見もの・読みもの日記

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のどかなオリエンタリズム/マイセン 西洋磁器の誕生(大倉集古館)

2010-10-30 02:11:24 | 行ったもの(美術館・見仏)
大倉集古館 『開窯300年 マイセン 西洋磁器の誕生』展(2010年10月2日~12月19日)

 ヨーロッパで最初の磁器を誕生させた「マイセン工房」は、1710年、アウグスト強王によって創設され、後続のヨーロッパ各地の磁器窯の器形、文様、装飾技法を60年間リードした。へえーヨーロッパには、18世紀まで磁器がなかったんだ、というのを知ったのは、2年前に大平雅巳著『西洋陶磁入門』(岩波新書、2008)を読んだときのこと。かなり衝撃的だった。アウグスト強王の名前も、この本で覚えた。ちなみに1710年といえば、中国は清朝康熙帝の盛期。日本は宝永年間(元禄の次)。柿右衛門様式から金襴手への移行期くらいかな。

 マイセン工房創立300年を記念する本展は、名品を最も数多く輩出した18世紀の作品を中心に展示する。最初期(1730年頃)の金彩人物文は、中国風とも日本風ともつかない。美しい自然に囲まれ、精緻な美術工芸品を生み出す、豊かで平和な夢のくにを表しているようだ。牧歌的なオリエンタリズムを感じさせて、頬がゆるむ。パゴダと呼ばれる陶器人形は、中国の布袋像を原型につくられたものだというが、布袋さまにつきものの太鼓腹はさほど目立たない。そのかわり、磊落そうに足を組み、不敵に笑う「耳の大きい禿頭の人物」は、スター・ウォーズのヨーダに似ていた。

 柿右衛門写しは、図様は巧く似せていたが、使われている色が微妙に違うと思った。紫は、柿右衛門では使わないのではないかしら。ヨーロッパ人の好みなのかしら。マイセンの伝統文様として、今日に至るまで愛好されているブルーオニオンは、中国の吉祥文であるザクロが原型というにも面白い。それから、鳳凰が空飛ぶイヌまたはキツネに化けてしまったことにも吹き出す。(ただし、フライング・ドッグやフライング・フォックスは、Google検索によるとコウモリの意味らしい)

 2階に上がると、生き生きとポーズを取る、愛らしい磁器人形が並ぶ。コロンビーナとかアルレッキーノとか、いずれもコンメディア・デッラルテ(仮面を使用する即興劇)の「ストック・キャラクター」であるらしく、この手の演劇の人気ぶりを窺わせる。こうした磁器人形が、宴会のテーブルの飾りに用いられたというのも面白い。これは日本人や中国人の発想にはないように思う。食べものを加工して、蓬莱山をつくるとか鳳凰に見立てるということはするけれど…。

 同じく2階に、磁器の図様のデザインなのだろうか、ペン+淡彩のスケッチ画が展示されていた。10枚あって、1~2枚ずつ画風が異なる。「I Modellidi di Meissen per le chinesene Horoldt, Firenze, 1981」とあったように思う。非常に面白かったが、会場にも図録にも何の説明もなかったので、Googleで探したら、これ(複製品?)のことか?

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