じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

松浦寿樹「花腐し」

2018-07-12 22:22:14 | Weblog
☆ 松浦寿輝さんの「花腐し」(講談社文庫)を読んだ。講談社文庫の小説は概して難しい。

☆ ストーリーは単純。自ら営む企業の破綻を目前に、故あって金を借りた老人に頼まれ主人公の栩谷(くたに)は古アパートに一人残った住人に立ち退きを迫る。

☆ ところが、その住人と何故か気が合い、酒を飲んでは40余年の人生を振り返ったり、うだうだと論争を繰り広げる。

☆ アパートの住人が栽培するマジック・マッシュルーム。混沌とした東京の暗い路地。酸っぱい臭いが伝わってくるよな作品だった。どうも40男に救いはなさそうだ。
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渡辺淳一「光と影」

2018-07-12 11:41:54 | Weblog
☆ 渡辺淳一さんの「光と影」(文春文庫)を読んだ。とても面白かった。

☆ 小武(おぶ)大尉と寺内大尉は大阪へ向かう病院船で出会う。二人は同期で、西南戦争で共に銃創をうけた。右腕の骨は砕け腐敗が始まっている。もはや切断をするしか術がない。手術は大阪の病院で行われることになった。

☆ カルテの順番でまず小武の腕が切断された。次に寺内が切断される段になって、担当医は「腕を残すという実験」を提案する。今なら医の倫理に照らし合わせてどうかとも思えるが、西洋医学の黎明期にそんな考えは乏しかったようだ。

☆ 切断した小武の回復は早かったが、軍を退役せずにはいられなかった。一方の寺内は傷がなかなか回復せず、数年にわたり死地を彷徨う。ただ、奇跡的に回復した後は破竹の勢いで出世する。その経緯を見て、小武の嫉妬が高まっていく。幸運に恵まれたかつての同僚に比べて、不運の連続の自分に焦燥する。

☆ 平和の時代に生きる私の目からすれば、小武の生きざまは決して不幸ではない。定職にもつけたし、60歳までその職を全うした。西南戦争の英雄として若い軍人の尊敬も得ている。しかし彼はそれには満足できなかった。ナルシムズムのなせる業と言えばそれまでだが、後の陸軍大将、首相にまで上り詰める寺内はあまりにもまぶしすぎた。

☆ 光が強ければ、影は濃い。

☆ カルテの順番が二人の明暗を分けたことを知らされ、小武の心は砕ける。

☆ 医師である渡辺さんならではの所見もあり、リアリティのある作品に仕上がっている。
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怪しい参議院定数増

2018-07-12 01:37:49 | Weblog
☆ 自公政権は参議院の定数6増をめざす法案を通そうとしている。「身を切る改革」が求められている昨今、議員定数を増やすことは時代に逆行するように思う。

☆ 参議院というのは第2院として、衆議院をチェックするのが本来の役割ではなかろうか。そのため団体の代表者や見識ある人が選ばれ超党派的に活動するのが良いように思う。それがいつしか衆議院選で敗れた人の救済の場に変わってきた。国会が政治屋さんの互助会に変質している典型のように思う。

☆ 一院制はリスクが大きく、またその実現には憲法の改正が必要となる。私は二院制は維持すればよいと思う。ただ思い切って定員は100名程度にすればよいと思う。そして仕事の内容をもっと精選すれば良かろう。衆議院と同じ論議を蒸し返す必要はなかろう。

☆ 今回の法案改正で胡散臭いのは比例代表で政党の指定枠を設けることだ。政党が当選させたい人を、あらかじめ決めるというもの。拘束式名簿性だが、一部の特権政治家を生む可能性がある。ベテラン政治家であれ、政党の党首であれ、特権的優遇を認めることはどうなのだろうか。政治屋互助会的な風土がますます助長されるように思う。

☆ 党利党略、個利個略。政治が自らの首を絞める。戦前日本の再来か。
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