日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

豊岡のバッグ 天橋立のあさりうどん

2009-09-16 18:03:16 | 旅行・ぶらぶら歩き
前日の大雨とうってかわりとても気持ちのよい秋晴れになったので、日曜日の朝、はやばやと家を出て、物好きにも豊岡の鞄屋巡りに出かけた。つい最近、梅田の大阪第1ビルの地下にある小さな店のショーウインドーに、店主のこだわりを感じさせる鞄が並べられていたので眺めていると、店員さんに声をかけられ、話をしているうちにショルダーバッグについ手が伸びた。厚みを感じさせない帆布製の頭陀袋のようなもので、気軽になんでもほうりこめる。それでいてA4サイズのフォルダーや500mlのペットボトルも難なく入るので気に入り買ってしまった。豊岡の製品と言うことだったので、豊岡に行けばもっといろいろと見られそうに思い飛び出したのである。

六甲北道路から中国自動車道に入り、舞鶴若狭自動車道、北近畿豊岡自動車道、そして一般道を乗り継いで豊岡に到着、JR豊岡駅横の有料駐車場に車を駐めて街の散策に出かけた。まずは腹ごしらえ。駅にある案内所で教えて貰った店で海鮮どんぶりと岩がきが美味しそうだったので欲張ってそれも注文、うん、美味しかった!



豊岡駅から大開通りという商店街が東へ1キロほど延びているが、日曜日とあってか店のほとんどが閉まっており、実に閑散としている。小泉郵政改革で地方が疲弊したそうであるが、この様子を見るとそれよりも遙かに以前からこのような状態であったのではなかろうか、と思った。ほぼ突き当たりで南北に走る「カバンストリート」と交差する。このストリートには確かに鞄屋が点在しているが、私のような日曜日に訪れる客はお呼びでない、とばかりに半分は店を閉めていた。まだ雪に埋もれる季節ではないのになんとも活気が感じられない。

一軒、どうも見覚えがあるバッグを飾っている店があったので入ってみた。見覚えがあるのも道理、三宮センター街にあるナガサワ文具店に麗々しく展示されているバッグ類の製造元兼店舗だったのである。店の人と話をしている間にも、2階からミシンの音が聞こえてきた。ちょっと気になるデザインのバッグを手にとって子細に点検する。撥水性のクロスに革がなかなか上質で、縫製も丁寧でまさに芸術品。手提げがついているがリュックにもなる。腕の力が衰えてきたときに出番かな、ととみこうみしていると、女性店員にナガサワ文具店に置いている品物よりこちらの方が材料の関係で4000円ほど高いけれど、同じ値段にしますと囁かれて、あえなく陥落してしまった。家に帰って眺めてみると、こんなのを背負っていると女の子に見えるのではないかと気になりだす。


このまま一路帰るにはまだ時間が早いので、何十年ぶりかに天橋立に寄ることにした。駐車場に車を駐めると、5時までには車を出してくれと言う。1時間少々に1000円とは高いと思ったが、地域振興に協力する。駐車場から二、三分のところにある回旋橋を渡ろうとすると、折しも橋が回り始めてその手前で待つことになった。そして目の前を大型の船が通って行く。これが実は思いがけない出会いであった。



松原をしばらく歩くと与謝野寛・晶子夫妻の歌碑があった。

   人おして 回旋橋のひらく時
           くろ雲うごく 天橋立

と晶子が昭和5年に歌った歌が刻まれている。その頃は人手でどのようにしてあの橋を回していたのだろうか。動力は違っても橋の動く瞬間に立ち会えたことがなによりの収穫に思えた。



