goo blog サービス終了のお知らせ 

瀬戸際の暇人

今年も休みがちな予定(汗)

魔女の瞳はにゃんこの目・2―その3―

2010年07月23日 20時22分35秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
その2へ戻】





「マキノー!!ただいまー!!」
「ルフィ!ゾロ!…お帰りなさい!」


ルフィを先頭に、カラコロと勢い良く鈴を鳴らして、中へと入ります。
同時に澄んだ女の声が、3人を出迎えました。

入って直ぐ目の前には、4組の4人掛けテーブルセット。

その奥のカウンターテーブル向うで、女が1人グラスを磨きながらにこやかに微笑んでいます。

長く伸びた黒髪をバンダナで後ろ一束ねにした若い女…どうやら声の主は、この人物のようでした。


「マキノ!!約束通り『ナミ』を連れて来てやったぞ!!直ぐに美味いコーヒーいれてくれ!!」

「あら!?…あらあら!まあ…!!」


マキノと呼ばれた女は、ルフィとゾロの陰に隠れて立つナミの姿を認めると、磨いてたグラスを置き、エプロンで手を拭いつつ、ゆっくりと側に近寄って来ました。

そうして気後れしてるナミに構わず、腰を落して、彼女の白い両手をぎゅうと握り締めます。

露にした広い額、人懐っこく光る黒い瞳…近くで見るマキノの笑顔は、何処となくルフィに似て思えました。


「初めまして!私は『マキノ』って言うの!宜しくね!」

「…初めまして。……私は『ナミ』。」


真直ぐな視線で見詰られ、僅かに顔を背けます。
しかしマキノは気を悪くした様子も見せず、ナミの肩を優しく抱くと、カウンター席まで案内してくれました。

間に挟むようにして、ルフィは左側、ゾロは右側に座ります。


「俺、砂糖3つ!ミルクもたっぷり入れてな!」と、ルフィが赤い上着を脱ぎながら注文しました。

「俺は砂糖抜き。ミルクだけ入れてくれ。」と、ゾロが緑の上着を脱ぎながら注文しました。

「ふふ、心得てるわv」と、マキノがカウンターの中に入って応じました。


「ナミちゃんの好みは?」


未だ借りて来た猫の様に大人しくしてるナミに、マキノが注文を尋ねます。


「えっと…砂糖は1個。ミルクは多めに入れて。」


ほんのり赤く染めた顔を俯かせ、ナミが小声で答えました。


「OK!ちょっと待っててねv」


了解して後ろの隅に切ってある暖炉を火掻き棒で掻き回します。
炭がパチパチと爆ぜ、明々と点る火の勢いが強まりました。

それから水の入った瓶を開け、煤けたポットに注ぎます。
ポットの弦に鉄棒を通し石で組んだ暖炉の中に掛け終えると、マキノはミルをテーブルの中から取り出して豆を挽き出しました。

店内にゴリゴリと、リズム良く豆の挽ける音が響きます。

黒いマントを脱いで、背の高い丸椅子に座り直したナミは、周囲を見回しました。

外観同様、床も壁も天井も、皆板張り。
カウンターの後ろに並ぶ4脚のテーブルと16脚の椅子も木造で、全て窓際に置かれていました。

四角い窓が右側に3箇所、左側に3箇所、入口の横に1箇所拵えられています。
硝子を覆う結露にランプの灯火が反射して、橙色に光って見えました。


「それにしても驚いたわァ。話に聞いてたイメージと全然違うんですもの。」

「…違うって?」


鼻歌交じりに出たマキノの言葉を聞き、いぶかしんだナミが尋ねます。


「ルフィ達ったら酷いのよ!『ナミは千歳にもなるドケチな婆ァ。金色の目をギラギラ光らせて魔力を振るう、世にもおっかねェ魔女なんだ』って…」


――ドガッッ!!!!――ドゴッッ!!!!


聞き終るのも待たずに重いパンチを食らったルフィとゾロが、右に左にぶっ飛び床に転がりました。


「…いっ…てェなァ!!!全て本当の事だろうが!!!」
「…あ…あご砕けたらどうすんだよォーー!!?」
「うっさい!!!!出鱈目ばっかヌカしてんじゃないわよ!!!!」
「そうよォ2人共!こぉんな可愛い子掴まえて千歳だなんて!どう見ても貴方達と同い年…10歳位にしか思えないじゃない!…目だって金色じゃないし。」


肩で息して怒鳴るナミに、マキノも同調して2人を諌めます。

空を飛んでた時、金色に輝いてたナミの瞳は、何時の間にか茶色に戻っていました。


「……嘘じゃねェよ。こいつは魔法を使う時だけ、目が金色に変るんだ。」


ゾロが殴られた顎を摩りながら、仏頂面して席に戻ります。


「千歳だってのもウソじゃねーぞ!!こいつが自分で言ったんだ!!『魔女だから死なないし、年も取らない』って!!」


ゾロと同じく顎を摩って立上りながら、ルフィも言い返します。


「…年を取らないって……それ、本当なの!?」
「え!?…ま、まァ…その事は本当だけど…。」


2人の言葉を聞き、何故かマキノは真剣な面持ちで、ナミの肩を掴み迫って来ました。

その迫力に気圧されて、ナミが素直に頷きます。

マキノはナミの顔を見詰て、シリアスにこう尋ねました。


「…ね…教えて!!若さの秘訣は!?」

「――は?」


思わず目が点となるナミ。
両側座るルフィとゾロが、椅子からずり落ちました。


「そんな事どーだっていいだろマキノ!!ナミにはシャンクスの居場所を突き止めて貰わなきゃいけねーんだから!!」
「その為に此処へ呼ぶって話したじゃねェか!」

「あははv…そうだったわねv……けど嬉しいわ!凄い力を持った魔女さんが仲間になってくれるなんて!きっとこれでシャンクスも見付るわね!」


ルフィとゾロに突っ込まれ、照れ笑い浮べつつマキノが言います。


「……仲間なんかじゃないわよ。」


その言葉を聞いて、ナミは憮然と答えました。


「冷てー事言うなよナミ~。お前も俺達『シャンクスそーさく隊』の仲間だって言ったろ~?」
「此処まで付合っといて、未だウダウダ抜かす気かよ?」
「『言う事聞かなきゃ殺す』って脅されたから、仕方なく付合ってやってんでしょ!!人脅迫しといて何が仲間よ!?」


ナミが2人を交互に睨んで叫びます。

叫びを聞いたルフィとゾロは、暫しキョトンと見詰あい、次いで風船が破裂した様に爆笑しました。


「何がおかしいの!!?」


笑い転げる2人を、ナミは顔を火照らせ怒鳴ります。


「うははははは♪…だってよォ~!お前、本気であの言葉信じたのか!?俺達がお前を殺す訳ねーじゃん!馬っ鹿だな~♪」
「だ!…だって『その気になれば骨も残さず消せる』って言ったじゃない!!」
「『その気になれば』な。…その気が有るんなら、わざわざ口に出さず、とっくに殺っちまってるって。」


ゾロがニヤニヤとからかいます。

ナミの顔が益々赤くなりました。

言い返してやろうと、息を大きく吸った瞬間――


――ゴン!!ゴン!!


と、2人の脳天に、マキノの拳骨が落されました。


「「痛ェェ~~~~~~!!!!」」

「女の子を脅迫するなんて、何て悪い子達なの!?」

「…だってよ~マキノ!シャンクスの居場所を突き止めて貰うには、こうするしか…」

「言い訳するんじゃありません!!女の子を苛める男の子なんて最低だわ!!恥を知りなさい!貴方達!!」


手を腰に当て、鬼の様に真っ赤な顔で、マキノは2人を叱り飛ばします。
先刻まで見せてた柔和な表情からは信じられない程の変り様でした。
真剣な怒気に当てられたルフィとゾロが、しゅんと項垂れてしまいます。


「…御免なさい。2人共、日頃女の子と付合ってないから…でも根は悪い子達じゃないの!だから気を悪くしないで、これからも仲良くしてあげて頂戴ね!」


くりんとナミの方に向けられた顔は、元通りの優しいものでした。
カウンターからぐっと体を突き出し、じっと見詰て懇願します。

千歳の魔女である自分を、普通の女の子として見るその瞳。
黒い瞳に映る自分を、ナミは不思議な心地で見詰返しました。

カウンター奥から、しゅんしゅんと湯の沸く音が聞えて来ました。




その4へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・2―その2―

2010年07月23日 20時21分27秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
その1へ戻】





外へ出たナミは、低く短く呪文を唱えました。


――するとどうでしょう。


彼女の茶色い瞳は、猫目石の様に煌く金色へと変化したのです。


そうしてつるりと宙を撫でた刹那、何処からとも無く大きな古箒が出現しました。
くるりと右手で1回転させた後、素早くそれに跨ります。

初めての時同様、傍で驚き見惚れていた2人に声をかけ、早く乗るよう催促しました。


「…ほら、早く乗んなさいよ!シャンクスの行方の手懸りを見付けに、あんたの家まで行くんでしょ!?」
「いや~!何度見ても不思議だよな~!何にも無いトコからパッと出しちまうんだから、おっもしれー♪」


ヒューと口笛鳴らしつつ、ルフィが後ろに続きます。
そうして背後から手を回した瞬間――ガン!!!と強烈な肘鉄が、彼の顔面にお見舞いされました。


「い痛ェ~~!!!…い…いきなり何すんだよ!!?」
「あんたは1番後ろ!!!ゾロの次に乗んなさい!!!」
「何でだよ!??俺の指定席は此処だろ!??」
「勝手に指定すなっっ!!!嫌なら此処に置いてくからねっっ!!」
「えええ!??どうして!??俺何か悪い事したか!??」


怒られる理由が解らず困惑するルフィを、ナミは親の敵でも見るかの様に、きつく睨むのでした。


「…自分の胸に訊いてみろっての!」

「ははっ!随分嫌われちまったなァ、ルフィ!」


傍で様子を見ていたゾロが、愉快そうに2人の間に乗込みます。
そんなゾロに対しても、ナミは等しく冷たい視線を送りました。


「あんただって同じよ、ゾロ!気安く触れたら容赦無く突落すからね!」

「へェへェ。」


まるで毛を逆立てて威嚇する猫の様な態度を取るナミに、ゾロは肩を竦ませて大人しく箒を握り締めたのでした。
その背後でぶつくさ文句零しつつ、ルフィも箒に掴まります。
2人がしっかり掴まった事を確認したナミは、低い声で呪文を唱えました。


「箒よ箒
 風を受けて、滑る様に空を進め」


途端に地面から足が離れ、ふわりと体が浮きます。

気付けば周りに茂っていた木々は下に。
森の側を流れる小川は細い糸の様に。

箒は空を滑る様にして、川を遡り始めました。


「うっひゃー♪何時もながら見晴し良好♪気分も最高~♪」
「ああ…しかし何時もながら、森から抜けた途端、えらい気候が変化するよな…。」


ぶるり震えて、ゾロが上着の前を合せます。

今回は準備良く2人共上着を着込んで来たとは言え、急激な温度変化はやはり堪えました。

未だ昼だというのに、辺りの景色はどんよりと薄暗く。
見上げた空は、灰色の厚ぼったい雲に覆われ、チラチラと小雪を降らせています。
降る雪は穏やかな風に舞い、踊り、地表を少しづつ白に染めて行きました。


「変だよなー…森の真上は、あんなに空が青いのに…。」


振り返ったルフィが、さも不思議そうに呟きます。
見詰る先には、こんもりと茂るオレンジの森。
分厚い雪雲は、その森を避けるように丸く開き、青空を覗かせていました。


「あの森には魔法で初夏の空気を満たしてあるの。雲は遮断し、風だけを一定の温度に変えて通過させる…だから外界で見られる様な四季は無いのよ。…雨は土が乾いた時だけ、夜の内に降らせる仕組にしてあるわ。」
「へー!だから何時行っても晴れてて、ポカポカあったけーのか!」
「天候を操るとは、流石魔女だな。」

「………でも…そういえば、雪は殆ど降らせた事無かったな…。」


感心したように何度も頷くルフィとゾロを他所に、ナミは雪の舞う空を感慨深げに見上げました。
ひらひらひらひら落ちる雪が、ナミの黒い毛織マントに氷の粒となって付着します。
手に触れた途端、それは融けて、雫に変ってしまいました。


「………500年ぶりに…見たかもしれない…。」


薔薇色に頬を染め…けど何処か寂しげに、ナミは呟きました。


「……降りて雪だるまでも作るか?」


おもむろに背後から声をかけられ、我に返ります。
反射的に振向くと、ゾロが自分を窺っていました。
目が合い、慌てて前に向直ります。


「…お気持ちは嬉しいけど、遊んでられないんでしょ!」
「そうだゾロ!雪だるま作るにゃ未だ量が足りねーよ!もちっと積るの待たねーと!」
「違うっっ!!!あんた達本気で人捜す気有んのかァァ!??」


暫くすると、下に灯りがポツポツと固まって見えました。
辿って来た川は、その中心を緩やかに流れています。
高度を下げると、数軒の木造家屋が疎らに建っているのが見えました。
どの家も茶色くとんがった屋根をしていて、煙突からモクモクと煙を吐出しています。


「村に着いたわ!――ルフィ、あんたの家は何処か教えて!」


ちらりと視線を送り、ナミが尋ねました。


「もう着いちまったのか!?やっぱ空飛んでくと早ェなー!!歩いてだと半日以上かかるのにな!」


ルフィが白い息弾ませ、感心したように答えます。


「夜出て着くのは何時も昼…片道16時間かかるもんな。」
「16時間!??幾ら何でもかかり過ぎでしょ、それ!?普通8時間も歩けば着く距離だってのに…一体何処をほっつき歩いてってるのよ!?あんたらー!!!」
「そんな事言われたって、事実かかってんだし。」
「そうか解った!!やっぱりお前の魔法のせいだな、ナミ!?バリヤーか何か張って俺達の目をくらましてんだろ!?」
「違うわよ!!!…そりゃ確かに森を人目から隠そうと張ってはあるけど…。」
「ほら見ろ!!やっぱりだ!!」
「最初から怪しいと踏んでたぜ。」
「違うってば!!!あんたらの辞書に『反省』という言葉は載ってないのォォ!??」




