野坂昭如「だまし庵日記」より

野坂昭如という作家が今月9日に死去した。戦後日本を生き抜いた無頼派作家などと言われた。私はそれほど好きな作家ではなかったが、あの「火垂るの墓」には思い出がある。あのブライハがこんな作品を書くのか、と感嘆した。多分この感嘆は私の「井の中の蛙」のせいだったと思うのだが。

昨日買った雑誌「新潮45」12月号(「さらば維新と言おう」を読もうと思って買ったのだが)に野坂の「だまし庵日記」が載っていた。

11月某日
 早朝から冷雨。
 気温は10度C。クリスマスの頃の気温とか。
 風邪を引かぬよう、注意が肝心。年寄りは風邪など引こうものなら、すぐ肺炎に繋がる。
 今、年寄りは病院で死ぬのが一般的となり、これは社会の仕組みの変化、時代と言ってしまえばそれまでだが、かつて家で死水をとっていた頃と比べると、近しい者も、死でさえも、あやふやになってしまった。

 野坂昭如氏は東京医大病院に救急搬送されてすぐ息を引き取ったという。
 上の「新潮45」の次号に載る「だまし庵日記」の最後は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」だという。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 庶民には増税... 「兄は沖縄で... »