黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『雛の鮨 料理人季蔵捕物控』和田はつ子(角川春樹事務所)

2012-09-01 | 読了本(小説、エッセイ等)
ある理由から、武士を辞め料理人を志して五年が経った男・季蔵。彼が師と仰ぐのは、恩人でもある料理屋・塩梅屋の主人・長次郎。
そんなある日、馴染みの船頭・豪介が、出会い茶屋鈴虫で長次郎が娘のおき玖ほどの年頃の娘と一緒にいるのを見かけたという。その矢先、大川で土左衛門になった姿で見つかった長次郎。首に刺し傷があり、何者かに殺められたのは間違いないというのに、役人たちは詮議しようとせず、自害したのだと決め付けており、納得のいかない季蔵は、独自に調べ始める。おき玖曰く、長次郎は二日ほど前に、二人の男に好かれた場合はどうするかと相談していたという。
長次郎の通夜の席にやってきた、北町奉行烏谷椋十郎。そんな彼から長次郎は密偵だったという思いがけない一面を明かされる。
そんな中、長次郎が、三月三日の節句のための、雛の鮨の仕出し注文を記した紙を見つける。注文先は、人形屋の千代乃屋。その若旦那も長次郎同様の手口で不審な死を遂げていて……“第一話 雛の鮨”、
七夕近く。長次郎が得意としていた七夕豆腐を作ろうと工夫を重ねるが、なかなか同じようには作れず悩む季蔵。
そこへ烏谷がやってきて、長次郎がやっていた裏の仕事も継がないかと持ち掛けてくる。
折りしも江戸市中で、やっかいな事件が起きているという。錦絵に描かれた美女…麦湯屋・むぎのおきみと、甘酒屋・さくらのおかよが二人続けて神隠しに遭ったという。
先頃、絵師・町田徳重により錦絵に描かれていたおき玖の身が心配になった季蔵は、店で話題となっていたその錦絵を隠そうとしてひと騒動起こしてしまう。
ともかくも、町田に話を訊くべくその住まいに出かけると、そこには首を絞められた町田の死体が。
翌日、同心の田端宗太郎と岡っ引きの松次が現われ、彼が下手人だと疑われるが、見つかった部屋に麝香の匂い袋が見つかったことで一応疑いは晴れ、釈放された季蔵は、その一件について調べることに……“第二話 七夕麝香”
秋。長次郎が残した日記に記されていた、もてなし料理の数々について読んでいた季蔵は、その中の“太郎兵衛長屋 持参 長次郎柿”という言葉に目を留める。
おき玖に訊くと、それは長次郎が独自の製法で仕上げた熟柿で、日頃世話になっている太郎兵衛長屋の人々と自分たちが食べる分だけ作っていたものだという。
そんな中、豪介が通いつめている茶屋・松葉茶屋の看板娘・おゆきが神隠しに遭って消えたという。その折に通りかかった大工の話では、泣いている子供の声も聞こえたらしい。実は、おゆきには一人息子の平太がおり、その子も一緒に連れていかれたらしい。
先月、おゆきにどこぞの大店の番頭が主を看病するだけで、家族が一緒でもかまわないからという奇妙な条件の身請け話が出ていたという。
調べたところその大店とは、京菓子屋柳屋であるらしい……“第三話 長次郎柿”、
冬。店の前でおき玖が若い侍に連れ去られそうになり、その侍が落としていった印籠は、鷲の絵柄であった……それは季蔵が侍であった頃仕えていた鷲尾家の嫡男・影守の持ち物。相手が小手調べだと言い残して言ったこともあり、まだ本気ではなく脅しであると感じ取る。
その後、店に現われた烏谷から長次郎から生前預かったという匕首を手渡し、裏の仕事も継いで欲しいと頼まれた季蔵。彼は、烏谷に自分が侍をやめるに至った経緯を語る。
そんな中、影守から藩主・影親と同席する大川の雪見舟の仕出し料理を依頼された季蔵は……“第四話 風流雪見鍋”を収録。

シリーズ第一弾。ある理由で侍をやめた季蔵が、料理人の道を歩みはじめたものの、恩人である長次郎が突然亡くなり、思いがけず裏の顔を知ることに…という展開。
季蔵の過去が、何だか磐音っぽい(笑)。
主人公は料理人だけれど、捕物メインなのか、それなりにいろいろ料理は登場するもののあまりそそられないかな…。小説内における食べ物の美味しさは、食べた人物たちの感情の表現にかかっていると思うのですが、その辺が何だか微妙なので;
今後どう展開していくのかに期待…;

<12/9/1>