3人賑やかに村の上空を飛んでいたその頃――


村の住人の1人『チキンおばさん』は、分厚いコートに分厚い体を包み、ルフィの家を訪ねに向っていました。
川岸に架かる木の橋を渡り、薄く雪が積った道を歩きます。
進む度黒い足跡が点々と、白い道に刻まれて行きました。


「こんな寒い日は、マキノの淹れてくれる珈琲が恋しくなるよ…。」


そう独りごちて、凍える道を急ぎます。




一方その頃――上空では、ゾロが或る1軒の家屋を指差していました。


「おいルフィ!…この真下に見えるのが、てめェの家じゃねェか!?」


見ればその家屋は村の中で頭1つ高く、川岸近くに建てられていました。


「そうだ、あれ!!あれが俺の家だ!!1階はマキノが『パーティーズ・カフェ』って店やってて、3階屋根裏に俺とシャンクスが住んでんだ!!…マキノがいれるコーヒーは美味ェぞー♪」

「…あれね!じゃ、降りるから…しっかり(箒に)しがみ付いてて頂戴よ!」


そう言ってナミはしっかりと箒を握り直し、弾みを付けてから一気に箒を降下させました。




一方その頃――村人からの信任厚い『ウープ・スラップ村長』は、寒さに髭を震わせ、ルフィの家を訪ねに向っていました。


「こんな寒い日はマキノの淹れる珈琲が恋しくなるな…。」


そう独りごちて、凍える道を急ぎます。
愛用の縞帽子が、降り掛かる雪で、しっとり濡れて思えました。


…と、道の向うから、何かが近付いて来ます。

吐く息で眼鏡が曇ってしまい、視界がはっきりしませんが……どうやらそれは自分を知る人物のようで、親しげに手を振って来ました。


『はて、誰だったろう??』


眼鏡を袖で拭い、掛け直します。

恰幅の良い体、モジャモジャパーマの黒髪、気さくそうな笑顔……


『ああ、チキンおばさんじゃないか!』


直ぐ前まで来た所で、笑顔でお辞儀され、こちらも声をかけようとしたその時――


――突然、2人の間に「ギュン!!!!」と音させ、大きな物体が落ちて来ました。


「「ぎいやあ~~~~~~~~~~~…!!!!!!」」


「あれ!?村長!!チキンおばさん!!こんにちわー!!……どうして道の真ん中座ってんだー??」

「こんにちわ!!……そんな雪道の真ん中で座り込んでちゃ、風邪引くんじゃねェの?」

「こんにちわ!初めまして!……って誰?この方々??」

「俺達の村の村長と『チキンおばさん』って人だ。おばさんは近くで農場やってて、毎朝ルフィんちに卵届けてくれてんだよ。」

「ふうん…。」


自分達を間に挟み、腰を抜かして驚いてる2人に、3人は箒に乗ってフヨフヨ浮かんだまま、お辞儀しました。

上から下からジロジロ見回す2人の顔は、酷く蒼褪めています…きっと寒くて仕方ないのでしょう。

ルフィとゾロは箒から降りると、2人に手を貸して起してあげました。


「ルルルルフィ…!!ゾゾゾロ…!!おおお前らっっ…何で空から…そそそその子は誰なんだっっ…!?」
「ここここちっっ…!!こちらの娘さんは一体…!!どな…どな…何方なの…!?」


2人は歯をガチガチ鳴らし、戦慄きながら、ナミを指差し訊いて来ます。


「こいつか!?オレンジの森に居る魔女、『ナミ』って言うんだ!!こいつの魔法の箒で空飛んで、村まで帰って来たんだぜ♪」


質問されたルフィはニッカリと笑い、自慢げに答えました。


「……オレンジの森の…?」

「…魔女…?」


ストレートな回答を聞いた村長とおばさんが、呆然と顔を見合せます。


「………大変じゃ大変じゃ大変じゃ大変じゃ大変じゃ大変じゃ……!!!」
「………大変大変大変大変大変大変大変大変大変大変……!!!――こうしちゃ居られないわ!!」

「「皆に知らせなくちゃ!!!!」」


声を合せて叫んだ村長とおばさんは、2手に分れると、来た雪道をジャリジャリ音立て、走って行ったのでした。


「……一体、どうしたってんだ?」
「雪道座ってたから腰冷えたんじゃねー?便所行きたくなったんだろ、きっと!」
「ああ、成る程!」


小さくなってく村長とおばさんの姿を、ルフィとゾロは呆然として見送りました。

2人の姿は雪に覆われた丘の向うへ直ぐに消え、静寂の戻った辺りには、ただ足跡だけが残されていました。


「ま、何はともかく、…早く俺んち行こーぜ!」


ゾロとナミに笑顔で声をかけると、ルフィは道から枝分かれした、更に細い畦道へと入って行きます。

目の前には上空で認めた、3階建の細長い家屋が在りました。
扉の上には、大きく『パーティーズ・カフェ』と読める看板が掲げられています。
1階の窓からはランプの灯りが漏れて、外に積った雪の上に薄い橙色を落していました。

扉の前で待つルフィとゾロの元へ歩きつつ――ふと、道を振返ったナミは…


「…だから村に来たくなかったのよ。」


…と低く呟き、箒を宙で消したのでした。




その3へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・2―その1―

2010年07月23日 20時18分10秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
【魔女の瞳はにゃんこの目・1―その15―に戻】





魔女の瞳はにゃんこの目

空の彼方を
海の底を
地の果てを

心の奥をも見通す力




                    【魔女の瞳はにゃんこの目・2】





或る小さな国に、1人の偉大な魔女が居りました。
世界中の何もかも知り、世界中の誰よりも愛らしい魔女でした。(←自己申告)

小さな国の外れの小さな村の、そのまた外れの小さなオレンジの森の奥に建つ、お菓子の家。

壁は卵色したスポンジケーキ。
屋根の瓦は色とりどりのマーブルチョコ。
煙突は生クリームのかかったウエハース。
窓は薄く延ばした氷砂糖。
扉は四角いビスケット。

けど――実体は木と蜜蝋で出来たイミテーション。

魔女はそこに千年もの長い間、たった独りで住んでいました。



所が或る日の事です。
魔女を尋ねて2人の少年が、隣村からやって来ました。

麦藁帽を被った怪力無双の少年、ルフィ。
チクチク緑頭の二刀流少年剣士、ゾロ。

1年前に消息を絶ったルフィの義父『シャンクス』の行方を捜して貰おうと訪ねて来た2人の少年に、優しい魔女(←自己申告)は快く力を貸し、仲間になる事を約束したのでした。

      
    
      
「誰があんた達の仲間になるって約束したっつうのよ!?」

「「ナミ!」」


真っ赤な顔して問うナミに、ルフィとゾロが間髪入れずに返します。


「ひょほははほはへほ、ひゃんふふほーはふはひほはははわっへひっはほ?」


口いっぱいにケーキを頬張りながら、ルフィが答えました。


「てめェにはナビ&移動役任せるって言ったろ?」


隣で泰然と茶を啜りながら、ゾロも答えました。


「だ・か・ら!!勝手に決め付けないでって!!…何度言えば解ってくれんの!!?」


2人の返答に、ナミは見た目バームクーヘンのテーブルをバンバン叩いて反抗しました。



10日前に魔鏡の謎を解いて以来、2人は1日おきにナミの家を訪ねて来ました。
そうして1日おきにナミを勧誘し…その度にナミは断って来たのです。



「何度断ってもしつこく通って来て…しかも毎度の如く迷って森の入口で倒れてて体裁悪いったら!!…大体、村から川遡って来るだけだってのに、よく道に迷えるわね、あんた達!!」
「…ほへほほへはふひひひほほっへふ。…何で何時も迷うんだろーなァー??」
「そりゃこいつの魔法のせいだろ。」
「私が魔法をかけてあるのは森だけよ!!自分達の無能さ棚に上げて他人のせいにすな!!」


あくまで反省の無い2人に対し、ナミは再びテーブルを叩いて怒鳴ります。
叩かれた衝撃で、卓上置かれた瓢箪ランプが飛上り、見た目ウエハースの床に転げ落ちました。


「けどよー。最初は3日かけても辿り着けなかったのに、1日で着けるようなったんだから、進歩したよなー俺達!」
「ま、5回も通えばどんな複雑な迷路でも、正確なルートが頭に入るってこったな。」

「………どうしてそんな自信たっぷりで居られるのよ?ホント…。」
「そんな事よりナミ、ケーキおかわりくれよー。」
「俺も茶のおかわり頼むわ。」


頭を抱えるナミの前に、皿とカップがさっと突出されました。


「出すかボケェェッ!!!当然のように只飯只茶食らってんじゃないわよ!!!…そもそも何で毎度あんたらに御馳走振舞わなきゃなんない訳ェ!?1番気に障るのはそこよ!!!」

「だっておめェの作るオレンジケーキ、美味ェんだもん。」
「オレンジティーってのも悪くないぜ。」
「お客が来たらもてなすのは常識だよなー。」
「まァなんだ。嫌な客だと思うなら、上げなきゃいい訳で。」
「そうそう、嫌なヤツなら普通家に入れねー訳で。」
「つまり本心では、俺達を嫌と思ってない訳だ、こいつ。」
「本心では俺達を仲間と思ってる訳だ♪」
「まったく素直じゃねェよなァ。」
「仲間=家族も同然!…行き帰りすんのも面倒だし、いっその事ここに住んじま――」


――ベンッッ!!!!


屈託無く喋るルフィの顔面に、先刻彼が突出した皿がヒットしました。


「……人が黙ってるのを良い事に、おぞましい話をベラベラベラベラ……此処に住むですってェェ!?ざっけんじゃないわよっっ!!!女の子の独り住いに赤の他人の男を2人も上げられるかっっ!!!常識知らずも大概にしろ!!!」


鼻血垂らして苦悶してるルフィの耳を引張り、鼓膜目掛けて怒鳴ります。
与えられたダメージの深さに、ルフィは頭をクラクラ揺らして、床に蹲ってしまいました。


「…お…お…女の子ったって……おめェ、千歳だろォ~~?」
「そうだよな。…孤独な老人宅に若者が同居してやろうってんだ…心温まる誘いかけだと感謝して――」


――ゴンッッ!!!!!


ゾロの顔面に、先刻彼が突出したカップがヒットしました。


「…あんたら…あんま調子こいてると本当…殺すわよ…!?その気になれば何時だって、骨も残さず消せるんだからね…!?」


顔を押えて悶絶する2人を見下ろし、怒りの赤いオーラを纏って仁王立ちするナミ。
真っ赤に上気して薄ら笑うその様は、地獄の閻魔様を想起させる凄みでした。

このまま修羅場突入かと覚悟するも……はて、何も返して来ない。

おっかなびっくり見上げれば、ナミは無言で窓の向うを眺めているのでした。

見た目氷砂糖の窓からは、重なり合ったオレンジの葉が覗けます。



魔法の力で1年中初夏の陽気に包まれてる、不思議な森。
眩しい陽を浴び、瑞々しく輝く緑の葉。



眺めるナミの顔は憂いがちで、茶色い瞳は心なしか潤んで見えました。


「…お願い…解ってよ…。」


重い溜息を吐き、ナミが2人の方へ振り返りました。
その髪は窓からの光を受けて、オレンジの様に艶々と輝いています。
左頬にかかる一房を弄りながら、ナミは哀しげに言葉を続けました。


「…私だって…本音はあんた達と一緒に、冒険したい。
 けど…出来ないわ。
 だって私には…オレンジの森を守るという使命が有るから。
 話したでしょ?『この森のオレンジは、私の魔法の力で、もいでも1晩で新しい実が熟す』って。
 だから毎日実を収穫しないと……でなきゃ森はオレンジで埋め尽されてしまう…。
 私があんた達の冒険に付合って森を留守にしたら……その間、誰がオレンジを収穫するというの…!?」


大仰に芝居がかって話すナミの瞳から、涙が1滴零れ落ちました。


「ほっぽって鳥のエサにでもすりゃいーじゃん。」
「そうだな。大地の恵は等しく万物の喉を潤す為に……決して無駄にはならねェと思うぜ。」
「何で大事な出荷物を鳥の餌にしなきゃなんないのよ!!?この森のオレンジを売る事で、私は日々の稼ぎを得てるんだからね!!!」


身も蓋も無い即答を受けたナミは、さっきまでの憂いが嘘の様に、態度を豹変させました。


「…稼いでるったって……お前、少なくとも500年は篭り切りなんだろ?それでどうやって売って稼げるってんだよ??」

「近所で配送業営んでるペリカンにお願いして、毎朝収穫したオレンジを売りに行って貰ってるの。『魔女のオレンジ』ってブランド名付けられてて、広く評判呼んでるんだから!1個730ベリーの高値を付けても飛ぶように売れてるわ!…あんた達、1度くらい買って食べた事ない?」

「……そんな高ェオレンジ、買ってまで食うかよ。」


何処か自慢げに答えるナミに、質問したゾロは呆れて溜息を吐きました。


「でもよー。そんな稼いだって、外出て使わなきゃ意味無くねー?」
「あら、ちゃんと使ってるわよ!そのペリカンや、近所の黒猫に代金払って、時々買物頼んだりしてるわ。…まァ稼ぎの殆どは、いざという時用の貯蓄に回してるけどさ。」
「うわっっ!すっげーものぐさ!」
「うっさい黒坊主!!」
「しかしま…話を聞いた限り、留守に出来ない理由は、収入面を心配してだけのようだな…。」


