見もの・読みもの日記

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青磁、白磁、高麗茶碗/魅惑の朝鮮陶磁(根津美術館)

2024-03-12 22:16:15 | 行ったもの(美術館・見仏)

根津美術館 企画展『魅惑の朝鮮陶磁』+特別企画『謎解き奥高麗茶碗』(2024年2月10日~3月26日)

 今季の展覧会は珍しい二部構成で、展示室1は、主に館蔵品で朝鮮陶磁の歴史を概観し、その魅力を見つめ直す企画展。展示室2は、奥高麗茶碗(九州肥前地方、現在の佐賀県唐津市周辺で焼かれた、朝鮮陶磁の高麗茶碗を写した茶碗)の成立と展開を検証する特別企画である。

 展示室1、展示の90件余りは確かにほとんどが館蔵品(西田宏子氏寄贈・秋山順一氏寄贈が多い)だが、冒頭の陶質土器4件は「個人蔵」だった。特別古い、三国時代(5世紀)の土器が2件。伽耶のものだという『車輪双口壺』は、おもちゃみたいなかたちで面白かった。

 続いて、高麗時代(12~14世紀)の青磁。一目見て美しいと思った『青磁輪花承盤』には、王室向けの製品を生産した全羅南道康津郡の沙堂里窯で生産された可能性が高いという解説が付いていた。朝鮮の窯の名前には全く疎いので、慌ててメモを取ってきた。いま調べたら、韓国の国宝や宝物として指定されている青磁の80%が沙堂里で生産されたそうで、高麗青磁博物館もあるらしい。行ってみたい。『青磁陽刻蓮花文鶴首瓶』は、ぽってりした丸みが愛らしかった。青磁のセクションに『白磁象嵌菊花文瓶』が混じっていて、あれ?と思ったが、この時代の白磁は、光線の具合で青みや赤みが混じる、微妙な色をしている。徳利のような形で、お酒を入れて呑みたいと思った。

 15世紀に盛んになった粉青は、青磁に近い灰青色の焼きものから、白磁と呼びたいものまで多様だが、展示品は、白い肌にうっすら青み(半透明の釉薬)が載ったものが多かった。粉青印花、粉青象嵌、粉青線刻など、さまざまな技法が見られる。いかにも手仕事ふうで「民藝」の美意識を想起させる品が多い。私は『粉青掻落牡丹文扁壺』が気に入った。光州広域市の忠孝洞窯から同型の品が見つかっているとのこと。あとで地図を見たが、朝鮮の窯址って南部に偏っているのだろうか。

 次に白磁が少々あって「高麗茶碗」が続く。15~18世紀の朝鮮時代に作られたもので、形態の特徴によって、三島、井戸、熊川(こもがい)、伊羅保などと呼び分けられる。「わび」の極みなのだろうけど、全体にみずぼらしい感じがして、私はあまり好きではない。17~18世紀には、釜山の倭館窯で制作された作品もある。倭館窯は、寛永16年(1639)対馬守の宗氏が釜山の倭館に開いた陶窯で、日本から手本を送って「御本茶碗」を焼かせた。徳川家光の絵を手本にしたという『御本立鶴茶碗』が展示されており、拙い鶴の姿に、職人の描き写しだから仕方ないと思うところ、家光のヘタウマ絵を見慣れ過ぎて、うわ~家光の絵そのままだ~とニコニコすてしまった。

 そして展示室2。奥高麗とは、高麗(朝鮮半島)製ではなく、桃山時代の唐津で生産された茶碗という解説から始まる(初めてこの用語を聞いたときは戸惑った)。朝鮮から渡来した陶工たちによって作られ、忠実に高麗茶碗を写した造型から、次第に和ものらしさを加え、最後は熊川茶碗のおもかげのない完成形に至る。うーん、実は解説に言うほど、高麗らしさ、和ものらしさの違いはよく分からないのだが、文化交流詩史の面白さだと思って理解しておこう。

 展示室5はひな人形と『百椿図』。展示室6は「春の茶の湯」で、次第に気温が上がるこの季節は、炉を深くして火気を下げ、部屋が暖まり過ぎるのを避ける。そのため、吊り釜を選ぶことが多い、という説明を読んで、なるほどと納得した。しかし展示ケースの中の茶室に吊り釜を使うのはとても珍しいのではないかと思った。


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