瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

『何度も廻り合う』その26

2006年01月28日 19時42分59秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





「タイミング良く花火の時間に晴れてくれて、ラッキーだったわよねv」
「本当だな!まったくきせきだよな!!」
「よっぽどコイツの睨みが恐ろしかったんじゃねェのォ?天の神様も。」
「そうか!すげーなナミ!!神様にガン飛ばして勝っちまうなんて!!」
「誰が天にガン飛ばしたってェのよゾロォ!!?」
「あ…まァアレだ!!あァんな物凄ェ豪雨がピタリと止んじまうなんて、まったく奇跡的っつうか…!!」
「そうだよなー!!なんなら昨夜みてーにまた夜の散歩しよーぜェ~♪」
「馬鹿ルフィ!!余計な事フッてんじゃねェっっ!!!」

「残念だけど、今夜は止めておいた方が良いわね。多分また夜遅くに降って来るから。……花火の時だけ止んでくれるなんて、出来過ぎてる程ラッキーだったと思うわ。」





また荒れるっつうナミ予報が出てくれたお陰で、コテージに真直ぐ帰る事が出来た。



やれやれ、後は風呂入り直して寝るだけだと考えてた俺だが、そこにナミの非情な割込みが有った。


「ゾロはさっき入ったじゃない。次は私が入るわ!」
「ってあのな……お前らが急かしたお陰で、俺はゆっくり温まり切れなかったんだよ!!っつかマジ寒ィって!!風呂出て即寒風当ったから完全に湯冷めしちまったじゃねェか!!早く入らねェと風邪引いちまうかもしれね…」
「駄目よ!!…大体ゾロ、昨夜だって勝手に1番に入っちゃったじゃない!!ジャンケンの順番から言ったら、今夜は私から入るのが筋でしょ!!」
「だから筋がどうとかでなくだなァ~!!濡れた体で外出たお陰で凍えそうなんだっつうんだよ!!俺に風邪引いて欲しいのかてめェはっっ!!?」
「大丈夫よ、ゾロならvだって『馬鹿は風邪引かない』って言うでしょ?」

「………って、おいっっ!!!」

「私ね、10時から観たいTV番組有るのよ。でも、それ観終ってから入ったんじゃ、寝るの遅くなっちゃうじゃない?だから今の内にお風呂入っておきたいの!OK!?」
「OKじゃねェよ!!!んだァ!?その自己中な理由はァ!!?ふざけてんじゃねェぞおいっっ!!!?」
「まァまァv…お詫びに温か~いほうじ茶淹れてあげるから、それ飲んでルフィと待っててよv」




……この後も色々押し問答続いたりはしたんだが、結局は俺が折れて、ルフィと共にリビングでお茶飲んで待つ事になった。


腹立ちはするが口喧嘩であいつに勝てた例無ェし…そもそも女相手に本気で喧嘩するなんて、男として自分が空しくなるだけだ。



仕方なく自分の指定席にしてる長ソファの上でゴロ寝する。


前ではロッキングチェアに座ったルフィが、ブランブラン揺れながら貯金箱弄って遊んでいる。


ナイフ弄って遊んでると、ナミから没収されるんで仕方なく…なんだろう。


お互い特に喋らず、点いてるTVをただぼーっと眺めながら、そこに居た。




「……ひょっとしたら、また、会えるかもしんねェと思ったんだけどなァ。」



脈絡も無く、ポツリとルフィが呟いた。


「…会える?……誰にだよ?」


「向うの世界の、皆にだ。昨夜の花火ん時、俺、会ったんだ。」



……って何が言いてェのか、全然解んねェし。



ちゃんと話が見えるよう喋れと言ってやる。



したら曰く――昨夜自分は、此処とは別の、もう1つのパラレルワールドを覗いた。


その世界では、ルフィは海賊王を目指してて、目下6人の仲間達と共に、波乱万丈な航海をしている最中だったそうだ。


俺は剣士で、ナミは航海士で、ウソップは狙撃手で、眉毛がコックで、ロビン先生は考古学者で、チョッパーっつうのが医者でと…中々バリエーション豊かな人材を揃えているなとの感想を持てた。



「向うの世界でのおめェは、三刀流の使い手だった。」

「……三刀流?右手と左手に握るとして、もう1本は何処で握るんだよ??」

「後1本は、口にくわえてた。」

「…………そりゃ常識的に言って無茶だろう。」

「お前もきっと会うぞ。もちろん、ナミもだ。」

「何故、そう言い切れる?」

「俺が見たんだから、お前らだってそりゃ見るさ♪」

「……ちっとも根拠になってねェよ。」

「ナミには『ただの夢』だって言われちまったけどな。俺の今の願望が出たんじゃねェかって。」



成る程…朝方言ってたのは、この件の事でか。


脳裏にあの時のナミの、険を含んだ顔が浮んだ。



「けど俺は、夢だったとは思っちゃいねェ。第一、俺はこっちで海賊になりてェなんて望んじゃいねェ。だからナミの言う『ただの夢』であるわけが無ェんだ!」


自信たっぷり、歯を剥き出しにして笑う。



「…そのナミの件なんだがな……あいつ、此処へ来てから、少し様子がおかしかねェか?」

「おかしいって、何がだ??」

「だから、普段とちょっと違うなァとか……感じたりしなかったのかよ??」


俺のこの言葉に暫しルフィは、珍しく眉間に皺寄せて悩む。

椅子の上で胡坐を掻き、貯金箱持ったまま腕抱えて、「うー」とか「むー」とか唸っている。

…のは良いんだが、椅子をブラブラ揺らしてだから、今一真剣味が感じられねェ。



「や、ちっとも!」
「馬鹿!!!んなわきゃ無ェだろ!!?しきりに俺に突っ掛って来たり、我儘放題言ってみたり、かと思えば一転優しくして来たり…!!!」

「ナミがゾロにつっかかったり、俺達にわがまま言ったりすんのはいつもだろ?普段と比べて何もおかしいとは思わねェけどなァ。」
「だから幾らなんでもその頻度が…!!!」



