じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

三並夏「平成マシンガンズ」

2021-03-19 19:20:26 | Weblog
★ 17日に公立高校の合格発表も終わり、塾の1年が無事に終わった。

★ さて、三並夏さんの「平成マシンガンズ」(河出書房新社)を読んだ。2005年、第42回文藝賞受賞作。なんと15歳での受賞は最年少記録とか。

★ リズミカルな文章ながら前半はイマイチ作品に入っていけなかったが、中盤以降グーンと面白くなった。

★ 主人公の女性(中学1年生か)が語る家族のこと、友人のこと。2年前に母親が家を出て、最近父親の愛人が自宅を占拠しつつある。どうやら父親と結婚をするようだ。学校では、いじめやスクールカーストなど、いつもながらの風景で、友人関係も難しい。どうにもこうにも行き詰まって不登校を決めた。

★ 相談と称して学校に呼び出され、担任教師やスクールカウンセラーに取り囲まれて、彼らは彼らなりに対処しようとするが、タテマエばかりで、何の役にも立たない。形式的に学級討論会でも開き、キレイごとで済まそうとしている。納得した顔をしながら、心の冷え切った同級生たちの顔が浮かぶ。

★ 彼女は家庭にも、学校にも居場所がなくなった。唯一の救いは夢の中に出てくる「死神」。彼女は彼から与えられたマシンガンで、憎き人々を撃ちまくる。夢の中ではあるが。

★ 後半、どうしようもなくなって、家を出た母親を訪ねる(この母親もちょっとわけありそう)。そこで出くわしたのが、憎き父の愛人の弟。姉に言われて、母親に「離婚届」をもらいに来たという。世俗から超越したような彼がなかなか面白い。

★ 何やかんやがあって、彼女は悟る。「結局あたしの好き嫌いなんて関係なく最後には一番安全でお金のあるところに落ち着いてしまうんだ」(104頁)と。それで、彼女は前へと進みだす。

★ 大きな物語のプロローグのような作品だった。その年代でしか書けない純粋な気持ち。世間体や我欲でまみれた大人が浮き彫りにされていた。
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