正鵠を射たゾロの指摘に、ナミの胸がギクリと音を立てました。
それを合図に、床に胡坐を掻いてた2人が、ゆっくりと立上ります。


「ちっっ!…違うわよ!!勿論それだけじゃなくって!!…じ!…実はこの森…死んだ母の形見なの!!…だからその森を残して冒険の旅に出るなんて、私には出来ないわ~なんて…v――あ、あれ?どうして黙ってるの2人共??」


両手を胸の前で合せて可愛コぶるも、対面する2人は黙って立ってるのみです。
何とはなしにナミは、見た目クッキータイルの壁に追詰められてしまいました。


「…あの…ねェ…2人共?…ちょっと…黙んないでよ…恐いから…v」


おどけてにへら~と笑ってみるも、2人は無言のまま、じりじりと近付いて来ます。

その様に怯えたナミは、益々壁に貼り付きました。


「…シャンクスの行方を追う為だからなー…」


にやりと凶悪な笑みを浮かべ、ルフィが左掌をナミの前にかざします。
その掌がボウッ…と炎の如く点り、円の中4本の棒を描いた様な図が現れました。


――魔を破る力を秘めた、『破魔の拳』。


かざした手をぎゅうと握り締めた瞬間、ナミの顔から音を立てて血の気が引きました。


「やっっ!?ちょっっ!!止めてよ馬鹿!!!…まさかそれ!?…その手で殴られたら、幾ら永遠の命を持つ魔女だからって、死んじゃうんだからね…!!」


ナミが必死で喚きます。
蒼白な顔には、最早一片の余裕も窺えませんでした。


「…乱暴な手段は使いたくなかったが…シャンクスの命が懸かってるかもしれねェ問題だしなァ…。」


ルフィと並んで、ゾロも凶悪な笑みを見せます。

左手には背中から抜刀した、魔族の血を吸う妖刀――『鬼徹』が握られていました。
   
血の気の抜けたナミの顔から、更に血の気が引きます。


「…どうすんだー?ナミ?…その気になれば何時だって、骨も残さず消せるんだぜー?」
「…その気になれば…だけどな。」
「どうするー?」
「どうするよ?おい…。」

「…ど…どうするったって…!!」

「ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっ…!」
「へっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっ…!」


凄みを利かせて薄ら笑う2人の少年に追詰められ、ナミは生きた心地無く、涙目となってしまいました。
貼り付いた背中に冷たい汗がびっしょり溜っているのを感じます。
血の気が引き過ぎて貧血を起しそうでした。


1人対2人、数分間に及ぶ静かな戦いの末――


「……わ…解った!!解ったから!!…協力するから解放してェェ…!!!」


――折れたのは『魔女』の方でした。




その2へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その15―

2010年07月18日 15時14分30秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)






「所で、この宝どうするよ?山分けしようにも1枚鏡じゃしようが無ェし。」
「ゾロの刀で3枚に斬っちまやいーじゃんか。」
「苦労の末手に入れたお宝を、3枚に下ろそうとすんじゃないわよ馬鹿!!!」
「じゃあどうすりゃ良ーんだ??」

「そうねェ……ルフィ、あんたのその麦藁帽子、ちょっと貸してくんない?」


取敢えずの一件落着…が、宝の配分方法を巡って議論を交す3人。
提案を求められたナミは、ルフィから帽子を借り、2人に鏡を背負わせて、館の外へと連れ出しました。




既に正午を回ったらしく、太陽は天上高くから、館を燦々と照らしています。
朝とは打って変った暖かい空気。
陽射しの下3人は、草原吹く風を胸いっぱいに吸込み、思い切り伸びをしました。

草むらに寝かせた鏡を前に、帽子を手にしてナミが呪文を唱えます。

瞬く間に金色に輝くナミの瞳。

眩く蒼い光に取巻かれたと思った瞬間――鏡は元のパズルピースとなって砕け、ナミの手に持つ麦藁帽子の中、ザラザラと音を立てて吸込まれてしまいました。


「す…すっげェ~~!!!またパズルんなって帽子の中吸込まれちまった…!!!……一体、中どーなってんだァ!??」


ナミから返された帽子を振ったり叩いたりしてみるも、パズルになった鏡は出て来ません。


「魔法で帽子の裏に、異空間へと繋がる扉を開けたの。扉の鍵はあんたの唱える呪文。それ以外では開かない様にしてあるわ。…今から私の言う通りに唱えてみて!」


説明を終えると、ルフィに帽子から鏡を取り出す呪文を教えます。


「どう?…覚えた?」

「お…おう!!

 『水明鏡よ水明鏡!
  汝の主の前に、姿を現せ!!』」


呪文を唱えた途端、帽子の裏から光と共にパズルが零れ落ち、そしてまた1枚の鏡に繋ぎ合わされました。


「うっはァァ~!!!また1枚の鏡になっちまった!!!」

「今度は帽子の中に戻す呪文を教えるわ。また言う通りに唱えてみて!」


再び、ルフィに言い聞かせる様、呪文を唱えるナミ。
そうしてまた教えられた通りに、ルフィが呪文を唱えます。


「『水明鏡よ水明鏡!
  汝の主の前から、姿を隠せ!!』」


あっという間に鏡は砕けてパズルに戻り、また帽子の中へと吸い込まれて行きました。


「…どう?これなら持ち運びも楽ちんでしょ?」


目を真ん丸にして驚いてるルフィに向い、ナミが得意満面の笑顔で言います。


「すげすげすんげェおんもしれェ~♪♪パズルになったり鏡になったり…俺の命令した通りなっちまうなんて、すんげェ~楽しい♪♪」

「…こいつの呪文でしか開かない様にしてあるって……それってお前、宝はルフィに寄越すって事か?オール自分なんて言ってたクセに良いのかよ?伝説の鏡だっつうなら、売りゃあ結構な値が付くんじゃねェの?」


如何にも意外だとばかりに尋ねるゾロ。
その問いにナミは苦笑いを浮べて答えました。


「そりゃねー………けど、売る訳に行かないじゃない。あんたらが最初に持込んだ鏡は、どうやら館の歯車の一部に組込まれて外れそうもないし…無理に外せば今度こそ崩壊崩落何が起るか判らない。…となれば今やあんた達にとっての手懸りはその水明鏡のみ…」

「…つまり俺達の為に宝の所有権から手を引いた、と。…我儘で自分さえ良ければ構わないどうしようもねェ自己中魔女だと思ってたが、本当は良いヤツだったんだなァ、有難う。」
「え!?そうなのか!?タカビーで救いようの無ェドケチ魔女だと思ってたけど、本当は良いヤツだったんだなァ~、有難う!」
「『有難う』以外全て余計よ!!!っっとに失礼千万な奴等ねェェ!!!」


仲良く言い合う3人の元に、崖の間を流れる川の方から、一際強い風が届きます。
風は枯れた草原を駆け抜け、ナミの被るマントを大きくはためかせました。

雲は吹き飛ばされ、上空広がる澄んだ青い空。

2人に背を向け、ナミは両手を上に、1つ伸びをしました。

その金色の瞳に映るのは、白い石造りの教会。
昼陽射しの下、影まで縮こまり、ポツリと立ち竦んだ姿。
ずっと独りで、千年以上も建っていた館。


「……まったく…ほぼ1日中あんた達に付合わされ、働き詰めにされて…結局何にも手に入らず、骨折り損のくたびれもうけ……散々ったらないわよねェ…。」


独り言の様に呟かれた言葉。

しかし振返り2人に向けたその顔は、言葉とは違い、とても晴れやかなものでした。


「…散々ついでに、ヤケのヤンパチで出血大サービス!村まであんた達を送ってあげるわ!」




行った時とは逆の道を辿り、箒は3人を乗せて飛んで行きました。

森を越え海に出て、波の上を滑空する鴎達を追い、進んで行く箒。
昨夜満月に照らされていた海は、今は太陽に照らされ、何処までも蒼く冴え冴えと輝いています。

昨夜と違って風は向い風…行きより幾分抑えた速度で、ナミは箒を走らせて行きました。


「…腹減ったァ~~…考えてみりゃ3日飲まず食わずでさまよった後、ちびっとだけ夕飯食って、また夜中ぶっ通しで動いて、今日も朝から夕まで抜いちまって…計23食分も損しちまってる!帰ったらまとめて食わね~とな~。」


ナミの腰掴まり、ルフィが腹の虫を響かせ呻きます。


「…あんたそれ、1日5食で計算してるでしょう!?それに人ん家の農作物&夕飯あんだけ食荒らしといて、なァにが『ちびっと』よ!?」

「俺ァ帰ったらとことん眠りてェよ。…此処数日ろくに睡眠取ってねェ。」


ルフィの腰掴まったゾロが、盛大に欠伸をして言います。
刀を振るった時、あれ程鋭い光を宿していた双眸は、今では眠た気に開閉を繰返していました。


「私は帰ったら1も2も無く先ずお風呂だわ!1日中汗水流して埃や砂に塗れて…正直1分たりとも我慢出来ないもの!!」


先頭で、辛抱堪らずといった風に、ナミが叫びます。


「ならいっそ海飛び込んで洗っちまやいーじゃん。」
「そうだな。確かに手っ取り早い方法だ。」
「海水で体洗う馬鹿が居るかボケェェ!!!」


背後を振り向き、2人のボケに激しくツッコミを入れるナミ。
入れた後でしかし、穏やかな顔してルフィとゾロに言いました。


「……まァでも久し振りに楽しかったわ。こんなに楽しい思いしたの、数百年振りかも…お礼に、貸しはチャラにしたげる!有難う…2人とも。」


にっこりと微笑み、直ぐにまた前に向き直ります。
後ろから見た耳が、ほんのりと赤く染まって見えました。


「………そんっなに俺達と居て楽しかったかー…?」


背後から、何かを探る調子で、ルフィが声を掛けて来ます。


「まァねー……これで依頼が完了して、あんた達と別れるのは、ちょぉぉっと寂しいかも……」


素直に、感慨深げにナミが答えます。

その回答を聞き、ルフィはにんまり笑うと、更にぎゅうと腰にしがみ付いて言いました。


「じゃ、決まりだな!」

「……何がよ??」

「今日からお前も『シャンクスそーさく隊』の仲間だ!!」

「はあああ!!!??」

「ゾロも異存は無ェだろ!?主にナミには案内と移動役任せるって事で!!」

「ああ、良いんじゃねェの?俺とてめェだけじゃ、何かと道中不安だしな。」

「とそんな訳で…これからも宜しく頼むな♪」


ニシシッ♪と歯を剥き出して笑い、肩をポンと叩かれます。


「ちょ…ちょっと待って!!!勝手に仲間に組入れてんじゃないわよ!!!依頼は『魔鏡の謎を解く』事だけだったでしょ!!?」
「だから新しく依頼する!!また宜しく頼むって!!」
「宜しく頼むな!!!!依頼すんなら金払え!!」
「金は無ェからツケにしといてくれ!!」
「ガキがツケ払いしようとすんな!!!大体ウチはツケ利かないの!!キャッシュでしか受けないようしてんだからね!!」
「いーじゃねェか!!俺達に付き合や、また楽しい思い出来るぜ♪」
「楽しい思いなんて出来なくて結構!!只働きはもう御免よ!!!」
「俺達と別れるのはさびしーーって言ったクセに!」
「だからそれは…!!!……や!?も!!ちょっと待っ…!!離れろセクハラ馬鹿坊主~~!!!!」


何度突っぱねられようとも、挫ける事無く勧誘し続けるルフィ。
しながら、最早逃さんとばかりに、ぎゅうぎゅうとしがみ付いて来ます。
その手を何とか払い除けようとナミは暴れますが、馬鹿力で繋ぎ止められた両腕は、全く解く事が出来ませんでした。


――スカーン!!!


「いいてェェェ~~~!!!!…何だよゾロ!!?何で俺の頭叩くんだ!!?」


唐突に殴られた頭を撫で付け、ルフィが振向いて抗議すれば、ゾロが右拳固め仏頂面して睨んでいました。


「……調子に乗り過ぎだ!」

「そうよそうよ!!あんた、偶には良い事言うじゃない!!言ってやって言ってやって!!!」
「調子に乗り過ぎィィ!!?何がだよ!?ドコがだよ!?俺のドコが調子に乗り過ぎだってんだよォー!?訳解んねー事言ってんじゃねェ~~!!!」
「あんたの全てが調子に乗り過ぎだっつってんの!!!少しは自覚しろ!!!馬鹿!!ガキ!!チビ黒頭ァ~!!!」
「誰がチビだ!?おめェの方がよぉ~っぽどチビじゃんか!!!チビババァ!!!ケチババァ!!!誘ってやってんだから素直に仲間入れば良いだろ魔女ババァ!!!ベェ~~!!!」
「女の子を婆ァ呼ばわりすんなっつったでしょデリカシーレスのクソガキ!!!だァ~れが仲間になんてなってやるもんか!!!持参金片手に一昨日来いっつうの!!!ベベベェ~だ!!!」
「低レベルの争いしてんじゃねェって!!!頼むからちゃんと前見て運転してくれよ!!!また落下したらどうすんだお前らァ~~!!!」


彼方まで続く青い空。
彼方まで続く蒼い海。

喧々囂々もめにもめつつも、箒に乗って海上を飛ぶ3人の顔は楽し気で。
鴎達が遠巻きに見ながら、周囲を滑空して行きました。

向う先にはそろそろ海面近くまで傾いた太陽が、もう一頑張りとばかりに波を輝かせています。
何物にも遮られる事無く、全てを露にする眩しい光。

海面映った影を道連れに、箒はその光の中へと突き進んで行きました。




魔女の瞳はにゃんこの目

空の彼方を
海の底を
地の果てを

心の奥をも見通す力






【(一先ずの)お終い】



…記念すべき(?)シリーズ第1作目。
骸骨役はブルックさんが登場してれば彼にしてた事でしょう。
オレンジタルトとオレンジパイがごっちゃになってたり、今読むと誤りが多くて恥ずかしい…しかしあまりにも長過ぎて修正するのも面倒な為、知らんぷりさせて頂く。(汗)

・2006年7月はにほへといろ様のナミ誕に投稿した作品。



【魔女の瞳はにゃんこの目・2―その1―へ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その14―

2010年07月18日 15時00分58秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)





…どれくらい経ったでしょうか?