回旋橋の先の石橋のたもとにある茶店に「あさりうどん」の張り紙があるのが目につき、帰りつくまでにまだ2時間はかかるので、ちょっと虫押さえに。思いの外美味しかった。

京都縦貫自動車道をお使いください、というような標示が出ていたので宮津天橋立ICより入る。綾部JCTで舞鶴若狭自動車道につながるから中国道の神戸三田まで1000円で行けると思ったのに、出るときに1750円と告げられた。途中で高速道を出たことはないのに何とも不思議、どうも分からない。それでも天橋立を出て2時間ほどで家に辿り着いたからよしとする。



イチロー選手 山中伸弥教授

2009-09-15 20:49:58 | Weblog

朝日朝刊の一面を嬉しいニュースが飾った。イチロー選手の大リーグ9年連続200本安打の新記録達成の偉業と、iPS細胞研究のパイオニア、京都大学山中伸弥教授のラスカー賞基礎医学部門での受賞である。ともに海外から飛び込んできた。

シーズン始めには胃潰瘍を患い、また最近ではふくらはぎの故障で戦列を離れたイチロー選手に私は不安感は抱かなかったものの、9年連続200本安打という大リーグ新記録達成が遅れることにはやきもきした。ところが戦列に復帰するや、欠場をものとしない速いペースで大リーグ108年ぶりの快挙を成し遂げたのだからもうたまらない。イチロー選手の飽くことを知らない研究熱心と、弛まざる日々の実践が偉業達成の裏にあることを思うと、日本人一人ひとりに、いかなる道を歩むにせよ、そのための努力を怠りなく積み重ねようという意欲が湧いてくるのではないだろうか。私はまずは一弦琴と朝鮮語である。

山中伸弥京大教授の万能細胞(iPS細胞)研究に寄せてでこのように述べたことがある。

元日の朝日朝刊に話題の人、山中伸弥京大教授に朝日賞贈呈の記事が出た。「万能細胞作成に関する新手法の開発と実証」によるもので、この成果がマスメディアに大きく報じられてから2ヶ月も経たないうちの決定である。山中教授の受賞がおめでたいのはもちろんのことであるが、授賞を決めた朝日新聞文化財団の素早い対応も賞賛に値する。これを皮切りに山中さんは国内外の栄誉ある賞を受賞していかれることだろう。英雄の誕生である。
(2008年1月2日)

ここで私は朝日新聞文化財団の素早い対応を評価することで、山中教授のわが国におけるさらに重い賞の受賞が相次ぐことを期待したのであるが、残念ながらアメリカのラスカー賞に先を越されてしまった。選考・発表時期との兼ね合いがあるのかもしれないが、わが国が後れをとったことは返す返すも残念である。科学立国日本の面目に賭けて、外国の後追いを繰り返す愚だけは避けて欲しいと思う。


社民党 やはり野におけ れんげ草

2009-09-14 20:28:20 | Weblog
日曜日の朝、7時半からの報道ワイドショーを観ていた。いいな、と思ったのが、民主党の細野豪志議員と社民党の辻元清美議員である。細野議員は、問いかけをそらさずに真正面から、なかなか落ち着いた語り口で自分の考えを述べていた。40歳代かなと思っていたらなんと38歳、まさに私の好きな年齢なのである。民主党の小沢代表が総選挙での大勝をうけて、後は若い世代に日本の将来を託して政界の舞台から姿を消せば千両役者だと思ったが、やはり私の思い通りにはことが進まなかった。せめて細野議員のような若い世代がどしどし政治の表舞台に登場してきて欲しい。山本モナ嬢の眼力、なかなかなものである。

一方辻元清美議員は、いわゆる「秘書給与流用事件」にからんで2002年に衆議院議員を辞職し、この事件で有罪判決を受けたが、2005年、2009年の総選挙では当選して、現在は社民党の国会対策委員長である。昨日のワイドショーではすでに与党側の一人としての出演であった。政党人としてどん底まで落ちながらまた政界に復帰を果たした執念とバイタリティには頭が下がる。人生の辛酸をなめたことが話し方にも落ち着きを与えたようでよい印象を受けたが、その反面、居場所が違うな、とも思った。

