この前から大映が最後(昭和45年6月)に出した社員名簿をよく見ます。大映に最後
まで残って頑張った社員と契約俳優さんの名前が並んでいて、このブログを書くため
に大いに役立っています。 前回は川津祐介さんを取り上げましたが、今回の長谷川
明男さんもその一人です。
彼の映画デビューは昭和38年(1963)の東宝「林檎の花咲く町」で、理由は判りません
が、東宝で2本撮った翌年にはフリーに転じ、大映出演が主となり倒産時まで在籍して
いたことになります。
東宝もそうですが当初は二枚目でのスタートでしたが、大映では準主役級として、「剣」
「青い性」「あゝ零銭」「刺青」などでユニークな役柄を20本くらい演じています。
善人役は勿論ですが、悪役・コミカルな役まで幅が広い俳優さんでした。大映が倒産し
た後は各社の映画に出るようになりましたが、主な活躍の場をテレビに移し、「鬼平犯
科帳」「水戸黄門」「旗本退屈男」「必殺仕事人」などのシリーズものでの仕事ぶりが目
立ちました。大映時代とは変わって時代劇が多くなりましたが、特に冷酷非情な悪役が
増えていたようです。
女優の新藤恵美さんとは結婚に至りましたが後年離婚しています。昭和41年生れです
から今年74歳ですが、色々な所から入ってくる情報では既に亡くなったというのが多く、
心配しています。
私にとって長谷川さんは、「本郷功次郎さんと並ぶ大映戦争映画の顔」です。「あゝ零戦」「あゝ海軍」「あゝ陸軍 隼戦闘隊」「海兵四号生徒」と、軒並みご出演でした。また、時代劇では小悪党的な役柄がお上手だったと思います。亡くなったという情報があるのはびっくりです。ご健在であるといいですね。
昔、南堂さんに、「大映は戦争映画が多いのでいつも髪を短くしていた」という話を聞いたことを思い出しました。確かに、硬軟取り混ぜて、戦争ものや軍隊ものが多かったですね。
話は変わりますが、モン・サン・ミッシェルのところで、総太郎様と組合の話をしていらっしゃいました。湯浅憲明監督が、「大映労組」という腕章をつけて演出しているスナップを見たことがあります。また、後期の方の「ザ・ガードマン」で、夏木さんがテレビの監督の役で、会社名はありませんでしたが「労組」という腕章をつけて出てきました。大映もだんだん経営が苦しくなってきて、組合が活発に活動していた、ということでしょうか。他社だと、錦之助さんが東映の労組の委員長だったそうですね。
それから、今「小説吉田学校」を読んでいるところなのですが、永田社長が出てきてびっくりしました。池田内閣の成立後、反主流派として干される立場になった河野一郎氏が離党を画策し、児玉誉士夫氏がそれに反対し、永田社長は賛成するという役回りでした。映画界と野球界のみならず、政界とも深く関係されてきたということを、恥ずかしながら初めて知りました。野球の方では殿堂入りされていて、東京ドームの野球体育博物館でレリーフを見たことがあります。
長谷川明男さんのようなポジションの俳優さんは、どんな作品でも絶対必要で、
大映も重宝したと思います。
大映では課長以上が会社側で、私も課長になる前は書記長をやらされたりしました。
それが急に会社側に変わると、とても複雑な立場や感情になります。大映労組は特に
京都撮影所が強く、倒産後も労働裁判で私も出廷させられた経験があります。
「小説吉田学校」のことは、皆さんが割合にご存知のことです。永田雅一って本当に
不思議な人でした。
京都撮影所というと、職人気質の方が多く、あまり組合活動とは結びつかないようなイメージだったのですが、そうではなかったのですね。やはり現場をご存知の方のお話は貴重です。
長谷川さんの下から2番目のスチールは、「あゝ零戦」ですね。本郷さん主演とはいえ、割と早めに殉職(根上淳さんの参謀の無謀な実験で)してしまい、後は長谷川さんと青山さんが主演格の作品でした。この作品は早川さんの下士官がとても良い役だったと思います。戦争ものの早川さんは、おっかなかったり厳しかったりという役が多かったと思いますが、このような役も演じていたのですね。早くに事故で亡くなった小柳徹さんも出演していて、小柳さんは同じ年に東宝の「ゼロファイター 大空戦」にも同じような新米搭乗員の役で出演していました。亡くなった築地米三郎さんが、この作品の撮影の際に、ゼロ戦のミニチュアをこっそり東宝から借りてきた、ということをインタビュー番組でお話しされていました。
一番下の、江波さんと平泉さんとのスチールはどの作品でしょうか。一番左に写っているのは千波丈太郎さんですか?
お尋ねのスチールは大映末期の作品で、「女秘密調査員 唇に賭けろ」です。
左から炎三四郎(速水亮)、平泉征、江波杏子、長谷川明男です。
「剣」が最高!
どんな役でも、こなす方ですよ~ね~
好きな俳優さんです。
いい俳優さんですが、うまく燃え上がらなかったですね。
このタイプの俳優さんは多いので、これが一皮むけると個性的と
言われるようになるのですが・・・。