ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産法の体系(連載第20回)

2020-04-03 | 〆共産法の体系[新訂版]

第4章 経済法の体系

(3)経済計画法②
 領域圏レベルの経済計画法の執行においては経済計画の遵守状況の監視と違反行為の摘発、中でも後者の摘発が重要である。この点で経済計画法違反の類型を考えてみると、それは大きく(A)計画違反と(B)計画外生産とに分かれる。
 古い型の計画経済にあっては、後者の計画外生産、すなわち「闇経済」の摘発が大きな課題とされていた。なぜなら、旧式の計画経済では経済活動全般の国有化が目指されたため、私的営業行為が広く犯罪行為とされたからである。
 しかし、環境的持続可能性を目的とする新たな環境計画経済にあって、計画経済が適用されるのは環境負荷的産業分野に限られるため、それ以外の経済活動は自由経済に委ねられる。それゆえ、計画外生産として摘発される行為も限定されることになるのである。
 ちなみに、自由経済に委ねられる分野といえども、共産主義では貨幣制度は廃止されるため、無償供給または物々交換のみが許され、私的に貨幣(電子貨幣を含む)を鋳造・流通させることは禁止される。ただし、こうした貨幣流通禁止は経済計画法に規定されるわけではなく、刑法に相当する犯則法―後で見るように、共産法に刑法は存在しない―の規制対象となる。
 一方、計画違反は生産者側の違反と消費者側の違反とに分かれる。生産者側の違反は計画経済適用対象企業体が意図的に計画に反して過剰生産または過少生産する場合である。従って、意図的ではなく経営判断上の過失により過剰生産または過少生産が生じた場合は、企業組織法によって経営責任が問われることはあっても、経済計画法違反とはならないのである。
 消費者側の違反は、消費者(企業体を含む)が取得数量制限に違反して生産物を独占する場合である。その意味でこれを「独占禁止」と呼ぶこともできるが、もとより資本主義における市場独占規制としての独占禁止とはその意味を全く異にする。
 これら経済計画法の執行は、経済計画会議事務局に設置される法執行機関としての計画査察部によって行なわれる。計画査察部は立入り検査や強制捜査の権限をも持つ経済査察機関として機能する。
 経済計画法違反に対するペナルティーは経済計画会議の審問を通じて科せられ、違反にかかわった個人に対する業務資格停止や公民権停止が中心である。
 違反が組織ぐるみでも、計画対象企業は基幹的生産に関わるため、企業体そのものの解散はもとより、営業停止等のペナルティーも適当でない。計画外の自由企業の場合は、営業停止や強制解散のペナルティーもあり得る。

コメント

共産法の体系(連載第19回)

2020-04-03 | 〆共産法の体系[新訂版]

第4章 経済法の体系

(2)経済計画法①
 経済法体系の第一部門は経済計画法であるが、世界共同体における地球全体の総枠的な経済計画をベースに、各領域圏における経済計画が策定されるという計画経済の二段階構造に対応して、その根拠法たる経済計画法も、世界法(条約)と領域圏法の二段階構造を採る。この構造は、環境法とも相似する。
 世界法としての世界経済計画法は、世共機関である世界計画経済機関が策定する総枠的経済計画の内実と策定プロセスを定めた条約法であり、これは世共を構成する全領域圏を法的に拘束する。
 対して、領域圏法としての経済計画法は世界経済計画法に基づく総枠的経済計画の枠内で各領域圏の経済計画会議が策定する領域圏レベルでの経済計画の内実と策定プロセスを定めた法であり、世界経済計画法の支分的な具体化法とも言えるものである。
 これら二段階の法に基づく経済計画の概要は既連載『持続可能的計画経済論』の中で詳論してあるので(特に第3章)、繰り返さず、本連載では特に経済計画法がまさに「法」たるゆえんでもある執行に関わる問題について触れたい。
 経済計画法はまさしく法規範であるが、同法に基づき策定された経済計画自体は法規範ではない。しかしそれは拘束力を持つ準則として経済計画主体を拘束するため、経済計画法は経済計画を実施するための執行プロセスを有する。
 経済計画法の執行も、上記の二段階構造に対応して、世界法レベルと領域圏法レベルとで段階が分かれる。世界法レベルでは世共が策定した総枠を各領域圏が遵守しているかどうかについて、先述した世界経済計画機関自身が監査を行なうことができる。
 他方、領域圏法レベルの執行は経済計画会議が策定した経済計画の遵守状況の監査と違反行為の摘発が中心となり、より強制的な手段をもってなされるが、これについてはいくつか特有の問題があるため、ここでいったん稿を改めることにする。

コメント