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共産法の体系(連載第22回)

2020-04-11 | 〆共産法の体系[新訂版]

第4章 経済法の体系

(5)労働関係法
 本章(1)で、共産主義的経済法の体系には労働関係法が包含されることを指摘した。共産主義的企業組織にあっては労働と経営とが結合しているためである。その点で、労働と経営の分離を前提とする資本主義的な労働関係法は、労働者個人の権利を擁護する個別的労働法と労働組合の組織や権利について定める集団的労働法とに分かれることが多い。
 このように労働者が企業の外部で組合を結成して団結しなければ労働者の権利が十全に守られないということが、まさに資本主義的な経営と労働の分離の結果でもあるわけであるが、共産主義的企業組織は、前回整理したとおり、共同決定型にせよ、自主管理型にせよ、企業組織内部に労働者機関が常置されるので、それとは別に組合のような外部団体を基本的に必要としないのである。
 その結果、いわゆる労働者の団結権と呼ばれるものもことさらに観念されることはない。ただし、このことは団結の禁止を意味しない。むしろ団結権は共同決定権や自主管理権の内に含み込まれるような形になると言えるであろう。
 さらに、いわゆる労働三権の中でも最も先鋭的な争議権も必要なくなる。共同決定なり自主決定なりが機能する限り、争議行為に発展するような労使紛争事態はそもそも発生しないはずだからである。仮に万が一深刻な労働紛争が発生した場合でも、企業組織内に設置される第三者仲裁委員会で裁定すれば足りるであろう。
 かくして、共産主義的労働関係法はいわゆる個別的労働法がそのすべてを占めることになるが、同時に、それは狭義の労働基準法に限局されず、労働安全衛生法や雇用差別禁止法のような労働環境法制も包括された統合法となる。
 そもそも貨幣経済が廃される共産主義社会では賃労働は存在せず、すべては無償労働である。従って、労働基準といえばほぼ賃金問題が占めている資本主義的労働基準とは根本的に異なり、共産主義的労働基準は労働時間規制を中核としながら、安全衛生やハラスメント行為防止などの職場環境規制がそれに付随することになる。
 その結果、労働基準監督のあり方も大きく変わり、資本主義下におけるように強制捜査権まで備えた警察型の労働基準監督制度は必要なくなり、労働護民監のような人権救済型のより司法的な労働紛争解決制度が発達していくことになる。


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