見もの・読みもの日記

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十大弟子と六観音/京都 大報恩寺(東京国立博物館)

2018-10-27 21:24:17 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』(2018年10月2日~12月9日)

 京都市上京区の大報恩寺(千本釈迦堂)に伝わる鎌倉彫刻の名品の数々を展示する。そういえばしばらく行っていないお寺で、調べたら2007年の冬に訪ねたのが最後だった。このときは大学の先生と学生の一行に遭遇し、先生の詳しい解説を隣で聞かせてもらったのが思い出である。

 展示は平成館2階の半分だけを使った、比較的小規模なもの。はじめに文書や絵画資料で大報恩寺の歴史を紹介する。大報恩寺は承久2年(1220)の開創だが、その近在には7世紀にさかのぼる古代寺院があったと言われ、大報恩寺には、別の寺院から移されたと思われる平安時代前期(10世紀)の千手観音菩薩立像が伝えられている。あごの張った四角い顔、肩は水平に近く、下半身はストンと棒立ちで、中心線は四角張った印象がある。左右の脇手は一転してやわらかく肉感的で、なかなか素敵な仏様だと思った。

 また大報恩寺には、洛中洛外図屏風などに描かれた北野経王堂ゆかりの文化財も伝わっている。経蔵につきものの傅大士坐像および二童子立像もそのひとつ。北野経王堂は、千人の僧が法華経を読誦する万部経会を歴代の室町将軍がおこなったところで、その様子を描いた『北野経王堂扇面』(室町時代)も展示されていた。

 続いて、広い空間に配された秘仏本尊・釈迦如来坐像(行快作)と十大弟子立像(快慶作)。全て露出展示で、360度好きな方向から鑑賞できる。本尊は、かなり目力の強い、堂々と迫力のある釈迦如来。精緻な透かし光背が美しい。図録を見ると、厨子の内部には造像当時の豪華な天蓋も吊るされているようだが、残念ながら天蓋は展示されていなかった。ふだんは本堂に安置されており、8月の六道参りの時期にだけ開扉されるようだ。

 その周囲を点々と囲む十大弟子立像。もちろん全て僧形だが、人間の理想形に近い、つまり地蔵菩薩像を思わせるのが、阿難陀と阿那律。他は面相も体格もそれぞれ個性的だ。両肩を覆う衣をつけているのは、阿難、阿那律と富楼那。あとは右肩をさらしている。大迦葉など、額にしわを刻み、それなりの年齢だと思うのだが、背後にまわってみると、背中の逞しさにほれぼれする。いちばん痩せさらばえて、胸のあばら骨が浮いて見えるのは目犍連だが、肩には筋肉がつき、腕には太い血管が浮いている。目犍連はひとりだけ、腰を落として背を丸めるような、独特の姿勢をしている。また、いずれも衣の彩色や文様がわずかに残っていて、会場では阿那律がよく見えた。

 最後が六観音像。ここの露出展示で全方向から鑑賞可能。右端の如意輪観音像から見ていく。アンニュイで厳しい、横顔の美しいこと。次が准胝観音。確実に肥後定慶の作と認められるもので「抜群の出来栄え」を示すという。確かに緻密で抜群に巧くて美しいのだけど、巧すぎる仏像はいまひとつ好きになれない。あと、日本の伝統をきれいに消したくらいに見事に宋風だなあ、と感じた。十一面観音や千手観音には、どこか宋風のニューモードになり切れない土着性みたいなものを感じる。

 なお、後期(10/30-)は六観音の光背を取り外した状態での展示になるという。ふだん見られないお姿が見られるのは面白いかな。でも私は透かし光背が好きなので、光背つきで拝めてよかった。

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