映画「ラーゲリより愛を込めて」

私はこの映画を観て「本当に久しぶりに映画らしい映画に出会うことができた」という感想をもった。ラーゲリというのは収容所のこと。それは第二次大戦後、ソ連が「日ソ中立条約」を破って、旧満州地区に侵攻してきた(それ以外にも樺太や千島にも対日開戦を強行)。
この結果、旧満州地区(北中国)に進駐していた日本軍は総崩れになり、日本軍はほとんどがソ連軍に抑えられシベリア地区での強制労働に従事させられた。その収容所がラーゲリ。これが、この映画のバックである。

旧日本軍はソ連軍のもとで徹底的にこき使われ、シベリア地区の開拓などのために強制労働させられたが、この映画の主人公の山本幡男は日本にいる妻と4人の子どもたちを思いながら辛い労働に耐え、ソ連兵たちの鬼畜のような辛い環境の中で「希望」を持ち続けて頑張る。まさに命がけだ。

山本は過酷な環境のもとで病魔に襲われる。命も残り少ないことを覚った山本は妻へ「手紙(遺書)」を書く。しかしこれも「書き物」としてソ連兵に見つかれば没収される。仲間たちは山本の遺書を少しずつ頭にたたき込む。帰国後、山本の妻に伝えるためだ。

そして山本は死ぬが、戦争が終わって11年経った1956(昭和31)年ようやく日ソの国交回復が実現した。ソ連に抑留されていた日本人たちは帰国することができるようになった。例の舞鶴港がその舞台になった。

山本の戦友たちはアタマにたたき込んできた遺言のそれぞれを妻と子どもたちに伝えるために山本宅を訪問する。山本の遺言の一言一言はまさに戦友たちの一言一言でもある。

山本を演じる二宮和也など、若いニューヒーローたちの演技に拍手。そしてこの映画のテーマになる戦争とそれによる人間的物質的悲劇のかずかずは改めて思いを強くさせられた。この映画で描かれる非人間的行為(戦後の行為など国際法違反)をとるソ連兵は、今のウクライナでのロシア兵と重ね合わせになる。

内容が内容だけに観客は少ないだろう、また若い人も少ないのでは、と予想していたが、どちらも外れた。ウイークデイの午前中映画館8分の入り。若い人が予想以上に多かった(と思う)。

この映画の中で歌われた歌、「愛しのクレメンタイン」、「赤旗の歌」なども懐かしい。「帰国」を意味する「ダモイ」というロシア語(?)、など心に残る言葉だった。
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