何時の間にか、雨音は止んでいました。

石片で頭を防御しつつ、恐る恐る顔を上げます。

壁に嵌め込まれていたステンドグラスは、下方数十枚のモザイクを残すのみ。
剥れた後に露呈した黒い地肌が、無残な感を与えていました。


「……ひょっとして、あの、残った鏡のモザイクが『宝』ってェ事か…?」
「いや、もしかしたら落ちてった方かもしんねーぞ。」

「…下を良く見なさい!割れて粉々じゃないの。…確率的に、多分残された方だと思うわ。」


崩れた床の上、粉々になって煌く、地上の星屑。

3人は顔を見合わせ、深く重い溜息を吐きました。




「…ったく!てめェに付き合ったお陰で、体中打撲刺傷だらけの散々だぜっっ!!」
「それはこっちの台詞よ!!見なさい!!滑々の玉の肌が見る影も無い!!」
「まーでも3人とも奇せき的に軽しょーで済んで良かったよな♪…にしてもこの青いモザイク鏡が何だってんだろーなァ~???」


残された数十枚のモザイクは、偶然か否か全て蒼い色をしていました。
女神の裾を構成していたそれらを、ゾロの刀を使って器用に切り剥し、堂の隅っこで3人顔を突き合せて悩む事数刻。

飽きて退屈を持余したルフィが、モザイクを数枚手に取り、繋ぎ合せるようして遊び出しました。


「ちょっとあんた!!何遊んでんのよ!?そもそも依頼主はあんたでしょお!?ちゃんと真面目に考えろっつの!!」
「悪ィ悪ィ♪…何かパズルのピースに似てるなァ~って♪」

「……今、何て言った…?」

「へ??…悪ィ悪ィ、…何かパズルのピースに似てるなァ~…って。」
「ワンスモア!!もっかい!!!」

「何なんだよ一体!?…悪ィ悪ィ!!…何かパズルのピースに似てるなァ~って!!」

「――それよ!!!」
「どれだァ???」
「そうか!パズルのピース…!!」

「そう!…このモザイク1つ1つが、パズルの1ピースなんだわ!!即ち全てを繋ぎ合せて現れた物こそ『宝』…!!」


言うが早いか目にも止らぬスピードで次々繋ぎ合せて行くナミ。

程無くして完成したそれは…大きな楕円形の、蒼い1枚鏡でした。


「…1枚の鏡になっちまったぞ?」

「……この鏡パズルが『宝』??…はっ!…大冒険の末手に入れた割には…ショボイ賞品だな!」

「良く見て!!唯の鏡じゃない!!…私の…姿が映ってるわ…!!」


現れた予想外の宝に思わず気が抜け、苦笑った2人。
しかしナミだけは真剣な眼差しで、鏡に映った像を凝視していました。


「そりゃお前、鏡なんだから、映るのは当然――」
「忘れたの!?私は魔女だから、人間の造った鏡には姿が映らないのよ…!!」


焦れた様にナミが返します。
ゾロの双眸が大きく見開かれました。


「……人間が造った鏡じゃない…?」

「えっと……それってどうゆう意味だゾロ???」

「…『水明鏡』……魔女が造りし鏡と伝えられた、伝説の魔鏡よ…!これが此処に隠されていたという事は……『魔女が建てた教会』と言う噂も、強ち嘘ではないのかも…!!」


鏡に触れる手が、じっとり汗ばんで来るのを感じます。
まるで蒼い水の中からじっと自分を見詰る様な鏡像。
その幻惑的光景に吸い込まれ、中々目が離せないでいたナミでしたが、暫くしてルフィに向い、こう言いました。


「…この鏡はねェ、ルフィ…会いたい人の姿を映す魔法の鏡なの。どんなに離れた場所に居る人でも映し出し、会話を交す事が出来る…!」

「……それって……この鏡にシャンクスを映して話せるって事かー!!?」

「論より証拠!やって見せたげる…!!」


にっこりと強気に微笑み、ナミは鏡に向って、厳かに呪文を唱え出しました。


『水明鏡よ水明鏡。
 我が前に、シャンクスの姿を映し出せ…!』


――直後、鏡面の中心から波紋が広がり、映っていた像が歪んで見えなくなりました。

手元に置いていたランプより尚、蒼く光り輝いた中、代りに現れたのは――1人の、赤毛の青年の姿でした。


「――シャンクス…!!?」


礼拝堂に響き渡るルフィの大声。

その声に反応し、鏡の中の青年がこちらを向いて、驚いた顔を見せました。

左目に付けられた、大きな3本の傷跡。
ルフィに似た、意志の強そうな瞳。


「…ルフィ…!?…それに…ゾロか!?」


自分達に向けて伸ばされる大きな右手。
その手をルフィが掴もうとした瞬間、鏡像は突如乱れ、再び広がった波紋に掻き消されて、見えなくなってしまいました。


「シャンクス!!?どうしたんだシャンクス!!?今何処に居るんだよ!!?なァ!!!なァ!!!…答えてくれよシャンクス…!!!!」
「ルフィ駄目!!!落ち着いて…!!!」


鏡が割れんばかりに叩き付けるルフィの両手を、ナミが焦って取押えます。

ルフィの悲痛な問い掛けも空しく、鏡は次第に輝きを消し……そこに映るのは、囲んで座る3人の姿のみでした…。




礼拝堂に戻った暗闇と静寂。

何事も無かった様に、黙って床の上横たわる、蒼い大鏡。
ピースの継目は消え、ごく普通の1枚鏡にしか見えません。


「……どうゆう事だ…?」

「…シャンクスは…!?シャンクスは何処消えちまったんだよナミ…!!?」


まだ自分を取押えていたナミの腕を払い、ルフィが叫びます。
何時でも勝気だった黒い瞳に、薄っすらと張る涙の膜。
その瞳をナミは痛まし気に見詰ました。


「…はっきりした事が1つだけ有る。…ルフィ、あんたの義父シャンクスは、魔力の及ばぬ結果内に居るわ…!何故そこに居るのか?…理由は解らない。自分の意志か…或いは他の者の意志か…」

「…閉じ込められてる可能性も有りって事か?」


険しい顔付でゾロが聞いて来ます。
隣に座るルフィの表情も、同様に険しくなりました。


「……かもしれない。けど、解らない。結界内に居るんじゃ、私の魔法を使っても探せない…何も出来ない…!」


そう言って、ナミが済まなそうに2人の前、頭を垂れます。


「………ゴメンね…2人とも……役に立てなくて…。」


髪の隙間から、悔しそうに唇を噛む表情が覗けました。


「……そう悲観する事も無ェだろ!…無事で居るって解っただけでも…1歩前進したじゃねェか…!」


陰鬱さを吹き飛ばそうと、足を無造作に投げ出しながら、ゾロが言います。


「…探せば良いさ……例え地の果て海の底に居ようとも…な。」

「……そうだ…シャンクスは何処かに生きて居るんだ…!!」


ゾロの言葉に誘発され、ルフィが口を開きます。


「探し出してみせる!!…何処に居ても!絶対に…!!」


漆黒の瞳が、決意の火を灯して輝きました。




その15へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その13―

2010年07月18日 14時59分51秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)





「…結局…ドクロのおっさん、宝のヒント教えてくれずに消えちまったなァー…。」


おもむろにルフィが呟いた言葉に、ナミとゾロははたと思い起した様に面を上げました。


「……そういやすっかり忘れてたが…確かそんな約束してたよな…。」

「……そうよ…そうよそうよそうよ…!!あんにゃろおぉぉぉ…最後の最後まで約束破って行きやがった…!!!――くぉら戻って来い恩知らずゾンビィ~~!!!あんたなんか地獄に落ちて閻魔様に舌抜かれちまえェェ~~~!!!!」

「…聞えてねーんじゃねェかな?じょうぶつしちまったし。」
「やれやれ…大山鳴動して、出て来たのは髑髏1匹か…。」
「ドクロ1匹じゃねーだろ、ゾロ。ちゃんと幽霊も出て来た!」
「そういやそうだったな……で、この先どうする?結局…謎解きは自分達でするしかなさそうだぜ?」
「つっても頼りの魔女が全然解けそうにねーしなァ~。」
「うっさい!!!文無しで依頼しといて文句言ってんじゃない!!!……まったく…あんた達に付き合ってこんっっっなズダボロのヨレヨレになるまで頑張ったというのに…その結果が骨折り損のくたびれもうけだなんて…嗚呼、神様、これじゃ可愛い私があんまり可哀想ですぅ~!!!!」


しおしおと涙を流して、ナミは項垂れてしまいました。
沼に張る氷が鏡面の様に、その泣き顔を映しています。




――在り処を知るには或る『鏡』が必要らしく、それを俺は持って居ないんだ…。




――やっぱこの鏡がカギなんだな?




『……鏡…?』


脳裏でチカリと点灯する光。

映った顔をマジマジと見詰ながら、ナミは黙考します。


『…でも…夜だった訳だし…反射して当り前…けど…何であんなに暗かっ…?鏡…鏡…鏡…!!』


ガバリと跳ね起きました。


「そうか!!『鏡』よ…!!」
「うわっっ!!びっくりした!!」
「何だァ!?急に!!」

「…解ったのよ!!全て…謎が解けたわ!!」


仰天する2人に向い、興奮した面持ちで宣言するナミ。
茶色の瞳は自信に満ちて輝いています。


「謎が解けたって…『宝の在り処』のか?」
「ほ、本当かァ!?本当に解けたのか!?すっげー!!!」

「ええそうよ!!直ぐに飛んで向おう!!宝は――あの『館』に隠されていたのよ…!!」


靄の晴れた森に響き渡る、ナミの活き活きとした声。
森に眩しく射し込んだ陽光が、暗闇に隠されていた沼の輪郭を、くっきりと露にしていました。




ナミの箒に乗って飛んで行き、3人は再び『アン・ヴォーレイの館』の前に降り立ちました。

草原にポツリと建った廃墟は、闇の中で感じたよりも、ずっと小さな物でした。
ひび割れた白い石組の上、鐘楼の取付けられた教会風の造り。
鐘の数は13個。
天辺には金属製の黒い逆十字架。
朝陽に照らされ草原に長々と伸びた影だけが、昨夜見た禍々しい闇を伝えていました。

昨夜見た時同様、3人は13を数える段を上り、錆びた青銅の扉を開けて、礼拝堂の中へと入って行きます。




雪の様に降積った埃と、黒い黴に塗れた礼拝堂。
天井には13個の燭台が拵えてある、蜘蛛の巣だらけのシャンデリア。
大理石の祭壇の後ろ…正面の壁に嵌められた美しいステンドグラスの窓も、良く見ると黒黴が蔓延り大分汚れている事が解りました。

床に開いた大きな穴に注意しつつ、3人はその前へと歩み寄ります。

黒黴の浸食を受けてるとはいえ、赤青黄緑紫の五色で描かれた女神像は、それでも麗しい姿をしていました。
たおやかに手で何かを持つ仕草で在りながら、そこに持つ物は何も無く、ぽっかりと真円に開けられた穴から射し込む陽の光。
暗闇に包まれた礼拝堂内でその光だけが眩しく輝き、昨夜ルフィがかち割った床の惨状を照らし出していました。
女神を取巻いているのは、同じく五色の硝子で描かれた、小さな十二月の花。
ナミの掲げるランプの光を反射させた女神と花が、白い石壁に色を浮べてユラユラと揺れています。


「……で?この窓が何だっつうんだ…??」


無言で窓を睨んでいるナミを訝しみ、横からゾロが声を掛けました。


「…馬鹿、これ見てまだ解んないの?」


ランプで窓を指し示し、ナミが苛立った声を上げます。


「…つって言われてもなァ…おいルフィ、何か解るか?」
「うんにゃ、解んねー!」
「良く見なさい!!あんた達の姿やランプが、くっきりステンドグラスに映ってるでしょォ!?」


言われてじぃっと見てみれば…五色のモザイク柄に映る、ランプと自分達の姿。


「…これを見て気付いた事は!?」

「え~~と……顔色が赤青黄緑紫色に変って見えておもしれー♪」
「…この服、穴ボコだらけで流石にもう着れねェなァ。」
「違う!!!…おかしいと思わないの!?ステンドグラスの窓が、陽の光を全く通さず、鏡みたいにくっきり物映してるなんて!!」

「……あ!!」

「…おい…まさかこれって…窓じゃなくて…!」

「…そう……『鏡』!!…人の目を欺く為、窓に見せ掛けてあったんだ!!」


驚いた2人の顔が、まるでモザイク絵の様に映り込みました。




昼は貞淑
夕は憂鬱
夜は魔女


鏡の裏に書かれてた3つの文章は、確かに『月の女神』を表していた。

けど、答えは『月』じゃない。

天上に在って夜毎に満ち欠けを繰返し、姿を変える月。
同じく見る者によって、姿を変える鏡。

月の女神は『姿を変える』事を比喩したキーワードだったんだ…!




「…答えは解った…それで…俺は何故、ルフィを肩に乗せて立たなきゃなんねェんだ?」


自分の肩の上立ち上るルフィの足を押えながら、ゾロが疑問を口にします。


「…俺もさっきから、何で俺の肩の上にナミを乗せなきゃなんねーのか、聞きてェなと考えてた。」


ゾロ同様、自分の肩に立ち上るナミの足を押えながら、ルフィが疑問を口にします。


「こら!!揺らすな!!黙って立ってしっかり足押えてろ!!…体重の軽い者が重い者の上に乗っかるのは当然でしょお!?」


ルフィの魔鏡を手に持ったナミが、不平を鳴らす2人を見下ろし、叱り付けました。


「そうかー??俺よりナミのがずっと体重有――」


――ブギュル!!!!


