じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

吉村昭「法師蟬」

2021-03-24 00:53:46 | Weblog
★ 還暦を過ぎたあたりから、急に老いを感じるようになった。プロとしての技術はようやく充実期を迎え、塾生も安定して在籍するようになった。気力は充実しているのだが、眠りは浅くなるし、脚力の衰えを感じる。

★ 知的な面では、この歳になってなぜ球の体積が4/3πr3乗なのか、積分を使って理解できたことに感動する一方、人の名前がなかなか出てこなくなった。最近はマスク着用を良いことに、「わからなかった」と誤魔化しているが。

★ こんな折、吉村昭さんの「法師蟬」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

★ 語り手は、ほんのひと月前同窓会で顔を合わせた知人の訃報を聞く。改めて同窓会の写真を見ると、彼が透明になってきているように感じる。このことから、語り手はは、幼い日に見たセミの羽化を思い出す。さなぎの殻を破り、羽化するセミ。透明で体の内部が透けるようだ。セミにとって羽化は死のカウントダウンの始まり。

★ 身近に死を感じるようになった話者は、最近自らも透明化しているように感じたという。

★ 若い人には辛気臭い話だが、高齢になると(といってもまだ60代だが)、気になる話だ。入浴時、そっと腕や手を見るようになった。
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