【前回の続きです。】
「タイミング良く花火の時間に晴れてくれて、ラッキーだったわよねv」
「本当だな!まったくきせきだよな!!」
「よっぽどコイツの睨みが恐ろしかったんじゃねェのォ?天の神様も。」
「そうか!すげーなナミ!!神様にガン飛ばして勝っちまうなんて!!」
「誰が天にガン飛ばしたってェのよゾロォ!!?」
「あ…まァアレだ!!あァんな物凄ェ豪雨がピタリと止んじまうなんて、まったく奇跡的っつうか…!!」
「そうだよなー!!なんなら昨夜みてーにまた夜の散歩しよーぜェ~♪」
「馬鹿ルフィ!!余計な事フッてんじゃねェっっ!!!」
「残念だけど、今夜は止めておいた方が良いわね。多分また夜遅くに降って来るから。……花火の時だけ止んでくれるなんて、出来過ぎてる程ラッキーだったと思うわ。」
また荒れるっつうナミ予報が出てくれたお陰で、コテージに真直ぐ帰る事が出来た。
やれやれ、後は風呂入り直して寝るだけだと考えてた俺だが、そこにナミの非情な割込みが有った。
「ゾロはさっき入ったじゃない。次は私が入るわ!」
「ってあのな……お前らが急かしたお陰で、俺はゆっくり温まり切れなかったんだよ!!っつかマジ寒ィって!!風呂出て即寒風当ったから完全に湯冷めしちまったじゃねェか!!早く入らねェと風邪引いちまうかもしれね…」
「駄目よ!!…大体ゾロ、昨夜だって勝手に1番に入っちゃったじゃない!!ジャンケンの順番から言ったら、今夜は私から入るのが筋でしょ!!」
「だから筋がどうとかでなくだなァ~!!濡れた体で外出たお陰で凍えそうなんだっつうんだよ!!俺に風邪引いて欲しいのかてめェはっっ!!?」
「大丈夫よ、ゾロならvだって『馬鹿は風邪引かない』って言うでしょ?」
「………って、おいっっ!!!」
「私ね、10時から観たいTV番組有るのよ。でも、それ観終ってから入ったんじゃ、寝るの遅くなっちゃうじゃない?だから今の内にお風呂入っておきたいの!OK!?」
「OKじゃねェよ!!!んだァ!?その自己中な理由はァ!!?ふざけてんじゃねェぞおいっっ!!!?」
「まァまァv…お詫びに温か~いほうじ茶淹れてあげるから、それ飲んでルフィと待っててよv」
……この後も色々押し問答続いたりはしたんだが、結局は俺が折れて、ルフィと共にリビングでお茶飲んで待つ事になった。
腹立ちはするが口喧嘩であいつに勝てた例無ェし…そもそも女相手に本気で喧嘩するなんて、男として自分が空しくなるだけだ。
仕方なく自分の指定席にしてる長ソファの上でゴロ寝する。
前ではロッキングチェアに座ったルフィが、ブランブラン揺れながら貯金箱弄って遊んでいる。
ナイフ弄って遊んでると、ナミから没収されるんで仕方なく…なんだろう。
お互い特に喋らず、点いてるTVをただぼーっと眺めながら、そこに居た。
「……ひょっとしたら、また、会えるかもしんねェと思ったんだけどなァ。」
脈絡も無く、ポツリとルフィが呟いた。
「…会える?……誰にだよ?」
「向うの世界の、皆にだ。昨夜の花火ん時、俺、会ったんだ。」
……って何が言いてェのか、全然解んねェし。
ちゃんと話が見えるよう喋れと言ってやる。
したら曰く――昨夜自分は、此処とは別の、もう1つのパラレルワールドを覗いた。
その世界では、ルフィは海賊王を目指してて、目下6人の仲間達と共に、波乱万丈な航海をしている最中だったそうだ。
俺は剣士で、ナミは航海士で、ウソップは狙撃手で、眉毛がコックで、ロビン先生は考古学者で、チョッパーっつうのが医者でと…中々バリエーション豊かな人材を揃えているなとの感想を持てた。
「向うの世界でのおめェは、三刀流の使い手だった。」
「……三刀流?右手と左手に握るとして、もう1本は何処で握るんだよ??」
「後1本は、口にくわえてた。」
「…………そりゃ常識的に言って無茶だろう。」
