果関係を解析する能力があるとは私には思えない。

同じことが国際原子力機関(IAEA)の調査受け入れについても云える。日本政府は23日に調査団受け入れを正式に通知したそうであるが、当初「事故収拾と原因分析に忙しいのでIAEAの調査団派遣に応じる時間的余裕がない」とか云っていたはずだ。確かに世界に向けて事故の内容を公表することは必要で、調査団受け入れもその為にはよかろう。しかし、われわれにとって最も重要なことは、地震と事故の因果関係をデータ解析により可能な限り明らかにし、その結果を原発の安全性向上に役立たせることである。その為に広範な調査権限を与えられた強力な事故特別調査委員会を政府主導で発足させることが先決であろうと私は思う。

NIKKEI NETは《東電は柏崎刈羽原発1号機着工翌年の1979年から85年にかけて、原発近くの沿岸や沖合の海底を音波調査した結果、四本の断層を確認。東電はこのうち一本が今回の地震の原因になった可能性があるとみているが、当時は「最近は活動していない」と過小評価し、耐震設計上、考慮していなかった。東電は中越沖地震を受け、同原発沖の断層を改めて調査する。(13:54)》(7月24日)と報じている。

私はそんな問題じゃないだろう、と云いたい。地震予知の研究のために過去数千億円の国費が使われたそうであるが、阪神淡路大震災の被災者である私にとっては一文の役にも立っていなかった。言葉は悪いがペテン師に大金を騙し取られたようなものである。しかしこの巨大経費を投入したことで、わが国土に張り巡らされている『断層』の分布図ぐらいは出来上がっているのではないかと思いたい。とすればそのデータを東電が有効に使えばよいのであって、元来国がすべきことを東電に押しつけているかのような印象を受けた。『断層』データはその評価をも含めて国民の共有財産である。その収集を一私企業にまかせる筋合いのものではない。

安倍首相は諸々の対応に追われている柏崎を訪れたり、事故内容の報告が遅いとクレームをつけるなど、選挙目当て?のパフォーマンスをするのではなく、政府の最高責任者として事故特別調査委員会を早急に設置すべきでると思うのだがいかがであろう。


母乳の持ち込みOK? アメリカでの授乳事情を追記

2007-07-22 11:22:08 | Weblog

昨日(7月21日)の日経夕刊(第二面)が米運輸安全局(TSA)の決定で喫煙用ライターの飛行機内への持ち込みを8月4日から解禁と報じていた。全席禁煙の航空会社が増えているのに何故?と思ったが、取り上げたライターの処理に年間約400万ドルの費用がかかっており、その費用削減にもなるというので一応納得した。

ところが分からないのが「母乳もOK」との見出しである。《TSAは赤ちゃん用の母乳の持ち込み規制も緩和。これまでは乗客が乳児と一緒でなければ許可していなかったが、乳児を同伴していなくても持ち込めるようになる。検査場での申告が必要。》とその内容を説明している。

母乳とは母親の乳(新明解)、母親の乳房に蓄えられているものであろう。それをわざわざ哺乳瓶にでも絞り出して持ち運びするのだろうか、と私は怪訝に思った。母乳の持ち込みがいけないのなら、乳児を抱えたお母さんは飛行機に搭乗前はお乳を搾り出さないといけないことになるが、今までそのようなシーンに出会したことはない。また乳児を同伴していない母親が母乳の持ち込みを検査場で申告するとは、おっぱいを検査官に見せるのだろうか。これもなんだかおかしい。一晩考えても疑問が解けないので、もう少し調べることにした。

New York Times、「U.S. Will Allow Most Types of Lighters on Planes」(By ERIC LIPTON Published: July 20, 2007)の見出し記事の中に以下の一節があった。

《A ban on liquids in containers greater than three ounces, which was imposed last summer after the disruption of a plot based in London to blow up planes headed to the United States, will remain in effect, but the security agency will modify its rules related to breast milk. Passengers will be allowed to carry breast milk in quantities greater than three ounces as long as it is declared for inspection at the security checkpoint. Currently, breast milk is allowed only if a passenger is traveling with an infant.》

約90cc以上の液体を入れた容器の飛行機内持ち込み禁止は変わらないが、母乳(breast milk)に関しては90cc以上でも検査場で申告すれば持ち込みを認められる、というのである。これで容器にいれられた母乳であることがはっきりしたが、母乳をわざわざ容器にいれて保存するというのがアメリカでは日常のことなのだろうか。まだ分からない。

Wikipedia(英語版)の「Breast milk」の項目にそのヒントがあった。

《Most women who do not breastfeed use infant formula, but breast milk donated by volunteers to human milk banks can be obtained by prescription.[citation needed] Cow's milk is recommended as a substitute, but only for children over one year old.》