「痛ェェ!!!木靴で顔ふんづけんなよ!!!鼻血出ただろ!!!」
「顔上げんなっっ!!!スカートの中見んじゃないわよ猥褻黒頭!!!」
「…千歳越えてる婆ァのパンツなんて、誰も好き好んで覗かねェよなァ。」
「ゾロ、あんた、後1回でも『婆ァ』って言ったら、死刑決定だからね。」


親亀の上に子亀、子亀の上に孫亀。
立っているゾロの肩の上にルフィが立ち上り。
そのルフィの肩の上にナミが立ち上り。

ステンドグラスの女神像の前、3人は縦に並んで立ち上りました。
1番上に立つナミの正面には、女神像にぽっかりと開いた真円の穴。
円の大きさは、丁度ルフィの魔鏡が嵌るくらいの大きさに見えました。


「…やっぱり…この魔鏡を、ステンドグラスに開いたこの穴に嵌め込めって事みたい…。私の考えが当ってるなら、嵌め込んだ事が鍵となって何かが起きる!」
「何かって何だ??」
「そんなの嵌め込んでみなきゃ解る訳無いでしょう!?願わくばお宝が降って来て欲しい所だけどね!」
「何でもいいから早くやれ!…こんな恥しい体勢、やってられねェっての!」


穴から覗けて見える、明るい外の世界。
眩しい陽の光、草原を吹く風。
魔鏡を嵌め込む事で外界の光や音は遮断され、礼拝堂は夜の如く闇と静寂に支配されました。


――ゴトリ…!!


「「「ゴトリ???」」」


嵌め込むと同時に響く、不吉な振動音。

首を傾げる3人の上から、ステンドグラスのモザイクが、バラバラバラッ!!!!と勢い良く剥がれ落ちて来ました。


「「「ぎいやああああああああああああああああああぁぁぁぁ~~~~~~~~…!!!!!!」」」


悲鳴を上げて仰け反った衝撃で、一気に床へ崩れ落ちる親亀子亀孫亀達。

その上に硬いモザイクの雨が、容赦無くバラバラバラバラと降り注ぎます。


「あたっ!!!あたっ!!!あたたっっ!!!…マジ痛ェェェ!!!!」
「ちょっっ!!!待っっ!!!…お!!お前!!この事態を全く予期してなかったのかよ!!?」
「してる訳無いでしょお!!?今瞳元の色に戻ってんだから!!!」
「もちょっと警戒して事に当れよ!!!割れて刺さって死んじまったらどうしてくれんだ馬鹿!!!」
「何よ!!!あんただって全然警戒してなかったクセに!!!剣士だったら気配読んだりして気付きなさいよボケ!!!」
「無生物の気配が読めるかってんだアホォ!!!」


近くに転がってた石片で頭を隠し縮こまるも尻は隠せず。
バラバラバラバラバラバラバラバラと床を叩く雨音を聞き、割れて破片が刺さる痛みに耐えながら、3人はスコールが止むのをひたすら待ち続けました。




その14へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その12―

2010年07月18日 14時58分49秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)





崖から飛んで行く事数百m…メアリの沈んだ沼は、暗い針葉樹の森の中に在りました。
芯まで凍る冷気に震えながら、沼の近くに降り立った4人。

草むらに降りた霜が、踏まれる度にジャリジャリと音を立てます。
目の前に広がる沼は、立ち込めた乳白色の靄で覆われ、朧げでした。


「……こんな寂しい場所に、メアリは沈んだのか…。」


1人、白い息を吐く事も無く、ぽつりとヘンリーが呟きます。


「…けど死体はもう引上げられたんだろ?此処にはもう居ないんじゃねェの?」
「でもよー…ふっっ…ぶえっっくしょん!!!…ズズッ…!!自殺じだだまじいばぞの場に残っぢまうっで、ナミが言っだじゃねーがゾロ!」
「500年も経ってんだろ?いいかげん、待ちくたびれて成仏しちまってんじゃねェの?」


歯をガチガチ鳴らしたり、鼻水ズルズル啜ったり、足を踏鳴らしたりしながら、ルフィとゾロが言い合います。
通気性に優れた穴開き服は、冬の朝に着こなすには具合が悪いようでした。


「……居るわ!」


靄で水面の様子すら知れぬ沼を、じぃっと見据えていたナミがきっぱりと告げます。


「メアリは……此処に居る!500年間……ずっと、ずっと、此処に居たんだ…!」


見詰るナミの金の瞳に、透明な涙の膜が張りました。


ヘンリーが1歩、前へ踏み出します。

堪え切れずに、2歩、3歩、4歩、5歩と……

ジャリン、ジャリンと、踏鳴らされる霜柱。
骨だけの体には、冷たさ等感じられません。

靄の中へと入り、沼に張った氷の上で、ヘンリーは精一杯声を張上げました。


「メアリ!!メアリ!!俺だ!!ヘンリーだ!!…500年も待たせて御免…!!今更だけど…俺は…君に謝りたい…!!お願いだ!!居るのなら、どうか顔を見せてくれ…!!」


静寂に響き渡る、ヘンリーのしわがれた声。

刹那――水面を覆っていた靄がユラユラと波打ち、スゥ…と陽炎の様な像が浮び上がりました。

煙の様に白くぼんやりとした、若い女の姿。


「………メアリ!!」


2つに束ねた髪、痩せ細った体、穏やかな顔…

500年前見た姿そのままで、メアリーはヘンリーの前に立っていました。


「……ヘンリー…?本当に…会いに来てくれたの…?」


メアリのか細い声が、辺りの空気を震わします。
指を無くしたヘンリーの手を、透ける手でそっと包み込みました。


「……解る…?俺だって…。もう、500年前の面影なんて…欠片も無いだろ…?」


照れ臭そうに笑いながら、ヘンリーが返します。


「…解るわよ。幼い頃からずっと傍に居て…大好きだった人だもの…!」


骨張った手を握り、メアリが優しく微笑みました。


「……君は…あの頃とちっとも変ってないね…。」

「…私だって…随分変ってしまったわ。貴方以上に、生前の姿は跡形も無い。」


皮肉っぽく笑い、メアリが肩に手を回して来ます。


「……恨んでないの?俺の事…君との約束を破ったのに…。」

「………恨んだわ…恨んで、憎んで…貴方を…貴方を奪った女を……皆、皆、無くなっちゃえば良いと呪った…。」


顔を伏せ、視線を逸らし、メアリは低く呟きました。




…そう…地上で生きる人全てを…憎んだ、恨んだ。

死んで貴方を呪い殺してやろうと、私は沼に身を投げた。
絶対に、幸せになんかさせてやりたくなかった。
不幸にして…あの女と仲違いさせて…何で私を選ばなかったんだろうって…後悔させてやりたかった…。

冷たく暗い沼底に身を沈めて……どうして私ばかり、こんな不幸な目に遭うんだろうって…
何故……私だけ、独りで居なくちゃならないんだろうって…

きっと…貴方は今頃…私を忘れて、仲睦まじく、あの女と笑い合ってる…

誰も彼も皆…幸福な毎日を送ってる…

私独りを……此処に置き去りにして…

考えれば考える程…許せなくて…何もかも恨んで…憎んで…沼の底の泥が、私の体内に溜って…どんどん真っ黒く汚れて行く様感じて…!


――沼に身を投げたのは……私自身なのにね。


そう気が付いたのは…私の体が引上げられた時だった。

あの時…必死になってナミや、私の両親や、近所の人が、私の体を深い沼底から引上げてくれた。

そうして……ナミが、私の耳元で、泣きながら教えてくれたの。


『ヘンリーが、彼女に殺されてしまったよ』って…


………私の、せいだと思ったわ。

私が…貴方を、呪い殺してしまったんだって…。

後悔したわ…済まなくて…出来る事なら…謝りたくて。

小さい頃から…何時か……一緒に、幸せになろうって…言ってくれてたのに…!




「…君のせいじゃないよ……きっと、約束を破った罰が当ったんだ…。」


メアリの手を握り、ヘンリーが微笑みました。


「……許して…くれるの…?」

「…俺の方こそ…。」

「…許すも何も無いわ……貴方は……私を忘れず…会いに来てくれた…!」

「……500年間…ずっと心に残っていた。もしも生れ変れるものならば…今度こそ、君と共に生きたい!生れ変って、もう1度…君の事を、抱締めたいよ…!」


身を震わす様揺らぐ影。
メアリの頬を、幾筋もの涙が伝いました。


「……嬉しい…!ずっと…ずっと…待ち続けていた甲斐が有ったわ……これで…もう、思い残す事は無い…!」


見る見る内に、メアリの姿が薄まって行きました。
ヘンリーの腕の中、まるで空気に溶ける様、霧散して行く白い影。


「……メアリ!?」

「……会いに来てくれて、本当に嬉しかった…!有難う、ヘンリー…!そして……有難う、ナミ…。」


その言葉を最後に……メアリの姿は…何処にも見えなくなりました。




「…消えちまった。」

「成仏したのか?」

「…思いが叶って、漸く成仏出来たのよ。」


振返ったヘンリーの前に、遠巻きに見守っていたナミとルフィとゾロが、幹からひょっこりと顔を覗かせました。

沼の水面を覆っていた靄は段々と迫上り、今では森全体に立ち込めています。
白く煙る闇の中、ナミはゆっくりとヘンリーに近付いて行きました。

傍に立ち、ヘンリーの窪んだ眼孔をきつく見据えます。


「ねェ…どうして…約束を破ったの?」


返答を求める顔は険しく、怒りを懸命に抑えてる風でした。


「………どうしてだろう…。」


メアリの名残を惜しむかの如く、ヘンリーは己の腕の中をじっと見詰ています。
眼球を失くした目は、洞穴に似て真っ暗でした。


「…あんなに仲良かったのに…心が離れてしまったって言うの?」

「…そうじゃない。」
「じゃあ何故!?…あんな…500年も待つ程あんたを思っていた娘を、どうしてあんたは捨てたのよ…!?」


胸に込み上がる、溶岩に似た熱い塊。
瞳を爛々と輝かせ、堰を切った様にナミが叫びます。

自分を射抜く視線から目を逸らし、ヘンリーはポツリ…ポツリ…と、語り出しました。




……メアリは医者から、何時か寝たきりになるだろうって言われてた。
治療法の見付ってない難病で、少しづつ立てなくなって、物も掴めなくなって、声も出なくなって、目も見えなくなって…まるで石みたいになって……そうして…死んでしまうだろうって…。

……それが…堪らなく、恐かったんだ…!

自分の人生を犠牲にして一緒になっても、メアリは俺を何時か独りで置いて、逝ってしまうんだよ…!?
一緒に生きられない事が解っているのに一緒になったって……意味が無いじゃないか!!




「――何が『意味が無い』よ…!!!『犠牲』!?あんた、あのコを足枷みたく考えてたって言うの!?……それで…結局…殺されちゃって…500年間も独り地下に置き去りにされて……馬鹿みたい…!あんたさえ約束を守ってれば別な道を行けたのよ!!?メアリも!!あんたも…!!!」


激しくなじりながら、ナミは泣いていました。
体を震わせ、瞳いっぱいに涙を溜めて。

溢れ出た雫が頬を伝い、顎を伝い、雨の如く地面に降り注ぎます。

ふいに、顔を背けていたヘンリーが、真正面からナミを見詰め言いました。


「……君には解らないよ、ナミ。…千年前、『絶対の生』を手に入れ、死なない道を選んだ君には解らない…!」


――!!


「死なない君なら、道を間違えても何度だってやり直せる…羨ましいよ…ナミ…。」


皮肉っぽい笑みを湛えながら、ヘンリーの体は塵に変り、崩れて行きます。

まるで500年の時の重みに、押し潰されてく様に…

ぐずぐずと…火にくべられた枯れ木が、炭と変る様に…


「……ヘンリー!?…待ってよ…まだ話は終ってないでしょう…!?」

「………メアリに会わせてくれて感謝してる……有難う。」


ナミが止めるのも聞かず、瞬く間に塵と化したヘンリーの体は、吹いた風に乗って散り散りになり……メアリ同様、消えて無くなりました。


「…ちょっと…!!散々人巻き込んどいて、勝手に成仏してんじゃないわよ!!!『君には解らない』!!?あんただってちっとも私の事解ってないじゃない!!!…500年も彷徨って死ねなかったクセに…独りにされるのが恐かったクセに…!!!何さ!!…高々数十年ぽっちの寿命しか持たない人間が甘ったれた事ぬかしてんじゃないわよっっ…!!!!」


放たれたナミの叫びに、しかしヘンリーは答えては来ず。
木霊だけが空しく返って来るばかりでした。




少しづつ晴れて行く靄。
樹々の間から聞えて来る、鳥達の囀り。

気付けば蹲る自分の左隣に、ルフィが胡坐を掻いていました。


「……良かったな…2人とも…会えて…じょうぶつ出来て…!」


にししっっと声を立てて、ルフィが笑い掛けます。


「…良くない!!ちっとも良くないわよ!!こんな寂しい沼で、メアリは独り500年も居て!!ヘンリーだって地下に独り500年も居て!!2人して500年間も無駄に独りぼっちで居たのよ!!良い事なんて何1つ無いじゃないの…!!!」

「何1つ無ェ事もないだろ。ちゃんと…最後に会えたんだから。」


右隣にルフィ同様胡坐を掻き、ゾロがナミに話し掛けます。


「…お互い、500年も待った甲斐が有ったじゃねェか。」

「そうだよな。ドクロのおっさんも、沼に居た女も……最後に、仲直り出来て良かったよな!」

「………そんなの…全然慰めになんかなってないわよ…!」


2人に言い返しながらも、ナミは袖で顔を拭い、靄が晴れて沼の氷に映った己の姿を見詰ました。

埃や土に塗れて汚れ切った形。
泣き腫らして、赤くなった瞼。
充血しては居ますが、瞳は茶色に戻っています。

…頗る酷い顔に、思わず苦笑いが零れました。


気付けば夜明け。

重なった葉の隙間から、眩しい朝の光が零れていました。




その13へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その11―

2010年07月18日 14時57分45秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)