「お前もきっと会うぞ。もちろん、ナミもだ。」
「何故、そう言い切れる?」
「俺が見たんだから、お前らだってそりゃ見るさ♪」
「……ちっとも根拠になってねェよ。」
「ナミには『ただの夢』だって言われちまったけどな。俺の今の願望が出たんじゃねェかって。」
成る程…朝方言ってたのは、この件の事でか。
脳裏にあの時のナミの、険を含んだ顔が浮んだ。
「けど俺は、夢だったとは思っちゃいねェ。第一、俺はこっちで海賊になりてェなんて望んじゃいねェ。だからナミの言う『ただの夢』であるわけが無ェんだ!」
自信たっぷり、歯を剥き出しにして笑う。
「…そのナミの件なんだがな……あいつ、此処へ来てから、少し様子がおかしかねェか?」
「おかしいって、何がだ??」
「だから、普段とちょっと違うなァとか……感じたりしなかったのかよ??」
俺のこの言葉に暫しルフィは、珍しく眉間に皺寄せて悩む。
椅子の上で胡坐を掻き、貯金箱持ったまま腕抱えて、「うー」とか「むー」とか唸っている。
…のは良いんだが、椅子をブラブラ揺らしてだから、今一真剣味が感じられねェ。
「や、ちっとも!」
「馬鹿!!!んなわきゃ無ェだろ!!?しきりに俺に突っ掛って来たり、我儘放題言ってみたり、かと思えば一転優しくして来たり…!!!」
「ナミがゾロにつっかかったり、俺達にわがまま言ったりすんのはいつもだろ?普段と比べて何もおかしいとは思わねェけどなァ。」
「だから幾らなんでもその頻度が…!!!」
大体普段通りのあいつなら、ウソップと眉毛置いてまで旅行に行こうだなんて言いやしねェ。
誰よりも仲間の和を重んじるヤツだ、その為なら率先して我を捨てる様なヤツだ。
我儘だが、状況弁えず押し通す女じゃあねェ。
仕切り屋だが、他人の意見を聞かずに仕切る女でもねェ。
あいつは、俺やルフィに―――甘えてんだ。
ウソップが此処に居てくれたらな、と思う。
平和主義のあいつは、俺とナミが喧嘩しようものなら、体張ってでも止めてくれる。
クソ眉毛でも良い、レディを守る騎士を自称する奴だ、言い争ってりゃ必ずナミ側に付く。
何れにしろ、割って入ってくれてた筈だ。
ルフィは、俺とナミが喧嘩してても絶対に止めねェ。
割って入っても来ねェ。
だから何時までも平行線のままだ。
切が無ェ、互いに落ち着いて、本当に言いたい事が言えねェんだ。
「……解ったぞ、ゾロ…!!」
いきなりルフィが、嘗て見た事無ェシリアス顔して口を開いた。
「何が解ったんだよ…?」
「これを見ろ…!」
ひょいと椅子から飛び降り、さっきから弄んでた貯金箱を、俺の座ってるソファの前…テーブルの上にカタリと置いた。
「……貯金箱だな。」
ソファから身を起して応える。
「そうだ!入れた金が小っさく縮んじまう貯金箱だ!…よく見てろよ?種も仕掛も無ェ、ただの十円玉を入れるだろ…」
チャリーン♪と音を立てて、十円玉が箱の中に落ちる。
長方形した箱の中には、更に正方形した小っせェ箱が有り、その中に入った十円玉は、成る程一回り以上も小さく縮んで見えた。
「……小さくなっちまったな。それで…?」
「そうなんだ!確かに小っさくなっちまったように見えっだろ!?だけどな、こうやって傾けると……」
俺に見えるように向けながら、貯金箱を下に傾ける。
入れられた十円玉は前に寄り、縮んだ筈のそれが、元の大きさに戻って見えた。
「…どうだ?元のサイズに戻っちまっただろ…?」
「……ああ、不思議だな。」
「つまりだな…この中に入った金は、本当に小っさくなっちまってるわけじゃねェんだ!こーみょーに仕組まれたトリックでそう見せてるだけなんだよ!!――びっくりしただろ!?」
「…………ああ、大発見だ。」
こいつとは、それこそ物心つく前からの付き合いだ。
だけど未だに判断が付かねェ。
物凄ェ馬鹿なのか?
それとも、物凄ェ天才なのか?
