【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

田辺聖子『田辺聖子珠玉短編集⑤』角川書店、1993年

2008-10-07 23:54:38 | 小説
田辺聖子『田辺聖子珠玉短編集⑤』角川書店、1993年

 相変わらずの田辺さんの浪花弁の名調子による小咄です。

 「泣き上戸の天女」「春情蛸の足」「「当世てっちり事情」「おちょろ舟」「世間しらず」が佳作。

 この作家の短編には、中年男の悲哀もの、不倫ものが結構多いですね。おばさんの底力、タフさかげんを書くのも得意です。絶妙の会話。そして、あくなき食べ物へのこだわり。

 中年男性に関しては著者自身が書いています、「『おちょろ舟』などは若書きの腕力まんまんというところだ。ほぼ20年前の作品だが・・・このころ私は、<中年男性>を主人公にしてかくのが面白くてたまらなかった時期、自分ひとりでノリにノッている。・・・その作品が発する太刀風の如きものを面白がって頂ければよいのである」(p.303)と。

 食に関しては、解説で池内さんがうまく表現しています、「まざまざと目にうかんでくる。つい鼻の先にかぐようだ。耳の下に、しっかりした歯ごたえを感じる。五感が刺激されて急に空腹を覚えたりする」(p.307)、と。