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共産法の体系(連載第40回)

2020-05-23 | 〆共産法の体系[新訂版]

第7章 争訟法の体系

(6)護民司法
 護民司法は、基本的人権・市民的権利の擁護を主任務とする司法分野である。しかし、統一的な組織は持たず、一般護民監と個別の専門分野ごとに任命される専門護民監がそれぞれ単独で、各自所掌する事案の解決に当たる。
 また、各護民監は、当事者の請求によることなく、自身が独自に認知した問題事案に対して強制調査権を行使し、是正のための措置を取ることができる点で、護民司法は受動的な紛争解決を超えた能動性を持つ点に特色がある。
 護民監は、いずれも司法作用を担うからには、証人の召喚・聴取や各種証拠の提出命令などを発する司法的権限を有し、命令違反者は司法侮辱の犯則に問われる。
 また、護民監は司法作用として終局的な審決ないし決定を発することができる。護民監の審決は遵守違反に対して司法侮辱の制裁を科せられる是正命令という形で示される。ただし、審決に至らず、強制力のない是正勧告で終了させることもできる。
 
 一般護民監は最も広範囲な権限を有する護民監であり、各圏域の民衆会議によって任命され、各民衆会議管轄下のあらゆる法権力機関を対象とし、法令適用・法執行をめぐる不服・紛争の解決及び法令順守の監査にも当たる。
 一般護民監の任務は個人の権利の擁護とともに、それを超えて法権力機関やその他の公的組織体に対する監察を通じた公正な社会の保持という公益にも及ぶものとなる。
 さらに、一般護民監は、以下の各専門護民監の決定ないし審決に対する不服審判を担当する上級審の役割も担う。
 一般護民監は常に複数任命されるが、その職権行使は各自単独で、かつ民衆会議からも独立して行なう。
 
 一方、専門護民監として最も主要なものは、人身保護監である。これは人身保護に専従する護民監職ゆえに、名称を人身保護監とする。
 その最も重要な任務は犯則司法の分野で、身柄拘束令状や捜索差押令状、通信傍受、監視撮影等の監視令状等各種の強制捜査令状の発付とそれに付随する被疑者の権利擁護、さらに前回見た真実委員会の招集や再審議請求などである。
 それ以外にも、私的か公的かを問わず、不法・不当な拘束状態にある人やその親族、第三者の請求に応じ、人身保護令状を発して直接に身柄を解放する任務も持つ。
 人身保護監は広域自治体である地方圏(連合型の場合は、準領域圏)の民衆会議が地域ごとに管轄を定めて任命するが、その職権行使は常に単独で、かつ民衆会議からも独立して行なう。

 その他の専門護民監職の例を挙げると、次のようである。

〇情報護民監
 これは、公私を問わず、個人情報を蓄積する組織における個人情報の扱いをめぐる不服・紛争の処理や問題事案の調査・是正に当たる護民監職である。

〇労働護民監
 これは、労働基本権の擁護に特化した護民監職である。職場における各種のハラスメント事案の解決にも当たる。ただし、企業体の場合は、護民監への跳躍出訴が認められるハラスメントの事案を除き、企業内の労働仲裁委員会で解決できなかった事案に限り、当事者の請求に基づいて介入し、紛争解決に当たる二段階制を採る(拙稿参照)。

〇反差別護民監
 これは、個人または集団が引き起こす各種の差別事案に対応し、被差別当事者の救済と差別解消を図る護民監職である。

〇子ども弁務監
 これは、未成年者の権利擁護に特化した護民監職である。いじめを含め、子どもの人権全般に関する紛争解決を担う。権利主張が未熟な子どもを代弁するという趣意から、名称を「弁務監」とする。

 なお、これらの専門護民監はいずれも中間自治体(郡)及び大都市ごとにそれぞれの民衆会議によって任命されるが、職権公使は単独で、かつ民衆会議からも独立して行なう。

:人身保護監を除く専門護民監の制度は、上掲の代表的な制度以外にも、実情に応じて個別の分野ごとに新設することができ、そうした新設あるいは統廃合は各圏域民衆会議の政策に委ねられる。


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