俳優として多くの作品に出演してきた奥田瑛二が、「風の外側」(2007)以来、
約6年ぶりにメガホンをとった5本目の監督第作品です。
東日本大震災を題材にしたオリジナル脚本で、「自分にしか撮れない作品を
やりたかった」と抱負を述べていたので、私なりに期待して見ました。
夫が病気で倒れ、保険外交員の仕事を始めた今日子(安藤サクラ)は、家族と
の幸せな時間を取り戻すため、やむなく上司と関係を持ってしまいますが、逆
に家族から非難されて故郷を追われます。
一方、暴力的な父親から母親を守るため殺人事件を起こし、少年刑務所に服
役していた修一(柄本佑)は、刑期を終え東京の町工場で働き始めていました。
同じ故郷の南三陸町を離れ、東京で新たな生活を始めた見ず知らずの2人だ
ったのです。そして東北地方を中心に大震災が起こります・・・。
奥田監督の次女で女優の安藤サクラと昨年3月にサクラと結婚した柄本佑の
夫婦共演です。
奥田瑛ニという人が非常に真面目な人であることは良く判りますし、彼はこの
作品の構想を練り、自ら脚本を書いてこれは自信作になると確信したと思われ
ます。
奥田監督はセリフやナレーションに頼らず、出来るだけ映像により伝える想像
させることに腐心している監督で、私はそれなりに共感の部分がありますし、
今回も真面目な作品だけに辛口を避けたいところですが、正直に書きます。
二つの話が同時展開して行っても描き方や掘り下げが結局は中途半端です。
欲張らず一つの話に纏めた方が良かったと思いますし、全く関係のない二人
がラストで瓦礫の町をさまよい、偶然にすれ違う描写は、特に奥田監督とすれ
ば満足のシーンでしようが、思うほど効果を上げていないし、むしろ冗長です。
奥田監督としては満足の作品だと思いますが、それなら上映館のガラガラは
なんでしょう。結局は監督の一人よがりで、このスタッフ・キャスト・ストリーに
観客は興味を示さず、無関心だったということで、これが回答のようです。
非常に残念な作品でした。