この本は今から20年前ほどに書かれた。この頃日本も,世界も大きく変った。いまの経済のあり方がこの頃、あるいは本書のでる少し前あたりに決定づけられた。ひとことで言えば,ポスト工業化社会の到来である。製造業中心の経済から,情報,ITが経済をひっぱる社会への移行である。
世界では東西冷戦の終結,市場のグローバル化,金融経済の肥大化,アメリカ経済の持続的繁栄,欧州各国での中道左派政権の台頭,東アジア通貨危機,個人間・国際間の所得格差の拡大,地球環境問題への関心の高まりがあげられる。
これらを背景に政策の対立軸は,市場に期待する保守派と市場の不完全性を政府の介入で支えるべきとするリベラリズムである。
筆者は,進むべき日本の道は上記のいずれとも異なる第三の道であると説き,それは「市場主義改革の遂行により効率性を確保しつつ,それにともなう副作用の緩和をめざ(し),・・公正で「排除」のない社会を実現を同時にめざす」(p.229)道という。
大学改革についても「第三の道」の提唱がある(学問の自由の保証,業績主義の徹底化,リスクへの挑戦を加味した研究費の適正配分,外国人教官の積極的採用,学生の授業評価など,p.167)。