塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

「世界最悪の経営者」にアマゾンCEOが選ばれた件についての雑感

2014年05月25日 | 社会考
    
 労働組合の国際組織である国際労働組合総連合(ITUC)のアンケート調査で、アマゾン・ドット・コムの最高経営責任者(CEO)ジェフ・ベゾス氏が「世界最悪の経営者」に選ばれたというニュースがありました。調査手法など、選出に経緯について詳細はよくわかりませんが、日本で注目を浴びるいわゆるブラック企業という現象が、世界的にも問題になっていることがうかがえます。
  
 このニュースで、アマゾンのブラックぶりを指摘するITUCのコメントで一例として挙げられている、「アマゾンの物流倉庫の従業員が勤務中に歩く距離は1日あたり24kmに達する」という部分が、私のなかでちょっと気になりました。

 この1日あたり24kmという距離、一般の方にはどのくらいのものか想像しにくいかもしれません。ですが、1つ前の記事をご覧いただけばわかる通り、中山道歩き旅をやっている私は、この24km/日という数字の大変さを身に染みて実感しています。

 近年静かなブームとなっている街道歩きですが、さまざまな書籍やサイトなどを見ていると、1日の旅程は25㎞前後が一般的のようです。私の場合はだいたい30㎞を目安に歩いていますが、宿の人や途中で出会う同類の旅人にはたいてい驚かれます。もっとも、歩き旅なんぞするのは99.9%は定年された人生の先輩方なので、私の方が多く歩けるというのは当たり前ではあります。

 他方で、江戸時代の旅人や大名行列などは、1日に40㎞ぐらい進んだといわれています。昔の人は現代人よりも健脚だったでしょうし、道中は物見遊山ではなくあくまで移動なので先を急いでいたからというのもあるでしょう。ですが、この10㎞を差を生む最大の要因は別のところ、ずばり足場の違いにあると私は実感しています。江戸時代の道路は土道で、よくて石畳だったはずです。ところが現代はほとんどがアスファルトで、歩いているとダイレクトに骨や間接に響きます。私の場合でも、25㎞を過ぎると足の痛みで寄り道がほとんどできなくなります。

 つまり、24㎞というのは、現代の条件において人が1日で足を壊さずに歩ける限度に近いといえます。これに、物流倉庫で扱う物品の重量が加わるわけですから、本当に限界ギリギリなのではないかと推測されます。また、24kmというのはあくまで調査サンプルの平均でしょうから、なかにはこれより多く動いている人もいることでしょう。

 もし報道が事実であれば、この1日24kmという数字から読み取れるのは、人間を壊れる寸前の限界まで酷使し、よしんば壊れても取りかえれば済むという、人を道具としてしか見ない利益主義のように思います。そしてこれが、ワタミ、ユニクロ、すき屋と近年取りざたされるブラック企業に共通する原理なのでしょう。それこそ、『あゝ野麦峠』の女工哀史や『蟹工船』の世界です。

 富の総量は増えたとしても、社会の質が1世紀近くも前に逆戻りしたのでは、はたして進化しているのか退潮しているのかわかりません。日本のみならず、これが世界のトレンドであるということに驚くとともに、将来が心配になります。
  
 アマゾンでは基本的に書籍くらいしか買いませんが、今後はちょっと控えるようにしようかな…。