見もの・読みもの日記

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明治の浮世絵師たち/ラスト・ウキヨエ(太田記念美術館)

2019-12-23 21:41:06 | 行ったもの(美術館・見仏)

太田記念美術館 『ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち-悳俊彦コレクション』(2019年11月2日~12月22日)

 ずっと行きたいと思っていた展覧会だが最後の週末に間に合った。浮世絵は一般に江戸時代の文化と考えられているが、実際は明治の終わり、20世紀の初頭まで制作され続けていた。本展は、明治の浮世絵約220点を掘り起こして紹介する。前後期の展示替えがあって、半分くらいしか見られなかったのは残念(図録は買った)。

 確かに浮世絵といえば、江戸時代の代表的な文化として教科書で習う。でも私は、文明開化の風俗を描いた開化絵や横浜絵、新聞錦絵や戦争錦絵など、明治の浮世絵にも以前から興味があった。本展が紹介する絵師のうち、知っていたのは、歌川芳藤、尾形月耕、梶田半古、河鍋暁斎、河鍋暁翠、川端玉章、小林永濯、小林清親、月岡芳年、豊原国周、水野年方、宮川春汀、揚州周延。というか、「日本画家」だと思っていた梶田半古や川端玉章を浮世絵師に入れてもよいことに驚く。川端玉章は、七福神の引札のようものを描いていた。

 小林永濯は、ヘンな絵を描く日本画家だと思っていたが、新聞錦絵も描いているのだな。小林清親もあやしげで好き。展示替えで見られなかったが、沈む戦艦を真横から描いた『我艦隊於黄海清艦撃沈之図』は発想がユニーク。何か元ネタがあったのだろうか。

 おそらく初めて聞く名前だったのは、安達吟光、池田輝方、市川甘斎、歌川豊宣、二代歌川芳宗、大倉耕濤、尾形月山、尾竹国一、熊耳耕年、笹井耕窓、山井耕耘、高橋松亭、竹内柳蛙、月岡耕漁、東洲勝月、中澤年章、右田年英、水野秀方、安田樵堂、山田敬中、山村耕花、山本昇雲、楊斎延一。この中では、山田敬中がとても気に入った。憲法発布の祝祭や吾妻橋の鉄橋など、典型的な明治の名所風俗絵を描いているが、南画ふうの『高士観瀑図』や『賢人護鶏図』などは独特の味わいがあって好き。一種の「素朴絵」だと思う。

 二代歌川芳宗は大胆な構図がおもしろい。右田年英の『羽衣』は本展のポスターなどに用いられていたもの。品があって、そこはかとないおかしみがある作品を描く。加藤清正といたずらなサルを描いた『論語』は、解説を読んで噴き出してしまった。

 いつの時代も美しい女性は好まれる題材。揚州周延は洋装の開化美人を描いた絵師というイメージだったが、本展に出ていた作品を見る限り、女性の顔立ちは伝統的な浮世絵のままだった。むしろ水野年方とか池田輝方などの、目鼻立ちの小さい女性のほうに、新しい時代を感じた。尾形月耕、宮川春汀も。目鼻立ちが小さくて表情が分かりにくいが、全身のポーズが自然で、手先や首の傾げ方が、ちゃんと女性の内面の表現になっていると思う。右田年英が明治38年に描いた『新橋元禄舞』には、二重まぶたの女性が描かれているという解説があって、現場ではよく見えなかったのだが、図録で確認した。

 子供を描いた作品もいくつかあったが、宮川春汀の『子供風俗』に出てくる少年たちは、現代の基準でいうとあまり子供らしくない。動物園のゾウを見つめる少年たち、変に大人びていて、ゾウも居心地悪そうな顔をしている。


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