私は今でも辻元議員の顔を見ると、反射的に「蛙のつらに小便」を思い出す。「したたかさ」に対する私なりの賛辞であるが、彼女のこの天稟は与党を攻撃する野党側にあってこそその力を発揮するものである。与党側では宝の持ち腐れになることを自ら覚って欲しいものである。同じようなことが福島瑞穂党首についても言える。攻撃側に立ってこそなんとか精彩を出せるのに、鳩山内閣の閣僚に嬉々として入ることでその器量を大きく下げてしまった。asahi.comはこう伝えた。

 社民党の重野安正幹事長は11日午前、入閣する福島党首のポストとしてこれまで求めていた雇用担当相を撤回し、環境相を希望する考えを民主党の鳩山代表に電話で伝えた。同時に環境副大臣も同党に割り振るよう求めた。鳩山氏は「分かりました。検討します」と応じたという。福島党首は10日の記者会見で「役所があって部下に権限がふるえるところがいい」と語っていた。
(2009年9月11日11時50分)

「部下が・・・」の発言は私もテレビで耳にしていて、違和感が大きかった。「こういう仕事をしたい」と熱弁をふるうのならともかく、なんと「部下に権限がふるえるところがいい」とは、つい本音が出たのだろう。

いずれ社民党は連立から弾き出されるだろうが、私が社民党に期待するのはあくまでも時の政権に対する野党としての批判精神である。社民党を代表する二人の女性議員の言動に私の感じたこと、 やはり野におけれんげ草、であった。



100歳以上の高齢者で女性が86.5% この異常な男女比の原因は?

2009-09-11 20:33:24 | 放言

100歳以上の高齢者が4万人を超えたそうである。日経夕刊にあるこの図でも、100歳以上の高齢者の急増振りが鮮明である。しかしそれと同時に、その男女比があまりにも女性側に傾いていることに、男性の一人として私はやるせない思いを抱いた。女性が86.5%を占めているというのである。出生率の男女比では男の方が女より高い。男児の方が生物的に弱くて死にやすいので、繁殖期にちょうど男女比のバランスが取れるように仕組まれたものである、なんて話を昔聞いた。真偽のほどは知らないが、なるほど、と私などは素直に頷いてしまう。しかし生物的と言えば、その違いは性染色体が男はXYで女がXX、即ち男がYなるものと持っているだけ、もしくはXを揃いで持っていないだけで、これほど生存率に差が出てくるものだろうか。私は社会的には長年にわたり男が女に虐げられ、男が女に奉仕させられてきたものだからストレスが異常なほど蓄積し、それが男の生存率を極度に押し下げたのだろうと思う。

どの程度男性が女性に奉仕させられているのか、その一例を今回の総選挙の結果で見ても一目瞭然である。480人の衆議院議員のなかで女性議員は54名で、全体に占める割合はたった11.3%である。参議院では242の定員に対して女性議員は43名で、こちらは全体の17.8%と国政への寄与はやや高めであるが、衆参両院を合わせると定員722名に対して女性議員は97名だから、平均して13.4%となる。この数字、なんと驚くなかれ100歳以上の高齢者中、女性の占める割合の86.5%とちょうど補完関係にあるではないか。偶然の結果ではない。これこそ男性が女性に虐げられてきた如実の証なのである。

世界の平和を守り、より豊かな国民生活の実現に向けて、国会議員の昼夜を分かたぬ粉骨砕身があってこそ、わが国の安寧秩序がたもたれ、世界にも類を見ない長寿社会が生まれたのである。それなのに女性の寄与はたったの13.4%、あまりにも低すぎる数字である。有権者数は男女ほぼ同数であろうに、女性が男性を圧倒的に選ぶ。その仕事がいかに過酷でその寿命を縮めるかを天性的に知っているから、同性を選ぶような愚は犯さない。したがって男性は目覚めるべきなのである。男ばかりがストレスを過剰に背負い込むことはない。女性にも重荷をもっと背負わせて、男性と同等の生命維持へのリスクを分担させるべく、われわれ男性は声を一にしようではないか。