アメリカではボランティア女性が母乳を『母乳銀行に献乳』するシステムがあり、医者の処方箋があれば乳児を抱えた母親がそれを利用できるようである。飛行機内への持ち込みがわざわざ取り上げられるほど利用者が多いのであろうか。ところ変われば品変わる、この点が明らかになってようやく「母乳持ち込みOK」の意味するところが見えてきた。私に余計なことを想像させた日経夕刊の記事は、書いた当人にも内容が分かっていたとは思われない。自分にも分かる記事を書いて欲しいものである。

追記(7月22日)

「Bottle feeding with expressed breast milk」によると、アメリカでは母親が自らの母乳を手で、もしくは手動・電動搾乳器で搾りだし、細菌などに汚染されないよう注意して容器に保存し、哺乳瓶で乳児に授乳することが極めて普通に行われているとのことである。私の認識不足だった。初乳時には24時間に300-500ccだった母乳が、2、3週間経つと600-700ccも出るようになるとのことである。これなら日本でも自給自足が可能であろう。日本のお母さん方、いかがでしょうか。

ハリー・ポッターで獲らぬ狸の皮算用

2007-07-21 17:28:56 | 読書

Amazonから「Harry Potter and the Deathly Hallows(Harry Potter 7)」が届いた。配達指定日7月21日(土)時間8時01分以降、とラベルが貼られている。解禁時間の午前0時1分(日本時間午前8時1分)に発売を開始と夕刊に出ていたから、それに合わせたのであろう。ロンドンでは大手書店の一つではファンと発売の様子も見に来た観客が計数千人もいたらしい。日本では閑散、丸善・丸の内本店では並んだのが約二十人、「ランダムウォーク大阪心斎橋店」ではたった二人だったとか。

Amazon.comで購入すると発売日に手元に届いてしかも40%引きで送料ゼロである。電車に乗って定価?で買いに出かける人の気が知れない。ロンドンの本屋では定価だったか割引率が高かったのか、気になるところである。

ハリー・ポッターのファンタジーに惹かれたのは当然のことであるが、私はMary GrandPreによる挿絵が気になった。鉛筆画のようで、作品の雰囲気とよくマッチしている。ところが私には息子の鉛筆画の方が挿絵としてはピッタリ来るように思われたのである。彼の作品を一つお目にかける。



いつまで経ってもうだつが上がらない息子の独り立ちに、彼の鉛筆画家としての才能をハリー・ポッターの著者に売り込むことを真剣に考えたのである。もし運良く挿絵画家に登用して貰えれば間違いなく一財産は築くことができよう。そうなれば後は芸術一筋に邁進すればよいのである。私の提案が唐突に感じたのか、肝腎の息子から積極的な意思表示が無いままに二巻目、三巻目と刊行がつづき、遂に最終の七巻目が出てしまった。

息子にかける夢は潰えたが、待てば海路の日和やら、と悠然と構えられるのは年の功であろうか。

原子力発電所耐震安全性『大実験』を生かすために

2007-07-20 13:23:37 | Weblog
新潟県中越沖地震の震源は原発の9キロ北の深さ17キロのところだという。しかもマグニチュード6.8という巨大地震にも拘わらず、柏崎刈羽原子力発電所での計60数件程度の機器の故障や破損で済み、放射能洩れなどの実態が次々に伝わってくるものの、現在までのところ、地域環境への影響は微少のようであるので、ひとまず胸をなで下ろした。

柏崎刈羽原子力発電所の1~7号機すべてを、発電用タービン関連の屋外貯蔵タンクなどの安全性が確保されていないことを理由に、柏崎市が消防法に基づく緊急使用停止命令を出したのも、地元住民の不安を考えると、至極妥当な処置である。原発施設の十分な点検と安全性の確認が急がれるところである。

ものは考えようである。阪神淡路大震災を経験した私は、柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の全ての建物が損傷を蒙ることもなく、そのままの形で残ったことに感動すら覚えたのである。自動停止機能も正常に作動した。科学と技術の勝利である。

しかし変圧器で火災が発生しその消火に手間取ったことが、付帯施設の脆弱性を国民に露呈した。この問題をはじめとして、いろいろと「想定外」の問題が指摘されだした。大いに結構なことである。原子力発電所の耐震安全性をますます高めるためにも、思いがけぬ『大実験』で集積した貴重なデータを積極的に生かす手段を講じるべきである。その調査研究に国の主導による科学者・技術者の組織化が望まれるところである。そしてその成果は既存の他の原子力発電所の安全性の再検討にも直ちに生かされるべきで、関係者の獅子奮迅の働きを期待したい。