次第にトンネルが先細り、中吹く風に髪が強く乱される頃。
身を屈め、道に溜っていた砂利を掻き分け進んでいた4人の前に、大きな水晶の塊が立塞がりました。
風はどうやらその向うから吹いて来るようです。


「驚いた…紅水晶だわ…!塊で持ち帰ったら、結構な値が付くかしら…?」


ランプに反射して淡紅色に輝く結晶を、ナミはうっとりと撫で回しました。


「何とか此処まで掘り進んだけれど…これは硬過ぎて歯が立たなかった…隙間から風が漏れてる…これさえ越えれば外に出られそうなのに…。」


ヘンリーが欠けた歯で悔しそうに歯軋りをしました。


「水晶ってそんな硬いのかー?なら俺に任せとけよ!俺の左パンチはダイヤだって打ち抜くくらい強ェから♪」


左腕をぶん回し、にいっと笑ってルフィが前に出ます。
やる気満々な体勢を見て、ナミが慌てて引き止めました。


「ルフィ!!あんたは出て来ちゃ駄目!!此処は……ゾロの出番よ!!」
「何故そこで俺を出す!?」
「そうだ!!何で俺じゃなくてゾロなんだよ!?」


指をビシッッと突き刺されての指名にゾロが喚きます。
逆に立候補を退けられたルフィは、不満を露にしました。


「床の一件忘れたの!?此処でまたあんたに馬鹿力発揮されたら地下崩落、全員生埋め必至だわ!!…という訳でゾロ、頼んだわよ!」
「ふざけんな!!てめェの言う通り動かなきゃならねェ義理が何処に有る!?」
「あら?ひょっとして自信無い?確かに水晶は鉄よりも硬い物質だけど…あんたの腕と持っている妖刀でなら、斬れると踏んだんだけどなァァ。」
「自信が無い訳有るかっっ!!!俺は人に命令されて動くのが大嫌ェなんだよっっ!!!」
「別に命令なんてしないわ。嫌だったらルフィに頼むだけ。…その結果がどうなろうと私は知らない。いざとなったら1人で瞬間移動して逃げるから。」
「わぁった!!斬りゃ良いんだろが斬りゃ!!!…ったく、んな魔法使えんだったら、その手で行きゃあ良いじゃねェか…!人使う必要有んのかよ…!?」


ナミにやり込められブツクサ文句零しつつも、ゾロは背中から刀を1本引き抜き構えました。

血の様に赤い色した柄の妖刀、『鬼徹』――

気合を高めてくと共に、辺りの空気が研ぎ澄まされます。


「…おい…おめェらなるたけ後ろ下がってろ…穴が開くと同時に、風圧でそこら中のもんが飛ばされて来っだろうから…!」


振返りもせず言葉を告げられ、3人は一目散にゾロから離れました。




全員避難したのを確認したゾロは、両目を吊上げ益々気合を高めて行きます。

全身から闘気を漲らせ、電光石火の早業で一閃二閃三閃四閃…!


耳を劈く轟音と同時に、砕け散る水晶の壁。
途端に流れ込んで来る突風。
吹き飛ぶ水晶の欠片や砂利で、トンネル内に砂嵐が起り、岩肌が削り取られます。

避難した3人は必死で地面にしがみ付き、掛かる風圧を堪えました。




風が弱まった頃、恐る恐る瞼を開けて見れば……さっきまで道を塞いでいた塊は、綺麗さっぱり消え去っていました。

足が埋まる程道に溜っていた砂利まで、跡形無く片付けられています。

前方大きく口を開けた裂け目から覗く空の色。
未だ夜は明けてない様でしたが、地下より薄い色の闇を見た3人の口から、歓声が湧起りました。
飛ばされて地面に転がっていたゾロを抱き起し、口々に称えます。


「すっごいわねェ~あんた!!本当に水晶斬っちゃうなんて!!態度のデカさは伊達じゃなかったのね!!」
「有難う!!有難う!!苦節500年…漸く外に出られた…!!本当に有難う!!」
「やったなゾロ!!すっげーカッコ良かったぞ!!…斬った後ポーズ決めてりゃ、もっとカッコ良かったけどな♪」
「痛っっ!!痛ェ!!…バシバシ叩くんじゃねェよルフィ!!痛ェだろって――痛ェェ!!!」


受けた衝撃で体のあちこちを負傷したゾロは、ルフィに頭の天辺から脛まで思い切り叩かれ、悲鳴を上げました。


「けどちょぉっと考え足りないわよねェ~。折角の紅水晶の塊が木端微塵。おまけに風で欠片も残さず全部吹き飛ばされて…。もっと上手い事カットしてくれりゃあ、お金になったのに!」
「うっせェェ!!!ジュエリーデザイナーじゃあるまいし、んな器用な真似出来るかっての!!!」
「よぅし!!!そんじゃ外へ脱出するぞ!!全員、俺の後ついて来い!!!」


勇んで立ち上ったルフィが、裂け目に突進して行きます。
勢いそのまま、一気に外へ出ようとするのを知って、ナミが大声で止めました。


「馬鹿っっ!!!この穴は崖を目指して掘られてた事を忘れたのっっ!!?」

「……あ。」


――時既に遅し、気付けば目も眩まんばかりに切立った絶壁から、決死のダイブ。


「うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………!!!!!!」


絶叫を棚引かせ、ルフィは眼下の急流へと、真っ逆様に落ちて行きました。


「あの馬鹿っっ!!っとに懲りない奴なんだからっっ!!」
「…だから同じ事を飽きず懲りずに繰り返す奴だって言っただろ…!」


悪態吐きながら瞳を素早く金に変え、ナミは呪文を唱えます。
虚空を撫でる手に握られたのは空飛ぶ箒。

息吐く間も無く崖からジャンプすると、箒に跨り落下するルフィを追い駆けます。
掛かる風圧で全開にされる額、はためくマント。

後少しで川面に激突する寸前、魔法の力で宙に浮べられたルフィは、ナミの箒に拾われ事無きを得ました。




「ふーーー…3度目の正直で、今度こそ死ぬかと思った…。」

「仏の顔も三度まで!後1度でも面倒起したら、絶対助けてやんないんだからね!……ったく…あんたらのお陰で、昨日から『力』使い過ぎだわ…!!」


ルフィを背後に、ブツクサとナミがぼやきます。


「『力』使い過ぎると何かまずいのか~?」

「…あんま連続して魔法使ったり、強力な魔法を使うとね…体内に余熱が蓄積されて、『力』が中々戻んなくなっちゃうの!ずぅぅっと金の瞳で居る事になっちゃうのよ!」

「…それって、困る事なのか??」
「ものすご困るに決まってるでしょォ!?あらゆる情報が飛び込んで来るわ、行きたいと思った場所に体が勝手に移動しちゃうわ、ちょっとでも欲しいなんて考えた物は何時の間にやら手の中よ!!」
「便利じゃねーか!」
「便利過ぎても困るのっっ!!!…まァだから……なるたけ私に魔法を使わせないよう、気を付けて頂戴!」

「……何か良く解んねーけど、解った!気を付ける!!」


2人を乗せ、川面スレスレの宙にピタリと止められた箒。

今一腑に落ちない風でありながら、ルフィは素直に頷き、ナミの腰に手を回しました。


――スカーン!!!


「痛ェェ!!!何で頭叩くんだよっっ!!?」
「魔法使ってる時の私に触れるなって何度言えば解るのよセクハラ小僧!!!」
「しょうがねーじゃん!掴まってた方が安定すんだから!…お前こそ、何でそんなに嫌がるんだ??」

「それは…!」


訳も解らず叩かれ、ルフィは不満顔です。
理由を問われ、ナミは返答に窮しました。


「……解ったわよ。教えたげるから耳の穴かっぽじって良く聞きなさい。……魔法を使ってる時の私に触れるとねェェ!!!直接心が私に伝わって来るの!!!要するにあんたの心が丸見えになるっつう訳!!!どんな秘密を持っててどんな風に私を思ってるのかとか、そうゆうの全部私にバレちゃうのよ!!!解ったかこのチビ黒馬鹿坊主!!!!」

「………なんだ、そんな事気にしてたのか。」


一息で怒鳴り散らし、肩でハァハァと息をするナミ。

燃え盛る様な金の瞳を、ルフィは飄々とした態度で受け流し、尚更しっかりとしがみ付いて来ます。


「ちょっっ!?…ちょっと!!!だから視えちゃうから止めてって…!!!丸見えなっても良いってェのォ~~!!?」

「良いさ!!!見えたって!!!見られて困るもんなんて何も無ェし!!!」




――見られて困るもんなんて何も無ェよ!!!




「………まったく……あんたら、揃いも揃って…!!」


突然、箒がぐいんと始動しました。

そのまま崖を這い登る様、上昇して行きます。


「…このまま上に居る2人を乗せて、メアリの沈んだ沼まで飛んで向う!振り落とされない様、しっかり掴まってなさい!!」


背後で「しししっ♪」とルフィが笑っている気配。
耳まで火照るのを感じつつ、ナミは箒を操り、2人が居る裂け目へと近付きます。

裂け目からナミ達を見下ろしてるゾロと目が合いました。
その横からヘンリーも顔を出しています。

ナミを見詰るゾロの瞳が笑っていました。


見上げれば、濃紺色の空に薄れ行く星々。

…聞えて来る鳥の囀りが、間も無く夜明けが近い事を伝えていました。



その12へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その10―

2010年07月18日 14時56分35秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)





古くから『アン・ヴォーレイの館には宝が隠されてる』という噂が有った。
彼女はその宝目的で、俺に近付いて来てたんだ。

式の前日、『2人きりで夜を過したい』と彼女にせがまれ、俺は下男と女中に暇を出した。

その夜俺は……彼女と、彼女の仲間から、宝の在り処について尋問を受け…答えられず殺された。
館中捜索しても宝が出て来ない事に苛立った彼女と仲間は、腹立ち紛れに床下に見付けた深い穴へ、殺した俺を突落した。

床下の穴は、俺が館の主になる前から在る、とてつもなく深い物だった。
財産として譲り受けた時、親父に言われたよ。


『真偽は判らないけれど、この穴は冥界まで続くと伝えられている』と。


光も音も無い底で、俺は独り横たわっていた。

殺された俺は…何故か死ねなかった。

朝も昼も夜も判らない闇の中に居て。
次第に腐り、崩れ落ちてく自分の体で、時が経っている事を知った。

……でも、死ねない。

骨だけになってしまっても、未だ死ねない。

殺された恨みなら、既に無かった。
とうに彼女の名前すら忘れてしまって居たし。
所詮自分も同じ裏切り者…これは天罰だと考えたんだ。

そして理解した…自分が抱えてる未練…死ねずに居る訳を。

『メアリ』に……謝りたいと思った。

俺に裏切られ、沼に身を沈めたメアリ。
独り水底に沈んで……どんなに冷たく、辛く、寂しい思いをしてる事だろう。


――謝りに行かなきゃ!


骨だけの体で、俺は暗く深い穴を登って行った。
けど…何処まで行っても地上が見えない。

段々と焦り出した頃、途中の岩壁に洞窟を見付けた。


『ひょっとしてこの穴から出られるかも!?』


嬉々として奥を目指したけど…その喜びは長く続かなかった。
洞窟は数十m行った先で、行き止まりになってたんだ。
落胆し途方に暮れたけど…直ぐに新たな考えが浮んだ。


『そうだ!この館は崖の近くに建っている!此処から横にずっと掘り進んで行けば、何時か外に出られるんじゃないか!?』と…。


そうして俺はトンネル掘りに没頭してった。
最初は自分の胸に刺さってたナイフを使って掘り進んだけど、錆びたそれは直ぐに用を為さなくなっちゃって…。

止む無く自分の肋骨を使って今度は掘り進めてった。
泥岩の壁は柔らかく、骨でも何とか掘れてったよ。
そしたら幸運にも貝の化石を掘り起こしたりして…今度はそれと指を使って掘り進んでった。

所が手元の化石が尽きて指が全部磨耗しちまっても…未だ外に出られなくてねェ。
最後の手段とばかりに、歯で齧って掘って行ってたんだ。




「…そして私達に出会い、今に至る、と…?」

「…うん…そうゆう訳…。」


髑髏を胴体に繋ぎ、抑揚の無い声で己の過去を語るヘンリー。
彼を囲み座った3人は、その昔話を感心とも呆気とも付かない表情で清聴したのでした。


「おっさんすげーなー!自分のろっ骨や歯でトンネル掘っちまうなんて、俺にはマネ出来ねーよ!痛かっただろォ!?」
「いや死んでるし、俺…幸い、痛みは感じなかったよ…。」
「そうか!!良かったなァおっさん!!死んでてラッキーだったじゃねェか!!」
「そ…そうかな?…言われてみるとラッキーだったかも…。」
「納得すなっっ!!…にしても掘って出た土はどうしたの??」
「ああそれは、自分が落ちた深い縦穴に捨ててったんだ…大量に落してって…その内溢れやしないかと不安になったけど…底無しで助かったよ…。」
「ほら!私の推理通りだったじゃない!」


回答を聞いてナミは、隣に座るゾロに向い、胸を反らして得意がりました。


「って何勝ち誇ってんだよてめェは!?…あんたなァ、んな苦労するくらいだったらストレートに穴登ってった方が早いって、露程も考えなかったのか??」
「考えなかった訳じゃないけど…1度断念した道は中々戻り難いって言うか…。」


ゾロに呆れ返られ、ヘンリーは指の無い手で頭をボリボリ掻きながら、気まずそうに事情説明を続けました。




『トンネルを掘る』という明確な目標を定めて以来、俺は来る日も来る日も岩を掘り続けた。
掘るのに疲れたら一休みして、溜った砂利を掻き出し、穴に捨てに行く。
捨て終わったら、またトンネルを掘る。

作業を繰り返してく内に…段々と凝り出してね。
どうせ掘るなら、なるたけ幅を統一して通り易くしようとか。

そうだ!何百年か先の未来…後世の人が目を見張る程の、素晴しい地下道を造ろうじゃないか!!
俺の前に道は無い!俺の後に道は造られるのだ!!