「まァ~、トリックだったとしても、不思議は不思議だけどな♪…やっぱ分解してみねェと解んねーかなァ~。」
…けどナミは、こいつを誰よりも信頼している。
ルフィもナミ以上に信頼してるヤツは、恐らく居ねェ。
天衣無縫を通り越して傍若無人な奴ではあるが、ナミの言う事には有る程度まで素直に耳を傾けた。
「ナミはこう言った」、「ナミが言うなら確かだ」、「ナミの指示通りなら間違い無ェ」……傍から見てて、まるで母と息子の姿みてェだった。
けれども真実は……ナミこそ、ルフィに縋っていたんだろう。
幼馴染の、弟の様な男友達っつう立場を越えて、父親としてまでも―――
カップに残った茶を飲干し席を立つ。
ハンガー掛けてたジャケットを引っ被り、そのまま玄関に直行する。
「…何処行くんだー、ゾロ?」
「散歩だ。」
「今夜は止めとけってナミから言われただろォ?夜遅くにまた雨が降るだろうからって。」
「そんな遠くまでうろつきゃしねェよ。30分もしねェ内に戻って来るさ。…その頃にはナミも風呂から出るだろうしな。」
「大丈夫なのかァ~~??道とか、1人じゃ解んねェだろォ~~??」
「心配すんな。いいかげん、地図は頭に入ってる。」
「心配だなァァァ~~~。」
「心配すんなっつってんだろがっっ!!!」
ドアを開けて外へ出た。
雨は未だ降っちゃいねェ。
見上げた空に星は見えねェが、まァ、暫くは大丈夫だろう。
暗闇に、軒を連ねたコテージの外灯が光っている。
雨に濡れた石畳の道が、外灯を反射して浮び上がっている。
白く息を吐き出しつつ、俺は外灯と光る道を頼りにして歩いて行った。
【その27に続】
次回、漸く『ゾロ編』最終回!多分!(←けど『ナミ編』が未だ有るし…しかも多分って…)(汗)
写真の説明~、フォレストヴィラ1階リビング、真ん中の肘掛ソファは『ナミ椅子』って事で。(笑)
んでその左横に有るソファは『ゾロ椅子』、右横には『ルフィ椅子』が有ると思って下さい。(笑)
実はもう1つ、ナミ椅子の前に、背凭れの無い椅子が有ったりします、ゴージャス~♪
テーブルの上に出てるアレコレ色々な物は、ホテル側が用意してくれたまんま…パンフレット類やらカップやら会員サービスのフルーツセットやらで御座います。
「タイミング良く花火の時間に晴れてくれて、ラッキーだったわよねv」
「本当だな!まったくきせきだよな!!」
「よっぽどコイツの睨みが恐ろしかったんじゃねェのォ?天の神様も。」
「そうか!すげーなナミ!!神様にガン飛ばして勝っちまうなんて!!」
「誰が天にガン飛ばしたってェのよゾロォ!!?」
「あ…まァアレだ!!あァんな物凄ェ豪雨がピタリと止んじまうなんて、まったく奇跡的っつうか…!!」
「そうだよなー!!なんなら昨夜みてーにまた夜の散歩しよーぜェ~♪」
「馬鹿ルフィ!!余計な事フッてんじゃねェっっ!!!」
「残念だけど、今夜は止めておいた方が良いわね。多分また夜遅くに降って来るから。……花火の時だけ止んでくれるなんて、出来過ぎてる程ラッキーだったと思うわ。」
また荒れるっつうナミ予報が出てくれたお陰で、コテージに真直ぐ帰る事が出来た。
やれやれ、後は風呂入り直して寝るだけだと考えてた俺だが、そこにナミの非情な割込みが有った。
「ゾロはさっき入ったじゃない。次は私が入るわ!」
「ってあのな……お前らが急かしたお陰で、俺はゆっくり温まり切れなかったんだよ!!っつかマジ寒ィって!!風呂出て即寒風当ったから完全に湯冷めしちまったじゃねェか!!早く入らねェと風邪引いちまうかもしれね…」
「駄目よ!!…大体ゾロ、昨夜だって勝手に1番に入っちゃったじゃない!!ジャンケンの順番から言ったら、今夜は私から入るのが筋でしょ!!」
「だから筋がどうとかでなくだなァ~!!濡れた体で外出たお陰で凍えそうなんだっつうんだよ!!俺に風邪引いて欲しいのかてめェはっっ!!?」
「大丈夫よ、ゾロならvだって『馬鹿は風邪引かない』って言うでしょ?」
「………って、おいっっ!!!」
