私はこのブログを書くのに資料としてよく利用しているのが「昭和45年度大映社
員名簿」です。昭和46年に大映が倒産したためこの社員名簿は大映最後のもの
で、名簿を引っ張り出してみる時は、並んでいる名前が戦友のような気持ちにな
ってくる私にとっては不思議な名簿なのです。
その中の俳優の欄に上田吉二郎さんの名前があります。そうです、あの怪優と言
われた上吉(ウエキチ)こと上田吉二郎さんです。
偶然にも先週取り上げた林成年さんの奥さんは上吉さんの娘さんですから長谷
川一夫さんとは親戚に当ります。彼は以前から各映画会社に出演していますが、
彼の籍は当時大映だったのです。
上田吉二郎さんは神戸の出身で明治37年(1904)生れで、高校を卒業して澤田正
二郎が創設する新国劇に入ったのが芸能界スタートです。昭和14年(1939)に日活
に入社して映画俳優生活が始まるのですが、あの独特のドスのきいた声とふてぶ
てしい表情が評判となり、主役こそなかったものの幅広い作品で悪役・敵役として
人気を集めました。
一面、悪役と言っても極悪からユーモラスなものまであって、どの作品でも彼の演
技が話題になりましたし、大げさなジェスチャーや独特の声色を、構成で真似をす
る芸人も多くいたくらいです。
「羅生門」がグランプリを獲った時には「グランプリ受賞の羅生門に出演・上田吉二
郎」と刷り込んでハガキ半分大の名刺を配ってまわり話題になりましたが、日常で
もまるで子供のように無邪気な性格の人で、万年筆型懐中電灯・ピストル型ライタ
ー・手持ち扇風機・8ミリカメラなどをいつも鞄の中に入れていたそうです。
私も撮影所で何回もお会いしましたが、あれだけ個性を発揮する人なのに、台詞
覚えが非常に悪かったという評判を聞いたのと、あの面魂とは反対の優しい面白
いおじさんというのが私の印象です。
奥さんが子宮ガンで長く患っていたのですが、「内緒で浮気してもいいわよ」と公
認で出かけた夜に奥さんが亡くなり、幼い娘さんから「お父ちゃんのバカ」と泣か
れ、「お母ちゃんは死んだけど、お父ちゃんの腹の中にちゃんとおさめてやる」と、
遺骨をかじりながら酒を飲んだ話は有名です。
昭和46年に長谷川一夫座長の舞台に出ていて、せき込んで血痰を出して倒れた
のですが喉頭ガンでした。手術で声帯を切除し、あの独特の声を失っても再起を
目指していたのですが、翌年昭和47年(1972)に68歳で帰らぬ人になりました。
彼の出演映画は各社併せて330本ですが、その中の約60本が大映です。
PS:このブログの大映関連部分を書き足したものが講談社さんから出版される
ことになり、来月6月18日に発売されることになりました。
タイトルは「スタアのいた季節/わが青春の大映回顧録」です。詳しくは次回
に改めてご報告させていただきますが、既に書店やアマゾンでの予約も始
まっておりますので、どうか宜しくお願い致します。 中島 賢
ご出版おめでとうございます。
若尾文子さんの映画週間とけんさんのご本と、6月は愉しみが一杯です。
私の好きな俳優さんの中でも、その役作りや出演した作品のバラエティさで一番の怪優(いや上田氏は新国劇退団後、一時期自らを「巨優」と自称していました。)を取り上げて頂きまして、感激です。
以前は調布の大映東京撮影所近くに上田氏の邸宅が有り、吉二郎翁は京王多摩川駅を利用」していたのだなぁ・・・と大映スタジオ見学の折にシミジミと感慨深く駅舎を眺めつつ思いましたが、けんさんのお持ちの大映社員名簿から、大映の倒産時ま上田氏が所属していたとは初めて知りました。
戦前の旧日活時代からの縁で戦後も大映撮影所近所に居を構え、籍を置いていたのでしょうか。
テレビや映画、時代劇、現代劇の枠を超え、様々な作品と役をこなした上田氏ですが「ガメラ対ギャオス」では、ギャオスを喰ってしまう位の迫力で御爺さん役を演じたそうですし、殆ど悪役ばかりを演じた氏には珍しく好々爺な役でした。
そして、大映「殺陣師段平」で、引き抜きの男の役以外に「舞台指導」としてビリングに名前を連ねています。
雷蔵さん演じる澤田正二郎氏が劇中劇で演じる「月形半平太」「国定忠治」「大菩薩峠」の所作について上田氏がアドバイスされたと思います。
けんさん、御本の発売は来月ですね。
貴重なエピソードの数々、拝見するのが楽しみです。
