黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『よろず御探し請負い候』浅野里沙子(講談社)

2012-04-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
元服前の十六歳ながら、二年前から、江戸の町で“御探し物請負屋”をしている藤井文平。父は浪人の身。玉池稲荷に程近い小泉町で母とともに手習い指南所をしており、そのおかげで文平も筆も絵も達者。
紙問屋であったという老夫婦からの依頼を受けた文平。探して欲しい物は、いつの間にか部屋から盗まれたらしい漆塗りの文箱。妻が若い時に奉公していた、さる武家の奥方から下賜された品で、桔梗の図柄だという。
そんな中、たまたま道でぶつかった、二人の侍…優男の森川哲哉と、巨漢の本田岩五郎が、暇つぶしの押しかけ助手として、文平の手伝いを買って出た。彼らはそれぞれに由緒正しい家柄の出ながら、部屋住み。一刀流道場の師範並の腕前の持ち主であるらしい。
件の文箱を探して、あちこち聞き込む中で、他にも何者かが文箱を探していることを知る文平たち。
やがて、ようやく買い上げた材木問屋木曾屋の番頭を探し出すも、その番頭は、店が押し込みに遭い、殺害されていた……『蒔絵の重ね』、
“曙の里”という盆栽を盗まれたという松村左衛門から、それを探し出して欲しいと依頼された文平。
翌日、義母に供物を届けるようにと遣いを頼まれ、菩提寺に赴いた哲哉は、二年前に娘を亡くしたという水野義三郎夫婦に出会い、彼らの亡き娘・七緒が文平と親しかったことを知る。
盗まれた盆栽探しを始めた文平たち。その日、出入りしていたのは呉服商と植木屋、菓子屋で、その誰も盆栽に興味を持っているものはいなかった。いくらでも金目のものもあり、もっと珍しいものも、持って行き易いものもあったはずなのに何故それがなくなったのか……『花篝』、
祖父の十三回忌法要で、乳母であった横山登勢の娘・美紗と久々に再会した岩五郎。登勢は体調を崩して寝込んでおり、美紗はその看病疲れでやつれていた。登勢には岩五郎と同い年の次男・善次郎がいたが、永井家に養子に出されていた。
そんな中、人形遣いの久蔵から依頼が。だがその真の依頼人は、人形として操られている男・長三郎。彼はある事情で、成長を止めた身体となったが、生き別れとなっている実の両親に会いたいのだという。手掛りは、守り袋に入っていたという、碁石大の漆塗。源兵衛長屋と刻まれており、父は漆に関わる職人であったらしい……『綴れ刺せ』の3編収録。

探し物業をしている浪人の息子(十六だけどもっと幼く見られる)・文平と、たまたま知り合った腕の立つ二人の侍が、一緒にいろんなものや人を探して奔走する時代ミステリ。
割と読みやすくて、話自体は良いかな。そこかしこに微妙に北森さんの影が見えるのが、気になるのですが…。

<12/4/19>