「私ね、10時から観たいTV番組有るのよ。でも、それ観終ってから入ったんじゃ、寝るの遅くなっちゃうじゃない?だから今の内にお風呂入っておきたいの!OK!?」
「OKじゃねェよ!!!んだァ!?その自己中な理由はァ!!?ふざけてんじゃねェぞおいっっ!!!?」
「まァまァv…お詫びに温か~いほうじ茶淹れてあげるから、それ飲んでルフィと待っててよv」
……この後も色々押し問答続いたりはしたんだが、結局は俺が折れて、ルフィと共にリビングでお茶飲んで待つ事になった。
腹立ちはするが口喧嘩であいつに勝てた例無ェし…そもそも女相手に本気で喧嘩するなんて、男として自分が空しくなるだけだ。
仕方なく自分の指定席にしてる長ソファの上でゴロ寝する。
前ではロッキングチェアに座ったルフィが、ブランブラン揺れながら貯金箱弄って遊んでいる。
ナイフ弄って遊んでると、ナミから没収されるんで仕方なく…なんだろう。
お互い特に喋らず、点いてるTVをただぼーっと眺めながら、そこに居た。
「……ひょっとしたら、また、会えるかもしんねェと思ったんだけどなァ。」
脈絡も無く、ポツリとルフィが呟いた。
「…会える?……誰にだよ?」
「向うの世界の、皆にだ。昨夜の花火ん時、俺、会ったんだ。」
……って何が言いてェのか、全然解んねェし。
ちゃんと話が見えるよう喋れと言ってやる。
したら曰く――昨夜自分は、此処とは別の、もう1つのパラレルワールドを覗いた。
その世界では、ルフィは海賊王を目指してて、目下6人の仲間達と共に、波乱万丈な航海をしている最中だったそうだ。
俺は剣士で、ナミは航海士で、ウソップは狙撃手で、眉毛がコックで、ロビン先生は考古学者で、チョッパーっつうのが医者でと…中々バリエーション豊かな人材を揃えているなとの感想を持てた。
「向うの世界でのおめェは、三刀流の使い手だった。」
「……三刀流?右手と左手に握るとして、もう1本は何処で握るんだよ??」
「後1本は、口にくわえてた。」
「…………そりゃ常識的に言って無茶だろう。」
「お前もきっと会うぞ。もちろん、ナミもだ。」
「何故、そう言い切れる?」
「俺が見たんだから、お前らだってそりゃ見るさ♪」
「……ちっとも根拠になってねェよ。」
「ナミには『ただの夢』だって言われちまったけどな。俺の今の願望が出たんじゃねェかって。」
成る程…朝方言ってたのは、この件の事でか。
脳裏にあの時のナミの、険を含んだ顔が浮んだ。
「けど俺は、夢だったとは思っちゃいねェ。第一、俺はこっちで海賊になりてェなんて望んじゃいねェ。だからナミの言う『ただの夢』であるわけが無ェんだ!」
自信たっぷり、歯を剥き出しにして笑う。
「…そのナミの件なんだがな……あいつ、此処へ来てから、少し様子がおかしかねェか?」
「おかしいって、何がだ??」
「だから、普段とちょっと違うなァとか……感じたりしなかったのかよ??」
俺のこの言葉に暫しルフィは、珍しく眉間に皺寄せて悩む。
椅子の上で胡坐を掻き、貯金箱持ったまま腕抱えて、「うー」とか「むー」とか唸っている。
…のは良いんだが、椅子をブラブラ揺らしてだから、今一真剣味が感じられねェ。
「や、ちっとも!」
「馬鹿!!!んなわきゃ無ェだろ!!?しきりに俺に突っ掛って来たり、我儘放題言ってみたり、かと思えば一転優しくして来たり…!!!」
「ナミがゾロにつっかかったり、俺達にわがまま言ったりすんのはいつもだろ?普段と比べて何もおかしいとは思わねェけどなァ。」
「だから幾らなんでもその頻度が…!!!」
大体普段通りのあいつなら、ウソップと眉毛置いてまで旅行に行こうだなんて言いやしねェ。
誰よりも仲間の和を重んじるヤツだ、その為なら率先して我を捨てる様なヤツだ。
我儘だが、状況弁えず押し通す女じゃあねェ。
仕切り屋だが、他人の意見を聞かずに仕切る女でもねェ。
あいつは、俺やルフィに―――甘えてんだ。
ウソップが此処に居てくれたらな、と思う。
平和主義のあいつは、俺とナミが喧嘩しようものなら、体張ってでも止めてくれる。
