"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

魂を宿す昭和の瞳~与 勇輝人形展

2006年05月10日 12時22分04秒 | 手しごと

 旧四月十三日。月はどんどん丸くなってきましたが、関東地方は連休明けからはっきりしない空模様が続いています。どうやら今月の満月は拝めそうもありません。

 昨日(5/10)横浜で開催されている人形作家、与 勇輝(あたえ・ゆうき)さんの展覧会『
与 勇輝  人形芸術の世界展』を観に行きました。510ataeyuukiかねてより雑誌サライを始め、様々なメディアに登場する度にその無垢な表情に引きこまれ展覧会があれば是非、という思いが膨らんでいました。右の写真の人形をご覧になって「どこかで見たことある」と思われる方も多いことでしょう。(タイトル『夕餉のしたく』。立派な働き手として家事をこなす責任感が伝わりますね→)

 昭和12年生まれ、8歳で終戦を迎えた与さんは、激動の昭和を生きてこられました。その記憶を再現し、貧しくてもたくましく生きる子供たちの題材にした作品をたくさん作っています。
日々の仕事に凛とした仕草で精を出す子、緊張から解放された瞬間に垣間見せる子供らしい表情、腕白でもどこか周りを思いやる優しい視線・・・。当たり前の日常の中、どの人形も自分の意志をしっかり持った魂の宿る表情と視線を投げかけます。この視線にはやはり釘付けになります。素直に感動しました。

 明治大正はおろか、昭和の記憶をしっかり残す人たちもずいぶんと年齢を重ねています。昭和を懐かしみ、ガラス越しの人形に言葉を掛け、暖かい視線を送り愛でる人たちが連日たくさん足を運んでいるようです。誰の心にも宿る遠い日の懐かしい想い。失い欠けている昭和の心をも蘇らせてくれます。

 与 勇輝さんの作品は、他にも倉本 聰氏原作の「ニングルストーリー」や、小津安二郎の世界、さまざまな妖精、カッパの宴、など実に多彩です。展覧会などの情報は【河口湖ミューズ館-与 勇輝 館-】をご覧下さい。


松徳硝子の“うすはり”

2006年03月28日 17時38分14秒 | 手しごと

 旧二月二十八日。桜は五分咲きくらいでしょうか。328sakura陽あたりや風の流れで開花の早さがかなり違うようです。明日から三日間くらいは寒気の影響で肌寒い日が続くそうです。“花冷え”。でも週末まで桜はしっかり咲き続けてくれることでしょう。
(←佃住吉神社の桜。3/25~桜祭りをやっています)

 このブログでも何度か登場している拙宅前
328buna1のブナも新緑の季節を迎えました。堅い皮に包まれていた新芽が徐々に開くと、初々しい小枝を伸ばし、優しいうす緑色の葉を開きます。奥羽山脈で拾ってきて1996年に実から最初の双葉を開いたブナは樹齢10年を迎えました。春は何かと花に話題が集中しますが、新緑のまぶしさも魅力的ですね。
(→ブナの新緑は鮮やかです。この葉が夏の日差しを和らげてくれます)

 さて、以前『すみだガラス市
でご紹介した錦糸町にあるガラス工場328syoutoku1松徳硝子でガレージセールがあるというので行ってきました。(←歴史を感じさせる町工場の風情)松徳硝子は創業が大正11年。電球用の薄いガラスを作る工場としてスタートしました。電球の生産はもうずいぶん前に止めてしまったそうですが、その類い希な技術を応用して手作りでごくごく薄いグラスや酒器“うすはり”を作っています。328syoutokuガレージセールではちょっとした歪みや気泡が入ってしまい、出荷することができなくなってしまった商品をとても安く販売しています。生活雑貨やこだわりの工芸品を扱うセレクトショップなどで大変人気がある松徳硝子だけに、ガレージセールも賑わっています。目移りしてしまう商品の中から、今回は「うすはりタンブラーM」「SHIWAオールドS」「ワイングラス」を買いました。手にとってよ~く眺めてみても、どこに難があるのかまったくわかりません。松徳硝子、職人の心意気が感じられます。日本の物づくりはやはり素晴らしいです。ぜひ工場見学に行ってみたいものです。
 錦糸町駅から松徳硝子に向かう道には、懐かしの駄菓子の「ふ菓子」と「きなこ餅」を作る町工場があり、甘く誘われる香りが漂っていました。

 


「あらかわの伝統技術展」に行ってきました

2005年12月07日 13時13分15秒 | 手しごと

 旧十一月七日。居酒屋寄席が今週土曜日に迫って参りました。ご予約頂きました皆様、今回も趣向、酒肴など色々企画してご来場をお待ちしています。どうぞお楽しみに。
 寒い日が続いています。今日は二十四節気の【大雪】。「雪いよいよ降り重ねる折からなればなり」とは今から217年前、天明八年に出版された『暦便覧』にある大雪の説明です。長く秋が暖かかった反動からか、厳しい冬の訪れがいつもの年より大分早いように感じます。12/4(日)の朝、郊外にて僅かにちらつく雪を見ました。風邪やインフルエンザが流行り始めています。皆さん気をつけましょうね。