大体普段通りのあいつなら、ウソップと眉毛置いてまで旅行に行こうだなんて言いやしねェ。

誰よりも仲間の和を重んじるヤツだ、その為なら率先して我を捨てる様なヤツだ。


我儘だが、状況弁えず押し通す女じゃあねェ。

仕切り屋だが、他人の意見を聞かずに仕切る女でもねェ。



あいつは、俺やルフィに―――甘えてんだ。



ウソップが此処に居てくれたらな、と思う。


平和主義のあいつは、俺とナミが喧嘩しようものなら、体張ってでも止めてくれる。


クソ眉毛でも良い、レディを守る騎士を自称する奴だ、言い争ってりゃ必ずナミ側に付く。


何れにしろ、割って入ってくれてた筈だ。



ルフィは、俺とナミが喧嘩してても絶対に止めねェ。

割って入っても来ねェ。


だから何時までも平行線のままだ。


切が無ェ、互いに落ち着いて、本当に言いたい事が言えねェんだ。




「……解ったぞ、ゾロ…!!」


いきなりルフィが、嘗て見た事無ェシリアス顔して口を開いた。


「何が解ったんだよ…?」

「これを見ろ…!」


ひょいと椅子から飛び降り、さっきから弄んでた貯金箱を、俺の座ってるソファの前…テーブルの上にカタリと置いた。


「……貯金箱だな。」


ソファから身を起して応える。


「そうだ!入れた金が小っさく縮んじまう貯金箱だ!…よく見てろよ?種も仕掛も無ェ、ただの十円玉を入れるだろ…」


チャリーン♪と音を立てて、十円玉が箱の中に落ちる。


長方形した箱の中には、更に正方形した小っせェ箱が有り、その中に入った十円玉は、成る程一回り以上も小さく縮んで見えた。


「……小さくなっちまったな。それで…?」

「そうなんだ!確かに小っさくなっちまったように見えっだろ!?だけどな、こうやって傾けると……」


俺に見えるように向けながら、貯金箱を下に傾ける。


入れられた十円玉は前に寄り、縮んだ筈のそれが、元の大きさに戻って見えた。


「…どうだ?元のサイズに戻っちまっただろ…?」

「……ああ、不思議だな。」

「つまりだな…この中に入った金は、本当に小っさくなっちまってるわけじゃねェんだ!こーみょーに仕組まれたトリックでそう見せてるだけなんだよ!!――びっくりしただろ!?」


「…………ああ、大発見だ。」



こいつとは、それこそ物心つく前からの付き合いだ。

だけど未だに判断が付かねェ。


物凄ェ馬鹿なのか?

それとも、物凄ェ天才なのか?



「まァ~、トリックだったとしても、不思議は不思議だけどな♪…やっぱ分解してみねェと解んねーかなァ~。」



…けどナミは、こいつを誰よりも信頼している。


ルフィもナミ以上に信頼してるヤツは、恐らく居ねェ。


天衣無縫を通り越して傍若無人な奴ではあるが、ナミの言う事には有る程度まで素直に耳を傾けた。


「ナミはこう言った」、「ナミが言うなら確かだ」、「ナミの指示通りなら間違い無ェ」……傍から見てて、まるで母と息子の姿みてェだった。



けれども真実は……ナミこそ、ルフィに縋っていたんだろう。


幼馴染の、弟の様な男友達っつう立場を越えて、父親としてまでも―――




カップに残った茶を飲干し席を立つ。


ハンガー掛けてたジャケットを引っ被り、そのまま玄関に直行する。



「…何処行くんだー、ゾロ?」


「散歩だ。」

「今夜は止めとけってナミから言われただろォ?夜遅くにまた雨が降るだろうからって。」

「そんな遠くまでうろつきゃしねェよ。30分もしねェ内に戻って来るさ。…その頃にはナミも風呂から出るだろうしな。」

「大丈夫なのかァ~~??道とか、1人じゃ解んねェだろォ~~??」

「心配すんな。いいかげん、地図は頭に入ってる。」

「心配だなァァァ~~~。」
「心配すんなっつってんだろがっっ!!!」





ドアを開けて外へ出た。


雨は未だ降っちゃいねェ。

見上げた空に星は見えねェが、まァ、暫くは大丈夫だろう。


暗闇に、軒を連ねたコテージの外灯が光っている。

雨に濡れた石畳の道が、外灯を反射して浮び上がっている。


白く息を吐き出しつつ、俺は外灯と光る道を頼りにして歩いて行った。





その27に続】





次回、漸く『ゾロ編』最終回!多分!(←けど『ナミ編』が未だ有るし…しかも多分って…)(汗)


写真の説明~、フォレストヴィラ1階リビング、真ん中の肘掛ソファは『ナミ椅子』って事で。(笑)

んでその左横に有るソファは『ゾロ椅子』、右横には『ルフィ椅子』が有ると思って下さい。(笑)

実はもう1つ、ナミ椅子の前に、背凭れの無い椅子が有ったりします、ゴージャス~♪


テーブルの上に出てるアレコレ色々な物は、ホテル側が用意してくれたまんま…パンフレット類やらカップやら会員サービスのフルーツセットやらで御座います。
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