5年前の東日本大震災。原発をかかえる大熊町は、放射能に汚染され、避難地域に指定された。避難民の多くは会津若松市に逃れた。そこに、大熊町から逃れてきた、ホームレスの老人(高橋長英)がいた。津波で妻を失い、生きる意欲をなくし、乞食同然の生活をしている。暇つぶしに短歌を手帳に書いていた。
会津若松市にはやはり大熊町から避難してきた佳織(安田成美)がいた。佳織はそこで小さな短歌のサークルを主宰していた。サークルといっても佳織を含めて3人しかいない。ようやく市の職員に採用された佳織の夫は、ある日、佳織に短歌を綴った一通の手紙をわたす。届いた手紙には、原発を批判する歌が数首書かれていた。佳織をはじめ、サークルのメンバーは謎の歌人に思いをつなぐ。
原発を受け入れてきた大熊町。多くの金がおち、住人の感覚はマヒしていた。津波さえなければ・・。原発事故はいったい誰の責任なのか。大熊町を離れた人間はもう故郷に戻れないのか。彼らは今後どう生きていけばよいのか。
さまざま葛藤がそこにあり、利害関係もひとりひとり微妙である。
佳織は匿名のホームレス歌人を追い、その来し方と今を問うが、老人はかたくなに口を閉ざす。
セリフのひとつひとつが重い。俳優さんたちは言葉を咀嚼して、心をかよい合わせていく。
・作:古川健
・演出:日澤雄介
■出演
・安田成美
・高橋長英
・鳥山昌克
・岡本篤
・浅井伸治
・大鶴美仁音