上田さんが林成年さんの岳父だったことは、先週はじめて知りました。どうも勉強不足です。私が上田さんをはじめてみたのはやはり「ガメラ対ギャオス」だったと思います。強欲で、でもどことなくお人好しで、孫に優しいという金丸村長を好演されていました。クライマックスにつながる山火事作戦のところで、ギャオスを焼き殺すために山林を提供するという男気を見せて、「かっこいいおじいちゃん」だと思いました。悪役が多かったと思いますが、極悪非道という感じではなくて、どこかに憎めないところがあったと思います。「大江山酒呑童子」では純粋な悪役の田崎さんと良いコントラストでした。
先週ちらっと藤巻さんのお名前が出ていましたが、「ザ・ガードマン」では花月ハイランドホテルとか檜原湖とか、福島ロケが多かったように思います。阿蘇の白雲荘というホテルもよく出てきました。どこでロケをするかといったことは、やはりタイアップで決まるのでしょうか。
来月の出版、今から楽しみです。どんな装丁のご本か、今からワクワクしています。
有難うございます。すっかりご無沙汰していて申し訳ありません。
お身体でもお悪くされたのかと心配していました。
本は随分遅れましたが、やっと発行にこぎ着けました。
上田さんと永田社長は長い長い付き合いがあって大映に籍を置いていたようです。
本当に凄い人だと思います。
本は丸一年かかりましたが、やっと発売できることになりました。
良かったらアマゾンは送料無料で発売当日に着くと思いますのでご利用ください。
上田さんはもっと早くアップしようと思っていたのですが、やっとの登場です。
当時のテレビドラマ・ロケはタイアップの是非が70%くらいあったと思いますよ。
本の装丁は近日中にアップさせていただきます。
けんさんの御本、近所の本屋が全滅してしまい、一寸離れたTUTAYAで予約して来ました。
アマゾンも便利なんですが、留守がちで配達のお兄さんおねえさんとの相性が「君の名は」の主役みたいに擦れ違いばかりなので、取り置きして当日には取りに行けますから、とても楽しみです。
けんさん、お忙しいとは思いますが、今度、御目文字する際に、ご著書にサインをお願いしますです。
さて、上田氏と永田社長のご縁のお話、ありがとうございます。
黒澤明監督作品の中でも難解かつ名作な大映「羅生門」で、非常に現実的で赤ん坊の肌着まで剥ぎ取って逃げてしまう役をはじめ、数々の悪役を演じた上田氏ですが、全国の刑務所慰問を続け、巣鴨プリズンでは永田社長にスポンサーになってもらい、収監者達の為に多くの楽器を寄贈したそうですし、ラジオ、映画以外に娯楽の少ない昭和30年代に デパートの一角を借り切り、子ども達の為に短編漫画映画やスポーツ実況のフィルムを上映して合間、合間に上田氏が「おはなし」をしてくれたそうで、そんな上映会に参加出来た当時の子ども達がとても羨ましいと感じました。
趣味が絵画と言う、その容貌からは想像も出来ないくらい、優しい繊細な上田氏と けんさんがお会いした際のエピソード、今度宜しかったら詳しくお聴かせ下さいまし。(^。+;
ところで、来月大映時代の事を語られたけんさんファン待望の御本を上梓されるとの事、お喜び申し上げます。手に取る日が今から待ち遠しいです。
書いておられますが
池袋新文芸坐ですが、
6/17-23 《京マチ子と山本富士子》② 日本橋/楊貴妃/寅次郎純情詩集/白鷺/地獄門/氷壁/鍵/痴人の愛/細雪/女の一生/ぼく東綺譚/憂愁平野/甘い汗/他
けんさんのご著書発売日と重なりますよね。版元に是非こちらに置かせていただいて販売させていただくようお話なすったらいいと思います。
新宿角川では、同じ頃に若尾文子さんの作品を一挙公開ですから、こちらにも是非、、、売れると思いますよ。
それから、書店で買いますと、取次ぎ(東販)の週報に載りますから、それを見た地方の書店さんで注文してくれますので書店で買って、今注目の本、、というのも沢山の人の手に渡る一つの方法
ここに集うけんさんファン、そして、けんさんの本をお買い上げくださった方々と出版記念会が開けたら、と願ってます。
けんさん
ご無沙汰していましたが、母の居る群馬へ行ったり、息子達の家に手伝いに行ったり、沖縄、新潟、伊東、と旅行したり元気にしていましたので、ご休心ください。
色々とお心遣いをいただき感謝です、有難うございました。
上田さんが書いた絵を見たことがありますが、中々のものでした。
本当に子供みたいな無邪気なところがあって、憎めない人っていうのは
上田さんのような人ですね。
刑務所の慰問も熱心にやっていましたし、やっぱり変わった人ですよ。