なんて、一度言ってみたかった。

私好みの変わった本屋 関西編

2009-09-10 16:04:31 | 読書
先日、大阪南まで足を延ばしてやや風変わりな本屋を訪れた。『地下鉄心斎橋駅から御堂筋西側を南へ徒歩8分。「三津寺町交差点」を右折してすぐ』にあるスタンダードブックストアである。その風変わりさ加減はまずこのホームページを訪ねてみると分かる。『本屋ですが、ベストセラーはおいていません』がその見出しである。さらに置いているもののユニークさは、私が下手な説明をするより、このページを繰ってみるとよい。20ページ捲ってもまだまだ出てきそうなので中断した。それよりなにより、本屋に直接行った方がよい。

ビルの1FとB1Fを占めており、両フロアともかなり広い。適当な高さの台や本棚が一面に広がっているけれど、結構見通しがきく。それでいて配置が工夫されているせいか、コーナーを回ると次ぎに何が出てくるだろうと期待感がかき立てられる。そして期待感は裏切られない。本だけに留まらず、いろんなこだわりグッヅというか雑貨が所狭しと並べられている。それなら、と簡単な動画専用カメラのSALを探したが、それは置いていなかった。この店にぴったりの商品だと思ったのであるが・・・。

B1Fにはゆったりとした感じのCafeがある。『カフェではお会計前の本でも持ち込んで検討できます』となっており、コミックやパックされた商品以外はOKである。私からすると孫に近い年格好の若い男女が物静かに本を読んだり、物書きをしたりしていた。時には品のよい白髪の老紳士が座っているのも雰囲気作りに役立つだろうと、私もその空気に溶け込んだ。全席禁煙なのがよい。書籍の間を歩き回ったり、またCafeに舞い戻ったり、心豊かな一日を過ごせそうである。

この本屋のことは京都に住んでいる私の次男から聞いていたのであるが、京都にも似たような感じの本屋がある。恵文社一乗寺店である。『「とにかく新しい本」を紹介するのではなく、一冊一冊スタッフが納得いくものを紹介したい。ただ機能的に本を棚に並べるのではなく、思わぬ出合いにぶつかるような提案をしたい。表紙の美しい本はきれいに飾り、眺めて楽しんでいただきたい』がここの特徴をよく表している。規模はスタンダードブックストアよりかなり小ぶりであるが、 こだわりのある品揃えについ一点ずつ手に取ってみたくなるような、そういう本屋である。この本屋にはアンフェールというギャラリーが併設されていて、実は次男が以前ここで何回か個展を開いたことがあるので、その頃からの知り合いであった。ところがこの恵文社がどうしたことか2008年に「世界の素晴らしい本屋さん10選」の第九位に選ばれていて、これをひろぶんさんがブログで紹介している。

ベストセラーに惑わされることもなく、新しい本にこだわるわけでもない、それでいて本大好きな人には格好のオアシスである。



民主主義を破壊しかねない民主党・社民党・国民新党

2009-09-08 18:42:57 | 放言
午後6時現在、民主・社民・国民新の連立協議が難航しているそうである。安全保障問題で折り合いがつかないとか。そんなこと、最初から分かっていることである。最善の策は安易な妥協をお互いがせずに連立の企てを白紙に戻すことである。

私はなぜ民主が社民・国民新に連立協議を打診と思いきや


民主党からすると、社民との連立は衆議院議席数に関する限り屋上屋を重ねるだけで、なんのメリットもない。それどころか憲法論議、防衛問題ではそれぞれの主張の隔たりが鮮明になって、数合わせのみしか念頭にない民主党(と私は思っている)にとって、連立に向けての協議は徒労感を生むのみであろう。

