見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2018年9-10月@東京近郊展覧会拾遺

2018-11-07 21:05:25 | 行ったもの(美術館・見仏)
秋は展覧会シーズンなので、行ったものがけっこう溜まっている。

五島美術館 『秋の優品展-禅宗の美術と学芸』(2018年8月25日~10月14日)

 禅宗寺院を中心に発達した書画や高僧の墨跡、五山版の出版など館蔵の名品約40点を展観。この秋は根津美術館の『禅僧の交流』と合わせて、禅宗に注目が集まって楽しかった。最近は賛を読むようにしているので『政黄牛図』の清拙正澄賛に「海底泥牛角指天」という一行が気になる。古写経手鑑の傑作と言われる益田鈍翁旧蔵『染紙帖』は24面(全部?)公開。大聖武、小聖武、絵因果経の断簡、目無経、二月堂焼経など、すごかった。

東京国立博物館・東洋館8室 特集『中国書画精華-名品の魅力-』(後期:2018年9月26日~10月21日)

 別に後期と明示しているわけではないが、展示替えの後にも行ってみた。根津美術館で見ることの多い『送海東上人帰国図軸』(常盤山文庫所蔵)が珍しく来ていた。因陀羅筆『寒山拾得図軸』(二人を描いたもの)と伝・因陀羅筆『寒山拾得図軸』2幅(縦長の画面に一人ずつ描いたもの)はどちらも可愛い。『二祖調心図』2幅は平台の展示ケースに入っていて、間近でじっくり眺めることができた。

泉屋博古館分館 特別展『狩野芳崖と四天王-近代日本画、もうひとつの水脈』(2018年9月15日~10月28日)

 狩野芳崖(1828-1888)と四人の高弟の特集だが「芳崖四天王」こと岡倉秋水、岡不崩、高屋肖哲、本多天城のことは全く知らなかった。芳崖の代表作『悲母観音』の左右に展示された『仁王捉鬼図』と『不動明王』は、強そうだけどユーモラスで親しみやすく、明快な色づかいも、なんとなくディズニーアニメ風だと感じた。

神奈川県立金沢文庫 特別展『西湖憧憬-西湖梅をめぐる禅僧の交流と15世紀の東国文化-』(2018年9月22日~11月11日)

 金沢文庫でなぜ西湖なのか。展示趣旨に「金沢八景」という名称は中国の「瀟湘八景」に由来します、とあるけれど「瀟湘」は洞庭湖周辺(湖南省)だから違うだろう、とツッコミたくなる。しかし称名寺には、かつて金沢北条氏が杭州から移植した「西湖梅」の伝説があるそうだ(西湖も洞庭湖もあまり区別がついていなかったのだろうか)。調べたら、昭和20年頃まで称名寺に古木があり、現在は同じ品種の梅の木が泥亀公園に植樹されているそうだ。という縁にちなんで、金沢文庫には珍しく、日本・中国の絵画を多数展示。各種の『西湖図屏風』を見比べることができて、興味深かった。かつて行った西湖の風景を思い出しながら眺めた。

鎌倉国宝館 開館90周年記念特別展『鎌倉国宝館1937-1945:戦時下の博物館と守り抜かれた名宝』(2018年10月20日~12月2日)

 昭和3年(1928)に開館した鎌倉国宝館が、今年で開館90周年を迎えたことを記念し、90年の歴史の中で最も大きな試練となった戦争期に焦点を当てる。時局に合わせた展覧会『元寇展』にも出品された、極楽寺の釈迦如来坐像と十大弟子立像が出ていた。目つきの鋭い十大弟子立像は、東博の『京都 大報恩寺』展で見た快慶作の十大弟子に少し似ている。しかし、なぜか必ず右肩を衣の端で覆っていて、完全な肩脱ぎにしている像が一体もない。興味深かったのは戦時中の事務文書綴や庶務日誌で、昭和20年8月15日に「戦争終結の大詔」の放送を聞いたことが記され、翌16日に「本館内ノ防火用水桶ヲ撤去ス」とあるのが感慨深かった。松根油の採集の話はどこかで聞いたことがあると思ったら、一ノ瀬俊也『飛行機の戦争1914-1945』に出てきたものだ。このほか、常楽寺の文殊菩薩坐像、円応寺の奪衣婆坐像など珍しい仏像を見ることができた。東慶寺の水月観音菩薩坐像は、なぜか宝冠のツインテール部分がなかったので、妙に大人びた感じがした。

国立公文書館 平成30年 秋の特別展・明治150年記念『躍動する明治-近代日本の幕開け-』(2018年9月22日~11月4日)

 この展覧会のポスタービジュアルを見たときは、国立公文書館、だいじょぶか?と心配になった。今年は政府の推進する「明治150年」関連イベントが各地で開催されているが、これほど臆面もない「明治」推しは他に類がないのではないか。展示室内にも、鹿鳴館に集う貴婦人、西南戦争の兵士など、見事に美化・理想化された(日本人に見えない)ビジュアルイメージが山盛りに飾られている。まあ、超絶美しく描かれた明治憲法発布式のシーン(明治天皇と伊藤博文)の前のケースには、植木枝盛の『東洋大日本国国憲案』や『五日市憲法草案』が展示されていたのはよかったし、宮武外骨の『頓智研法発布式』の写真パネルがあったのにもほっとした。

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