「…馬鹿かあんた?こんな地下深くに在る道、モグラだって通らねェよ。」


何処か夢見がちに語るヘンリーに、ゾロの辛辣なツッコミが掛かりました。


「……ひたすた退屈で、独りきりの毎日だったし…後悔した時には指が磨り減り無くなってて……もうトンネル掘るしか、生き甲斐残って無かったのさ。」


冷たい視線で見詰るゾロに向い、ヘンリーは力無く笑いながら、指を無くした両手をカシャカシャと振って見せました。


「……後悔すんなら磨り減らす前にしとけよ…ったく、こんなん掘ってよく地下崩落起さなかったなっつか…下手すりゃ生埋めなってたぞ、あんた…。」
「いや死んでるし、俺…。」
「ヘンリー、生前から几帳面で凝り性だったものねェ。」
「納得してんなよナミ!!」
「こり性だっつうなら、もっと道枝分かれさせて迷路みたくするとか、急坂にするとか、トラップいっぱい仕掛けるとか、もっとそーいくふーが欲しかったよなァ。サービス足んねーぞ、おっさん!」
「…そこを問題にするのかよルフィ?」
「…にしても500年懸けて良くぞ此処まで…ゾンビの一念岩をも通すだわ。」


ほぼ均一な幅で一直線に続いてく地下トンネル。
遥か先の消失点を見遣りつつ、ナミはしみじみと溜息を吐きました。


「…え?俺が死んでから500年も経ってるの!?…そうか、道理で最近、歯が弱くなったなァと思ったよ。」
「苦労が随分顔に出てるわ。頬なんかげっそりこけてる。」
「あははー、何せ死んで骨だけだからねェ…ナミはちっとも変らず、若々しくて良いなァ…。」
「当然でしょ、魔女だもの。」

「……駄目だ俺…頭痛くなって来た。」


ツッコミ疲れたゾロが、頭を抱えてしまいました。


「…500年間、独り死ねずに居て…正直、絶望を感じて居たけれど…待った甲斐が有った…!」


突然ヘンリーが、ナミの前でペコリと頭を垂れました。


「お願いが有るんだ、ナミ…!俺を……『メアリ』の沈んだ沼まで連れてってくれ…!!」


指の無い両手をぴっちりと合せ、顔を砂利に擦り付け懇願して来ます。
その姿をナミは、冷やかに見下ろしました。


「……嫌よ!」

「ナミ…!!頼むよ…!!」


即答で断るナミに、ヘンリーは尚も必死に縋ります。
しかしナミは険しい顔して、にべも無くはね除けました。


「今更何が『謝りたい』よ!?謝るくらいなら、どうしてあの娘を裏切ったの!?…あの娘が…どんな気持ちで沼に身を沈めたか……何したってもう手遅れだわっっ…!!!」

「…連れてってやれよ、ナミ。」


声を震わせ叫ぶナミに、ルフィが言葉を掛けました。
黒く円らな瞳でもって、真向いからじっと見詰て来ます。


「おっさん、『謝りたい』っつってんじゃん。謝らせてやれよ。」

「うっさい!!!事情も知らない部外者が話に割込んで来んな!!!……ヘンリー…あんたまさか、自分が成仏したくって『謝りたい』って言ってんじゃないでしょうね…?――だとしたら断固連れてくもんか!!!あんたなんか……一生成仏出来ずに独り此処で彷徨ってれば良いんだ…!!!」

「――良い過ぎだ、ナミ。」


横から鋭い声で、ゾロがたしなめます。


「……解ってんだろ?自分でも。」


その言葉にナミは押し黙り……辺りはしんと静まりました。


「………本当に…メアリには悪い事をしたと思ってる…。」


恐る恐る、ヘンリーが口を開きます。


「…500年間…ずっと心に残ってた……。」


ナミの前に弱々しく垂れた頭は、時を経た分だけカサカサに乾いていました。
手も足も磨り減り、生前スラリと背が高く活き活きとしていた彼の面影は、何処にも有りません。
まるで使い古したボロ雑巾を想起させる風貌でした。


「……沼に行っても、そこにメアリの体はもう無いわ。彼女の遺体は沼から引上げられて火葬された。…私もその手伝いをしたから良く覚えてる。彼女の両親は世間の噂に耐え兼ねて、彼女の骨とともにこの地を離れた。その後の行方は知らない。魔法を使えば追えない事も無いけど……まさかそこまで求める気じゃないでしょうねェ?」


じろりと睨め付け、ナミが言います。
蛇に睨まれた蛙の様に、ヘンリーは小さく縮こまりました。


「…ま、自殺した魂は、成仏出来ずにその場に残るって言うけどね。」

「なんだ。じゃ、居るかもじゃん。ドクロのおっさん連れてってやろーぜー。」
「気軽に言わないでよ!!大体、こいつ連れてって私に何のメリット有るってェの!?文無し者の依頼はあんた達だけで御免だわ!!」
「なァ、おっさんよォ。俺達幽霊やしきに隠された宝を探しに来たんだけど…おっさん、そのやしきの元主だったんだろ?宝の在り処とか知ってたら教えてくんねェ?」


ニヤリとした笑みを引いて、ルフィはヘンリーに尋ねました。


「…宝?…ヒントと思しき物なら知ってるけど……ゴメン……在り処を知るには或る『鏡』が必要らしく、それを俺は持って居ないんだ…。」
「『鏡』ってこれの事かァー?」


話を聞いて、ルフィは自分の被った麦藁帽子を、ゴソゴソと探りました。
取り出した銅鏡を、ヘンリーの前に突き出します。
ツルツルした表面に、ランプの灯りを受けたヘンリーの顔が、ぼんやりと映りました。


「…こ!これ!そう、これだよ!!…絵に描かれ伝えられてるだけで、実際目にした事は無かったけど…一体、何処で手に入れたんだい?」
「『シャンクス』って言う俺の親父から貰った!やっぱこの鏡がカギなんだな?…んじゃおっさん、俺達が『メアリ』っつうヤツに会わせてやったら、宝のヒントを教えてくれるって約束してくれよ!」

「教えるのは構わないけど…別に自分が教えなくとも、ナミの金の瞳で見れば、直ぐに解けるんじゃないのかい?」
「それがこいつすんげェェ~~ケチでよォ~。何でもかんでも出し惜しみしやがんの!」
「るさいっっ!!!勝手にテキパキ交渉進めてんじゃないわよ!!!その程度の謎、魔法使わずとも私の推理力有れば、たちどころに解けるんだからっっ!!!」
「解けてねーじゃん。」
「…ぐっっ!!」


ルフィに真実を突かれ、ナミはぐうの音も出なくなりました。


「……交渉、成立だな。」


黙って状況を見詰ていたゾロが、ニヤニヤ笑いながらナミに言います。


「あ~~もう解ったわよっっ!!!連れてってあげるわっっ!!!但し沼まで!!もし会えなかったとしても、面倒見切れるのはそこまでなんだからねっっ!!!」


ルフィに言い負かされた上ゾロに見透かされ、ナミは悔しさで顔を真っ赤にしてヘンリーに向い叫びました。

…しかしヘンリーは3人の会話を他所に、鏡に映った己の顔をしげしげと眺めていました。


「……それにしてもげっそり痩せたなァ…俺…こんな変り果てた面相で、メアリ、俺だって解ってくれるかなァ…?」


――カキィンッ!!!


呑気に悩むヘンリーの頭に、容赦無く振り下ろされたナミの鉄拳。


「…ゾンビが生意気に外面気にしてんじゃないわよ…誰の為に骨折ろうとしてるか解ってんのヘンリー!!?」


受けた重い衝撃に、彼の頭は再び胴体から離れ、地に転がりました。




無事交渉が纏まると、4人はヘンリーの掘った地下トンネルを、テクテクと歩いて行きました。


「…だから待てよ!てめェの箒で飛んで、穴から出た方が早いだろって!」


ルフィを先頭に、ヘンリー、ナミ、ゾロと続く一行。
ゾロは前を歩くナミの肩を引き止め、問い掛けました。


「…それだと金の目してあの館に出る破目になるじゃない。あんた…また私に殺人の現場視させようっての?」

「…………。」


「ヘンリー、このトンネルは確かに外へ繋がってるの?」

「うん、繋がってる……硬い岩が1つ、未だ道を塞いでは居るけどね。」


ナミに問われ、2人の直ぐ前を歩いていたヘンリーが振り向いて言いました。


「…ま、岩1つくらいなら、こいつらの力で何とかなるでしょ。……魔法をなるべく使わないで済むなら、それに越した事は無いしね。」

「……けどよ…お前、さっき足捻ってただろうが。この先歩いて行けるのかよ?またおぶってやろうか?」

「…え!?ナミ、怪我してるのかい…!?」
「何!?ナミがケガしてるゥ!?――大丈夫か!?何なら俺、おぶってってやるぞ!!」


ゾロの言葉に前を歩いていたヘンリーが反応し、そのヘンリーの言葉に、ランプを持ってかなり先を行っていたルフィが反応して、駆け戻って来ました。


「ほら!!遠慮しねーで早くおぶされ!!」


そう言ってナミの前に背中を向け、腰を落します。


「いや、ルフィ。俺がおぶってくからいい。おめェに任すと途中で落したり忘れてったりしそうで心配だ。」
「しっけーな事言うなゾロ!!ケガ人落したり忘れたりする訳ねーだろバァカ!!」
「日頃の行いから信用出来ねェつってんだよ!いいから先行ってろ!ナミは俺がおぶってくから!」
「いいや俺がおぶってく!!横取りすんなゾロ!!」
「横取りはてめェの方だろうがルフィ!!」

「……驚いた…随分、仲の良い友達が出来たんだね…ナミ…。」


ナミを間に言い合いするルフィとゾロを見て、ヘンリーはナミに向い微笑みました。


「なっっ!!?ちょっっ…!!馬鹿言わないでよヘンリー!!!こんな奴等友達でも何でも無い!!!会ったばかりの赤の他人よっっ!!!」


慌ててナミが強い口調で否定します。
その頬は蒼いランプに照らされていながら、林檎の様に真っ赤に見えました。


「何だよナミィ~冷てェ~なァ~!会ったばかりでも俺達、もう仲間じゃねェ~かァ~!」
「うっさい!!!本人の了承無く勝手に仲間登録すなっっ!!!」


吐き捨てる様叫び、そのまま2人を置いて、スタスタ先へと歩いて行きます。


「おおいっっ!!だから足大丈夫かってっっ…!!」


焦って追い駆けて来るゾロの前に、ナミはスッと左足首を持上げて見せました。

……さっきまで赤黒く腫上っていた傷が、跡形も無く消えています。


「…解った?足が千切れようが首がもげようが絶対に死なず、暫くすれば元通りに治ってしまう……これが魔女の『力』よ。御心配には及ばないわ。」


自分の足首を見て息を呑み驚くゾロに、ナミはシニカルな微笑を向けました。

左足首をゆっくり下ろすと、背中を向け再び歩き出します。

…と、振返り、ルフィとゾロにこう言い放ちました。


「…けど、その魔女を傷付け殺せる『力』を、あんた達2人は持っている。……仲間?笑わせないで。むしろ『天敵』だわ!」

「――殺さねーよ!」


自分を冷たく睨むナミを、ルフィは真っ向から見据えました。




その11へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔女の瞳はにゃんこの目・1―その9―

2010年07月18日 14時55分26秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)





「…それにしても長いトンネルだな。自然に出来上がった物か、とも、人為的に造られた物か…。」
「最初の数十mまでは自然の洞窟。けど、それ以降は人が掘って拵えたみたいね…しかも手掘りで。」
「手掘りィィ!?1㎞もかよ!?まさかァ!!」
「引掻き傷の様な跡が随所に見られるもの。ちょっと信じ難いけど、地道に何百年も懸けて、人の手だけで掘り進んだみたい。」


ゾロの背中越しにランプを掲げ、ナミは岩肌を検分します。
灯りに照らされた岩肌は不規則にデコボコしていて、所々貝の化石が埋ってるのが見えました。
きっと大昔は海の底に在ったのでしょう。


「しかしなァ~、手掘りまでして…宝隠してる訳じゃ無ェんだろ?一体誰が何を企み、んな手間懸けたんだか…。」

「…金の瞳の時、ちらっとだけど、奥に視えた影が在ったの。……恐らく、ヘンリー・メイヤーズの死体だわ。」

「ヘンリー?500年前迄館の主だったっつう、女にフラレて気も触れちまい、幽霊なって彷徨ってるっつう噂の奴のか?」

「伝えられてる噂ではそうだけど……真相は違うのよ。」


言いよどむ様なナミの語りを、ゾロは背中で聞きながら、黙々と歩いて行きました。




ヘンリーは裕福な商人家庭に産れた青年で、怪奇マニアだった彼の父親は、当時から奇怪な館と評判だった、あの館を買い取ったの。
両親の死後、館は彼の財産の一部として残された。
その頃、或る街から1人の女がふらりとヘンリーを訪ねて来てね。
絶世の美女だった彼女とヘンリーは婚約したの。

そして結婚式の前日……ヘンリーは彼女に殺されてしまった。
彼女にヘンリーと結婚する意志は無かった。

…初めから、財産目当てだったのよ…。




「……殺されちまった事は、噂に上らなかったのか?」




…両親亡くして以来、ヘンリーは親族との付き合いも無く、独り身だったし。
事件は下男も女中も居ない、彼女と2人っきりの時に起きた。
殺した後、彼女は仲間とともに、持出せる財産を奪って遠くの街に逃亡。
逃亡する前に、館に誰も入れないよう、鍵を掛けてね。

暫く置いてから彼女は仲間を使い、『ヘンリーは婚約を破棄された事で気が触れてしまい、館に閉籠ってる』という、噂を広めて行った。

時が経ち……此処はすっかり幽霊屋敷として有名になってしまったの。
勇敢な人間が鍵を壊して調査に入ったり、酔狂な人間が買い取って住んだりもしたけど……嘘か真か、皆幽霊が出るって怯えて、結局は逃げ出しちゃって…今では住む者の無い廃墟という訳。




「中々悲惨な話だな。…で?お前がそれを知り得たのは『力』を使ってなのか?使ってまで知った事実を、何故公表しなかった?」


ぴくりと、強張る気配を感じました。




……500年前、私は暫くこの近くに住んでた事が有った。
ヘンリーとはその時出会って……結構、親しくしてたわ。
結婚を前に姿を消した理由を…知ろうと思って館の扉に触れた瞬間……

………ヘンリーが彼女と、仲間に、ナイフで刺されてる所を視たわ……!