クソ眉毛でも良い、レディを守る騎士を自称する奴だ、言い争ってりゃ必ずナミ側に付く。
何れにしろ、割って入ってくれてた筈だ。
ルフィは、俺とナミが喧嘩してても絶対に止めねェ。
割って入っても来ねェ。
だから何時までも平行線のままだ。
切が無ェ、互いに落ち着いて、本当に言いたい事が言えねェんだ。
「……解ったぞ、ゾロ…!!」
いきなりルフィが、嘗て見た事無ェシリアス顔して口を開いた。
「何が解ったんだよ…?」
「これを見ろ…!」
ひょいと椅子から飛び降り、さっきから弄んでた貯金箱を、俺の座ってるソファの前…テーブルの上にカタリと置いた。
「……貯金箱だな。」
ソファから身を起して応える。
「そうだ!入れた金が小っさく縮んじまう貯金箱だ!…よく見てろよ?種も仕掛も無ェ、ただの十円玉を入れるだろ…」
チャリーン♪と音を立てて、十円玉が箱の中に落ちる。
長方形した箱の中には、更に正方形した小っせェ箱が有り、その中に入った十円玉は、成る程一回り以上も小さく縮んで見えた。
「……小さくなっちまったな。それで…?」
「そうなんだ!確かに小っさくなっちまったように見えっだろ!?だけどな、こうやって傾けると……」
俺に見えるように向けながら、貯金箱を下に傾ける。
入れられた十円玉は前に寄り、縮んだ筈のそれが、元の大きさに戻って見えた。
「…どうだ?元のサイズに戻っちまっただろ…?」
「……ああ、不思議だな。」
「つまりだな…この中に入った金は、本当に小っさくなっちまってるわけじゃねェんだ!こーみょーに仕組まれたトリックでそう見せてるだけなんだよ!!――びっくりしただろ!?」
「…………ああ、大発見だ。」
こいつとは、それこそ物心つく前からの付き合いだ。
だけど未だに判断が付かねェ。
物凄ェ馬鹿なのか?
それとも、物凄ェ天才なのか?
「まァ~、トリックだったとしても、不思議は不思議だけどな♪…やっぱ分解してみねェと解んねーかなァ~。」
…けどナミは、こいつを誰よりも信頼している。
ルフィもナミ以上に信頼してるヤツは、恐らく居ねェ。
天衣無縫を通り越して傍若無人な奴ではあるが、ナミの言う事には有る程度まで素直に耳を傾けた。
「ナミはこう言った」、「ナミが言うなら確かだ」、「ナミの指示通りなら間違い無ェ」……傍から見てて、まるで母と息子の姿みてェだった。
けれども真実は……ナミこそ、ルフィに縋っていたんだろう。
幼馴染の、弟の様な男友達っつう立場を越えて、父親としてまでも―――
カップに残った茶を飲干し席を立つ。
ハンガー掛けてたジャケットを引っ被り、そのまま玄関に直行する。
「…何処行くんだー、ゾロ?」
「散歩だ。」
「今夜は止めとけってナミから言われただろォ?夜遅くにまた雨が降るだろうからって。」
「そんな遠くまでうろつきゃしねェよ。30分もしねェ内に戻って来るさ。…その頃にはナミも風呂から出るだろうしな。」
「大丈夫なのかァ~~??道とか、1人じゃ解んねェだろォ~~??」
「心配すんな。いいかげん、地図は頭に入ってる。」
「心配だなァァァ~~~。」
「心配すんなっつってんだろがっっ!!!」
ドアを開けて外へ出た。
雨は未だ降っちゃいねェ。
見上げた空に星は見えねェが、まァ、暫くは大丈夫だろう。
暗闇に、軒を連ねたコテージの外灯が光っている。
雨に濡れた石畳の道が、外灯を反射して浮び上がっている。
白く息を吐き出しつつ、俺は外灯と光る道を頼りにして歩いて行った。
【その27に続】
次回、漸く『ゾロ編』最終回!多分!(←けど『ナミ編』が未だ有るし…しかも多分って…)(汗)
写真の説明~、フォレストヴィラ1階リビング、真ん中の肘掛ソファは『ナミ椅子』って事で。(笑)
んでその左横に有るソファは『ゾロ椅子』、右横には『ルフィ椅子』が有ると思って下さい。(笑)
実はもう1つ、ナミ椅子の前に、背凭れの無い椅子が有ったりします、ゴージャス~♪
テーブルの上に出てるアレコレ色々な物は、ホテル側が用意してくれたまんま…パンフレット類やらカップやら会員サービスのフルーツセットやらで御座います。