司馬遼太郎が生前、子どものために書いた唯一の本です。選び抜かれた伸びやかで豊かな日本語で、未来に向かって生きる子どもたちに語りかけています。
二十一世紀に生きる君たちは自然をおろそかにすることなく、人間が自然によって生かされていることをよく知り、自然を尊重するように、自己を確立し、自分に厳しく、相手にやさしく、「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」の三つの言葉を大切に、そして「たのもしい」人間になるように、ということをまじめに語りかけています。
歴史が好きで、歴史のなかにすばらしい友人をもっている著者らしいメッセージです。
この本にはもうひとつ「洪庵のたいまつ」という文章も掲載されています。江戸時代に生まれ、蘭学をおさめ、医者となり、適塾をひらいて、大村益次郎や福沢諭吉などの将来を嘱望された青年の教育にあたった緒方洪庵の人となりを、短い文章で見ごとに集約した名文です。
二編あわせて、小学校の国語の教科書に採択されました。背景の写真も素晴らしいのひとこと。文章とぴったり合っています。