塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

金賢姫元工作員来日について、所感

2010年07月24日 | 政治
  
 昨日は文月ふみの日(7月23日)ということで、方々に暑中お見舞いを送りました。海外にも何通か送ったんですが、当然理由は分からないわけで、困惑されるかもしれません。

 さて、20日に来日した金賢姫元工作員が、こちらもふみの日23日に韓国へ帰国した。日本国内では、拉致被害者家族との面会のようすなどがドキュメンタリー調に報じられる一方、金元工作員招聘の成果や待遇に対する批判が高まっている。

 私も、今回の金元工作員の来日には、大きく分けて2つの問題があったと思う。1つは新情報がないのになぜ呼んだのか。もう1つは、招聘の費用はともかく、なぜ賓客扱いなのか、という点だ。

 第一の点については、まず新情報の有無くらいは事前に知り得るのではないかという疑問が浮かんでくる。金元工作員の来日にあたっては、入国の特別許可や警備など事前準備が必要とされた。こうした事前準備に時間を費やす間、本人と直接折衝することはなかったとしても、韓国政府を通じてどの程度の情報が得られそうか、あたりくらいは付けられたはずだ。入国の特例許可や警察の事情聴取の免除まで行って招聘に至ったわけだから、事前のやりとりのなかで新情報が得られるとの見込みは、かなり高いものでなければならない。

 しかし、そうした期待は裏切られた格好となり、これといった新事実は得られなかった。本来なら、多くの特例によって入国を許可し、かなりの費用がかかったのだから、「新情報はとくにありません」では、政府の方こそが腹を立ててしかるべきだ。にもかかわらず、政府は遺憾の意を表明するどころか、お土産まで持たせて金元工作員を帰国させた。そこには、政府の真意が新情報の獲得にはなかったことが見え隠れしているように感じる。

 となると、結局は野党が非難しているように、政府にとってはパフォーマンスでしかなかったのだろう。ここ数年進展のない拉致問題に対して、新政府が発足しても何も変わらないという批判をかわすために、「何もしていないわけではないんですよ」とばかりに思いつきで計画したというのが本当のところではないだろうか。

 少し考えれば、金元工作員は87年の大韓航空機爆破事件以来北朝鮮には戻っていないのだから、拉致被害者家族や拉致事件担当者が求めているような最近の情報を彼女が持っているとは思えない。それどころか、横田めぐみさんとは1回しか会ったことがないという。もちろん、被害者の家族の方は、一回きりのエピソードとはいえ傾聴しないわけにはいかない。しかし、そんな古い一回きりの出会い話を聞いても、実際の問題解決には残念ながら何の足しにもならない。被害者家族と金元工作員の面会の様子が全国に報じられ、それで政府が何か拉致問題について成果を上げた気になっているとでもいうのなら、人をコケにするにも程があるというものだ。

 第二の点については、世間では2千万とも3千万ともいわれる招聘費用に批判が集まっている。また、移動にヘリが使われたが、その途中で経路を大幅に変更して遊覧飛行を行ったことが問題視されている。

 私は、問題は金額ではなく、待遇そのものにあると思っている。移動にヘリを使用したことについては、渋滞回避と警護のためであると説明されている。たしかに、これらの理由はもっともといえる。しかし、渋滞回避や警護のためであるなら、迅速な移動こそが肝要であり、遊覧飛行などもってのほかだ。

 また、中井洽拉致問題担当相は「何が問題なのか。こんなことで非難されるなら、世界中誰も、情報を持った人は日本に来てくれない。」と反論している。しかし、金元工作員は、こちらがお願いして来ていただく類いの人物ではない。特赦されたとはいえ、彼女は大韓航空機爆破事件の実行犯の1人である。一部の報道では「テロリスト厚遇」などという強い言葉づかいもみられる。私はそこまで言う必要はないと思うが、金元工作員は重い十字架を背負って生きていかなければならない人だ。そして、事件や北朝鮮について、機をみて語っていかなければならない責務を負った人であると思う。

 そのような人が、移動の際にちょっと寄り道をして観光をしたいなどと言ったとすれば問題だし、それを政府が受け入れたとすればもっと問題である。政府は、招聘と歓迎を取り違えているのではないだろうか。それとも、これもパフォーマンスの一環としてアピールするつもりだったのだろうか。だとしたら、随分と間の抜けた話だ。金元工作員をどう扱うかということは、日本国内だけの問題ではない。爆破実行犯で特赦の身である金元工作員を賓客扱いしたことが、少なくとも北朝鮮や他の六ヶ国協議メンバーに、どのようなメッセージとして受け取られるかを念頭に置かなければならなかったはずだ。

 総括として、最大の論点は今回の金元工作員の来日が拉致問題の解決に寄与したか否かという点にある。ここで、もし私が北朝鮮の立場にあれば、拉致問題は無視してほっといても当分大丈夫だろうとの考えに至ると思う。何の新情報も持たない元工作員を歓待して国内へのアピールの材料にしているに過ぎないのだから、民主党政権の拉致問題への本気度はかなり低いと受け取れるからだ。もしそうなれば、費用云々どころの問題ではない。民主党のイメージ対策のために、拉致事件の解決が犠牲にされたということになる。そのような事態だけは、何とか避けていただきたいものだ。

  



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2 コメント

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Unknown (左巻き菅)
2010-07-25 20:07:28
テロリストをVIP待遇するのは、日本の菅政権、北朝鮮の金正日政権及びキューバのカストロ政権。
拉致被害者が帰ってくるのならともかく、民主党政府が小型ジェット機をチャーターしてまで呼ぶ相手なのだろうか。
政権浮揚のための誤ったパフォーマンスとしか思えない。
ヘリコプターで遊覧飛行までする必要があるのだろうか。民主党の税金バラマキは止まらない。
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Unknown (うじょう)
2010-07-25 23:18:03
>左巻き菅さん
 コメントありがとうございます。
 支持率アップにつながると思っていたのならお粗末だし、新情報が得られると思っていたのなら、なおお粗末ですね。そんな小手先の奸策なんかみんな見透かしているんですよ、ってことにいいかげん気付いてもらいたいものです。
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