と述べているように、この連立協議に否定的である。ところがその後、何回か重ねられた協議の経緯を見るに、社民党、国民新党が変な勘違いをしており、民主党がそれを正すどころか優柔不断であることが、結局は民意をねじ曲げてしまうことを恐れる。

民意とは今回の総選挙で獲得した議席数で、民主党308に対して社民党が7、国民新党が3で、合わせてもただの10である。この10が308に対してなぜ自分の主義主張を飲み込ませようとするのだろうか。思い違い、思い上がりとしか言いようがない。

民主党も民主党である。数合わせを最初から考えることはさらさらない。国民のためになる政策を実行するとの確信があれば、そのための法案審議において、他党であろうとその支持を得るべく、正々堂々と論戦を挑み説得にかかればよいではないか。国民の目は節穴ではない。それぞれの党の振る舞いを冷静に見守っている。民主主義の破壊に連なりかねない連立協議は即止めるべきである。

9月7日の朝日朝刊に次のような記事が出ていた。

全敗関西 公明の苦悩

辛うじて比例区で議席を守った議員は「傲慢すぎた。身の丈であるべきだった。三十数議席で300議席を持つ大政党を振り回し、自分たちの力を錯覚した。不信感が相手にも募った」と総括した。

この公明党議員の言葉を社民党、国民新党にぶっつけてやりたい。

Googleによる検索順位の表示がIEとFirefoxでなぜ違うのだろう

2009-09-07 13:05:04 | Weblog
Firefoxが3.52になっても依然として遅い。それにアドオンも正常に働かない。それでIE8.0.6も同時に使っている。OSはWindows XP sp3である。そのせいで偶然にもGoogleによる検索順位の表示がブラウザーによって異なるという面白いことが分かった。まず『内井惣七著「ダーウィンの思想 ―人間と動物のあいだ」』をGoogleで検索すると、私の記事がFirefoxではトップに出てくる。


ところがIEでは三番目である。よく見るとFirefoxでは私の下位にランクされたAmazonとかJBOOKのようなネット書店がIEではより上位に来ているのである。


アレッと思い、同じくFirefoxでは私の記事がトップに来ていた『アフリカ家庭料理』をIE上で検索すると、やはり順位が入れ替わって明らかに店の広告と思われる記事が上に来ている。次ぎの画像は最初がFirefoxで二番目がIEである。



ところが商売がらみのキーワードではなくて、『金大中氏を悼む』の検索結果は、FirefoxでもIEでもまったく同じ順位表示になっていて、私の記事が第四位に出てくる。


このようにGoogleによる検索順位の表示がIEとFirefoxで異なることを数日前に気付いたが、ここに図示した検索結果はつい先ほどのものである。

ちょうど「Google グーグル革命の衝撃」(新潮文庫)を買ったばかりだったので一読したが、検索順位を上げるためのビジネスのあることは紹介されているものの、検索順位の表示がブラウザーにより変わるなんてことはどこにも出ていなかった。この本は検索順位を決める検索アルゴリズムは秘密性の高いもので、グーグル内部でも検索アルゴリズムを完全に知る人は数人しかいない、なんて紹介している。では検索順位の表示が現実にブラウザーにより異なるのは、グーグル側の問題かブラウザー側の問題か、どちらなんだろう。

『ダーウィン』の場合、IE上でネット書店がすべて私の上位に来ているわけではない。上に来ているのはAmazonとJBOOKだけで、Yahoo!、livedoor BOOKS、e-hon、オンライン書店ビーケーワンなどはすべて下位に来ている。AmazonとJBOOKだけが密かにGoogleに賄賂を渡したとも思えない。また両者を比べるとこれらのネット書店の順位が微妙に入れ替わっていることも分かる。ブラウザー側がGoogleの検索順位を勝手に変えられるとは考えにくいので、Google側がどのブラウザーから検索キーワードを入れたかを識別して、それを検索結果に反映させていると考える方が素直であろう。ひょっとすると検索連動型広告の潜在的スポンサーに対する一種のアピールかもしれない。いずれにせよIEの第一面に出てくる10件のうち、私のまともな?読後感を除いてはみな商売の売り込み記事である。商売がらみの記事をまず上位にもってくるような検索アルゴリズムの知的レベルはまだまだ低いといえよう。裏返しに言えば、まだまだ進化が期待されるというものだ。



