CLASS3103 三十三組

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【読書】ホテル・カイザリン

2023-10-23 21:05:33 | 読書感想文とか読み物レビウー
ホテル・カイザリン  作:近藤史恵

表題作を含む短編集
ミステリのようでもあるけど、サスペンスや不思議話に近いような
後味の悪いものもあれば、ほのかな希望を描いたものもある
多種多様でバラバラなんだけども、なんか通底したものを感じる
不思議な物語ばかりだった

情念や、人間の感情といったものを取り扱った、
あるいは、そういう側面をまだ言語化されてないものとして描いた
そういう作品が多くて、単純に嫌だなとか、その動機がわかるなとか、
気持ちや感情ではそう判断しているけども、一言では言い表せない
まだ言葉になっていない事象を取り扱っていたように思う

単純な悪意というものを描いたりもしていて、
その悪意が、明確に意識したものと、そうではないが正義心と思っていたものとで、
結果がどうであったか、そこに宿る後悔とも異なるものは何かと
誰が悪いとも言い難い、救いようのない悲しい話もあれば、
何かから逃げてきて、でも、異邦の地でそれが何か、どう向き合うか初めて気づくという
スタンダードな復活回復の話もあったりして、
一冊読むと、トータルで、負でも正でもないというバランスの良さが見事だったと思う
嫌な話ばっかりでも詰まるし、いい話ばっかりでは面白くないという
贅沢な悩みを見事に解決してくれている短編集だった

表題作は、はたして友情や恋情の話だったのかと
いぶかるようなものだけども、そこに灯っていた感情は、
似たものに対する好意という点では、どちらでもあったように思えたり
それが心からのものであるかどうかは、わからないけども、
そうであってほしいのかどうなのか、それすらもわからない事件とオチで
なんというかすごく印象的で面白かった
どれも、結局本人がどうであったかということと、客観的に読者として見てそれがはたしてどうなのかの
物凄いギャップを楽しめるというか、読者の思うことが結局他人事のようでもあるという
不思議体験ができるのが面白いと
全編すごく楽しく読み終えたのでありました


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