CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】くるまの娘

2022-08-15 21:08:36 | 読書感想文とか読み物レビウー
くるまの娘  作:宇佐見りん

苦しいというか、読んでいて重い家庭が描かれているのに、
どこか救いがあるというのが白眉と思った一作だった

家族の誰もが、どこかしら欠陥ともいうようなもの
欠点を抱えているのをありあり描いていく
人が簡単に狂気や、どうしようもない衝動にかられてしまう、
怒りとか、酒精とか、躁鬱のようなものが、
急に降りかかってくるように現れるというのを
当たり前の日常として耐えるでもなく、ただ、生きていく娘
父も、母も、どこかしらにそういった欠陥のようなものがあり
そういう家族であるということに悩むのとは違う、
もっと手前の部分、ただ、そうなってしまう両親をどうしようもないと
嘆くようでもないといった感じが、すごく胸に迫ってきて辛い

その状況で、兄が逃げて、弟も変に卑屈になってとか
もう、てんでダメな家族になってしまっているんだけども、
祖母の葬式を機会に、ずっと昔、仲良く楽しかった時分と同じように
車中泊をして旅行に出るという、その顛末と
そのさなかでの、過去への邂逅とか
母親の気持ち、その吐露がまた、バラバラになってしまうようなどうしようもなさがあって
辛いことこのうえない

それを受けてまた、父親が癇癪を起して
果てには心中になるかならざるやみたいな、めちゃくちゃさがあるんだが
最終的に、そんな状況と折り合いをつける場所を娘が見つけ
自然、それによって、それまでよりはうまくっている、
その状態は、とてもうまくいっているように見える
そんな風になるというのがよかったのである

ことの大小はあれ、こういう心持になれるかどうか、
そこに至るまでと、至る過程、それを成長というのか、
人生が進むというものを見せてもらったような
不思議な物語だと感じたのでありました
前よりはよくなっている、きっとそれは、よくなっていくということだと
そんな感じにも読めて、とかく気持ちがよいと思えた
いい小説だった


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