「最先端研究開発支援プログラム」あれこれと民主党への注文

2009-09-06 09:57:12 | 学問・教育・研究
9月4日の夕刻、最先端研究開発支援プログラム「中心研究者及び研究課題」の決定を内閣府が発表した。その内容は「中心研究者及び研究課題」の選定結果で見ることが出来る。asahi.comは

 課題別では、ナノテク、環境、材料、情報通信など「出口を見据えた研究開発」が25件を占め、基礎科学研究は5件だった。11人は東京大学教授らで、東北大学、京都大、大阪大、慶応大から複数の研究者が選ばれた。富士通や日立製作所、東レなど企業の研究者も4人入った。
(2009年9月4日22時20分)

とも伝えた。やはり基礎科学研究の比重は軽く5件に留まった。かりにこのプロジェクトが動き出すにせよ、私が恐れた日本の科学研究基盤を崩壊が最小限に食い止められそうである。

生物系で私が何とかついて行けそうな領域で、審良静男氏の「免疫ダイナミズムの統合的理解と免疫制御法の確立」とか、山中伸弥氏の「iPS 細胞再生医療応用プロジェクト」などは、申請するのが当然、と期待されて申請した結果のように思う。また私は不案内であるが、岡野栄之氏の「心を生み出す神経基盤の遺伝学的解析の戦略的展開」とか、柳沢正史氏の「高次精神活動の分子基盤解明とその制御法の開発」なども、この領域では知る人ぞ知るの存在だったのではなかろうか。もしそうなら今回のような大仰なセレモニーをしなくても、「天の声」がどこかでつぶやけばそれで済んだことである。

ついでに感じたままを述べておくと、島津製作所の田中耕一氏が「次世代質量分析システム開発と創薬・診断への貢献」で選定されている。島津製作所とあろうものが、田中氏の研究を支援するのに税金を当てにしないといけないとは、そこまで会社が逼迫しているのだろうか。外村彰氏の日立も同じである。

何人がヒアリングを受けたのかはっきりしないが、公表された議事録では、『ヒアリング対象とする必要があると思われる提案80件を上限に選択し』とあるので、80人がヒアリングを受けたとしよう。応募総数は565件、そして選定手順に『(3)全件審査の原則 構成員は、原則として全ての提案を審査する。特別な事情があり全ての提案の審査が困難な場合には、構成員は事務局に連絡し、必要な調整を行う。』とあるから、ワーキンググループの構成員にとっては、565件を80件に絞るまでも大変な作業であっただろう。本庶座長代理の言葉が記録されている。

私も昨日、大分一生懸命やった。それでわかったことは、自分の専門分野はやれるということ。しかし、専門外のところは、読むのに物すごく時間がかかる。理解しながら、つまり、字面だけ読んでも意味がないわけで、したがって、このままこの時間で私がやるとすれば、私がやることは専門分野外でちょっとおもしろそうなものを何件かピックアップする。そのほかは、自分がわかるところからピックアップするという形にならざるを得ない。ほかはちょっと、ページをめくるだけで大分時間がかかるから、現実問題としてそういう形にならざるを得ない。(後略)

