じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

田山花袋「少女病」

2018-07-07 21:17:02 | Weblog
☆ 石原千秋著「漱石と三人の読者」(講談社現代新書)第4章「『虞美人草』の失敗」の中で田山花袋の「少女病」が紹介されていた。「日本ではじめて電車の中での視姦を書いた小説だと思われる」(133頁)という。

☆ 漱石が「虞美人草」を書いた時代背景、当時の「女学生」ブームを紹介するところ。興味がわいたので青空文庫で読んでみた。

☆ 見るからにバンカラ風の30代後半の中年男。妻がいて子どももいるが、女学生を見ると我を忘れて観察と空想に耽る。ただ何がしかの行動に出るわけではなく、ただ見て楽しんでいる様子。病的なむっつり助平だが、その道はその道で奥深いものがあるようだ。

☆ 映画「愛のむきだし」(園子温監督 2009年)の中で、高校生が盗撮の技を磨いていたが、この男の少女観察にも通じるものがある。

☆ 現実の世界はあきらめ、仮想の世界に生きがいを求めるあたりは、コミック「ルサンチマン」(花沢健吾 小学館)にも通じる。

☆ 気色悪いが、男の願望を赤裸々に表している。偽善の仮面を剥がせば男なんてこんなものださって感じだ。自然主義万歳というところか。
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京都大作戦2018中止

2018-07-07 15:56:07 | Weblog
☆ 山城運動公園「太陽が丘」で行われる予定のロックフェス「京都大作戦2018」は大雨の影響で中止となった。

☆ 2007年に始まったこのイベント。最初は宇治という田舎でのロックフェスということで驚きもあったが、10年経過して恒例行事となってきた。七夕近辺のこの時期、最寄りの近鉄大久保駅では普段見慣れないルックスの人達を大勢見かけたものだ。

☆ ただ時期が時期だけに、台風で中止があったし、雷雨もあった。最初の頃は音漏れでうちの近辺まで雰囲気が伝わってきた。観客のジャンプで地面が揺れたとか。最近はガードが固くなったのか、スピーカーの向きが変わったのか、観客の年齢が上がったためか、静かなものだ。

☆ 今年は2日間とも中止ということで、いつも賑わうセブンイレブン(我々は「上セブ」と呼ぶ)は期待外れかもね。
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乙川優三郎「生きる」

2018-07-07 04:31:04 | Weblog
☆ 乙川優三郎さんの「生きる」(文春文庫)を読んだ。時代物を書く人は文章がうまい。名文に導かれるまま一気に読み終えた。

☆ 父の代に北国の藩に仕官し、勤勉努力を主君に認められ出世の道を歩んだ男。主君の死に際して殉死を考えるが、家老に止められる。藩内の派閥争いともあいまって、殉死しなかったが故の周りの冷笑、非難にさらされるが、家老と誓詞を交わしたゆえに死ぬことも許されず、息子、妻には先立たれ、他家に嫁いだ娘には絶縁される。

☆ 孤独な余生を送りながら、最後は一抹の光がさす。

☆ 殉死をテーマとした小説は森鷗外の「阿部一族」があまりにも有名だ。ダイナミックなスケールで描くこの名作を知りながら、新たにこのテーマに挑む作者の想いは何だろうか。

☆ 「生きる」には阿部一族のような大立ち回りはない。主人公の内面に寄り添い、共に耐え、共に老い、最後は鎮魂の温かさを感じる。

☆ 時代物の形をとっているが、お家を会社と読みかえれば企業小説としても読める。力強い「生きる」の題字。等伯のような木を描いた表紙も印象に残る。
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