ある男の懺悔 11

　その男は正義感が強い。

　銀行のATMで並んでいた時のことだ。

　ATMは二台あり、客は一列に並んで早く空いた台に向かう。

　ある夫婦が、それを無視して割り込んでATMに向かう。

　その男を仮にＫとしよう。

　K　「もしもし、割り込みはダメですよ」

　夫婦「こっちの列は空いとる」

　K　「２台に対して１列に並んで、空いた方に行くようになっとるですよ」

　夫婦「誰が決めたんなら、コラ」

　K　「そんなこと常識でしょ」

　夫婦「そんな常識は知らん」

　　　　　騒ぎを聞いて支店長が出てくる。

　K　「この人たちが割り込んできたんで注意していたところです」

　支店長「誠に申し訳ございません」

　K　「こらこら、支店長。誰に謝ってるん。こいつらは割り込みしとるんで」

　支店長「ま、ここは穏便に」

　Ｋ　「わしは穏便に言っとるんじゃが、こいつらがキレとるんじゃけど」

　支店長「申し訳ございません」

　夫婦「こらこら、いちゃもんつけられとるんはワシらじゃろ」

　支店長「申し訳ございません」
　
　Ｋ　「もうええわ！どうでもええけど、ワシが支店長に代わって言う。お前らは出入り禁止！！」

　夫婦はプンプンに怒ってATMを使うことなく帰っていった。

　こうしてＫは、支店長に代わり、迷惑客を蹴散らし、そいつらに出禁の沙汰を下したのだった。

※　Ｋが誰かは、賢い皆さんはお判りでしょう(笑)。
　　現在、この支店は閉鎖され、シャトレーゼの店舗となり、ＡＴＭだけが残されている。