kotoba日記                     小久保圭介

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文の時間/表意文字

2015年07月31日 | 文学
喫茶店のテーブルの上に
白い本が置いてあった
多和田葉子だったので
少し驚く

それから
詩人は漢字に頼り過ぎている
という指摘を受けて
ショックを受けた
まさしくその通り
漢字は表意文字であって
字に意味がある
それを使うのは
「ずるいですよね」
と苦笑するのはわたし
漢字は中国、韓国、日本しか使わない
さらに言えば
漢字は仏教用語である


たとえば多和田葉子は
ドイツにいて
ドイツで日本語を書いている
たとえば村上春樹は
英語でものを考える

外国語をマスターしている人は
言う
「詩人は漢字に頼り過ぎている」
と。

その人は今
ハングルの動詞の活用について考えている
フーコーの「言葉と物」を
原語で読むと
とても簡単な言葉しか使われていない

末フ問題にも話は及ぶ
「でもわたしは言語学者じゃないから」
と言う
逃げで言っているともとれるけれど
実際には学者ではない


漱石には文がある
と柄谷が言っていたことに話が及び
それは「柄谷を読む人はインテリだからあえてインテリの漱石には<文がある>と言ったのではないか?」
と言うと
「そうですね」
と言う

多和田葉子にも文がある
柄谷が以前
「哲学者の文体」ということを言っている
と話すと
その人は納得するようだった

作家は誤読されることを好む
と言うと
その人は驚いていた
それがなぜなのかが
実感できないようで
興味深く話を聞いてくれた
「判ってほしいと思っているうちはだめです、それは甘えでしょ」
と言うと
興味深くうなずいた

文の時間は短く
そして
有効で重厚だった
こんなラッキーな日もある

日差しの中で
わたしたち
南へ向かった
わたしは漢字のショックを受けて
ならば
漢字を使わず
ひらがなとカタカタで言葉を書いてみよう
と安易に思ったことは言わなかった

陽光は
わたしたちの頭上で
白く光っている

金森幸介さんというフォークシンガーの歌の一部
「言葉はいつも嘘をめざすから 僕らは少し黙った方がいい」
という言葉を紹介すると
その人は度胆を抜かれたように
「嘘をめざす」のところで
「そうだね」と即答し
「黙った方がいい」に関しては
納得いかなかったよう
それはわたしも同じ問題を抱えている
言葉を使う人々は
常に
ニュアンスを言葉にしないではいられない
こないだも言われた
「小久保は何でも言葉にしようとしよる」
性と思って
あきらめ
時には
金森さんの言うとおり
黙ることも本当に大事な時間



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2 コメント

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Unknown (サイセイ)
2015-08-04 20:09:42
羨ましい1日でしたね、ホント。"漢字"は要注意ですね、特に政治の世界では。大昔の世から悪用する人たちが絶えないので…
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Unknown (小久保圭介)
2015-08-05 19:53:57
すごく向学心がある方です。
返信する

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