12-7arakawa1 さて、先週の土曜日(12/3)、東京・荒川区で開催されたイベント『あらかわの伝統技術展』を見に行ってきました。区内と近隣から総勢70名の職人さんが集結し、体育館のフロアーに特設のブースを設けて実演・作品の展示・即売を行います。2年前の秋に小金井にある江戸東京たてもの園を訪れた際、荒川区の漆職人・角光男さんが実演しており、そこで配っていた案内を見て足を運んだのが最初で、今回は二度目でした。どんな職人さんなのか、ざっとご紹介しましょう。

更紗染、象牙挽物、仏壇彫刻、桶、べっ甲細工、刷毛、桐箪笥、つまみかんざし、菓子木型、裁鋏、木版画摺、和竿、鍛金、提灯文字、手描友禅、扇子、指物、衣装替人形、額縁、金切鋏、のれん染、勘亭流・江戸・寄席文字、人形結髪、鋳造、唐木細工、人形生地、犬張子(添付画像です)、人形頭、花かご、印章小箱、漆塗、水引、絵馬、押絵羽子板、組紐、棕櫚たわし、扁額作り、江戸切子、洋裁、和裁、宮師、金属彩色、貴金属加工・・・・

12-7arakawa2と大変盛りだくさんです。落語や時代小説で描かれた江戸の風景には職人の存在が欠かせません。それが今の東京、しかも荒川区という限られてエリアで、こんなにもたくさんの職人さんが、伝統工芸品の製造と継承で活躍しているとは驚かされますね。日常生活においてはなかなか身近ではない作品が多いのですが、一つ一つ高度な技術と伝統の重みを感じるものばかりです。知らず知らずのうちに実演している職人さんの手元に、視線が釘付けになってしまいました。自治体を挙げてこういうイベントを企画運営していることは素晴らしいことですね。今回で第26回と、イベントそのものも伝統的になってきたようです。

 


『すみだガラス市』というイベント

2005年09月26日 17時13分55秒 | 手しごと

旧八月二十三日。彼岸明けです。
台風17号がノロノロと東の海上に抜けていったため、“台風一過”の澄み渡った青空は昨日の夕方までおあずけとなってしまいました。空気はますますヒンヤリとしてきましたね。

今日は週末に開催されるなかなか興味深いイベントをご紹介します。
10月1日土曜日と10月2日の日曜日に、錦糸町の駅から近いところで開催される『すみだガラス市』です。
伝統的に墨田区にはガラスの専門工場が多く、墨田区と(社)東部硝子工業会の主催で、加盟する13社が集まり即売会を開くというイベントです。東京都の指定伝統工芸品である「江戸硝子」にはさまざまな製品があって、その代表的なものが「江戸切子」です。芸術的な細かいカットと文様は実に魅力的ですね。他にも一般の家庭で実用的に使うものから、アート作品、工業、医療分野などで使うものまで、様々な硝子製品が、普段お店で買うよりお手頃な値段で買うことができます。
このイベントは半年に一度開かれていて、私は今年の春に開催された時に初めて行ってみました。お目当ては松徳硝子という、かつて電球を吹いていた技術を活かした薄いコップ「うすはり」が大ヒット中の硝子工場でした。「うすはり」はたいへん薄いので握っただけで割れてしまいそうですが、剛性はしっかりしていて、とても使いやすいコップなのです。たぶん(違っていたらごめんなさい)、松井秀喜選手が出演しているカゴメのTV-CFに登場するのがこの「うすはり」だと信じています。ただこの日は少々出遅れてしまったせいもあり、松徳硝子のテントは大人気でお目当てのサイズの「うすはり」を買うことができませんでした。
9-26glass1他に目を引いたのが、理化学医療用の硝子のテントです。試験管やビーカー、フラスコといった懐かしい理科室を思い出させる硝子製品がずらりと並んでいました。下の写真の中央に並んでいるのは試薬を入れて管理するための小さな器です。
9-26glass2なんとなく珍しいフォルムなので買ってみました。肉厚で小さな三角フラスコはOil & Vinegaerを混ぜるときに大変重宝しています。
普段目にすることがない珍しい硝子製品がたくさん並ぶこのイベント、下町の物づくりパワーもしっかり感じることができて、なかなか楽しいです。

『すみだガラス市』
10/1(土), 2(日) 10:00~16:00
長崎橋跡イベント広場
詳細は(社)東部硝子工業会のホームページを御覧下さい。