極めて率直、明快である。全件審査の原則というような「お役人的発想」ではなくて、構成員が自分の得意とする分野で名乗りをあげて、その分野での提案を集中的に精査することで、より申請の理解を深めるべきではなかったのか。そうすればヒアリングの質疑応答を通じて、提案の評価すべき要点がより浮き彫りされたことだろう。ヒアリングは『持ち時間:25分(発表10分(時間厳守)、質疑10分、(ヒアリング対象者退席後)採点時間5分)』であったようだ。提案の内容がすでに構成員によって精査されているのに、なぜその形式的な繰り返しに過ぎない口頭発表が必要なのだ。ヒアリングに入ったら直ちに質疑応答に入るべきなのである。質疑応答に入る前に、主要な質問予定者が構成員に質疑のポイントを説明しておけば、十分質疑の目的は達成されるはずである。ヒアリングを受けたにもかかわらず落選した申請者には、ヒアリングを含めてその審査方法に数々の不満があることだろう。その不満を何らかの形で集約し、研究費申請の審査のあり方を今後ともより合理的なものにすべく役立たせていただきたいものである。

「最先端研究開発支援プログラム」のぜひはともかく、選定に至る過程がかなり迅速に公表されているので、これはそれなりに評価されるべきであろう。「最先端研究開発支援ワーキングチームスケジュール」はあらかじめ公表されている。最終的には『8月下旬以降 総合科学技術会議本会議・中心研究者及び研究課題の決定』と定められていたので、9月4日の読売新聞の記事は

 同基金は、民主党も賛成して創設された。しかし、政権交代直前での選定について、民主党の岡田幹事長は同日、「この時期に決まることに違和感を覚える。駆け込み的なものは精査して、場合によっては凍結もありうる」と語った。
(2009年9月4日21時08分 読売新聞)

と伝えるが、岡田幹事長の違和感というのは、このことに関する限りいわれなき思い込みである。

予算の凍結はまったく政治的な判断である。私は凍結には賛成であるが、民主党はかりそめにも総合科学技術会議本会議が決定した中心研究者及び研究課題の個々に口を挟むべきではない。凍結するのなら「最先端研究開発支援プログラム」そのものの予算執行を停止すべきなのである。節度ある判断を期待したい。


久米三四郎さんのこと

2009-09-04 15:37:17 | 

昨日(9月3日)朝日朝刊社会面が久米三四郎さんの死去を報じていた。私のイメージにある久米さんに、83歳という年齢はてんでそぐわないな、と思ったのが第一印象である。

昭和31年の春、当時中之島にあった阪大理学部に神戸から通い始めた。家から通える大学、というのが五人兄弟の長男である私に両親が示した進学条件だったのである。生物学科に進んだが、化学も好きだったので分析化学の実習を選択した。当時は学科の壁は無いのも同然で、最初のオリエンテーションで教室主任の本城市次郎先生から、せっかく生物学科に来たのだから、卒業するときに履修した単位が数学だけだった、ということにはならないように、と釘をさされたぐらいであった。その分析化学実習で指導して下さった先生方のお一人が、当時助手の久米三四郎先生だった。質問攻めが私の趣味だったので、なにかとまとわりついたことだろうと思うが、具体的なことは何も覚えていない。先生と学生の接触はこの実習だけで終わってしまったが、後年、思いがけないことである関わりが生まれたのである。

私は理学部の助手になっていて、阪大理学部教職員組合の委員長をしていた。そこで久米さん(と呼ばしていただく)と対峙することになったのである。その当時、教職員組合はおもに事務職員の待遇改善などに取り組んでいて、理学部長との交渉などを通じて一定の成果を挙げていた。組織率は教員で三分の一から半分、事務職員はもう少し上回っていたかもしれない。わりと大きな組織だったと思う。この組合は日教組の傘下にあって、日教組の指令によりストライキめいたことも時にはやっていた。すると処分を受けるのは決まって事務職員で、教員(当時は文部教官といっていた)には甘いところがあって、そのせいもあってか、組合委員長は教員の指定席のようなもので、余程の事情が無い限り選ばれた教員はその役を受け入れるのが常であった。

