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日高町原谷の黒竹産地テングス病に悩む 〈2015年7月4日〉

2015年07月04日 08時30分00秒 | 記事

テングス病に感染した黒竹


 日高町原谷の黒竹の産地で、カビの仲間の病原菌が伝染する「テングス病」の発症に悩まされている。鳥獣害により生産意欲をそがれ、竹の伐採管理が行き届かなくて風通しが悪くなるなど影響し、目立ってきているようだ。生産者らは根本の鳥獣害対策や需要確保に乗り出している。

 黒竹は、イネ科マダケ属の常緑タケ類。棹ははじめ緑色で徐々に黒ずんでくるという。黒竹は伐採して乾燥させた後、1000℃ほどの火であぶると、油が浮き出る。これをきれいに拭き取ると、黒く光るように仕上がり、まっすぐ矯正するなどして出荷する。
 黒竹の産地は高知県にもあるが、日高町が全国で唯一と言って良いほどの主産地。原谷地内だけで、多いときは生産者や事業者が100軒ほどあったが、今では20~30軒に減少した。
 シカやサルが黒竹のタケノコを食べる被害が発生し、近年の需要低迷、生産者の高齢化もあわせて生産意欲がそがれ、そこに3年ほど前から黒竹にテングス病が発症するようになったという。
 黒竹を生産、加工、販売している(有)金崎竹材店=日高町原谷=の金崎昭仁社長は「黒竹の面積は60ヘクタールで、具体的な調査はしていないが、テングス病で2~3割、鳥獣害を含めると多いときで8割近く被害を受けていると感じる」という。
 テングス病はカビの仲間を病原菌とする病気。初期症状は枝が異常に伸び、葉が小さく、枝は細い。中期になると、枝の生長が止まり、多数に分かれて密生。末期は落葉、落枝が増え、やがて棹が枯れる。雨滴や多湿で胞子が分散され伝染し、梅雨時期や風通しの悪い竹林で発生しやすい。黒竹だけでなく、マダケやモウソウチクなどの種類に関係なく竹類であれば感染する。自然に治癒することはなく、棹の強度が低下したり、タケノコの発生が減少して竹林が衰退する。有効な防除方法は感染した竹は伐採して焼却処分することで、予防は竹林の風通しの改善や、新たなタケノコを生やすなど成長を促すための施肥も必要になる。
 原谷では鳥獣害により伐採しなくなった黒竹の竹林が増えたことで、密生して発症しやすいのではないかと見られている。伐採せずに放置することが危険で、何よりも管理が重要という。
 鳥獣害対策に取り組むため6年ほど前に黒竹関係の原谷生産者組合を立ち上げ、今は竹林を柵で囲うことなど検討。展覧会に出展してPRしたり、黒竹とは別のものとのコラボ企画で売り出すよう模索するなどで生産者らが需要確保に力を入れている。
 金崎社長は「病気は焼却処分すれば止められるし、肥料を入れることで竹林は維持できる。ただ、生産者が高齢化しており、作業も大変になるし、生産できるよう人を入れるにも費用はかかる。何より生産意欲を高めるため、鳥獣害対策と需要の確保が大切で産地を守っていきたい」と話している。


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