名器

　ギターを弾く人なら知らない人はいないマーティン。目をつむっていても音色の素晴らしさが私にはわかる。ギターの腕はともかく一流を極めた私には他愛もないことだ。

　ギターはどんなにヴィンテージの値の張るものでも１０００万円くらいだが、バイオリンは何億円もする。

　現代のそこそこの楽器と比較しても音色の違いは歴然としている、ということになっているらしいが、バイオリンの名器「ストラディバリウス」は現代のバイオリンと大差ない、とする意外な実験結果がこの度フランスの研究チームにより発表された。

　研究チームはあるコンテストに集まった２１人の実力派バイオリニストに協力してもらい、楽器がよく見えないよう目隠しをし、ストラディバリウスなど最高級バイオリンなど計６丁を演奏してもらった。

　そしてどれが一番いい音か尋ねたところ、現代の安いバイオリンの方が評価が高く、ストラディバリウスなどはむしろ評価が低かった。

　何だかタレントの格付けクイズのようで、いかに音そのものではなく「ストラディバリウス」という名前が素晴らしい音色を出していたのかが証明されたようなものだ。洋の東西を問わず人間がどれ程名前に弱いかが判ったような気がする。

　ためしに学生の時に弾いていたギターとマーティンを目隠しして交互に弾いてもらった。学生の時に弾いていたギターが、思いのほかいいギターだということが判った。

　(注)タイトルを見てハッとした方は、注意が必要です。