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瀬戸際の暇人

今年も休みがちな予定(汗)

君と一緒に(ルナミ編-その15-)

2010年03月17日 22時40分33秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




「夜景が綺麗に観える部屋ですよ」

女はそう言うと、奥から1つ前のドアを開けて、俺達を中へ案内した。
部屋を見回したナミが、「広い…!」と感動したように一言つぶやく。
確かに広い、メチャメチャ広い、洋室だから、たたみ何じょー分かは判んねーけど、俺んちの居間とトイレと台所を合わせたより広いかもしんねェ。
でっかいベッドが2台、白いかべに背中をくっ付けて並んでる。
窓際には横になれるくらい細長いソファと、丸テーブルにイスが2つ。
ベッドの正面には鏡付きデスクとTV――TVの横には入場する時預けた俺達のカバンが、ちゃんと運びこまれてた。
そんだけ家具が有るのに、ちっともせまく感じられない。
俺達がこーふんしてはしゃぐ様子を、ホテルの女は満足げに眺め、暖ぼうや照明のスイッチや、他色んな物について説明した後、おじぎして出て行った。

バタンとドアが閉じられる、と同時に肩から一気に力が抜けた。
ナミと2人だけになった気安さから、じゅうたんの上にゴローンと寝転んでみる。
いっぺんやってみたかったんだよなァ~、部屋ん中で大の字寝!
物で埋まってる俺の部屋じゃ、絶対無理だもんな。(て言ったらナミから「捨てれば良いじゃない」って言われそーだけど)

「はー…気持ち良い…!」

幸せにひたってるそこへ、チョンチョンとほほを突かれる。
目を開けたらナミがおかしそーに笑って、俺の顔をのぞきこんでいた。

「もう、寝るんならベッドにしなさいよ!」
「解ってねーなー!床に寝るから良いんじゃねーか!ベッドに寝るんじゃ『当り前』んなっちまうだろ!」
「言いたい事は理解出来るけど、せめて靴脱いでからにすれば?」

オレンジ色の髪が、パサリとたれかかる。
面と向って話してんのに、顔が黒く影んなってて、良く見えねェ。

「そうか!部屋が暗いからだ!!」
「ええっ!?いきなり何!?」

ガバッてはね起きたら、ナミまでビクンって体を起した。
気にせず窓に飛び付いて、部屋を二重におおってた緑と白のカーテンを開ける。
けれど窓の外はすっかり暗くなってて、期待してた明りは入って来なかった。

「凄い…素敵!あの教会が目の前に観えるじゃないの!」

隣の窓から外を眺めるナミが大喜びする。
来たばかりの時バスから見た、石造りのちょーこくかべの教会が、すぐ前に建っていた。
その後ろには同じくバスから見た、ドム何とか言う高いとうがそびえてる。
ホテルの女が言った通り、部屋は建物が沢山建ってる広場を向いてて、眺めが最高に良かった、けど――

「こうして上から眺めると、煉瓦の家がまるでブロックみたいで可愛いわねv」
「うーん…けど思ってたのと違くね?『夜景がきれーに観える部屋』っつったのに、街灯がポツンポツン点いてるだけじゃんか」

ポケットに折り曲げて突っこんでたパンフを見せる。
そこにのってる写真の教会やとうは、イルミネーションでピカピカ光り、夜を明るく照らしていた。

「なのに暗いままなんてサギじゃん!節電かァ!?」

俺の指摘を受けて、ナミも写真と窓の景色を見比べる。
パンフを読んでる内、合点がいったように、明るい声を張り上げた。

「17時50分から街の点灯式をやるんだって!…ほら!バスの運転手さんも言ってたじゃない!そしたらイルミネーションがパーッと灯るわよ!」
「なるほどそーか!点灯式をやったら明るくなるんだな!じゃあここで見てよう!」
「…ってイルミネーションが灯るまで、窓に貼り付いてる積り?」
「後1時間もしない内に点くんだろ?よゆうで待てるさ!」

ニカッと笑って答えると、ナミはため息吐いて、後ろのベッドに腰かけた。
あきれ半分、あきらめ半分って顔してる。
けどせっかく夜景がきれーに観える部屋に泊ったんだ。
イルミネーションがパーッて点く瞬間を目にしたいじゃんか。
長ソファを窓の側まで引きずってき、俺はワクワク胸おどらせ待機した。

――にしても暗い。

「なァー、部屋のライト、もっと明るく出来ねーの?」

後ろに振り返ってナミにたずねる。
長ソファの横に立ってるスタンドをカチカチいじってみたけど、うすぼんやりオレンジ色に光る以上は明るくならねェ。
ナミがベッドランプのスイッチを調節し、玄関口のライトまで点けても、大して明るくはならなかった。

「無理、ここまでの明るさが限界みたい」

お手上げといったポーズをして、首を横に振る。

「…なんか電気スタンドってより、あんどんみてーだな」

どのスタンドもうすーくぼーんやりオレンジ色に光る設定らしい。
けーこー灯のまぶしさに慣れてる俺には、ちょっとなじめなく感じられた。

「でもこれくらいの明るさの方が、目に優しいのよ」

フォローするようにナミが言う。

「むしろ逆じゃね?こんな明りの下で勉強したら、目を悪くしそうじゃんか!」
「勉強なんて、自発的にした事無いクセして、よく言うわ!そもそも勉強目的でテーマパークのホテルに泊まる人なんて居ますか!パークで遊んだら、後は寝るだけで……しょ。

