日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

鳩山首相が民主党代表であった頃の元本返済猶予発言とは

2009-09-29 21:32:38 | 社会・政治
「返済猶予制度の行方 やっぱり変な亀井静香金融・郵政担当相」を先ほど投稿してからネットを調べたところ、池田信夫blogの鳩山由紀夫氏のモラトリアム宣言が見つかった。2009年7月28日に鳩山由紀夫民主党代表が鹿児島に赴き、川内博史前衆議院議員のための応援演説をしたが、それを録画したYouTubeがここに張り付けられており、池田信夫さんは『総選挙で鳩山由紀夫氏は「返済猶予法案は川内博史氏のアイディアだが、私も応援する」と明言した』と紹介している。もしこの通りだとすると、たとえ文書に明文化されていなくても亀井静香金融・郵政担当相が強気になるのも分かるような気がするが、果たしてそうなのか、私なりにこの演説を聴いてみた。こちらは10分40秒版である。




6分25秒から35秒にかけて、『中小企業の方々の元本返済をしばらく猶予していただけるような○○○法案を私たち 検討していきたいと考えているんです』と鳩山代表は言っている。その前に6分2秒から12秒にかけては『元本の返済はなかなか難しいんです。でも利子の部分だけ返済することならようやくできるんです』の続きである。

まだ総選挙の告示前、7月28日のことであるから、厳密に言うと総選挙での演説にはならない。しかも元本返済猶予のための法案を検討したい、と言っているだけで、たとえば亀井氏が言っているような3年間の返済猶予ほどの具体性は何も無い。そして総選挙の告示に伴い出された民主党のマニフェストに記されたことは、直前のエントリーで取り上げたように

○貸し渋り・貸しはがし対策を講じるとともに、使い勝手の良い「特別信用保証」を復活させる。
○金融機関に対して地域への寄与度や中小企業に対する融資状況などの公開を義務付ける「地域金融円滑化法」を制定する。(民主党)

とあるだけで、返済猶予制度を正面に打ち出していない。すなわち7月28日の鳩山演説よりはかなり後退しているが、それはマニフェスト最終版を出すに至までの党内での論議を踏まえての結果であろう。したがって総選挙が始まり今に至るまで、鳩山首相が返済猶予制度を容認しているとは考えられないが、またその間の秘密ビデオでも飛び出してくるのだろうか。

追記(9月30日)

民主党代表時に元本返済猶予の法案のあり方を発言、その思いは今も持っている=鳩山首相

 [東京 29日 ロイター] 鳩山由紀夫首相は29日、中小企業の借入金返済猶予の問題について、首相就任前の民主党代表時に元本返済猶予の形での法案のあり方を発言したことを問われ、「その思いは今も持っている」と述べた。(中略)

 その上で、政権が発足し亀井静香郵政・金融担当相に仕組みを考えてもらっており、「あまりにも無茶な形にならない最終的な仕組みを作り上げていこうと考えている」と述べた。
(ロイター 2009年 09月 29日 18:48 JST)

返済猶予制度の行方 やっぱり変な亀井静香金融・郵政担当相

2009-09-29 17:03:53 | 社会・政治
国民新党のマニフェストでは、追い詰められた中小企業を守るためとして、

困窮する中小零細企業の経営資金の返済については、最長3年間の支払猶予制度を新設します。(国民新党)

とうたっている。これに対して民主党は同じくマニフェストで、中小企業の法人税率を現在の18%から11%に下げることを明記し、それに必要な所要額を2500億円程度と見積もっている。そして

○貸し渋り・貸しはがし対策を講じるとともに、使い勝手の良い「特別信用保証」を復活させる。
○金融機関に対して地域への寄与度や中小企業に対する融資状況などの公開を義務付ける「地域金融円滑化法」を制定する。(民主党)

と記している。このような公約部分が、新政権発足後の民主・社民・国民新三党連立合意では次のようにまとめられている。

▽中小企業に対する支援を強化し、大企業による下請けいじめなど不公正な取引を禁止するための法整備、政府系金融機関による貸付制度や信用保証制度の拡充を図る。
▽中小企業に対する「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」を成立させ、貸し付け債務の返済期限の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする。個人の住宅ローンに関しても、返済期限の延長、貸し付け条件の変更を可能とする。(三党合意書)