私が委員長に就任したときは大きな問題が進行中だった。大阪大学で各学部にそれぞれある教職員組合を大阪大学教職員組合に統合し、各学部にあった教職員組合は、その支部とするとの動きなのである。理学部でも統合について侃々諤々の議論が湧き上がっていたが、久米さんはその統合に反対のお一人であった。理学部執行委員会では統合に決まり、それを組合員大会に諮ることになったが、統合反対派はもし阪大教職員組合に一本化されるのであれば、組合を脱退すると意思表示をして、一本化反対を迫った。私は立場上、反対派の人々に留まっていただくべく、時間を割いて一人ひとり説得に乗り出したのである。

久米さんを始めとして反対派の人々は、それまでも組合活動にも熱心に参加しており、考えも主張もはっきりしており、私は逆に教えられることが多かった。論点の細かいことはもう記憶にないが、一口に言えば反対派は今の「小さな政府」、「地方分権派」で、私も個人的には惹かれるところが多かった。それと理学部ではストライキ処分を巡って、裁判が進んでいた。ストライキに参加したことで処分された職員が、それを不当処分として提訴したのである。今はその中身には触れないことにするが、形の上では個人訴訟であるものの、教職員組合は職員の側に立って支援する立場をとっており、現実には久米さんはその有力な支援メンバーだった。もし組合が統合されると、この支援基盤が弱くなるなるのでは、と懸念されたことも統合化反対の一つの理由であった。

久米さんとは何回かお目にかかって、話し合いの時間は延べにすると数時間におよんだ。私の話にもよく耳を傾けて下さったが、一方では諄々と私を翻意させんとばかりにご自分の考えを述べられた。何が意見に違いの生み出しているのか、そこまで話し合って明らかになった以上、後はお互いが自分の信じる行き方を選択するだけだ、と納得ずくで話を打ち切ったのである。反対意見のものであれ、理性的にまた粘り強く自分の考えをぶつけることの出来る器の大きな人、とその人柄に打たれた思いがある。結局、私は阪大理学部教職員組合の最後の委員長となった。

久米さんが科学者としての健全な批判的精神を行動規範とし、行動する科学者として知る人ぞ知る大きな存在となられたのは、さらに時間が経ってからのように思う。記事に『反原発住民運動の「理論的支柱」「知恵袋」として知られた』とあったが、あのままの久米さんだったのだ、と私は思った。

私のあらまほしく思う日本人がまた一人、この世から姿を消した。



「最先端研究開発支援プログラム」か補正予算原則全面停止か

2009-09-04 09:23:01 | 学問・教育・研究
NHKは最先端研究開発支援プログラムについて次のように報じた。

最先端研究支援 60研究候補

政府が、国内の最先端の研究を集中的に支援する新たな制度の対象として、京都大学の山中伸弥教授が進めている新型万能細胞=iPS細胞の研究など、60の研究が候補に残り、4日の総合科学技術会議で30程度を決定することにしています。
(9月3日 6時15分)

一方、YOMIURI ONLINEは次のように伝える。

民主、補正予算を原則全面停止…未執行分

民主党は3日、政権発足後の2009年度予算執行について、補正予算の一般会計総額13兆9256億円のうち、未執行分の予算の執行を原則として全面停止する方針を固めた。

 予算の内容を精査し、災害対策など緊急性の高い事業は継続する。来週以降、継続事業の絞り込みに入る方針だ。
(最終更新:9月3日12時29分)

私は現行の「最先端研究開発支援プログラム」への2700億円の支出には基本的に反対で、支援内容を見直すのは大いに結構との立場をとっている。したがって補正予算原則全面停止には大賛成である。予算の執行停止は閣僚の裁量でできるため、減額の補正予算を組む必要はないとのことである。となると現政権の関係閣僚と民主党が早急に話し合って、なにはともあれ麻生内閣における塩谷立文部科学大臣が、総合科学技術会議での決定事項を先送りするのが先決であろう。関係者の迅速な対応を期待したい。