急にナミの声が小さくなり、部屋から音が消えた。
何とはなしに目と目が合う、ナミの顔がたちまち赤くなった。
つられて俺の顔までほてる。
シーンと音が鳴りそなくらい静かな部屋の奥、ドアが閉まってるのが目に付いた。
向かい合ってベッドに座ってたナミが、俺から目をそらすように下を向く。

この時になって、初めてナミと2人っきりで泊まる事を意識した。

しかも2泊、2晩一緒に過すんだ。
並んだベッドに横になって2人っきり……
幼なじみだし、ガキのころは1つ布団にもぐって寝たりしたけど、高校生になった今は、そんなマネして平気で居られる自信無ェ。
いや大丈夫か?ベッドは2台、間にすき間が有るし、離れて寝る分には大丈夫か?
てか1つベッドに一緒に寝た方が良いんだろうか?


『一緒に旅行すんのをOKしたって事は、HはOKと解釈して良いんじゃねェ?』


忘年会でのウソップの言葉をとーとつに思い出した。
チラッとナミの顔をうかがうと、下を向いたままライトのスイッチを、しきりにいじっている。
そのたんびに部屋が明るくなったり暗くなったりするから、よけいに胸がザワついた。


『一緒に旅行するのをOKしたって、体までは許してくんねェかもしれんだろ』


サンジの意地悪い言葉が、続いて頭の中によみがえった。
一緒に泊ってもHは×な場合も有るし、○な場合も有る。
だとしてそれは、どーやって見きわめれば良いんだ?
ナミは今どんな気持ちで、この部屋に俺と居る?

俺はナミが好きだ、ナミも俺が好きだ――これははっきりしてる。
ナミとSEXしたいか?――俺はしたい!
ナミは俺とSEXしたいのか?――これが俺には判んねェ。

泊まるなら、一緒に寝たい。
寝たらやっぱ………するよなァ。
マンガなんかで見るみてーに、「がまん出来ねェ!!」つって押し倒すつもりはねーけど…つかトイレがまんしてんじゃねーんだし。
もうちっと落ち着いた態度でキスして、服を脱が……すのか!?俺がナミの服を!?
真面目な顔で出来るかな?…照れて笑っちまう気がすんだよなァ。
第一やるんならナミの気持ちを確めてから、プロポーズをしてから――

「そうだ!!先にやる事有んだろ!!」
「え!?え!?何!?何を…!?」

ようやっと頭ん中で考えをまとめて立ち上がったら、何を慌ててかナミまで立ち上がった。

「ど………どうしたんだ?」
「ルルルフィこそ…!」

気まずい空気を感じて、互いにえへへーと笑った。
けれどその笑いは続かず、またすぐにちんもくが下りる。
外は静かでも中は嵐だ、心臓の音がドックドックって、すんげーはっきり聞えた。

「そそ、そうだルフィ!こんなの見付けちゃったーv」

いきなりナミが不自然に裏返った声を出した。
ベッドわきのテーブルの上に置いてあった物を、指でつまんで見せる。
それはメッセージが書いてある小さなカードで、折り紙で折ったらしいウサギが貼ってあった。

「ね、可愛いでしょーvミッフィーよミッフィー!ホテルの人の手作りみたい!良く出来てるよねー!」
「へー…『街を彩るイルミネーションに包まれ、ときめきのひと時をお過ごし下さい』……」
「……ときめきのひと時」

読んだ後で後かいした。
「ときめきのひと時」って、んな表現されたら想像しちまうじゃねーか!
ナミも同じく考えたみてーで、みるみる真っ赤になってく。

――あー、もー、なんか居づれー!!

とりあえずその場から逃げようと、「風呂はどんなだろうな」っつって探しに出る。

玄関わきにドアが2つ、タンスの真向いに並んでた。
玄関すぐわきのドアが風呂と洗面所に続いてて、部屋とは違い、ライトが明るかった。
かべが白いタイルだから、なおさらまぶしく感じられる。
ぜーたくにも洗面所とは別に、風呂場にまで洗面台が有った。
しかもかべ一面ガラス張りの…鏡の多い部屋だよな、そーいえば。
風呂は俺の家と同じ様な白のユニットバスだけど、足が楽々伸ばせる広さだ。
つい遊び心がわいて、服を着たまま、お湯もためずに中へつかる。
後から風呂場に入って来たナミが、そんな俺の姿を見たとたん、目をつり上げて説教した。

「だからせめて靴脱げって言ってるでしょーが!」

そう言うナミの足下も、いまだにクツだ。

「いーじゃんか!どうせ汚れ洗い流す場所なんだし!それよかナミも入れよ!広々~としてるから、充分一緒に入れるぜ♪」

気分を出そうと、鼻歌交じりで誘う。
ところがナミは強ばった顔で固まっちまった。

「…い…一緒に入るの…?」
「………あ!」
「…お…お風呂に…一緒に…?」
「…ええと……」

自分の失言に気付くも時すでに遅し。
お湯につかってる訳でもないのに、のぼせるくらい体が熱くなった。






…写真はホテル・アムステルダムのベッド。
海側の方がルフィの好みだろうけど、リクエストしたのはナミって事で。
でも冬に泊まるなら街側が綺麗ですよ。

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