このブログのどこかで書いたと思いますが、私は新東宝でほんの少しの間、
走り使いのバイトをしたことがあります。その時にスタジオで角梨枝子さんに
会い、日本人離れした容姿に胸をときめかしました。
お話をしたことは無かったものの挨拶を交わしたことはあって、見るからに知
的でその美しさに凄い憧れを持ったことを記憶しています。
広島出身の彼女は被爆者でもあるのですが、昭和23年(1948)の第一回ミス・
広島です。
同じ広島出身である杉村春子さんとお付き合いがあったことから、文学座の
研究生として一年間みっちり演技の勉強をしていて、そこが普通の新人俳優
とは違ったところでしょう。
翌年の昭和24年に藤本眞澄さんの藤本プロの専属となり新東宝映画「妻と
女記者」でデビュー、「山の彼方に」などに出演しています。
ところが色々あって昭和26年(1951)に松竹に移り、「夏子の冒険」などでヒッ
ト作品を生みましたが、松竹を中心にしながらも東宝の「山の音」、東映の
「放浪記」などにも出演し、昭和29年(1954)には新東宝に戻ります。
そして昭和30年(1955)大映に移籍したのですが、私が大映に入社したのが
同時期となり、私もその奇遇に驚いたことを覚えています。
大映では脇役として活躍、60本に近い作品に出ていますが、「永すぎた春」
「白鷺」「その夜は忘れない」「剣」「砂糖菓子が壊れるとき」などが特に印象
的な作品です。
大映でも撮影所で何度かお会いしましたが、ついに新東宝で胸をときめかし
たことを伝え損ったのが後々悔やまれます。
このブログに時々登場する大映の最後の社員名簿に彼女の名前が載ってい
ますが、大映後はテレビに出演しながら次第に仕事から離れて引退状態とな
り、平成17年(2005)心不全により、77歳で亡くなりました。
あれだけの美貌の持ち主で演技力もあるのに、なぜ主演スターとして輝き続けられなかったのか、ちょっと不思議な気がします。
彼女は結婚はされていたんですかね。
私も詳しいことは判りませんが、性格的にスパッとしていた人のように見受けます。
でなければ簡単に脇役へは回らないと思うのですよ。
彼女の告別式に出ていた知人の話によると、喪主は夫君だったそうで、結婚をされて
いたとはそのことで知りました。
「本日休診」は松竹映画で監督は渋谷実です。
角さんが松竹に入ってすぐの映画ですね。
角さん、おきれいな方ですよね。松竹の「みな殺しの霊歌」でお見かけしました。この作品は松竹の作風からするとかなり異色で、しかもこれを加藤泰監督が撮ったという点でも驚かされます。松竹は、昭和40年代前半にはかなり異色な作品を発表していますね。怪獣とか、ホラーとか。中島様から見て、一番大映らしい作品、一番大映らしくない作品はどの作品になるでしょうか。ご意見を伺いたいと思います。
彼女のデビュー時から見ていますが、素敵な女優さんでした。
邦画各社色々特色がありますが、大映も新しい分野に貪欲的でよくチャレンジ
したと思います。
結果的に大映らしくなかったと言われると、中々思い浮かびませんが、
本格的なミュージカルを撮ろうと意気込んだ「アスファルト・ガール」などでしょうか、
また大映らしさと言えば、溝口健二・衣笠貞之助・吉村公三郎・市川崑などに
撮らせた時代劇や文芸作品だと思います。
「アスファルト・ガール」は見たことはないのですが、島耕二監督の作品ですね。島監督にはSFの「宇宙人東京に現る」から文芸作品までいろいろな作品がありますが、最高傑作は「細雪」だと思います。「宇宙人」も、個人的には好きな作品です。アメリカの「地球最後の日」に触発された企画のように思っていますが、決して劣っていないと思います。
大映らしい作品といえば、やはり時代劇が挙げられますね。傑作は枚挙にいとまがありませんが、私は雷蔵さんの「新撰組始末記」がかなり好きです。よくある、かっこいい・おしゃれな新撰組ではなく、実際にはそうであったろうというような殺伐とした雰囲気がよく出ていると思います。他社作品と違って、羽織の色が青ではなく茶色というところもリアルだと思います。羽織の色をどうするかといったことは、企画が進行していく中でいつごろ、どなたが決めるものなのでしょうか。
本の校正作業をしていたものですからお返事が遅れてごめんなさい。
撮影で使用する衣装は、衣装を特に正面に打ち出す場合を除いて、
普通は撮影所の衣装部が用意し、監督やカメラマンと相談して決めます。
大映はこういった裏方に、年季の入った職人が多くいて、他社には
真似の出来ない成果を発揮していたと思います。
山本富士子や吉永小百合は別格として、なんとなく手が出せそうな若尾文子が大変に人気があったというのはその性だと思います。
今では、藤原紀香のように、大柄でも人気を得ることができるのですが。
そんな一面はありますね。
ただ当時は、その女優さんが大柄か小柄かは中々伝わっておらず、
思ったより大きかった、小さかったとか言われたものです。