アジア外をしばらく旅していると、だんだんと日中韓の旅行客の区別がつくようになってきます。どうやってと聞かれると困るのですが、少なくとも日本人か否かは言葉を聞かなくても雰囲気で判別できるようになりました。ただ、中国人観光客などはここ数年でだいぶ変わってきていて、前に渡欧した時は日本のかつての農協様御一行よろしく9割以上団体旅行客だったのですが、今では家族連れやカップルも多くみられるようになりました。
逆にヨーロッパ人から見ればアジア人の顔などほとんど見分けがつかないわけですが、それでも中国人旅行客に関しては一般にいわれているように日韓に比べて印象はよくないようです。とある博物館の方が、中国人は日本語のパンフレットがあるのになぜ中国語がないのかと怒鳴るので困ると言っていたのを覚えています。そりゃあ、中国人の海外旅行がポピュラーになったのはここ10年、20年の話なのだから、あと10年くらいは待ってくださいな、というところですかね。
さて、それでは日本人旅行客は模範的で好印象かというと、必ずしもそうではないように感じます。そこで、今回は個人的にヨーロッパ旅行で(他の地域でも同様だと思いますが)日本人が気を付けるべきだと考えているポイントを2つほど挙げたいと思います。
1) とにかく挨拶
挨拶、というより声をかけることがとても大事です。とくに日本人は、お店や飲食店などで黙って入って黙って出ていくことがよくあるように思います。これは、相手から見れば失礼というより不気味です。向こうの挨拶は、儀礼上の意味合いと同時に「私は決して怪しいものではありませんよ」というアピールとして行われます。ですから、無言で店に入れば、店員は「強盗や万引きじゃないかしら」と疑うかもしれませんし、最悪警察を呼ばれたって文句は言えません。海外旅行でしばしば店員の態度が悪かったとこぼす人がいますが、そう言うお客のあなたの態度に問題はなかったか考える必要があると思います。ちょっと一言「ハロー」と言って入れば、店員の接客もだいぶ違ったかもしれません。
挨拶は、しすぎたからといって減るものでもありません。少なくとも、自分の目的空間にいる人にはしておいて損はないでしょう。ホテルなら、フロントや清掃員、エレベーターで一緒になった人や玄関のドアではち会ったなど。電車なら隣り合わせた席の人や検札に来た車掌とか。
もちろん、慣れない内はとっさには口に出しにくいものです。そもそも、治安もよく謙虚が美徳の日本では、あまり煩く挨拶することは逆に好まれません。私の住んでいるマンションでは、なぜか入居当初から暗黙のルールで知らない人でも建物内では挨拶することになっているのですが、これが鬱陶しくて仕方ありません(笑)。ですが、海外では人が変わったように明るく振る舞ってます。「こんにちは」は億劫でも、「ハロー」ならわりと抵抗なく言えるようになりました。要は慣れですね。
気安く挨拶すると、気安く話しかけられてしまって、店内をゆっくり見たいのに困るという人もいるかもしれません。ですが、その場合は「ちょっと見てるだけです」と言えば済むことですし、何も買わなかったとしても挨拶さえきちんとしていれば嫌な顔をされることはありません。買わないという決定も、買うという決定と同様にその人の意思として尊重されなければならないからです。
2) 迷ったら遠慮なく人に聞く
これは必ずしも海外旅行に限ったことではありませんが、見知らぬ土地・文化言語圏ではいろいろと戸惑う確率も増すと思います。迷ったら、迷わずどんどん人に聞きましょう。とりわけ日本人は、人に聞くということを躊躇う傾向にあるような気がします。声をかけられずにいるのか、答えが出そうで出ない状態なのか、はたまた声をかけられるのをただ待っているのか分かりませんが、街角でいつまでもオロオロしている姿は見ていてイライラしてきます。
そのくせ、こちらから声をかけると迷惑そうに「自分で探すからいいです」などと言う人が少なからずいます。とくに夫婦で来ている方の男性に多いです。おそらく、見知らぬ土地で妻に頼られる夫でいたくて、若造にものを教わるなどという不格好はしたくないのでしょう。ですが、はっきりいって往来でウロウロしている姿の方がよほど格好悪いです。知らないものは仕方ないことですから、さっさと知っている人に聞いて解決した方が旅も楽しめます。
聞きたいけど、話が通じなかったら相手に悪いと考える人もいるかもしれません。ですが、他人に頼られて気分の悪いことなどあるでしょうか。道を聞くくらいなら、言葉が通じなくたってそんなに難しいことでもありません。たいていは、聞かれた人も一生懸命教えてくれることと思います。
さっさと聞いてしまった方が良いというのには、もうひとつ理由があります。聞くに聞けずに狼狽えていると、見かねた親切な人が声をかけてくれるかもしれません。ですが、逆によからぬ目的で声をかけてくる人も出てくるかもしれません。そういった不逞の輩から見れば、海外旅行客の狼狽える姿は隙でしかありません。ただでさえ、旅行客は物乞いやスリや詐欺師にとっては格好の獲物ですから、隙を見せれば彼らを惹き寄せることになります。ルーマニアのブカレストで日本人女子大生が殺害される事件がありましたが、被害者はおそらく空港でウロウロしているところを標的にされてしまったのでしょう。無用なトラブルを避けるためにも、自分から行動するということは重要だと思います。
ですので、大切なのは迷うときは堂々と迷うことです。すぐに解決できなさそうであれば、遠慮なく周囲に聞くこと。人に聞くことは、恥ずかしいことでも悪いことでもありません。自分で探したい場合は、オロオロせずに「この俺を迷わせるなんて困った町だ」くらいに大きく構えて、地図なりガイドブックなり開くようにしましょう。私なぞはあまりに我が物顔で歩いているのか、初めての町で道を聞かれたりすることもあります(笑)。
2点に共通しているのは、結局一般的にいわれていることですが、日本人はもっと積極的に堂々とした方が良いということだと思います。日本人ごときがどんなにデカい態度をとろうとしたところで、中国人や西洋人にはかなわないので、相手の気分を害するのではないかなどという心配はあまりないように思います。