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共産法の体系(連載第28回)

2020-04-24 | 〆共産法の体系[新訂版]

第5章 市民法の体系

(5)財産権法②
 相続は通常親族間における財産権の承継であるから、市民権法に含まれる法律関係とも言えるが、共産主義的相続制度は親族間に限らず、人が死亡した場合の財産権の承継法として広く認められるので、市民権法ではなく、財産権法がこれをカバーする。
 資本主義的相続制度は、財産権を親族間(通常は親子間)で継承させることにより、財産の多寡に基づく社会階級制を助長する機能を果たしているが、共産主義的相続制度は、後に残された家族やパートナー(広い意味での遺族)の生活保障を目的とする制度となる。
 そうした共産主義的相続制度には、被相続人の意思表示にかかわりなく発生する法定相続と、生前の意思表示に基づいて発生する約定相続の二種がある。
 被相続人の生前の意志にかかわりなく発生する法定相続は、私有財産として留保される日常的な衣食住に関わる物品の家族間での承継を認め、遺族の生活の便宜及び安定を保証する制度であるので、相続の対象となるのは物権に限られ、債権・債務が相続されるのは、生前の公正証書遺言によって承継が指示されている場合だけである。
 法定相続人の範囲は被相続人と死亡時において同居していたパートナー及びその他の同居親族に限定される。如上のような相続制度の本旨からすれば、相続による生活保障が必要なのは通常この範囲内の同居親族だからである。
 また法定相続人が複数存在する場合の相続は均等割合での共有となる。この割合は被相続人の生前の意思表示によって変更することはできず、持分の変更・調整は事後に相続人間で行なうことができるにすぎない。これも、共産主義的相続の本旨が遺族の生活保障にあることからの帰結である。
 法定相続人以外の別居親族が財産を承継するためには、被相続人と予定相続人との合意に基づく約定相続による必要がある。約定相続は法定相続人が存在しない場合に限って認められる。なお、相続人以外の人(法人)の遺産を継承する場合は、遺言による贈与(遺贈)の方法による。
 約定相続において、被相続人は相続の対象財産や相続人の範囲、またその共有持分を自由に生前決定することができるが、必ず法的証明力のある証書(公正証書)によらなければならず、単なる口約束や私的に作成された遺言書によるものは無効である。

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