白バイ警官を志望しながらも、東京下町の高橋署に配属された麻生龍太郎。見落としがちな事柄を、その洞察力の鋭さから見抜き、数々の事件を解決に導いてゆく彼の所轄刑事時代を描いた連作短編集。
路地に面した住宅3軒で、盆栽の鉢とプランターなどが壊される事件が発生。しかもその中の3軒では、三輪車のサドルが切り裂かれていた。各家庭から話を聞いた麻生は、以前雑草を抜いていた主婦に、いきなり怒り出した少女の存在を知る……『大根の花』、
首吊り自殺と思われたOLの遺体発見現場で違和感を感じた麻生。自殺のはずなのに、吊られたロープの上の部分がないのだった。やがて校正教室に通っていた、彼女の筆記用具が消えていたことに気づき……『赤い鉛筆』、
通りがかった女子高生の顔を引っかいた、口をきかないホームレスの女・はなこ。突発的な行動と思われたが、麻生の努力の結果、被害者が小学高学年の頃に彼女と面識があることを聞き出した。その過去を辿った麻生は、その頃被害者が“はなこ”という名の犬を飼っていたことを知る……『割れる爪』、
及川の元を訪れた帰り、4階マンションで泣き叫ぶ幼女を発見した麻生。その部屋の中では、母が心臓発作で死亡していた。彼女は子供が昼寝している間に亡くなったと思われ、死因に不審な点はなかったが、用意周到だったはずの彼女が、予備のおまるを子供部屋に用意しておかなかったことに疑問を覚えた麻生は……『雪うさぎ』、
庭から脱走した飼い犬・ホーリーが、切断された手首を咥えてきた。死んでいることが明らかなその体の、他の部分を探すべく、犬の足跡を辿る麻生たち。やがてホーリーが、靴を咥えてくる癖を持っていることがわかり……『大きい靴』の5編収録。
RIKOシリーズに登場する私立探偵・麻生さんの所轄刑事時代のお話。
他の作品を読んでなくてもこれだけで十分楽しめますが、その後を考えるとより楽しいかも(笑)。
<07/3/6>