この三党合意に国民新党の『困窮する中小零細企業の経営資金の返済については、最長3年間の支払猶予制度を新設します』は姿を見せず、その代わりに民主党の公約とも言える「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」を成立させ、それに『貸し付け債務の返済期限の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする』の部分を付け加えていることで、国民新党への配慮を示すかのようである。国民の目にハッキリ見えるのはこれだけだから、亀井大臣が「モラトリアムも3党合意事項」(毎日新聞 2009年9月19日 東京朝刊)と言うのはただの強弁に映る。ついでに、上の強調部分にある『貸し付け債務の返済期限の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする』は、「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」が成立してから為される貸し付けについて適用されると受け取るのが国民目線と言うものだ。この部分が元警察官僚の亀井氏のいわゆる官僚作文で、その意味するところは国民新党の主張するモラトリウムそのものだとは言わせない。モラトリウムの発動で金融機関などの蒙る損害を補填するのかしないのか、もしするなら国民がいくら負担しなければならないのか、それをまず明確にすべきでもあるのに、今の段階では浪花節で留まっている。

毎日新聞によると

 亀井静香金融・郵政担当相は24日、金融庁で初の政務三役会議を開き、大塚耕平副金融相らに中小企業向け融資や住宅ローンを返済猶予(モラトリアム)する制度を法案化する作業を指示した。10月にも召集される臨時国会への提出を目指す。返済猶予制度には、金融界から反発が上がり、閣内からも慎重論が出ているが、亀井担当相は強気の構えを崩していない。
(毎日新聞 2009年9月25日 東京朝刊)

さらに

 モラトリアムは、中小企業や住宅ローン利用者を対象に、元本返済を3年程度猶予することが想定されている。過去に例のない政策で、銀行経営にも影響があることから、平野氏や藤井裕久財務相は慎重な対応を求めている。鳩山首相も米ピッツバーグで24日夜(日本時間25日午前)記者団と懇談し、「3党でよく議論し、金融に関する閣僚委員会でも検討して、結論をできるだけ早く出すように努力することが大事だ」と述べた。

 これに対し亀井氏は「総理は私に任せると言っている」として、担当大臣として自らの主導で法案をまとめたい考えだ。中小企業の資金繰りが厳しくなる年末までに成立させるため、10月下旬にも召集される臨時国会への法案提出を明言している。
(asahi.com 2009年9月27日9時57分)

と亀井氏が言っているようだ。また今日の閣議の後でテレビで次のような発言をしている。


テレビに出演した亀井氏は「総理は私に任せると言っている」式の発言をこれまでもよくして自分の主張を正当化しようとするが、言った言わぬの話は当事者限りにしておくべきで、そう言う客観性を欠く独りよがりの発言に国民はそっぽ向くだけである。私が上に述べたように、三党合意ではこうであるが、かくかくしかじかの話し合いで、この部分の真意はこうであることを確認し、これを実行に移すことにした、とその経緯を国民が納得できるように説明すべきなのである。亀井氏の発言が現時点で独りよがりであることは、鳩山首相の次の発言でも明らかである。

鳩山首相「モラトリアムは3党合意ではない」

 鳩山首相は28日、記者団に対し、銀行からの借金の返済を猶予する措置(モラトリアム)について、「モラトリアムということまで(連立3党で)合意しているわけではない」と述べた。亀井金融相は、モラトリアムが3党の合意に含まれていると繰り返していたが、首相として慎重な検討を求めた形だ。

 鳩山首相は中小企業対策の必要性は認めつつも「しっかりとした議論をしていい答えを見いだす」と話すにとどめた。
(asahi.com 2009年9月29日1時1分)

中小企業を積極的に支援するのは大いに結構、しかし亀井大臣の突出ぶりは異常である。「政府与党首脳会議」なるものが政府側の意向で急遽設置されることになったそうであるが、亀井氏以上に強面する小沢氏に抑え役を期待してかなとついげすの勘ぐりが働いてしまった。鳩山首相の指導力をこのような場面においてこそまず期待したいものである。