中野さんの新しい本が出た。新書で出してくれるのがありがたい。
前書のTPP亡国論は、ベストセラーになったが、そこで議論されていたことは、現実のものとなりつつある。
その前にも何冊か読んだが、結構、目からウロコの本が多い。
元は、経済学の先生と思うが、最近は、政治的な本も増えている。
政治と経済は、不可分だ。
本書は、現在の、世界情勢を分析し、アメリカの衰退と、新興国の覇権への挑戦が不可避であることを説く。
まずは、アメリカ側。オバマの弱腰外交は、評判が悪いが、実は、これは、オバマのせいではなく、アメリカの国力の相対的な低下が原因だ。
外交は、理想主義と、現実主義の間を行ったり来たりするが、今は、現実主義に近い時代。
グローバルに理想主義を貫くことは、体力的に困難になってきている。
アメリカは、国力の相対的な低下と、アジアの国々が力をつけてきたことに伴い、コストをかけてアジアの覇権を守るメリットを失っている。
それを見透かして、覇権を握ろうとしているのが中国。
アメリカがそれを、コストをかけてまで阻止しようとする理由があるのか?
今となっては、Noであろう。
従い、アジアの国々が、それぞれ、自衛のための力を持たざるを得なくなるというのが結論だ。
日本は、理想主義に傾きかけていたが、アメリカの牽制もあり、やや現実も見つつある。
しかし、アメリカの本音をどれだけ掴んで、外交方針を決定しているのか、本書を読むと、不安になる。
アメリカの本音は、中国に、勢力拡大の口実になるような行動を極力避けつつも、勢力拡大は、許さないという態度を常に示し、図に乗らないように情報発信する。
しかし、アジアでは、自分で、コストをかけてまで、動くつもりはない中、どこまで効果が続くのか。
日本は、地政学的にも、大戦後の経緯から見ても、やっかいな状況にあることは、間違いないようだ。
これから日本を背負う、若い人に読んでもらいたい本。
タイミング的に、イスラム国の話が出てこないところがちょっと残念?