…今夜此処に来て…彼の死体を視付けてしまいやしないかって…内心、恐れてた。
入って何処にも見当らなくて…ほっとしたわ…。
長い間…調査に入った人間が居ても、見付らなかったんだもの…
きっと、外に埋められたかしたんだろうなって……なのに……!




震える声でナミは話し続けます。
肩に強く食い込む手。
ゾロは黙って話を促しました。




……彼女と婚約する前に…ヘンリーには、結婚を誓い合っていた娘が居たの。
『メアリ』っていう……病弱で、大人しくて……けど、優しい、良い娘だった…。
2人は幼馴染で…私も、彼女とは親しくしてたわ…。
本当に仲が良くて……将来、必ず、結婚するんだって…そう約束してたのに…!!

あいつはメアリを裏切って他の女と婚約したのよ…!!!

………可哀想に…メアリは…婚約の話を聞いて……沼に身を沈めたわ…!




激昂するナミは涙声でした。
感情を爆発させ、肩が痛むくらい強くしがみ付いて来ます。


「………あんたって本当、勘が良い……嫌われるんだからね…そういう奴って…。」


背中に伝わるナミの言葉を、ゾロは無言で聞いていました。




道は途中、坂になる事も狭まる事も分れる事も無く、ひたすら平坦に続きます。
最初こそ神経張巡らせ慎重に歩を進めていたゾロでしたが、何の仕掛けも無く300m迄来た地点で、流石に拍子抜けせずには居られませんでした。
道に溜った砂利を足で払ってまで警戒し歩いて来た自分が、馬鹿みたいに思えます。
岩肌を照らしつぶさに見てくも、暗号と思しき目印は皆目見当りません。


一体どんな謎を秘めて、あの鏡は館を指したのか…?
シャンクスは宝の在り処を示す物だと言って、姿を消した。
しかし本当に、此処に宝が隠されているのか?


…あれこれ考え巡らす内に、ゾロは段々不安になって来ました。

ちろりと背後におぶってるナミを伺います。

…興奮から冷めた様子で、すっかり大人しくなっていました。
背中にもたれている為表情は読めませんが、呼吸は安らかです。


『…っつか、ちゃっかり寝てんじゃねェだろうな、こいつ?』


伝わる柔らかな重みと熱に、何となく心が焦ります。
千年生きてる魔女と言えど、見掛けは丸っきり普通の人間の少女でした。


魔女の瞳であれば、全ての謎が簡単に解けるかもしれない。
ひょっとしたら、シャンクスの居場所も掴めるかもしれない。


けど………ギリギリまでそれをさせたくはないな、とゾロは思いました。


「…しかし此処まで良く掘ったもんだ。…誰だか知んねェけど、余程暇持て余してたんだな。」

「……恐らく、掘ったのはヘンリーだと思うわ。」


てっきり寝てると思っていたナミが、後ろから急に口を出して来ました。


「何だ、てめェ、起きてたのか!」

「…自分でも荒唐無稽な推理だと思うけど…聞いてくれる?

 ナイフで刺されたヘンリーは、館の床下に元々在った落し穴に落された。
 けどヘンリーは何とか外に出ようと穴を登り…しかしあまりの深さに登る事は諦め、途中見付けた洞窟の先を掘り進めて、横から出ようとした――」

「おいおいちょっと待て!!幾ら何でもその説は無茶過ぎだろう!!ナイフ刺されて死んだ筈の男が穴登ってって、途中から横穴掘って外出ようとしたァァ!?荒唐無稽にも程が有るだろうが!!」
「だから自分でもそう言ってるでしょ!?私だって有得無いとは思ってるわよ!!…けど…でないと、トンネル奥に何故ヘンリーが居たのか…説明が付かないのよ…!」
「殺した女とその仲間が、死体が見付って犯罪発覚するのを恐れて隠したんじゃねェの?」
「だったら穴突落して土でも被せときゃ良いだけよ!!わざわざ1㎞も横穴掘ってまで隠す必要無いでしょ!?」

「そういや掘って出た土は何処捨てたんだろうな?1㎞分たら相当な量になるだろうに。…奥から風が来るって事は外に繋がってる訳で、つまり逆から掘ってったって訳だろ?そうして土は外に捨ててって……ま、すっきりはしねェが、やっぱり何らかの理由有って犯人達が穴を掘り、死体を置いたと考える方が自然っつか…」
「違う。岩肌の削り跡見る限り、私達の進行方向と同じに掘り進んでってるわ…大体、この穴の先は崖の筈よ!だとすれば…私達が落ちた最初の縦穴に捨ててったとしか……あの穴…元はもっとずっとずっとずっとずっと、深かったんじゃないかしら…?」


此処まで話を聞いて、ゾロは「はァ……」と、長い溜息を吐きました。
振返り、真剣な面持ちで居るナミの瞳を、じぃっと見詰ます。

金色だった瞳は、茶色に戻っていました。


「……それ、『力』で見たものじゃないんだろ?」

「…信じられないっつうならいいわよ。自分でも馬鹿馬鹿しい説だと思うし。」


拗ねた様にナミが顔を背けます。


「…良いけどよ。……そんな地下数千m級の深い穴、落されただけで普通は即死――」


突然、ゾロが喋るのを止めました。
全身に緊張を漲らせ、前方に目を凝らします。


「……ちょっと…どうしたの…?」


徒ならぬ気配を背中に感じ、思わずナミも身構えました。


「……何かが…凄いスピードで走って来やがる…!」

「…な、何かって…!?」

「まだ解らねェ…おい!ランプを前に向けるな!気付かれちまう!」


聞いた事の無い厳しい声で注意を受け、慌ててナミがランプを逸らします。


「…駄目だ。気付かれちまってる。…真直ぐこっち来るぞ!」

「…ね、ねェ…来るって…私達に敵意を持ってるような何か…?」


怯えて背中にギュッとしがみ付き、ナミは小声で伺いました。


「…いや、殺気は感じねェ。…むしろ何かから逃げてる感じか…?だとしたら、刺激しねェ方が良い…。」


息を詰め戦く2人の耳に、次第にはっきりと足音が響いて来ました。


――…ヒタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ………!


人間とは思えぬ、重量を感じさせない軽い足音。
風の様に駆けて、奥より真直ぐこちらを目指す『何か』。

近付いて来ます…

近付いて来ます…!

近付いて来ます…!!


闇の中から…異形の姿をした者が、ヌッと飛び出して来ました。

目玉を無くし、ぽっかり窪んだ眼孔。
殆ど髪の抜けた頭。
肉が削げ落ち露になった顎と歯。
申し訳程度に纏うボロ布の隙間から覗く体には、肋骨が有りません。

2人の前に飛び出したそれは、見るもおどろおどろしい骸骨でした。


「「ギャアァァァ~~~!!!!!ゾォンビィィィ~~~!!!!!」」


地下トンネル内でハモり木霊する2人の絶叫。
ナミをおぶったまま、ゾロは脱兎の勢いで逆走し出しました。


「ちょちょちょっと!!!ゾンビ追っ駆けて来るよ!!!ねェ何でェェ~~!!?」
「な…何でったってっっ…!!!知るかっっそ…んなん…!!!降りてゾンビに聞いて来いよっっ…!!!」


砂利を蹴散らしダダダダダッと高速で逃げてく2人。
が、ゾンビも負けず劣らずの高速でヒタタタタッと追っ駆けて来ます。
深夜の地下トンネルで、熱いデッドヒートが開始されました。


――ダダダダダッ…!!!


――ヒタタタタタタタ…!!


――ダダダダダダダダダダッッ…!!!


――ヒタタタタタタタタタタタタタタタ…!!


――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッ…!!!


――ヒタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ…!!


追いつ追われつ、しかし確実に詰められてく距離。
自分に向け歯をカチカチ鳴らして迫るゾンビの形相に、ナミは身の毛もよだつ恐怖を覚えました。


「ややや!!!ちょっっ!!嫌だ!!!追いつかれるっっ!!!ゾ、ゾロ!!!あんた強いんでしょ!!?早いトコあの気味悪いゾンビぶった斬っちゃってよォォ!!!」
「そ!!!…したくても…!!…ハッ…てめェおぶってっ…から出来ねェんだよっっ!!!戦って欲しきゃちょっと降りろっっ…!!!」
「降りるゥゥ!!?冗談言わないでよ!!!そんな事言ってその隙にあんた、私を犠牲にして自分だけ逃げようって魂胆でしょ!!?その手は食わないわ!!!ずぇぇったい降りてやるもんかァァァ!!!」
「そうじゃねェって馬鹿っっ!!!…ヒッ…おめェが居るから背中の剣引き抜けねェつってんだっっ!!!…ハッ…降りたくなきゃてめェが魔法使って戦えっっ…!!!」
「何で私があんな気味悪いゾンビ相手に戦わなきゃいけないのよ!!?女を守って戦うのが男の仕事でしょお!!?男なら『俺が戦ってる間に君は早く安全な場所へ逃げるんだ!!』とか言ってみなさいっての!!!」
「ざっけんじゃねェェェ!!!俺の剣は女を守る為だとかチャラチャラした理由で鍛えてんじゃねェんだ!!!大体千歳越えてる婆ァがいっちょ前に女面してんじゃね…――ぐええぇ!!!!」
「婆ァ!!?誰が婆ァだっつうのよ!!?言ってみなさいよもう1度!!!その首へし折ってゾンビの生贄に置いてってやるからっっ!!!」
「バッ…止め…!!!走ってる時に首絞め…苦っっ…死っっ……ぐえええぇ!!!!」

「……ナ…ミ…ナ…ミ…!」


走るゾロの首に両腕を回し、絞め殺す寸前で居たナミの耳に、ゾンビのか細い声が届きました。


「…え?私…!?…何であいつ…名前知って…!」
「何だ!!ナミ、お前の知り合いか!?…ハッ…ま、考えてみりゃ魔女とゾンビ…化物同士で不思議は無ェ…!…ヒッ…同窓会すんなら人間の若者は席外すから、ゆっく…――ぐええええぇ!!!!」
「失礼言ってんじゃないわよっっ!!!!私にあんなゾンビの知合いなんて居ないわっっ!!!!」
「だ…から首絞め止めっっ…!!マジ死…ぐええええええぇぇ…!!!」

「……俺だ…ナミ…解らないのか…?…ヘンリーだ…ナミ…ヘンリーだよォ…!」

「…え…!?ヘンリー!!?」


羽交い絞めにしてた両腕を解き、振返ります。

今にも消え入りそうな、弱々しい声。
生前の面影は全く有りませんが、舌も喉も無いのに発せられたその言葉は、確かにヘンリーの声に似て聞えました。


「…助け…ナミ…助けてくれ…!あいつが…追っ駆け…!」


カシャカシャと骨張った(←ってか骨だけ)体を揺らし、必死で追い駆けて来るゾンビ。
その背後から、重量を伴った別の駆ける音が聞えて来ました。


――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ…!!!


「…待ァて待て待て待て待てェ~~~…!!!」

「ルフィ!!?」
「何!?ルフィ!!?」


足を止めて振返った2人の目の中に、荒々しく闇の中を疾走するルフィの姿が入りました。


「…待て待て怪しい化物ォォ~~!!!俺のこの左手で退治してやっから神妙にしやがれェ~~!!!」


土煙上げて奥からルフィが飛び出して来ました。
そのまま左拳振り上げ、自分を見て戦慄するゾンビに向い、飛び掛ります。


「…助けてくれ、ナミ…!!あいつ、『破魔の拳を持つ者』だ…!!左手で殴られたら俺…骨も残らず消滅しちまうよォォ…!!」


涙を流せぬ瞳で哀願して来るゾンビ。
今にも左拳を振り下ろさんと構えるルフィに、ナミは慌てて大声で呼び掛けました。


「ルフィ!!!左は駄目!!!殴るなら右で殴って!!!」
「右かァ!!?良ォし!!解ったァァ!!!」


――カキィィーー……ン!!!


小気味良い音が響き、ルフィの右手で殴られ胴体から離れた頭が、トンネル内を飛んで行きました。
髑髏は四方を囲む岩にぶつかり、キンコンカンコンカンキンコンケン♪と、暫く音を奏でて跳ね返っていましたが、砂利道にボスッと嵌ると、漸く動きを停止したのでした。


「……助けてくれて有難う…ナミ…。……けど、どうせなら、あそこは『殴っちゃ駄目』って言って欲しかったな…。」

「ゴ…ゴメン…。つい…ノリでv」


自分達の足下に恨めしそうな顔で埋まる髑髏に、ナミは茶目っ気込めた笑顔を向けました。




その10へ続】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする