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752)βカリオフィレンはカンナビノイド受容体のCB2を活性化してがん細胞を死滅する

図:香辛料やハーブや大麻草の精油に含まれるセスキテルペンの一種のβ-カリオフィレン(①)は、カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の選択的アゴニストとして作用する(②)。CB2の活性化は、抗炎症作用・鎮痛作用・抗不安作用・抗うつ作用・抗がん作用などを示す(③)。β-カリオフィレンは直接的な抗菌作用があり、さらにCB2受容体を介する機序以外で遺伝子発現やシグナル伝達系に作用する(④)。その結果、β-カリオフィレンは、様々な炎症性疾患やや自己免疫疾患や神経変性疾患や疼痛性疾患やがんに対して治療効果を発揮する。

752)βカリオフィレンはカンナビノイド受容体のCB2を活性化してがん細胞を死滅する

【体内には大麻成分で活性化される受容体が存在する】
様々な国や地域や民族で古くから利用されている民間療法や伝統医療の効果は、長期間におよぶ臨床経験によって確認されています。そして、現代における科学的な研究によって、その薬効物質や作用機序が明らかになっています。
大麻草は古くから病気の治療に使用されてきましたが、現在では日本を含め多くの国で大麻の栽培や使用が規制されています。しかし、最近の多くの医学的研究は、「大麻は病気の治療に最も有用な植物」であることを示しています。
その理由は、大麻の成分のカンナビノイドが結合するカンナビノイド受容体が全身の組織・臓器の細胞に発現し、多くの生理機能の制御に重要な役割を担っていることが明らかになったからです

大麻の効能は経験的に知られ、医療目的や娯楽の目的で何世紀にもわたって利用されてきましたが、その精神作用の活性成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)が同定されたのは1964年のことです。
THCはイスラエルのワイズマン研究所の ラファエル・メコーラム(Raphael Mechoulam) らによって1964年に分離されました。
THCが直接作用する受容体が1988年に発見されカンナビノイド受容体タイプ1(CB1)と命名されました。
CB1は中枢神経系のシナプスに存在し、感覚神経の末端部分にも存在します。さらに筋肉組織や肝臓や脂肪組織など非神経系の組織にも分布しています。
数年後にタイプ2の受容体(CB2)の遺伝子が発見されました。CB2は主に免疫系の細胞に発現しています

図:カンナビノイド受容体のCB1とCB2は様々な臓器や組織に分布し、多様な生理作用を制御している。CB1は中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、記憶・認知、運動制御、食欲調節、報酬系の制御、鎮痛など多岐にわたる生理作用を担っている。CB2は免疫細胞や白血球に多く発現し、免疫機能や炎症の制御に関与している。

大麻成分のカンナビノイドが結合する受容体の存在は、これらの受容体に結合する内因性の成分が存在することを意味します。カンナビノイド受容体のCB1とCB2は人間が大麻の薬効を利用するために存在するのではなく、CB1とCB2を活性化する内因性のリガンドが存在して、大麻成分がたまたまCB1とCB2に結合して活性化して薬効を示しているに過ぎないのです。
そのような内因性の物質として1992年にアナンダミド(anandamide)が脳から発見され、CB1のアゴニストであることが示されました。アナンダミドはサンスクリット語の「内なる至福」を意味します。
さらに、2番目の内因性カンナビノイドとして2-arachidonoyl gylcerol (2-AG)が発見され、さらにいくつかの内因性カンナビノイドが見つかりました。
内因性のカンナビノイドが同定されると、それらの生合成や分解に関与する酵素や、受容体とリガンドが結合したあとのシグナル伝達経路が解明されました。
内因性カンナビノイドは貯蔵されて放出されるのではなく、必要に応じて(オンデマンド)合成されます。
内因性カンナビノイドシステムの活性化は、リガンド(内因性カンナビノイド)がCB1やCB2と直接的に作用する他に、内因性カンナビノイドの細胞内取り込みや細胞内での分解の阻害によっても起こります。

図:内因性カンナビノイドのアナンダミド(①)と2−アラキドノイルグリセロール(②)は細胞膜のリン脂質から合成される(③)。アナンダミドと2−アラキドノイルグリセロールはカンナビノイド受容体のCB1とCB2や、Gタンパク共役型受容体のGPR55やCa透過性の陽イオンチャネルの一種であるTRPV1などに作用して細胞機能を制御している(④)。アナンダミドは脂肪酸アミドハイドロラーゼ(fatty acid amide hydrolase: FAAH)によってアラキドン酸とエタノールアミンに分解され(⑤)、2-アラキドノイルグリセロールはモノアシルグリセロール・リパーゼ(monoacylglycerol lipase; MGL)によってアラキドン酸とグリセロールに分解される(⑥)。このような内因性カンナビノイドの合成と分解をターゲットにすることによって内因性カンナビノイド・システムの活性を調節できる。

【カンナビノイド受容体はGタンパク質を介して外部の情報を細胞内に伝える】
受容体(レセプター)は脂質二重層の細胞膜を貫通するように存在し、細胞外の刺激や情報を細胞膜で囲まれた細胞内部に使える役割を担っています。
受容体の細胞外側には、特定のシグナル分子(ホルモンや増殖因子や医薬品など)が結合できる「鍵穴」のような構造が存在し、その鍵穴にシグナル分子が結合すると、それが引き金になって様々な化学反応を細胞内で引き起こす働きを持っています。
この連鎖的な反応を通じて情報が細胞内に伝達され、最終的に特定の機能をもったタンパク質の遺伝子発現を促進したりして、細胞の生理機能の変化を引き起こします。このような一連の経路をシグナル伝達経路と呼びます(図)。

図:細胞は脂質二重層から成る細胞膜によって細胞外と細胞内が分けられている。細胞膜を貫通するように存在する受容体に特有に結合するシグナル分子(リガンド)が結合する(①)と、その受容体は活性化し(②)、連鎖的な化学反応を引き起こす(③)。このようなシグナル伝達によって細胞外の情報が細胞内に伝達され、最終的に特定の機能を持った遺伝子の発現や酵素の活性化などによって、細胞機能に変化が生じる。

細胞膜受容体には多くの種類が知られていますが、そのうちもっとも大きなグループを構成しているのがGタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : 略してGPCR)です。
α-ヘリックスというらせん構造で親油性の部分が、細胞膜(脂質二重層)を内外に行ったり来たりを7回繰り返しているので「7回膜貫通型受容体」という名称でも呼ばれます。
GPCRが活性化されると、細胞内のGタンパク質と呼ばれるタンパク質を介してシグナルを細胞内に伝達するために、「Gタンパク質共役型受容体」という名前がつけられています。
GPCRは多くの種類の細胞に分布しており、光・匂い・味などの外来刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知して細胞内に伝達する役割を担っています。
例えば、光を感じて視覚に関わるロドプシン、におい物質に作用する嗅覚受容体、さまざまな生理現象を司る神経伝達物質(アドレナリン、ヒスタミン、セロトニンなど)の受容体などは全てGPCRの仲間です。
大麻草の成分のカンナビノイドが結合するカンナビノイド受容体はGタンパク質共役型受容体(GPCR)です。このカンナビノイド受容体に作用するシグナル分子(リガンド)は何らかの薬効や毒性を示すことになり、医薬品開発のターゲットとして可能性を持っています。

【CB2の活性化は抗炎症作用や鎮痛作用や細胞保護作用や抗がん作用を示す】
カンナビノイド受容体のCB1は中枢神経系に多く発現しており、CB1の活性化は多様な精神作用を示します。大麻に含まれるカンナビノイドで最も含量の多いテトラヒドロカンナビノール(THC)はCB1とCB2を活性化し、鎮痛や食欲増進や吐き気を軽減する作用や筋肉けいれんを緩和する作用などがあります。しかし、THCを多く摂取すると、不眠やめまいや運動失調や気分の高揚などの副作用が問題になります。また、肝臓では、CB1が炎症や線維化の増悪に関与しています。(425話参照)

一方、CB2のアゴニスト(受容体に結合して作用を示す作動薬)は、炎症を抑制する抗炎症作用や鎮痛作用があります。
CB1とCB2のアゴニストの混合物である植物カンナビノイドの副作用(有害作用)の多くはCB1のアゴニストによることが明らかになっており、CB1に作用せずCB2に選択的なアゴニストは有用な薬物になることが示唆されています。
CB2の活性化が有効な疾患として、様々な種類の疼痛、がん、神経系の炎症や変性による疾患、免疫異常、咳、炎症性疾患、心血管疾患、肝疾患、腎臓疾患、骨の異常、かゆみ(掻痒)などが報告されています。
選択的CB2受容体アゴニストによる治療効果が期待できる疾患として以下のような多くの疾患が報告されています。(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2012 Dec 5; 367(1607): 3353–3363.の表1より)

  • 手術後疼痛(acute or post-operative pain)
  • 慢性炎症性疼痛(persistent inflammatory pain)
  • 神経障害性疼痛(neuropathic pain)
  • 骨転移を含むがん性疼痛(cancer pain including bone cancer pain)
  • 掻痒症(pruritus)
  • パーキンソン病(Parkinson's disease)
  • ハンチントン病(Huntington's disease)
  • 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)
  • 多発性硬化症(multiple sclerosis)
  • 自己免疫性ぶどう膜炎(autoimmune uveitis)
  • エイズ脳炎(HIV-1 brain infection)
  • アルコール性神経障害(alcohol-induced neuroinflammation/neurodegeneration)
  • 不安関連障害(anxiety-related disorders)、双極障害や人格障害や注意欠陥・多動性障害や物質使用障害における衝動(impulsivity)
  • コカイン依存(cocaine dependence)
  • 外傷性脳障害(traumatic brain injury
  • 脳卒中(stroke)
  • 動脈硬化症(atherosclerosis)
  • 全身性硬化症(systemic sclerosis)
  • 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)
  • アルコール性肝疾患(alcoholic liver disease)などの慢性肝障害(chronic liver diseases)
  • 糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)
  • 骨粗しょう症(osteoporosis)
  • 咳(cough)
  • がん(乳がん、前立腺がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、転移性骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、神経膠腫など)

以上のように、CB2アゴニストは多くの疾患に対して治療効果を示す可能性が報告されています。

【香辛料や大麻草に含まれる精油成分βカリオフィレンはCB2の選択的アゴニスト】
テルペン類(テルペノイド)とは
植物体内でメバロン酸経路により生合成され、イソプレン骨格(C5H8)がいくつか結合してできた化合物の総称です。
モノテルペンはイソプレンが2個結合(C10H16)し、ジテルペンはイソプレンが4個結合し、セスキテルペンはイソプレンが3個結合したものです。「モノ(mono-)」は「1個」、「ジ(di-)」は2個で、「セスキ(sesqui-)」は1.5個の意味です。
炭素が10個で構成しているC10のモノテルペン類と、炭素が15個(C15)で構成されるセスキテルペン類は揮発性が高く、空気中を漂いにおいを作り出しています。
炭素数が20のジテルペン以上になると分子量が大きくなるため揮発しにくくなります。
このような揮発性の高い植物成分を精油と言います。
ベータ・カリオフィレン(β-caryophyllene)は、多くの香辛料や植物性食品の精油に含まれるセスキテルペンです。炭素数15と水素数24のC15H24で酸素や窒素は含まないセスキテルペン系化合物で、4員環と9員環がトランス縮環したビシクロ[7.2.0]ウンデカン骨格を有する非常に稀な構造を持つ天然物質です(下図)。

図:β-カリオフィレンはイソプレン骨格が3個縮合した炭素数15個のセスキテルペンで、香辛料などの精油に多く含まれている。

βカリオフィレンは黒胡椒、オレガノ、バジル、ローズマリー、シナモン、セロリなどの多くのハーブやスパイスの精油に豊富に含まれています。大麻草にも多く含まれています。
日本(厚生労働省)も米国(食品医薬品局)も食品添加物として認可していますので、極めて安全性の高い天然成分です。

βカリオフィレンがカンナビノイド受容体CB2の選択的アゴニストであることが明らかになっています。以下のような論文があります。

Beta-caryophyllene is a dietary cannabinoid (ベータ・カリオフィレンは食事由来のカンナビノイドである)Proc Natl Acad Sci U S A. 105(26): 9099–9104. 2008年

【要旨】
大麻草(Cannabis sativa L.)由来の植物性カンナビノイドとアラキドン酸由来の内因性カンナビノイドは、カンナビノイド受容体のタイプ1(CB1)とタイプ2(CB2)の選択性のない天然のリガンド(受容体に結合して活性化する物質)である。
CB1受容体は精神変容作用の発現に関与しているが、CB2受容体の活性化は炎症性疾患や疼痛性疾患、動脈硬化、骨粗しょう症の治療のターゲットとして注目されている。
この論文では、植物由来の精油成分の一つであるベータ・カリオフィレン(β-caryophyllene)がCB2受容体に阻害定数(Ki)が 155 ± 4 nMで選択的に結合し、CB2を活性化する機能的CB2アゴニストになることを報告する。
興味深いことに、ベータ・カリオフィレンは多くのスパイスや植物性食品の精油成分として含まれており、大麻の主要成分でもある。
分子構造の検討からベータ・カオフィリンは、CB2タンパク質の117番目のフェニルアラニン(F117)と258番目のトリプトファン(W258)の芳香環との間でリガンドとパイ・パイ積重ね相互作用(ligand π–π stacking interactions)することが明らかになった。
ヒトの単球を用いた実験で、ベータ・カオフィリンはCB2と結合することによってアデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)を阻害し、細胞内のカルシウム波伝播(intracellular calcium transients)を引き起こし、マイトジェン活性化キナーゼ(mitogen-activated kinases)のErk1/2とp38を弱く活性化した。
ベータ・カオフィリンは500nMの濃度で、リポ多糖(LPS)で誘導される末梢血単球における炎症性サイトカインの発現亢進を阻害し、LPSによるErk1/2とJNK1/2のリン酸化を抑制した。
さらに、マウスを用いてカラギーナン(carrageenan)で炎症反応を誘導する実験で、体重1kg当たり5mgのベータ・カオフィリンの経口投与は炎症反応を強力に抑制した。しかし、CB2受容体を欠損したマウスではベータ・カオフィリンはカラギーナン誘導性炎症反応を抑制できなかった。
以上の結果は、この天然物質(ベータ・カオフィリン)が、生体内(in vivo)においてCB2受容体に作用してカンナビノイドと類似の作用を示すことを示している。
ベータ・カオフィリンは食品中に含まれるCB2受容体の機能的リガンドであり、大麻草に含まれるカンナビノイドと類似の作用を発揮する。

つまり、この論文は香辛料や大麻草などの精油成分に多く含まれ、食品添加物としても使用されているβ-カリオフィレンはカンナビノイド受容体CB2の選択的なアゴニストであり、精神作用を示すCB1には作用しないので、様々な病気の治療に使用できる可能性を指摘しています。

【βカリオフィレンはシスプラチンの腎障害を軽減する】
CB2アゴニストは抗炎症作用があります。抗がん剤の副作用を軽減する効果もあります。以下のような論文があります。

 β-caryophyllene ameliorates cisplatin-induced nephrotoxicity in a cannabinoid 2 receptor-dependent manner(β-カリオフィレンはカンナビノイド受容体2に依存する作用機序でシスプラチン誘導性の腎障害を軽減する)Free Radic Biol Med.  52(8): 1325–1333. 2012年

【要旨】
β-カリオフィレン(β-caryophyllene)は、多くの香辛料や植物性食品の精油に含まれる天然のセスキテルペンであり、抗炎症作用が知られている。β-カリオフィレンは内因性カンナビノイド・システムのカンナビノイド-2受容体(CB2)の天然のアゴニスト(受容体に結合して作用を示す作動薬)であることが明らかになっている。CB2は主に免疫細胞に発現し、炎症を抑制する働きを担っている。
本研究においては、マウスに抗がん剤のシスプラチンを投与して発症させた腎臓障害のモデルを用いてβ-カリオフィレンの効果を検討する目的で行った。シスプラチンによる腎障害は活性酸素や一酸化窒素ラジカルによる酸化傷害と炎症によって尿細管がダメージを受けて発症する。
形態学的なダメージの程度や、炎症応答(炎症性サイトカインの産生、好中球やマクロファージの浸潤など)の程度の検討から、β-カリオフィレンが用量依存的にシスプラチンによる腎臓障害を軽減することが示された。
活性酸素に一酸化窒素ラジカルによる酸化ストレスの程度や酸化傷害による細胞死のレベルを顕著に軽減した。
このようなシスプラチンによる腎臓障害に対するベータ・カリオフィレンの保護作用はCB2ノックアウト・マウス(CB2遺伝子を欠損させたマウス)では認められなかった。
以上のことから、β-カリオフィレンはカンナビノイド受容体のCB2を介するメカニズムでシスプラチンによる腎臓障害を抑制する効果があることが示された
β-カリオフィレンの人間に対する安全性は極めて高いので、炎症や酸化ストレスによって引き起こされる様々な疾患や病体の治療薬として非常に有望な治療薬となる可能性がある。

β-カリオフィレンがドキソルビシンの心臓毒性を軽減する効果が報告されています。

β-Caryophyllene, a natural bicyclic sesquiterpene attenuates doxorubicin-induced chronic cardiotoxicity via activation of myocardial cannabinoid type-2 (CB2) receptors in rats.(天然の二環式セスキテルペンであるβ-カリオフィレンは、ラットの心筋カンナビノイド2型(CB2)受容体の活性化を介してドキソルビシン誘発慢性心毒性を軽減する)Chem Biol Interact. 2019 May 1;304:158-167.

【要旨の抜粋】
固形がんおよび心血管疾患でCB2受容体の発現低下が報告されているため、CB2受容体の活性化は、抗がん剤治療および心臓保護の実行可能な治療法と考えられている。
ドキソルビシンは、固形がんや白血病やリンパ腫の化学療法で使用されている重要な抗がん剤である。ただし、ドキソルビシンの使用は、致命的な心毒性のためにしばしば制限される。心血管疾患およびがんにおけるCB2受容体の役割を考慮すると、CB2受容体の活性化は、ラットのドキソルビシン誘発慢性心毒性から保護する可能性がある。
本研究では、ラットのドキソルビシン誘発慢性心毒性に対する、選択的CB2受容体アゴニストである天然の二環式セスキテルペンであるβ-カリオフィレンの心筋保護効果をした。

ドキソルビシン(2.5mg / kg)を週に1回、5週間腹腔内注射して、ラットの慢性心毒性を誘発した。また、ラットにβカリオフィレンを週6日、合計5週間注射した。
ドキソルビシン投与は、心臓機能の顕著な低下をきたし、さらに抗酸化酵素やグルタチオンの枯渇、および脂質過酸化の増加によって示される酸化ストレスを亢進した。ドキソルビシンは心臓において、転写因子のNF-κBの活性化を引き起こし、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、およびIL-1β)の発現レベルと炎症性メディエーター(iNOSおよびCOX-2)の発現を増加させた。
さらに、ドキソルビシンは心筋細胞において、アポトーシスの誘導を示すBax、p53、切断されたPARP、活性カスパーゼ-3の発現を亢進し、アポトーシス抵抗性のBcl-2の発現量を低下した。
βカリオフィレン投与は、心筋細胞を保護し、心機能を改善し、酸化ストレスと炎症とアポトーシス誘導を軽減することにより、有意な心保護効果を発揮した。
組織学的および超微細構造的研究も、生化学的および分子的パラメーターの結果と一致するβカリオフィレンによる心臓保護作用が確認された。
βカリオフィレンの心臓保護作用はCB2受容体拮抗薬のAM630の事前投与によって阻害されたので、βカリオフィレンの心臓保護作用がCB2受容体を介した機序であることが証明された
この研究結果は、CB2受容体の活性化によるDOX誘発慢性心毒性に対する心臓保護におけるβカリオフィレンの新しいメカニズムを明らかにした。

培養がん細胞を使った実験でパクリタキセルの抗がん作用を増強する作用、抗がん剤耐性を阻害する作用が報告されています。(J Pharm Pharmacol. 2007 Dec;59(12):1643-7.)

【β-カリオフィレンは鎮痛作用がある】
βカリオフィレンに抗炎症作用や鎮痛作用があることは以前から報告がありますが、この作用がカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の活性化を介する可能性が報告されています。以下のような論文があります。

The cannabinoid CB₂ receptor-selective phytocannabinoid beta-caryophyllene exerts analgesic effects in mouse models of inflammatory and neuropathic pain.(カンナビノイド受容体タイプ2に選択的に作用する植物カンナビノイドのβカリオフィレンは炎症性疼痛および神経障害性疼痛のマウスの実験モデルで鎮痛作用を示す)Eur Neuropsychopharmacol. 24(4):608-20. 2014

【要旨】
多くの植物の精油に含まれるβ-カリオフィレンは、カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の選択的なアゴニストであることが明らかになっている。β-カリオフィレンは香辛料を始めとする多くの食用植物に比較的高濃度で含まれている。
カンナビノイド受容体CB2が炎症性疼痛や神経障害性疼痛の制御に重要な役割を担っていることが多くの研究によって明らかになっている。本研究では、炎症性疼痛と神経障害性疼痛の動物実験モデルを用いてβ-カリオフィレンの鎮痛作用を検討した。
炎症性疼痛の実験モデルであるホルマリン・テストでは、経口的に投与したβ-カリオフィレンは炎症性疼痛のレベルを軽減した。
神経障害性疼痛の実験モデルでは、β-カリオフィレンを経口投与することによって、熱痛覚過敏(thermal hyperalgesia)と機械的異痛症(mechanical allodynia:通常では痛みを引き起こさない機械的刺激に対して痛みを感じる状態)を緩和し、脊髄組織の炎症を軽減した。
β-カリオフィレンを長期間投与しても、鎮痛効果の耐性は生じなかった
CB2の合成アゴニスト(JWH-133)の皮下注射よりもβ-カリオフィレンの経口投与の方が鎮痛効果は強かった。
以上の結果から、天然の植物成分であるβ-カリオフィレンが、慢性的な強い疼痛の治療に極めて有効であることが示された。

疼痛は様々な原因で発生します。
怪我などで炎症が起こると痛みを起こす物質が発生し、この物質が末梢神経にある「侵害受容器」という部分を刺激することで痛みを感じるます。この炎症性により発生する疼痛は「侵害受容性疼痛」と呼ばれています。
何らかの原因により神経が障害され、それによって起こる痛みを「神経障害性疼痛」といいます。
帯状疱疹が治った後の痛みや坐骨神経痛や多発性硬化症や脊髄損傷による痛みなどがあります。
マウスを使って様々な疼痛モデルで実験を行い、β-カリオフィレンは炎症性疼痛や神経障害性疼痛の両方に効果があることを報告しています。
ラットを使った疼痛モデルでもβ-カリオフィレンの鎮痛作用が確認されています。

【βカリオフィレンはCB2受容体を介して膠芽腫細胞を死滅する】
βカリオフィレンは様々ながんに対して抗腫瘍効果を発揮します。難治性腫瘍の代表である膠芽腫細胞に対してもCB2を介した機序で抗がん作用を示すことが報告されています。以下のような報告があります。

β-Caryophyllene Inhibits Cell Proliferation through a Direct Modulation of CB2 Receptors in Glioblastoma Cells.(β-カリオフィレンは、膠芽腫細胞におけるCB2受容体の直接調節を介して細胞増殖を阻害する) Cancers (Basel). 2020 Apr 23;12(4):1038.

この報告では、ヒト神経膠芽腫に由来するU-373とU87、およびヒト神経膠腫幹様細胞を使ってβカリオフィレンの効果を検討しています。ベータカリオフィレンは有意な抗増殖効果を示し、細胞生存率を低下させ、細胞周期を阻害し、アポトーシスを増加させました。アポトーシス促進性のBAX発現は増加し、抗アポトーシス性のBcl-2発現は減少しました。その作用機序としてCB2の活性化が関与していることを報告しています。
その他、様々ながん細胞においてβカリオフィレンが抗がん作用を示すことが報告されています。

【βカリオフィレンは認知機能を良くする
以下のような報告があります。

The cannabinoid receptor 2 agonist, β-caryophyllene, improves working memory and reduces circulating levels of specific proinflammatory cytokines in aged male mice(カンナビノイド受容体2アゴニストであるβ-カリオフィレンは、老齢のオスのマウスにおいて作業記憶を改善し、特定の炎症誘発性サイトカインの血中レベルを低下させる)Behav Brain Res. 2019 Oct 17; 372: 112012.

【要旨】
加齢に伴う認知機能低下は炎症性サイトカインと関連しているが、認知機能低下とサイトカイン産生の間の正確な関係はまだ解明されていない。
β-カリオフィレンは、カンナビノイド受容体2(CB 2)のアゴニストで、抗炎症効果が証明されており、記憶を改善し、寿命を延ばす可能性が指摘されている
加齢に伴う認知機能の低下と炎症性サイトカイン産生を軽減するβ-カリオフィレンの可能性を探求することは興味深い。この研究では、寿命全体にわたる血中サイトカイン量の変化、若齢および老齢マウスの記憶能力、および記憶機能とサイトカイン産生に対するβ-カリオフィレンの影響を評価した。

3ヶ月、12ヶ月および18ヶ月齢のオスのSwiss-Websterマウスで12種類のサイトカインの血漿レベルを測定した。作業記憶は3ヶ月齢と12ヶ月齢のマウスで比較された。β-カリオフィレンによる記憶回復は100〜300 mg / kgの亜慢性投与において、生後3か月および12か月のマウスで測定された。最後に、β-カリオフィレンによる最も記憶増強効果の高い用量でのサイトカインレベルへの影響を18ヶ月齢のマウスで評価した。

いくつかのサイトカインの血中レベルは年齢とともに有意に増加した。多重線形回帰分析は、IL-23レベルが加齢と最も強く関連していることを示した老齢のマウスは、作業記憶の欠損と高レベルのIL-23を示したが、どちらもβ-カリオフィレン治療によって回復した
β-カリオフィレンは、加齢に伴う記憶障害を逆転させ、サイトカイン産生を調節する。IL-23は老化プロセスにおいて重要な役割を果たす可能性があり、将来の研究では、IL-23が新しい老化防止治療薬のバイオマーカーとして有用であるかどうかを判断する必要がある。

 サイトカインの一種のIL-23の発現亢進は炎症や老化を促進し、認知機能や記憶機能を低下させ、βカリオフィレンがIL-23の産生を抑制して、老化に伴う認知機能や記憶機能の低下を抑制するということです。つまり、βカリオフィレンは老化予防に有効という話です。
以下のような報告もあります。

β-Caryophyllene, a CB2 receptor agonist produces multiple behavioral changes relevant to anxiety and depression in mice.(CB2受容体アゴニストのβ-カリオフィレンはマウスにおける不安や抑うつに関連する多くの行動変化を引き起こす)Physiol Behav. 135:119-24. 2014年

【要旨】
カンナビノイド受容体受容体タイプ2(CB2)が不安や抑うつ症状と関連していることが多くの研究で示されているが、動物実験のモデルでの系統的な検討は少ない。本研究では、マウスを用いた実験モデルで、CB2受容体の選択的アゴニストであるβカリオフィレンの抗不安作用と抗うつ作用を検討した。

マウスにβカリオフィレンを1日50mg/kgの用量で投与し、不安に関しては高架式十字迷路テスト(Elevated plus maze)、オープン・フィールド(Open field)、ビー玉埋めテスト(marble burying tes)で検討した。抑うつに対する作用は、novelty suppressed feeding(NSF)テスト、尾懸垂試験 (Tail suspension test)、強制水泳テスト(forced swim tests)で検討した。
高架式十字迷路テスト(マウスが壁際を好むという性質を利用して、壁の無い道を恐れずに探索するか観察する。不安があると壁のある道ばかり行き来する。壁の無い道に侵入した回数と滞在時間の変化を指標とする)では、全ての指標においてβカリオフィレンは不安を軽減した。
オープン・フィールド・テスト(マウスにとって新奇で広く明るい環境であるオープンフィールドの中にマウスを入れ、新奇環境における自発的活動性や不安様行動などを評価するテスト)では、β-カリオフィレンは運動活動性に変化を及ばさないで、中央区画滞在時間を顕著に延長した。
ビー玉埋めテスト(ネズミが飼育ケージに入れた多数のビー玉を床敷きで埋めて隠そうとする行動を観察するテストで、強迫性障害のモデル。ビー玉に対する不安を反映。)では、埋めるビー玉の数や、ビー玉を埋めるために費やす時間を減少させ、強迫性障害を軽減する効果が認められた。
さらに、尾懸垂試験(マウスを逆さ釣りにすると初めは暴れるが、次第にあきらめて無動となりなる。この状態を「絶望状態」と呼び、10分間中の無動であった時間を計測する)と強制水泳テスト(水を張った容器にネズミを入れ呼吸及び浮くために必要な動作以外は動かないでいる無動時間を測定する)では、β-カリオフィレンの投与は無動時間を短縮した。(無動時間の短縮は絶望状態にさせないことを意味するので、抗うつ作用の指標になる)
NSF試験(絶食させたマウスを見慣れない場所に連れて行き、そこにある餌を食べるまでの時間を測定。時間が長いほど不安やうつ状態が大きいと考えられる)では、摂食までの時間を短縮した。
最も重要な点は、CB2受容体のアンタゴニスト(阻害剤)のAM630を前投与すると、βカリオフィレンの不安軽減と抑うつ軽減の効果(抗不安作用と抗うつ作用)は完全に消失したことである。

以上の結果は、不安障害や抑うつ症状の治療にカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)が重要なターゲットになることを示し、天然のβ-カリオフィレンがこれらの気分障害の症状の改善に効果が期待できることを示している。

このマウスの実験では体重1kg当たり50mgのβカリオフィレンを投与しています。人間の場合はマウスの服用量のの5分の1から7分の1で効果が期待できます(根拠は293話)。したがって、体重1kg当たり10mg程度が目安になります。

以上のように、CB2の選択的アゴニスト(作動薬)は炎症性疼痛と神経障害性疼痛と心因性疼痛の全てに効くことが示唆されています。

【βカリオフィレンはアルツハイマー病の改善にも有効】
CB2受容体の活性化は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)やアルツマイマー病の治療にも有効です。以下のような報告があります。

β-Caryophyllene ameliorates the Alzheimer-like phenotype in APP/PS1 Mice through CB2 receptor activation and the PPARγ pathway.(β-カリオフィレンはAPP/PS1マウスにおけるアルツハイマー病様の表現形をCB2受容体の活性化とPPARγ経路を介して軽減する)Pharmacology. 2014;94(1-2):1-12.

アルツハイマー病は記憶や認知機能の低下を呈する進行性の神経変性疾患です。病理学的にはアミロイドβ蛋白からなる老人斑が神経細胞外に沈着し,シナプスの減少と神経細胞死を認めます。APP/PS1マウスというのは脳内にアミロイドβ蛋白が蓄積するように遺伝子改変したマウスです。つまり、アルツハイマー病を発症するマウスです。
カンナンビノイド受容体タイプ2(CR2)の活性化は神経系の炎症反応を抑制することによってアルツハイマー病の治療効果が報告されています。この効果にはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)経路の関与が指摘されており、CB2とPPARγの2つの受容体のアゴニストはアルツハイマー病の治療に役立つことが示唆されています。そして植物に含まれるβ-カリオフィレンがCB2の選択的アゴニストであることが報告されています。
そこでアルツハイマー病のマウスの実験モデルであるAPP/PS1マウスを用いて、β-カリオフィレンの効果とその作用機序を検討しています。

実験の結果、β-カリオフィレンはAPP/PS1マウスにおける脳の海馬と大脳皮質におけるアミロイドβ蛋白の沈着を減少させ、認知機能の低下を抑制しました
さらに、β-カリオフィレンはアストログリアの増殖(astrogliosis)とミクログリアの活性化を抑制し、大脳皮質におけるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)のタンパク質量と炎症性サイトカインのTNF-αとIL-1βのmRNAレベルを低下させました。
CB2受容体のアンタゴニストであるAM630とPPARγのアンタゴニストのGW9662は、APP/PS1マウスにおけるβ-カリオフィレンのアルツハイマー病発症予防効果を顕著に阻害しました。

以上の結果から、著者らは、β-カリオフィレンの抗炎症作用と神経保護作用はカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の活性化とPPARγ経路を介しており、アルツハイマー病の治療薬として有望な物質である可能性を指摘しています。

【βカリオフィレンは性機能障害(勃起不全)を改善する】
βカリオフィレンは勃起不全を改善して性的パフォーマンスを向上する可能性が報告されています。以下のような報告があります。

β-caryophyllene improves sexual performance via modulation of crucial enzymes relevant to erectile dysfunction in rats.(β-カリオフィレンは、ラットの勃起不全に関連する重要な酵素の調節を介して性的パフォーマンスを改善する)Toxicol Res. 2020 Aug 20;37(2):249-260.

【要旨】
この研究では、パロキセチン投与ラットの陰茎組織における性的能力、勃起機能に関連する重要な酵素、および脂質過酸化に対するβ-カリオフィレンの影響を検討した。
動物は、それぞれ5匹の動物からなる次の10のグループにランダムに分けられた:正常対照群、β-カリオフィレン(10 mg/kg)、β-カリオフィレン(20mg/kg)、クエン酸シルデナフィル(20mg/kg)、β-カリオフィレン + クエン酸シルデナフィル(20 mg/kg)、パロキセチン(20 mg/kg)、パロキセチン +β-カリオフィレン(10 mg / kg)、パロキセチン +β-カリオフィレン(20 mg / kg)、パロキセチン +クエン酸シルデナフィル(20 mg / kg)、パロキセチン+β-カリオフィレン(20 mg/kg)+ クエン酸シルデナフィル(20mg/kg)。
最初の7日間は20 mg /kgのパロキセチンを経口投与し、その後、する前の8〜14日前にβ-カリオフィレンとクエン酸シルデナフィルを投与した。
性的パフォーマンスの評価では、パロキサチンが勃起不全を引き起こすことを明らかにした。
コントロール群に比べて、パロキセチン投与ラットでは、ホスホジエステラーゼ-5 、アルギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アンジオテンシンI変換酵素の活性の上昇、および脂質過酸化レベル亢進が観察された。
しかし、シルデナフィルおよび/またはβ-カリオフィレンによる治療は、パロキセチン誘発のラットの陰茎組織におけるアセチルコリンエステラーゼ、ホスホジエステラーゼ-5、アルギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、およびアンジオテンシンI変換酵素の活性を有意に低下させた。さらに、β-カリオフィレンとクエン酸シルデナフィルの同時投与は、より優れた調節効果を示した。したがって、β-カリオフィレンは、勃起不全の改善における潜在的な栄養補助食品である可能性がある。

パロキセチンは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)で、商品名パキシル(Paxil)で発売されています。
パロキセチンは、脳内セロトニン神経系でセロトニンの再取り込みを阻害することで、脳内シナプス間隙に存在するセロトニン濃度が高まり、神経伝達能力が上がります。その結果、抗うつ作用及び抗不安作用を示します。
日本でのパキシルの適応は、成人のうつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害などです。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬は海外ではセックス時の早漏防止の治療にも用いられます。この目的ではダポキセチンという薬が使われています。日本では未認可ですが、海外からの個人輸入や、ED専門の自由診療のクリニックでは早漏治療に最も使われています。ダポキセチンはパロキセチン(パキシル)と同じ選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)ですが、早漏治療にはダポキセチンがパロキセチンより有効性が高いことが知られています。

射精は脳内でノルアドレナリンが増えることにより生じますが、このノルアドレナリンは緊張や不安を感じると分泌が活発になります。セロトニンはノルアドレナリンを抑制する作用があるので、脳内のセロトニン量が少ないとノルアドレナリンの増加が早まり、射精自体も早まり「早漏」となってしまいます。そのため、SSRIであるダポキセチンやを服用すると、神経終末でのセロトニンの再取り込みを阻害し、脳内のセロトニンが増加するので、ノルアドレナリンの増加速度を抑えることができます。その結果、射精までの時間を延長することができるのです。ダポキセチン服用で射精までの時間が約3~4倍ほど延長する効果が得られます。

シルデナフィルはバイアグラのことです。シルデナフィルはホスホジエステラーゼ5型とよばれる酵素を阻害することにより、血管拡張物質であるサイクリックGMPの分解を抑制し、血管弛緩反応を増強して、陰茎の勃起時間を延長する効果があります。

さて、この実験では、勃起不全を引き起こす方法としてパロキサチンが使用されています。
パロキセチンは脳内のセレトニンを増やすことによって射精までの時間を延ばして早漏治療に効果がありますが、効きすぎると、「射精遅延、勃起障害」といった副作用が出ます。この副作用を利用して、パロキセチンで勃起不全を起こす実験に使っています。
そして、実験の結果、βカリオフィレンが「パロキセチンによる勃起不全」を阻止するという結果です
つまり、勃起不全+早漏の治療に使われてる「ホスホジエステラーゼ5型阻害剤(シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル)+選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」の治療に、β-カリオフィレンを併用すると、さらに性的パフォーマンスが高まるという実験結果です

多くの製薬会社がCB2の選択的アゴニストを医薬品として開発していますが、β-カリオフィレンは天然成分で食品に多く含まれ、特許がとれないので、あまり積極的な研究は行われていないようです。
しかし極めて安価で安全性も高いので、がんやその他の難病の代替医療で試してみる価値はあります。食品添加物として購入は可能で、安価です。
安全性も高く、私自身、試しに1日3g以上を2週間程度服用しましたが、副作用はありません。通常は1日に体重1kg当たり10mg程度が目安になります。

前述のように、CB2の活性化が有効な疾患として、様々な種類の疼痛、がん、神経系の炎症や変性による疾患、免疫異常、咳、炎症性疾患、心血管疾患、肝疾患、腎臓疾患、骨の異常、かゆみ(掻痒)などが報告されています。
CB2の選択的なアゴニストであるβ-カリオフィレンはこれらの多くの疾患の治療に役立つ可能性があります。がんや神経疾患や疼痛性疾患で有効な治療がない場合、β-カリオフィレンを1日1g程度摂取してCB2受容体を活性化する治療を試してみる価値はあると思います。

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