サーキットブレーカーが何故働いたのか

2007-07-19 19:59:46 | Weblog
昨夕のこと、ドアフォンがなった。隣のおばあちゃん(といつも呼んでいる)である。外出先から帰ってきたら電気が切れている、お宅も停電ですか、と聞く。わが家にはちゃんと電気が来ている。おばあちゃんは息子さん夫婦との三人暮らしで、昼間は一人でお留守番。でもまだ80歳代の始めで元気に出歩いておられる。息子に連絡するにも停電で電話が繋がらないし、日暮れ時で暗くなっていくのが心細いとおっしゃる。見ましょうか、とお宅に上がった。

サーキットブレーカー・ボックスの主電源スイッチが落ちていた。その原因が分からないまま、とにかくリセットで復旧させた。しばらく様子を見ていたが電灯はそのままついている。焦げるような臭いとか、異常に気付いたらすぐに知らせてくださいね、と言い残してた。

その後火の手の上がることもなく静かな夜を迎えた。事無きを得たようである。しかし主電源スイッチが作動したとはやはり異常である。そういえばサーキットブレーカーを復旧させたときに、電灯はついたしどこかの部屋からテレビの音声が聞こえてきた。おばあちゃんが出かける前に消し忘れたのだろうか。洗濯機でも自動運転にしていて、洗濯水がコンセントあたりに飛び込み、ショートしたのだろうか。わが家で地下ガレージの照明具が天井からの漏水で短絡して、ブレーカーが飛んだことがあったが、その時はその回路分だけだった。主電源とはどうも腑に落ちない。

考えているうちに一つ思い当たった。わが家の裏の土木工事である。阪神淡路大震災でこのあたりの多くの建物が倒壊して、その後更地になっていた。その用途がようやく定まり、土木工事が始まったのである。その一部がわが家のささやかな裏庭兼野菜畑になる予定である。昨日も窓のすぐ外に油圧式ショベルがせまり、ゴジラが襲ってくるような迫力があった。



地面を掘り返すときの衝撃か、震度1程度のゆれが頻繁に起きていた。この揺れが原因で、機械的に何か不都合なことがあって、設定が甘くなっていたブレーカー・スイッチが衝撃で外れたのではないかと想像したのである。部分回路のブレーカーが外れずに、おおもとが切れる可能性が簡単に思い浮かばないからである。

設置された場所によっては、サーキットブレーカーが地震などの震動を感じては自動的に電気を遮断しても良いのでは、とふと思ったが、揺れによるサーキットフレーカーの作動はもう一つしっくりこない。何か隠された原因があるような気がする。折があればお隣さんにしっかりと聞いてみようと思う。

アニヤ・ハインドマーチのエコバッグて何だ?

2007-07-18 00:08:35 | Weblog
京都でのお稽古の帰りに四条大丸に立ち寄った。地下の入り口辺りがいつもと様子が違う。工事中のような柵が階段に沿って設けられて、どうも地上から続いているようだ。それに囲まれているのは地べたに座り込んだ人の群れ、男も女も、そして結構年輩者もいる。でも場外馬券場的な雰囲気もする。ちょっと得体が知れなかったので、係員らしき人に行列の理由を尋ねた。アニヤ・ハインドマーチのエコバッグの売り出しだそうで、明朝(7月18日)売り出しなのに徹夜覚悟で早くも並んでいるのである。価格は2100円とのこと。

アニヤ・ハインドマーチのエコバッグと聞いても何も知識はないし、ブランドにしては価格が安すぎる。帰ってインターネットで調べたらちゃんと出ていた。《1年間に世界中で消費されるレジ袋(プラスティック・バッグ)は、5000億枚とも1兆枚とも言われ、環境破壊の要因のひとつになっている。そこで、ショッピングの際にレジ袋代わりに使え、かつデザイン製の高いバッグを、リボンのロゴで有名なアニヤ・ハインドマーチが発表した。》とのことである。

なるほど、と分かったが、これだけでは長蛇の列の理由は分からない。実はそこの人がそっと洩らしてくれていたのである。2100円のバッグが?万円に換金されるとのこと。「ヒャー、驚いた」なのである。場外馬券場的雰囲気の所以が分かったような気がする。『並び屋さん』がかなり混じっているのだろう。一方では新潟中越沖地震で被災者が1万人以上も避難生活を送っているのに、その対比がイヤハヤである。

そして一澤帆布さん、兄弟げんかなんかせずに、こういうところに目を向けておればよかったのに。