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kotoba日記                     小久保圭介

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驟雨の如く

2007年09月16日 | 生活
先週の日曜と同じく、
遅い午後からミスドで本を読んでいました。
お気に入りの席があって、
執筆期間には、大抵はここで小説の構想を練ったり、
資料を持ち込んでは何時間もいるのです。
日曜は満員なのですけれど、運良くお気に入りの席は空いていたのでした。
本に集中していると、たくさんの若者達が入ってきて、
大人数でおしゃべりする席を探しているようでした。
僕は気配だけ感じてはいましたけれど、
目は本の文字を見ていました。
「あのお」
と声をかけられて、びっくりして顔をあげると、
濡れた髪(外は驟雨だったのです)の中学生ぐらいの娘さんが、
立っていて、
「あのお、席代わってくれませんか?」
と言いました。大人数でおしゃべりができる範囲を確保するためだ、
とすぐに判りました。
「え、どこへ?」
と訊くと、
「あそこへ」
と空席があった喫煙コーナーを、彼女は目で見て、言うのです。
「あのお」と誰かに「訊いてきてよ」と押されて、
集団でいることで気も大きくなってもいて、
かつ、堂々と意見を言える気性でもあるだろう彼女は、
僕の前に立ったのでした。常に、アイドルのような笑みを絶やさずに。
「あっ、煙草、吸わないんで」
と僕は小さな声でしたけど、即答しました。
すると、彼女は、
「あ、はい、わかりました。すいませんでした」
と、ハキハキとした口調で言いました。
笑顔を消し、「ちぇ!」とか「はい!」とか、
邪気を含んだ応えだったら、どんなに僕は気が楽だったことでしょう。
彼女はもの凄く良い印象を残して、去っていき、
ああっ、代わってあげればよかったかな、
としばらく本を読んでいても、内容が判らずです。
ほどなく、彼女たちは喫煙席で驟雨から逃れて、おしゃべりをしていました。
彼女は自分が放つ魅力をよく知っているように思いました。
その後、煙草の煙を嗅がずに済んだ僕は、
予定通り、三作の小説を読み終えることができました。