ザ・コミュニスト

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共産法の体系(連載第23回)

2020-04-11 | 〆共産法の体系[新訂版]

第5章 経済法の体系

(6)土地管理法
 経済法に関連して、特に取り出して検討を要するのは、土地問題である。持続可能的計画経済を基軸とする共産主義社会において、土地は無主の自然物として扱われる。すなわち、法的には私人であれ、公共体であれ、土地はおよそ所有権の対象とならない(拙稿参照)。
 しかし、各領域圏は土地の持続可能な計画的利用を目的として、土地管理権を保持する。この土地管理権は一個の公共団体である領域圏に帰属する公的権利であるので、市民法の規律対象には含まれない。具体的には、経済法の一環である土地法に規定される。
 土地管理権は所有権のように譲渡可能なものではなく、領域圏は恒久的に土地管理権を保持することが義務付けられ、それが譲渡されるのは領域圏内の一部土地が他の領域圏に帰属することになった場合だけである。
 こうして土地に所有権は成立しないとはいえ、土地上の建造物に関しては私人のほか、企業体、公共体の所有権が成立する。典型的には、個人の私宅である。この場合、領域圏が宅地として区画・開放する土地について、個人と領域圏の間で土地利用契約を締結することになる。
 この契約は無償の使用貸借契約の性質を持つが、管理権を持つ領域圏との契約という特殊性から、やはり土地法によって規律される。そこでは、住宅所有者の居住の安定を基本に、原則として使用貸借期限は無期限とし、借地権の相続も認められる。
 他方、企業体や地方自治体など公共体との土地使用貸借契約については、建造物の用途に応じて期限の有無が決まり、期限付きの場合であっても、契約解除の正当な理由がない限り、更新されていくことになる。
 なお、およそ土地利用権者はその利用権を無断で他人に譲渡・転貸等することは許されず、そのような無断行為は契約解除の正当な理由となるばかりか、領域圏の土地管理権を侵害する経済犯罪として立件されることにもなる。

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共産法の体系(連載第22回)

2020-04-11 | 〆共産法の体系[新訂版]

第4章 経済法の体系

(5)労働関係法
 本章(1)で、共産主義的経済法の体系には労働関係法が包含されることを指摘した。共産主義的企業組織にあっては労働と経営とが結合しているためである。その点で、労働と経営の分離を前提とする資本主義的な労働関係法は、労働者個人の権利を擁護する個別的労働法と労働組合の組織や権利について定める集団的労働法とに分かれることが多い。
 このように労働者が企業の外部で組合を結成して団結しなければ労働者の権利が十全に守られないということが、まさに資本主義的な経営と労働の分離の結果でもあるわけであるが、共産主義的企業組織は、前回整理したとおり、共同決定型にせよ、自主管理型にせよ、企業組織内部に労働者機関が常置されるので、それとは別に組合のような外部団体を基本的に必要としないのである。
 その結果、いわゆる労働者の団結権と呼ばれるものもことさらに観念されることはない。ただし、このことは団結の禁止を意味しない。むしろ団結権は共同決定権や自主管理権の内に含み込まれるような形になると言えるであろう。
 さらに、いわゆる労働三権の中でも最も先鋭的な争議権も必要なくなる。共同決定なり自主決定なりが機能する限り、争議行為に発展するような労使紛争事態はそもそも発生しないはずだからである。仮に万が一深刻な労働紛争が発生した場合でも、企業組織内に設置される第三者仲裁委員会で裁定すれば足りるであろう。
 かくして、共産主義的労働関係法はいわゆる個別的労働法がそのすべてを占めることになるが、同時に、それは狭義の労働基準法に限局されず、労働安全衛生法や雇用差別禁止法のような労働環境法制も包括された統合法となる。
 そもそも貨幣経済が廃される共産主義社会では賃労働は存在せず、すべては無償労働である。従って、労働基準といえばほぼ賃金問題が占めている資本主義的労働基準とは根本的に異なり、共産主義的労働基準は労働時間規制を中核としながら、安全衛生やハラスメント行為防止などの職場環境規制がそれに付随することになる。
 その結果、労働基準監督のあり方も大きく変わり、資本主義下におけるように強制捜査権まで備えた警察型の労働基準監督制度は必要なくなり、労働護民監のような人権救済型のより司法的な労働紛争解決制度が発達していくことになる。

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